鳥取県
鳥取県(とっとりけん)は、日本の中国地方にある県である。県庁所在地は鳥取市。 日本海側にあり[1]、山陰地方の東側を占める。面積は約3,507平方キロメートル[1]と全国で7番目に小さく、人口は約53万人[1][注釈 1]と都道府県別で最も少ない。基礎自治体は4市14町1村[1]で、市の数も最も少ない。 地理・地域面積国土地理院の全国都道府県市区町村別面積調によると、鳥取県の面積は3507.03平方キロメートルである[2]。 国土地理院地理情報によると、鳥取県の東西南北それぞれの端は以下の位置で東西の長さは125.41キロメートル、南北の長さは61.79キロメートルである。 地形
自然公園気候県内ほぼ全域が日本海側気候で、全域が豪雪地帯対策特別措置法に基づく豪雪地帯に指定されている。(県内全域の豪雪地帯は国内最西端。ただし、特別豪雪地帯は指定されていない。) 春と秋は好天の日が多く、夏は南風によるフェーン現象で猛暑日となることもあるが、平野部でも熱帯夜は少ない。 冬は曇りや雨、雪の日が多いが、平野部の1月平均気温は4℃台と東京郊外や愛知県名古屋市、京都市と同じくらいであり、冷え込みは厳しくない。米子市などの西部沿岸部は平年の最深積雪は20センチメートル程度と比較的雪は少ないが、東へ行くほど降雪/積雪量は多くなり、鳥取市では中心部でも平年で40センチメートル以上の最深積雪を観測する。東部では、JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)の影響を受けやすい鳥取市や岩美町などの沿岸部のほうが智頭町などの内陸部よりも降雪量が多くなることがある。 特に大山周辺の内陸山地は山陰一の豪雪地帯となっており、冷え込みも厳しく−15°C以下にまで下がることもある。
地域区分県域は令制国の因幡国と伯耆国に相当するが、中国地方最高峰の大山(標高1,729m。日本百名山の一つ)が中央に聳える伯耆国が大山を境に東西に分けられるため、東部・中部・西部の3区分が一般的である。 東部は県庁所在地の鳥取市が位置する因幡国、中部は倉吉市が位置する伯耆国東部(東伯)、西部は米子市と境港市が位置する伯耆国西部(西伯)にあたる。なお、大山の山頂は西伯側に位置する。気象庁の一次予報区分(後述)など、実質的に因幡・伯耆の2区分となる場合でも3区分の表現に基づいて、因幡を「東部」、伯耆を「中・西部」と表現することがある。 地域区分を跨ぐ市町村合併は、1889年の町村制施行時に八橋郡(1896年から東伯郡)住吉村を加えて汗入郡(1896年から西伯郡)逢坂村が発足した時と、1957年に東伯郡中山村と西伯郡逢坂村が合併して西伯郡中山町が発足した時の二度しかない。 いわゆる平成の大合併において、新しい名称の市が誕生しなかった数少ない府県(他に山形県、神奈川県、大阪府、宮崎県)の一つである。なお、町は全て「ちょう」、村は「そん」と読む。 東部因幡国に相当する、鳥取平野を中心とする地域。鳥取砂丘や白兎海岸などの景勝地がある。県庁所在地で県唯一の中核市である鳥取市は、液晶工場などが立地する工業都市でもある。 面積:1,518.21km2、 推計人口:214,900人、 人口密度:141.5人/km2 中部伯耆国東部に相当する、倉吉平野を中心とする地域。白壁土蔵群で知られる倉吉市を中心とし、三朝温泉、はわい温泉、東郷温泉といった温泉地も多い。 面積:780.42km2、 推計人口:93,441人、 人口密度:119.7人/km2 西部伯耆国西部に相当する、米子平野や弓ヶ浜半島を中心とする地域。古来から西隣の出雲国(島根県東部)との結びつきが強い。 面積:1,208.4km2、 推計人口:221,602人、 人口密度:183.4人/km2 気象庁による予報区分府県予報区は「鳥取県」。一次予報区分は2区分、「市町村等をまとめた地域」は5区分。二次予報区分は鳥取市以外は市町村単位で、鳥取市のみ北部・南部の2つに分かれている。
歴史県名の起源にまつわる説話「鳥取」の語は、『古事記』『日本書紀』の垂仁天皇に「鳥取造(ととりのみやつこ)」や「鳥取部(ととりべ)」が見える。 『古事記』には、大和朝廷が諸国に鳥を捕らえさせ、これを税として納めるように命じていたという一節があり、当時、沼や沢の多い湿地帯であった鳥取平野で水辺に集まる鳥などを捕らえて暮らしていた狩猟民族が、大和国(現・奈良県)に政権ができてからその支配体系に組み込まれ、「鳥取部」として従属するようになり、そこからこの地が「鳥取」と呼ばれるようになったとされる[3]。 『日本書紀』垂仁天皇二十三年九月から十一月の条にかけて「鳥取」の起源説話が見える。誉津別王子(ほむつわけのみこ)が成人しても言葉が喋れないことを天皇が憂いていた時、大空を白鳥が飛んでいるのを見つけ「是何物ぞ」と発した。天皇、喜びて、その鳥の捕獲を命じた。天湯河板挙(あまのゆかわたな)が鳥を追い続け各地を巡り、ついに出雲の地(現在の島根県安来地方だという説が有力)で捕獲に成功した。この功績から「鳥取造」の称号(姓=かばね)を拝命した。『古事記』にも同類の説話が見えるが、結末が違っている。 『和名類聚抄』の因幡国邑美(おうみ)郡の五郷の一つに鳥取がある。この郷名は、上述の垂仁天皇の王子である本牟智和気御子(ほむちわけみこ)のために設置された鳥取部に由来する。この辺り一帯が沼地で、全国の白鳥伝説との関連が取り上げられている。文書のうえでは、天慶3年(940年)の因幡国高草郡東大寺領高庭庄坪付注進状(東南院文書)に「主張鳥取高俊」(郡司と推定)の署名が初見である[4]。 古代大山裾野丘陵から後期旧石器時代の黒曜石製と安山岩製のナイフ形石器や削器、彫器・掻器が見つかっている。今から約2万3千年前以降のものと推測される。また、旧石器時代終わりごろの黒曜石製細石刃と呼ばれる石器が発見されている。このように遺物は少数ながら発見されているが、県内からは人が生活した遺跡はまだ発見されていない。 室町・戦国時代山名氏の領国であったが、戦国時代末期には毛利輝元と織田信長の係争地となり、信長配下の羽柴秀吉が鳥取城を攻略。配下の宮部継潤が城代を経て正式に鳥取城主となる。伯耆国においては羽柴・毛利氏の和睦により、東部は羽柴氏傘下となった南条元続が、西部は毛利方の吉川氏が所領を安堵された。 江戸時代因幡国では関ヶ原の戦いで敗れた西軍方であった宮部長熈、垣屋恒総、木下重堅が改易され、代わって亀井茲矩、池田長吉、山崎家盛の3大名が統治した。関ヶ原の戦い以前から鹿野城主であった亀井氏に関しては加増、それ以外の大名は転封された。 伯耆国においても吉川広家(吉川元春の三男)、南条元忠(元続の子)が西軍方として改易・転封処分となり、中村忠一が入部した。慶長14年(1609年)に中村忠一が急死すると、その翌年には加藤貞泰、市橋長勝、関一政の3大名に分割された。この時、河村郡・久米郡は江戸幕府天領(直轄領)となり、山田直時・伊丹康勝が代官として派遣された。また、慶長19年(1614年)には里見忠義が倉吉に配流され、久米郡の一部4,000石が与えられた。 その後、元和4年(1618年)、池田光政が鳥取城に入部し、因伯2国からなる鳥取藩が成立した。このほか、鹿奴藩・若桜藩の2つの新田藩があった。 伯耆国汗入郡の大山寺は僧・豪円の活躍によって慶長15年(1610年)、徳川秀忠から寺領3,000石が認められた。この大山寺領は西伯耆一帯に散在し、18か村が大山寺本坊西楽院の管掌下に置かれた。大山寺は鳥取藩士とは別の大山侍と呼ばれる武士を登用し、寺領支配に携わらせた。 近現代
人口全国の都道府県で最も人口が少ない。また全国のどの政令指定都市よりも少なく、千葉県船橋市や埼玉県川口市、鹿児島県鹿児島市、東京都八王子市などよりも少ない。また政令指定都市の行政区においても、2024年1月1日に発足した静岡県浜松市中央区よりも少ない。2021年3月には、県の人口が戦後初めて55万人を割り込んだ[23]。 県外からの移住者は年間2,000人程度で、休暇(バケーション)を楽しみやすい土地で仕事(ワーク)をしてもらう「ワーケーション」を掲げるなどして移住者誘致を図っている[24]。人口密度は全国37位で、鹿児島県・長野県のそれと近い[25]。 一方、1人の女性が生涯に産む子どもの数の平均値である合計特殊出生率は21世紀以降、人口置換水準には届かないものの一貫して全国平均を上回っており、特に2010年代以降は沖縄県、南部九州各県、隣接する島根県などと共に全国トップクラスである。2022年には日本全体の出生数が前年比で約5%減少した中、鳥取県は全国唯一の増加した県となった[26]。
政治県政鳥取県の行政機関は、鳥取県庁のほか、地方機関として総合事務所などが置かれている[27]。なお、鳥取市・岩美町・若桜町・智頭町・八頭町については本庁が担当する。伯耆町(旧溝口町)は2005年(平成17年)4月1日に日野総合事務所から西部総合事務所へ、鳥取市(河原町・用瀬町・佐治町)は2007年(平成19年)4月1日に八頭総合事務所から東部総合事務所へ、それぞれ移管された。2013年(平成25年)4月1日に東部・八頭の各総合事務所が本庁に集約、日野総合事務所が西部総合事務所日野振興センターとなった。2014年(平成26年)4月1日に県税部門の一部の業務が特定の県税事務所に集約された[28]。2018年(平成30年)4月1日の鳥取市の中核市移行に伴い、東部福祉保健事務所・東部生活環境事務所が鳥取市に移譲され、鳥取市保健所となった(管轄区域は変更なし。岩美町・若桜町・智頭町・八頭町についても、鳥取県からの事務委託により鳥取市に移譲)。
財政平成19年度
平成18年度
地方債の残高
平成17年度
平成16年度
歴代知事(公選)
国政→詳細は「衆議院小選挙区制選挙区一覧 § 鳥取県」、および「鳥取県・島根県選挙区」を参照
衆議院の小選挙区が2区ある。参議院では鳥取県選挙区として全県で1区を構成していたが、2016年の第24回参議院議員通常選挙より島根県選挙区と合区され、鳥取県・島根県選挙区となり島根県とともに1区を構成する合同選挙区が創設された。 経済・産業県内総生産人口が日本国内で一番少ない県であるため、県内総生産(名目GDP)も2008年4月から2009年3月までのベース(平成20年度の統計)で1兆9927億円[29]と47都道府県では最も小さく、世界の中では国内総生産 (GDP) のランクが90位程度の国と同程度である[30]。なお、これを一人当たりで見ると和歌山県・岩手県のそれに近い。また、一人当たり県民所得は230.4万円であり、全国平均の83.7%である。これは、熊本県・鹿児島県のそれに近い。 ちなみに、鳥取県はスターバックスが未出店である唯一の県だったが、2015年5月23日に同店の鳥取県1号店が鳥取市の鳥取駅南口付近に開業した。これにより、スターバックスは47都道府県全てに店舗を構えることになった。その後、イオンモール鳥取北内にも出店している。 産業別人口特産品農作物ではスイカ(西瓜)、らっきょう、二十世紀梨など全国的に有名。米や野菜、果物などもバランスよく生産されている。砂丘らっきょう、大山ブロッコリー、こおげ花御所柿、大栄西瓜は地理的表示(GI)登録されている[24]。 海産物では松葉ガニが名産で、「五輝星」(いつきぼし)という県認定ブランド蟹がある[24]。 農業農業生産額の割合は野菜が全生産額の28.4%で最も多く、米が19.5%、鶏(鶏卵・ブロイラー)が13.6%、乳用牛が10.5%、果実9.4%を占めている。[31] 漁業商業
工業
生活・交通警察→詳細は「鳥取県警察」を参照
鳥取県警察本部の管轄にある。2005年(平成17年)4月1日に再編が行われ、以下の9警察署が置かれている。
交通おおむね、兵庫県境から島根県境までの海岸線に沿った旧山陰道のルートに沿って走る幹線(鉄道の山陰本線や国道9号線)が、県内主要都市(もしくはその付近)を通り、鳥取・米子・倉吉の各都市近辺から中国山地・山陽方面へルートが分岐する構造になっている。 鉄道南部町、日吉津村、三朝町を除く全自治体に鉄道駅が存在する。県内一帯で普通列車の本数は米子市近郊の一部区間を除いて毎時1本以下である。県内における営業列車の運用は臨時列車を除きすべて当日中に終了し、日付越えの運用は行われていない。 ()のないものは県内のみを走る路線。
バス日ノ丸自動車、日本交通の2社があり、県内の路線バスや県内各都市と県外を結ぶ高速バスを運行。
どんぐりコロコロは日本交通の運行、はまるーぷバスは共立メンテナンスの運行、他3つは日本交通・日ノ丸自動車の共同運行。
鳥取県は、全国で最もバスの利用者が少ない[32]。 道路島根県の松江市内に松江道路が開通した1998年(平成10年)4月17日以降、長らく鳥取県は「日本で唯一都道府県庁所在都市に高速道路がない県」であったが、2004年(平成16年)11月1日に鳥取市が山陰自動車道青谷インターチェンジのある青谷町を編入合併したため、日本で唯一都道府県庁所在都市に高速道路がない県ではなくなった。
空港・港自動車登録番号標
医療・福祉→詳細は「Category:鳥取県の医療機関」を参照
教育
私立
私立
国立
マスメディア新聞
放送鳥取県・島根県の県域民放各局は互いの県に乗り入れて放送を実施している。詳しくは、「電波相互乗り入れ#乗り入れの経緯とその後」の項目を参照されたい。局名の後の( )内は局所在地。
※山陰地方には、 ANN(テレビ朝日)系列局やTXN(テレビ東京)系列局などがないため、ケーブルテレビ経由で県外の系列局を視聴する形となっている[注釈 2]。なお、テレビ朝日系に関しては、キー局のテレビ朝日が取材拠点としてテレビ朝日米子支局・テレビ朝日鳥取支局を置いている。
→「Category:鳥取県のケーブルテレビ局」を参照
文化・スポーツ方言鳥取県の方言は、東部・中部と西部で大きく異なる。東部(因幡)の因州弁・中部(東伯耆)の倉吉弁は、兵庫県の北部の但馬弁と共通した特徴を持ち、東山陰方言に分類されている。一方で、西部(西伯耆)の方言は島根県の東部の出雲弁と共通した特徴を持ち、雲伯方言に分類されている。 文化施設これまで、1972年に設立した鳥取県立博物館しか存在せずここに美術部門も内包していたため、県内に公立の美術館は存在しなかったが、美術部門を分離独立させることを決定し、現在建設中である。 食文化→「Category:鳥取県の食文化」も参照
→詳細は「日本の郷土料理一覧 § 鳥取県」を参照
伝統工芸
→詳細は「日本の伝統工芸品の一覧 § 鳥取県」を参照
民話・伝説
スポーツ
→「Category:鳥取県のスポーツチーム」も参照
観光→詳細は「鳥取県の観光地」を参照
有形文化財建造物→詳細は「鳥取県指定文化財一覧」を参照
景勝地史跡・社閣→詳細は「中国地方の史跡一覧 § 鳥取県」、および「鳥取県の城」を参照
レジャー施設・観光施設・文化施設祭事・イベント→詳細は「Category:鳥取県の祭り」を参照
「星取県」鳥取商工会議所青年部が提唱し、2017年から使用している。夜間に人工の明かりが少なく、どの市町村からでも天の川が見えることや、鳥取市が星の見えやすさ日本一となったこと、また県が以前から使っている「蟹取県」にちなむ[34][35]。 これにちなんだブランド米「星空舞」の販売が2019年に始まった[24]。 対外関係姉妹自治体・提携自治体海外
国内鳥取県を舞台とした作品→詳細は「鳥取県を舞台とした作品一覧」を参照
・ぬくもりの内側(2023年公開 イオンエンターテイメント、白石美帆・三田佳子・渡辺裕之・音無美紀子・スギちゃん)
鳥取県でロケが行われた作品
鳥取県出身の人物→詳細は「鳥取県出身の人物一覧」を参照
その他小惑星(4720) Tottoriは鳥取に因んで命名された[45]。 脚注注釈出典
関連項目外部リンク
|
Portal di Ensiklopedia Dunia