三田 佳子(みた よしこ、1941年10月8日[1] - )は、日本の女優。本名:高橋 嘉子(たかはし よしこ)、旧姓:石黒(いしぐろ)。女子美術大学付属中学校・高等学校卒業。所属事務所は三田佳子事務所(生島企画室と業務提携)を経て、2017年2月24日付けでプロダクション尾木に移籍。
芸名の三田は、早稲田の高田(馬場)、明治の神田(駿河台)と共に3案示され、慶応の三田を選択。慶応大学野球部のファンだったため[2]。
夫は元NHKプロデューサーの高橋康夫。長男は森宮隆、次男は高橋祐也[3]。
代表作は映画『極道の妻たち三代目姐』[4]、ドラマは大河ドラマ『いのち』『花の乱』など。大河ドラマで複数回主演した唯一の女優となっている。
来歴・人物
大阪府大阪市天王寺区生まれ[5][6]。父は会社員[5]。長女ですぐ下の弟は幼い頃病死。末弟の二人兄弟[5]。生後半年で東京府(現在の東京都)世田谷区に移り[7][8]、3歳の年に一家で山梨県へ疎開[5]、終戦後は下北沢を経て中野区で育つ。小学二年時に両親が離婚[6]。母親は幼い弟を父に預け[6]、嘉子を引き取って母子二人で東京で暮らす[6]。兵庫県宝塚市立宝塚第一小学校[5]、東京都大田区立池雪小学校[5]、東京都中野区立桃園第三小学校[5][9]、東京女子美術大学付属中学校~高等学校卒業[5]。
中学3年のとき、児童劇団「ちどり」に入り[5][8]、中学・高校時代から多数のテレビ・ラジオに出演[5]。週刊誌の表紙等を飾るようになり[9]、高校在学中から映画会社数社にスカウトされるが断り続け、高校を卒業した1960年春に東映ニューフェイスではなく[9]、第二東映へ入社した[2]。
同年、『殺られてたまるか』で18歳で女優デビュー[6]。この映画は東映が売り出しを決めていた波多伸二との共演予定であったが、波多がロケ地の本田技研工業埼玉製作所内で22歳で事故死し[6][9]、三田はロケバスの窓から波多が飛ぶ影を見た[6][9]。事故から15日後に会社は新しい相手役に梅宮辰夫を抜擢[6]。気持ちの整理もつかず、大人社会の非情さに驚愕し、東京新聞に心情を吐露した。当初から主役級で起用され、佐久間良子と並ぶ東映の看板女優としての扱いを受ける[5]。
Vシネマの発案などで知られる東映プロデューサーの吉田達は[6]、三田を迎えに三田の小さな家に行ったとき、「この貧しい母子のために尽くしてやりたい」と"三田派"の急先鋒になった[6]。東映東京撮影所(以下、東映東京)に、いつしか"三田派"と"佐久間"が生まれた[6]。東映入社当時は第二東映による粗製乱造時代で[11]、一年で14本映画を撮った年もあり[9]、毎日撮影が早朝から翌日の明け方まで続き、家に帰れないため、東映東京の近くの旅館に寝泊まりしていたという。東映は段々、荒々しい男性路線に傾斜し始め[9]、女優も大人の女としての色気を要求された[9]。東宝や松竹に比べ、女性映画の数は少なく、たまにしか製作されなかった女性文芸路線では、1964年公開の『廓育ち』で社会派演技を見事にこなす。
1961年に文芸プロダクションにんじんくらぶに参加[12]。
1967年に東映を退社しフリーとなった[5][13]。1967年の松竹『夜のひとで』で、無断でヌードのすげ替えシーンを入れられ[9]、抗議すると映画界を干されかける[9]。以降はテレビと舞台を中心に活動した[2]。1973年にはNHK大河ドラマ黄金期の『国盗り物語』に出演した[14]。1974年、ドラマ出演で知り合ったNHK大阪の制作部副部長・高橋康夫と結婚[5]。
1984年、『Wの悲劇』では、女優が女優の役をやるという難しい役柄だったが[9]、女の意地を見せる見事な演技が高く評価され[9]、各映画賞を受賞する[9]。1986年、三田の演技力を以前から評価していた橋田壽賀子脚本作品の『いのち』に主演。平均29.3%の高視聴率を獲得し[9]、"国民的女優"の地位を盤石にした[9]。
1989年と1990年に、『NHK紅白歌合戦』(NHK総合・ラジオ第1)の紅組司会を2年連続で務めた。
高額納税者番付において俳優・タレント部門で1991年から1994年まで4年連続で首位となり宝島社の「日本の女優100人」に掲載された[1]。強い個性が無いかわり、「多くのファンに感情を移入させるタイプの女優」と評された[1]。
1996年に子宮体癌が発覚し緊急入院、手術と5度の抗がん剤治療が功を奏して退院した。
2003年に、デビュー時から親交のあった水野晴郎が復帰の手助けとして、自身の映画『シベリア超特急3』の主演に起用、その後は映画『海猫』、テレビドラマ『いま、会いにゆきます』など仕事を再開し、2007年9月16日放送の『ひまわり〜夏目雅子27年の生涯と母の愛〜』で、仲間由紀恵とダブル主演する。
2007年11月15日、次男が覚醒剤所持の現行犯で3回目の逮捕となる。翌日の会見で「すべては私たち夫婦の教育の失敗」「引退も考えた」「今も月70万円の小遣いを渡している」「翌月の舞台(『エドの舞踏会』)については降板しない」などと話した[15][16]。
2014年春の叙勲で旭日小綬章を受章した。
出演
映画
劇場アニメ
テレビドラマ
NHK
日本テレビ系
TBS系
フジテレビ系
テレビ朝日系
テレビ東京系
舞台
ラジオドラマ
ニュース映画
バラエティ
他、多数
CM
ディスコグラフィ
シングル
その他
- 夜の口笛 (1963年、別冊歌謡コダマ) - 『歌う東映スター』の4曲目に収録[40]。
アルバム
発売日
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規格
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規格品番
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アルバム
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キングレコード
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1976年
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LP
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SKA-156
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女坂 円地文子原作・小説「女坂」より
※ 歌と朗読:三田佳子
※ 全作詞:横井弘、作曲・編曲:小川寛興
Side:A
- (朗読)
- 花えらび
- 青い葡萄
- 深い谷
- 女どうし
- 嘆きの母
- 花嫁
Side:B
- 別れ雨
- 子守唄
- 梅の実のなるころ
- 黒い揚羽蝶
- 女坂
- 私が死んだら
- (朗読)
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2001年11月7日
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CD
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ナレーション
オムニバス・アルバム
- 歌うスター大集合(1991年12月21日、キングレコード、KICS-159)-「女坂」収録。
- 青春のかけら~テレビドラマ主題歌コレクション~(2004年6月、日本クラウン、CRCN-25102)-「幸せですのよあたくし」収録。
- 俳優ベストヒット!!(2007年8月8日、日本クラウン、CRCN-45755)-「幸せですのよあたくし」収録。
- 昭和ガールズ歌謡レアシングルコレクション3 ~恋算数/バギー野郎~(2010年3月20日、ブリッジ、)-「幸福よここまでおいで」収録。
- 本命 魅女優たちR40'S(2013年5月18日、徳間ジャパンコミュニケーションズ、TKCA-73899)-「街角焦がれて」収録。
著書
受賞・受章歴
- 1961年
- 1966年
- 1970年
- 1984年
- 1985年
- 1986年
- 1987年
- 1988年
- 1989年
- 1990年
- 1992年
- 1993年
- 2003年
- 第12回日本映画批評家大賞・ゴールデングローリー賞
- 2014年
- 2016年
- 2017年
脚注
注釈
- ^ テレビ朝日系テレビドラマ「白い橋」主題歌。
- ^ 日本テレビ系テレビドラマ「不信のとき」主題歌。
- ^ フジテレビ系テレビドラマ「アーラわが君」主題歌。
- ^ TBS系テレビドラマ「ただいま同居中」主題歌。
- ^ 日本テレビ系ドラマ「ぼてじゃこ物語」主題歌。
- ^ フジテレビ系テレビドラマ「おあねえさん」挿入歌。
- ^ TBS系テレビドラマ「はじめまして・再婚」挿入歌。
出典
- ^ a b c 別冊宝島2551『日本の女優 100人』p.18.
- ^ a b c 『日本映画俳優全集・女優編』キネマ旬報社、1980年、644頁。
- ^ “三田佳子の次男、高橋祐也容疑者9月にまた逮捕 覚醒剤取締法違反の疑い、過去には実刑判決も”. 日刊スポーツ (2022年10月21日). 2022年11月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年10月21日閲覧。
- ^ 映画 極道の妻(おんな)たち 三代目姐 (1989)について - 映画データベース - allcinema
- ^ a b c d e f g h i j k l m 村岡和彦「連載にんげんファイル'86 第26回 大河ドラマ『いのち』で完熟演技 女優(44歳) 三田佳子 視聴率巨人戦を圧倒し気分は場外ホームラン 『いつも女優なんてやめようと思ってた』……」『週刊現代』1986年6月28日号、講談社、150–153頁。
- ^ a b c d e f g h i j k 松島利行 (1992年3月11日). “〔用意、スタート〕 戦後映画史・外伝 風雲映画城/51 三田派か佐久間派か”. 毎日新聞夕刊 (毎日新聞社): p. 3
- ^ 『週刊サンケイ』、1979年5月3日号、42頁
- ^ a b 石原信一「HUMAN THEATER 人間劇場 第56回 三田佳子 『女優、妻、母、今は子供がいのちです』」『週刊明星』1986年5月1日号、集英社、63-67頁。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o “〈特集〉 毎日映画コンクールの星/3三田佳子世代を超えて愛され続け”. 毎日新聞 (毎日新聞社): p. 8. (1996年4月30日)
- ^ 瓜生忠夫『マス・コミ産業 その日本における発展の特異性』法政大学出版局、1962年、193-195頁。
- ^ 『タレント名鑑』《NO2》芸能春秋社、1963年、173頁。
- ^ 「欲望する映画 カツドウ屋、岡田茂の時代 岡田茂さんへ-最後のことば 三田佳子」『キネマ旬報』2011年7月上旬号、54-55頁。
- ^ 国盗り物語 - ドラマ詳細データ - テレビドラマデータベース
- ^ “三田佳子、2度目の謝罪会見 「全て夫婦の責任です」”. ORICON NEWS (oricon ME). (2007年11月16日). https://www.oricon.co.jp/news/49730/full/ 2022年10月21日閲覧。
- ^ “三田佳子謝罪会見で読み上げられたコメント全文”. ORICON NEWS (oricon ME). (2007年11月16日). https://www.oricon.co.jp/news/49744/full/ 2022年10月21日閲覧。
- ^ “安田顕主演作『俳優 亀岡拓次』に麻生久美子、新井浩文らが出演”. ORICON STYLE (2015年9月28日). 2015年9月28日閲覧。
- ^ “映画『天間荘の三姉妹』追加キャスト、ポスタービジュアル解禁!!”. Astage-アステージ- (株式会社オアノエンターテインメント). (2022年7月16日). https://www.astage-ent.com/cinema/tenmasou-2.html 2022年10月31日閲覧。
- ^ “福士蒼汰×松本まりか『湖の女たち』に浅野忠信、福地桃子、財前直見、三田佳子ら出演へ”. リアルサウンド映画部. blueprint (2023年11月28日). 2023年11月28日閲覧。
- ^ “三田佳子「花燃ゆ」出演 花の乱以来21年ぶり大河”. 日刊スポーツ (日刊スポーツ新聞社). (2015年9月7日). https://www.nikkansports.com/entertainment/news/1534421.html 2022年10月21日閲覧。
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- ^ 放送ライブラリー 番組ID:001295
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- ^ 印獣
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- ^ 放送ライブラリー 番組ID:R21457
- ^ “NHK オーディオドラマ過去作品アーカイブ / FMシアター「レオナルド・ダ・ヴィンチの恋人」(2021年4月17日 放送)”. NHK 日本放送協会. 2023年3月13日閲覧。
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- ^ 放送ライブラリー 番組ID:A24430
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- ^ “橋田賞 作品・受賞者を発表”. 毎日新聞. (2016年4月1日). https://mainichi.jp/articles/20160401/k00/00m/040/126000c 2016年4月23日閲覧。
- ^ 放送文化賞 日本放送協会
関連項目
外部リンク
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*は複数回の受賞。男性は1992年から、60代以上は97年から、10代は99年から対象 |
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