南海トラフ地震に関連する情報

南海トラフ地震臨時情報

南海トラフ地震に関連する情報(なんかいトラフじしんにかんれんするじょうほう、: Nankai Trough Earthquake Information[1])は、南海トラフ巨大地震を念頭に、南海トラフ全域を対象に地震発生の可能性の高まりについて気象庁が発表する情報[2]。気象庁は、それまで東海地震に限定していた警戒体制(東海地震に関連する情報)を改めて、2017年11月1日に「南海トラフ地震に関連する情報(臨時)」および「南海トラフ地震に関連する情報(定例)」の運用を開始した[3][4]。その後2019年5月31日には、「南海トラフ地震臨時情報: Nankai Trough Earthquake Extra Information[1])」および「南海トラフ地震関連解説情報(: Nankai Trough Earthquake-Related Commentary[5])」に改められた[6]。想定震源域での大規模地震の発生のほか、ひずみ計により観測されるゆっくりすべりなどの特異な現象を発表基準の対象としている。

情報の種類・発表の条件

情報名 情報発表条件
南海トラフ地震臨時情報 南海トラフ沿いで異常な現象が観測され、その現象が南海トラフ沿いの大規模な地震と関連するかどうか調査を開始した場合、または調査を継続している場合。もしくは観測された異常な現象の調査結果を発表する場合[2]
南海トラフ地震関連解説情報 観測された異常な現象の調査結果を発表した後の状況の推移等を発表する場合。もしくは「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」の定例会合における調査結果を発表する場合(ただし南海トラフ地震臨時情報を発表する場合を除く)[2]。すでに必要な防災対応がとられている際は、調査を開始した旨や調査結果を南海トラフ地震関連解説情報で発表する場合がある[2]

臨時情報に付記するキーワード

南海トラフ地震臨時情報は、以下のいずれかのキーワードを付して「南海トラフ地震臨時情報(調査中)」といった形で発表される[2]

キーワード 付記条件
調査中 下記のいずれかにより、臨時に「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」を開催する場合。
  • 監視領域内[注釈 1]において、気象庁マグニチュード6.8以上[注釈 2]の地震[注釈 3]が発生
  • ひずみ計で南海トラフ地震との関連性の検討が必要と認められる変化を観測(後述
  • その他、想定震源域内のプレート境界の固着状態の変化を示す可能性のある現象が観測されるといった、南海トラフ地震との関連性の検討が必要と認められる現象を観測
巨大地震警戒 想定震源域内のプレート境界において、モーメントマグニチュード8.0以上の地震が発生したと評価した場合。
巨大地震注意 下記のいずれかの場合。
  • 監視領域内[注釈 1]において、モーメントマグニチュード7.0以上の地震[注釈 3]が発生したと評価(巨大地震警戒に該当する場合は除く)
  • 想定震源域内のプレート境界面において、通常と異なるゆっくりすべりが発生したと評価
調査終了 巨大地震警戒、巨大地震注意のいずれにも当てはまらない現象と評価した場合。

なお、南海トラフ臨時情報の発表に伴う防災対応の呼びかけについては実施期間の目安が定められているが(後述)、臨時情報そのものは発表のみであり、「解除」はない[7]

ひずみ計による観測

体積ひずみ計と多成分ひずみ計

気象庁が南海トラフ地震の観測に用いるひずみ計は、地下の岩盤の伸び縮みを観測できる地殻変動の観測装置で、ボアホールと呼ばれる直径15センチメートル程度の縦穴を数百メートル掘削した底面部に、円筒形の検出部が埋設されている。プレート境界のゆっくりすべりなどに伴うごくわずかな岩盤の伸び縮みを捉えるため、ひずみ計は岩盤の伸び縮みを10億分の1の相対変化まで測定が可能な精度となっている[8]

ひずみ計には、岩盤の伸び縮みによる検出部の体積の変化を測定する体積ひずみ計と、検出部の異なる4つの方位の直径の変化を測定する多成分ひずみ計が用いられている。前者は変化の大きさを測定することができ、後者はそれに加えて方向ごとの変化量も測定することができる[8]

ひずみ計によって観測された地殻変動の変動量の大きさは、3段階の異常レベルと比較して異常監視を行っている。レベル値は数字が大きいほど異常の程度が高いことを示し、平常時におけるデータのゆらぎの一定時間内での変化速度についての出現頻度に関する調査に基づき、観測点毎(体積ひずみ計)、成分毎(多成分ひずみ計)に設定されている[2]

異常レベル 設定値
レベル1 平常時のデータのゆらぎの中において、1年に1 - 2回現れる程度の値
レベル2 レベル1の1.5 - 1.8倍の値
レベル3 レベル1の2倍の値

ひずみ計観測による調査開始の条件

「南海トラフ地震臨時情報(調査中)」の発表条件のうち、ひずみ計で観測される南海トラフ地震との関連性の検討が必要と認められる変化については、以下のようなものがある[2]

  • 1か所以上のひずみ計での有意な変化
    • レベル3に相当する変化が観測された場合
  • 他の複数の観測点でも有意な変化に関係すると思われる変化が観測
    • 「有意な変化」と同時期に、周辺の複数の観測点でレベル1以上の変化が観測
  • 想定震源域内のプレート境界で通常と異なるゆっくりすべりが発生している可能性がある場合
    • 従来から観測されている短期的なゆっくりすべりとは異なる、プレート境界におけるゆっくりすべり

ひずみ計観測点

南海トラフ地震に関連する情報の発表にあたり、気象庁が調査を開始する対象となる現象を判断する際に用いているひずみ観測点は、2022年1月現在、東海地域、近畿地域及び四国地域に設置されている以下の39点である[9]

所在地 観測点名 ひずみ計種別 設置機関
静岡県 浜松市浜名区 浜松三ヶ日 体積 気象庁
浜松市天竜区 浜松横川
浜松佐久間 多成分
浜松市浜名区 浜松宮口
掛川市 掛川富部
掛川高天神
御前崎市 御前崎大山 体積
御前崎佐倉
牧之原市 牧之原坂部
島田市 島田川根
静岡市葵区 静岡漆山
静岡落合 多成分
静岡市清水区 静岡但沼 体積
藤枝市 藤枝花倉
藤枝蔵田 多成分
浜松市天竜区 浜松春野 静岡県
川根本町 川根本町東藤川
南伊豆町 南伊豆入間 体積 気象庁
熱海市 熱海下多賀
富士市 富士鵜無ケ淵
伊豆市 伊豆小下田
東伊豆町 東伊豆奈良本
長野県 売木村 売木岩倉 多成分
愛知県 田原市 田原福江 体積
田原高松 多成分
新城市 新城浅谷
蒲郡市 蒲郡清田 体積
豊橋市 豊橋多米 産業技術総合研究所
豊田市 豊田神殿
西尾市 西尾善明
三重県 津市 安濃
熊野市 熊野磯崎
和歌山県 田辺市 田辺本宮
串本町 串本津荷
高知県 室戸市 室戸岬
須崎市 須崎大谷
土佐清水市 土佐清水松尾
愛媛県 新居浜市 新居浜黒島
西予市 西予宇和

このほか、産業技術総合研究所(産総研)が設置しているひずみ計のうち、大分県佐伯市蒲江宮崎県延岡市北方町の観測点を今後気象庁の観測対象点に追加する予定である[10][11][12]

発表時の対応

以下は、2021年5月に内閣府が公表した「南海トラフ地震の多様な発生形態に備えた防災対応検討ガイドライン 第1版」による[13]

内閣府が、南海トラフ沿いで観測されうる異常な現象のうち、防災対応を検討するべきものとして挙げているのは以下3つのケースについてである。

  • 半割れ(大規模地震)/被害甚大ケース
  • 一部割れ(前震可能性地震)/被害限定ケース
  • ゆっくりすべり/被害なしケース

半割れケース

半割れケースは、南海トラフの想定震源域内の領域で大規模地震が発生し、残りの領域で大規模地震発生の可能性が相対的に高まったと評価された場合を想定する。具体的には、

  • 南海トラフ地震の想定震源域内のプレート境界において、モーメントマグニチュード8.0以上の地震が発生した場合

が該当する。

半割れケースの場合、地震発生から数十分程度で「南海トラフ地震臨時情報(調査中)」が発表され、数時間程度で「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)」が発表されるとしている。なお、検討が2時間程度以上に及ぶ場合など、必要に応じて「南海トラフ地震臨時情報(調査中)」を適宜発表し、引き続き調査中である旨を伝える場合がある。

南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)が発表された場合、緊急災害対策本部長から南海トラフ地震防災対策推進地域(以下、推進地域)内の都府県知事及び市町村長への指示、内閣総理大臣から国民に対する周知等を実施する(巨大地震警戒対応)。

その後も、気象庁から適宜「南海トラフ地震関連解説情報」が発表される。後発地震が発生しないまま1週間が経過した場合、国は、後発地震に対して警戒する措置を解除し、さらに1週間、後発地震に対して注意する措置をとる旨、呼びかける(巨大地震注意対応)。後発地震が発生しないままさらに1週間が経過した場合、国から、後発地震に対して注意する措置を解除し、通常の生活に戻る旨、呼びかける。

住民の対応

地震への備え

南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)が発表された場合、日頃からの地震への備えを再確認することにより、後発地震が発生した場合に被害軽減や迅速な避難行動が図られるようにする必要がある。また、日常生活を行いつつ、一定期間、できるだけ安全な行動をとることが重要であるとしている。

以上の対応は、巨大地震警戒対応や巨大地震注意対応が必要な2週間程度としている。

後続地震の津波に対する事前避難

南海トラフ巨大地震において、陸上において津波により30cm以上の浸水が地震発生から30分以内に生じる地域等の市町村を「南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域」(以下、津波避難対策特別強化地域)としている。

半割れケースの場合、M8.0以上の地震の発生直後に、震源域から離れた地域を含めて南海トラフ沿いの全域の沿岸部に対して大津波警報または津波警報が発表され、津波浸水想定区域内の住民等は避難指示などが発令され避難行動を開始しているとされる。そのうえで、さらに後続の地震発生に備え、最初の地震に対する避難後に自宅等に戻らず、引き続き、避難を継続する必要がある場合がある。

後続地震による津波に対する避難について、揺れが収まってからの避難開始時間や移動速度などから、想定最大クラス(M9クラス)の地震に対しての避難可能範囲を各自治体が事前に算出することとしている。その際、避難者については、移動速度を考慮して「健常者」「要配慮者」別に検討することを基本としている。算出された津波浸水想定区域から避難可能範囲を除いた地域を含む単位全体、すなわち地震発生後に避難を開始した場合に津波からの避難が間に合わないとされる地域を「事前避難対象地域」とする。事前避難対象地域には、要配慮者のみ避難を要する「高齢者等事前避難対象地域」と、健常者も含む地域のすべての住民が避難を要する「住民事前避難対象地域」が含まれる。

最初の地震に伴う大津波警報または津波警報が津波注意報に切り替えられた後、仮に後続地震が発生した場合に要配慮者においても避難が可能な地域については避難指示を解除する。高齢者等事前避難対象地域に対しては、高齢者等避難を発令し、要配慮者は避難を継続する。住民事前避難対象地域に対しては、避難指示を発令し全住民は避難を継続する、としている。

以上の事前避難の対応は、巨大地震警戒対応が必要な1週間程度としている。

企業の対応

南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)が発表された場合、同地震に関する事業継続計画(BCP)を確認し、日頃からの地震への備えの再確認、後発地震に備えて警戒または注意した防災対応を取ること等を通じて、人的・物的被害の軽減を図ることとしている。

また同情報発表時は、被災地域以外ではライフラインは原則として継続され通常の社会活動が営まれるが、事前避難対象地域には後発地震に備えた1週間程度の避難指示が発令される。このため、対象地域に居住する従業員が避難所等で避難生活を送っていることや学校の臨時休業や一部の交通機関の停止等により、出勤可能な従業員が減少すること、対象地域や被災地域に位置する取引先の事業停止等により、必要な経営資源の調達が困難となることが想定される。そのうえで、必要な事業を継続するための措置を講じ、施設及び設備等の点検や従業員等の安全確保に努め、状況に応じて地震に備えて普段以上に警戒を行う事や、地域への貢献を行うこととしている。また企業内等での情報伝達や、防災対応の実施に必要な要員の確保も行うとしている。

一部割れケース・ゆっくりすべりケース

一部割れケースは、南海トラフ沿いで大規模地震に比べて一回り小さい地震(M7クラス)が発生した場合を想定する。具体的には、

  • 南海トラフ地震の想定震源域内のプレート境界においてM7.0以上、M8.0未満の地震が発生した場合
  • 想定震源域のプレート境界以外や、想定震源域の海溝軸外側50km程度までの範囲で発生したM7.0以上の地震

が該当する。

ゆっくりすべりケースは、ひずみ計等で有意な変化として捉えられる、短い期間にプレート境界の固着状態が明らかに変化しているような通常とは異なるゆっくりすべりが観測された場合を想定する。そのような現象が観測された場合に、大規模地震発生の可能性が相対的に高まったと評価するとしている。

いずれのケースにおいても、地震発生時点またはひずみ計の変化が気象庁の調査開始基準に到達した時点から数十分程度で「南海トラフ地震臨時情報(調査中)」が発表され、数時間程度で「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発表されるとしている。

南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表された場合、国から、国民に対して注意する措置をとる旨の呼びかけ等を実施する。その後も、気象庁から適宜「南海トラフ地震関連解説情報」が発表される。後発地震が発生しないまま1週間(ゆっくりすべりケースの場合は、すべりの変化が収まってから変化していた期間と概ね同程度の期間)が経過した場合、国から、後発地震に対して注意する措置を解除し、通常の生活に戻る旨、呼びかける。

住民・企業の対応

南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表された場合、住民や企業は、個々の状況に応じて、日頃からの地震への備えを再確認する等を中心とした防災対応(巨大地震注意対応)を取るとしている。南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)の発表時とは異なり、住民の事前避難などは行わない。

対象地域

南海トラフ地震防災対策推進地域

南海トラフ地震臨時情報発表によって防災対応が必要とされる地域は、巨大地震警戒・巨大地震注意のいずれの場合でも南海トラフ地震防災対策推進地域(推進地域)を基本とする。推進地域は、南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法(南海トラフ特措法)第3条により「南海トラフ地震が発生した場合に著しい地震災害が生ずるおそれがあるため、地震防災対策を推進する必要がある地域」として定義されており、

  • 震度6弱以上が予想される地域
  • 津波高3 m以上で海岸堤防が低い地域
  • 防災体制の確保、過去の被災履歴への配慮

のいずれかに該当することが、指定の基準となっている[14]

推進地域は、以下の29都府県の707市町村である[15]

南海トラフ地震防災対策推進地域
都道府県 市町村
茨城県 水戸市日立市ひたちなか市鹿嶋市神栖市鉾田市大洗町東海村
千葉県 銚子市館山市旭市勝浦市鴨川市富津市南房総市匝瑳市山武市いすみ市大網白里市九十九里町横芝光町一宮町長生村白子町御宿町鋸南町
東京都 大島町利島村新島村神津島村三宅村御蔵島村八丈町青ヶ島村小笠原村
神奈川県 横浜市横須賀市平塚市鎌倉市藤沢市小田原市茅ヶ崎市逗子市三浦市秦野市厚木市伊勢原市海老名市座間市南足柄市葉山町寒川町大磯町二宮町中井町大井町松田町山北町開成町箱根町真鶴町湯河原町
山梨県 甲府市富士吉田市都留市山梨市大月市韮崎市南アルプス市北杜市甲斐市笛吹市上野原市甲州市中央市市川三郷町早川町身延町南部町富士川町昭和町道志村西桂町忍野村山中湖村鳴沢村富士河口湖町
長野県 岡谷市飯田市諏訪市伊那市駒ヶ根市茅野市川上村南牧村下諏訪町富士見町原村辰野町箕輪町飯島町南箕輪村中川村宮田村松川町高森町阿南町阿智村平谷村根羽村下條村売木村天龍村泰阜村喬木村豊丘村大鹿村上松町南木曽町大桑村木曽町
岐阜県 岐阜市大垣市多治見市関市中津川市美濃市瑞浪市羽島市恵那市美濃加茂市土岐市各務原市可児市山県市瑞穂市本巣市郡上市下呂市海津市岐南町笠松町養老町垂井町関ヶ原町神戸町輪之内町安八町揖斐川町大野町池田町北方町坂祝町富加町川辺町七宗町八百津町白川町東白川村御嵩町
静岡県 全域(静岡市浜松市沼津市熱海市三島市富士宮市伊東市島田市富士市磐田市焼津市掛川市藤枝市御殿場市袋井市下田市裾野市湖西市伊豆市御前崎市菊川市伊豆の国市牧之原市東伊豆町河津町南伊豆町松崎町西伊豆町函南町清水町長泉町小山町吉田町川根本町森町
愛知県 全域(名古屋市豊橋市岡崎市一宮市瀬戸市半田市春日井市豊川市津島市碧南市刈谷市豊田市安城市西尾市蒲郡市犬山市常滑市江南市小牧市稲沢市新城市東海市大府市知多市知立市尾張旭市高浜市岩倉市豊明市日進市田原市愛西市清須市北名古屋市弥富市みよし市あま市長久手市東郷町豊山町大口町扶桑町大治町蟹江町飛島村阿久比町東浦町南知多町美浜町武豊町幸田町設楽町東栄町豊根村
三重県 全域(津市四日市市伊勢市松阪市桑名市鈴鹿市名張市尾鷲市亀山市鳥羽市熊野市いなべ市志摩市伊賀市木曽岬町東員町菰野町朝日町川越町多気町明和町大台町玉城町度会町大紀町南伊勢町紀北町御浜町紀宝町
滋賀県 全域(大津市彦根市長浜市近江八幡市草津市守山市栗東市甲賀市野洲市湖南市高島市東近江市米原市日野町竜王町愛荘町豊郷町甲良町多賀町
京都府 京都市宇治市亀岡市城陽市向日市長岡京市八幡市京田辺市南丹市木津川市大山崎町久御山町井手町宇治田原町笠置町和束町精華町南山城村
大阪府 大阪市堺市岸和田市豊中市池田市吹田市泉大津市高槻市貝塚市守口市枚方市茨木市八尾市泉佐野市富田林市寝屋川市河内長野市松原市大東市和泉市箕面市柏原市羽曳野市門真市摂津市高石市藤井寺市東大阪市泉南市四條畷市交野市大阪狭山市阪南市島本町豊能町忠岡町熊取町田尻町岬町太子町河南町千早赤阪村
兵庫県 神戸市姫路市尼崎市明石市西宮市洲本市芦屋市伊丹市相生市加古川市赤穂市宝塚市三木市高砂市川西市小野市加西市南あわじ市淡路市加東市たつの市稲美町播磨町太子町
奈良県 全域(奈良市大和高田市大和郡山市天理市橿原市桜井市五條市御所市生駒市香芝市葛城市宇陀市山添村平群町三郷町斑鳩町安堵町川西町三宅町田原本町曽爾村御杖村高取町明日香村上牧町王寺町広陵町河合町吉野町大淀町下市町黒滝村天川村野迫川村十津川村下北山村上北山村川上村東吉野村
和歌山県 全域(和歌山市海南市橋本市有田市御坊市田辺市新宮市紀の川市岩出市紀美野町かつらぎ町九度山町高野町湯浅町広川町有田川町美浜町日高町由良町印南町みなべ町日高川町白浜町上富田町すさみ町那智勝浦町太地町古座川町北山村串本町
岡山県 岡山市倉敷市玉野市笠岡市井原市総社市備前市瀬戸内市赤磐市浅口市和気町早島町里庄町矢掛町
広島県 広島市呉市竹原市三原市尾道市福山市府中市大竹市東広島市廿日市市安芸高田市江田島市府中町海田町熊野町坂町大崎上島町
山口県 下関市宇部市山口市防府市下松市岩国市光市柳井市周南市山陽小野田市周防大島町和木町上関町田布施町平生町
徳島県 全域(徳島市鳴門市小松島市阿南市吉野川市阿波市美馬市三好市勝浦町上勝町佐那河内村石井町神山町那賀町牟岐町美波町海陽町松茂町北島町藍住町板野町上板町つるぎ町東みよし町
香川県 全域(高松市丸亀市坂出市善通寺市観音寺市さぬき市東かがわ市三豊市土庄町小豆島町三木町直島町宇多津町綾川町琴平町多度津町まんのう町
愛媛県 全域(松山市今治市宇和島市八幡浜市新居浜市西条市大洲市伊予市四国中央市西予市東温市上島町久万高原町松前町砥部町内子町伊方町松野町鬼北町愛南町
高知県 全域(高知市室戸市安芸市南国市土佐市須崎市宿毛市土佐清水市四万十市香南市香美市東洋町奈半利町田野町安田町北川村馬路村芸西村本山町大豊町土佐町大川村いの町仁淀川町中土佐町佐川町越知町梼原町日高村津野町四万十町大月町三原村黒潮町
福岡県 北九州市行橋市豊前市苅田町吉富町築上町
熊本県 宇城市阿蘇市天草市高森町山都町多良木町湯前町水上村あさぎり町苓北町
大分県 大分市別府市中津市佐伯市臼杵市津久見市竹田市豊後高田市杵築市宇佐市豊後大野市由布市国東市姫島村日出町九重町
宮崎県 全域(宮崎市都城市延岡市日南市小林市日向市串間市西都市えびの市三股町高原町国富町綾町高鍋町新富町西米良村木城町川南町都農町門川町諸塚村椎葉村美郷町高千穂町日之影町五ヶ瀬町
鹿児島県 鹿児島市鹿屋市枕崎市阿久根市指宿市西之表市垂水市薩摩川内市日置市曽於市霧島市いちき串木野市南さつま市志布志市奄美市南九州市伊佐市姶良市三島村十島村さつま町長島町湧水町大崎町東串良町錦江町南大隅町肝付町中種子町南種子町屋久島町大和村宇検村瀬戸内町龍郷町喜界町徳之島町天城町伊仙町和泊町知名町与論町
沖縄県 名護市糸満市豊見城市うるま市宮古島市南城市国頭村東村与那原町渡嘉敷村座間味村南大東村北大東村伊平屋村八重瀬町多良間村

南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域

巨大地震警戒発表時に事前避難の検討が必要な自治体として、南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域(特別強化地域)が指定されている。特別強化地域は、南海トラフ特措法第10条により「推進地域のうち、南海トラフ地震に伴い津波が発生した場合に特に著しい津波災害が生ずるおそれがあるため、津波避難対策を特別に強化すべき地域」として定義されており、

  • 津波により30 cm以上の浸水が地震発生から30分以内に生じる地域
  • 特別強化地域の候補市町村に挟まれた沿岸市町村
  • 同一府県内の津波避難対策の一体性の確保

といった基準のほか、浸水深や浸水面積など、地域ごとの津波避難の困難性を考慮し指定されている。先述の通り、実際の事前避難対象地域は「高齢者等事前避難対象地域」「住民事前避難対象地域」として、特別強化地域に該当する各自治体が町丁目単位で事前に指定する[14]

特別強化地域は、以下の14都県の139市町村である[15]

南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域
都道府県 市町村
千葉県 館山市南房総市鋸南町
東京都 大島町利島村新島村神津島村三宅村御蔵島村八丈町青ヶ島村
神奈川県 横須賀市平塚市鎌倉市藤沢市小田原市茅ヶ崎市逗子市三浦市葉山町大磯町二宮町真鶴町湯河原町
静岡県 静岡市浜松市沼津市熱海市伊東市富士市磐田市焼津市掛川市袋井市下田市湖西市伊豆市御前崎市牧之原市東伊豆町河津町南伊豆町松崎町西伊豆町吉田町
愛知県 豊橋市田原市南知多町
三重県 津市四日市市伊勢市松阪市鈴鹿市尾鷲市鳥羽市熊野市志摩市川越町明和町大紀町南伊勢町紀北町御浜町紀宝町
兵庫県 洲本市南あわじ市
和歌山県 和歌山市海南市有田市御坊市田辺市新宮市湯浅町広川町美浜町日高町由良町印南町みなべ町白浜町すさみ町那智勝浦町太地町古座川町串本町
徳島県 徳島市鳴門市小松島市阿南市牟岐町美波町海陽町松茂町
愛媛県 宇和島市八幡浜市西予市伊方町愛南町
高知県 高知市室戸市安芸市南国市土佐市須崎市宿毛市土佐清水市四万十市香南市東洋町奈半利町田野町安田町芸西村中土佐町四万十町大月町黒潮町
大分県 大分市佐伯市臼杵市津久見市
宮崎県 宮崎市延岡市日南市日向市串間市高鍋町新富町川南町都農町門川町
鹿児島県 西之表市志布志市大崎町東串良町南大隅町肝付町中種子町南種子町

発表状況

南海トラフ地震に関連する情報のうち南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会の定例会合における調査結果を発表する「南海トラフ地震関連解説情報(定例)」および「南海トラフ地震関連解説情報」を除いた、「南海トラフ地震に関連する情報(臨時)」および「南海トラフ地震臨時情報」が発表された事例は以下の通り[16]。また、「南海トラフ地震関連解説情報」のうち巨大地震警戒・注意発表後に特別な防災対応の呼びかけを終了する旨を発表したものについて、状態を括弧付きで示した。

回数 発表日 状態 発表要因 備考
種別 発生日時 震源 深さ 規模
1 2024年8月8日17時0分[17] 調査中 地震 2024年8月8日16時43分 日向灘 31km(暫定値) Mj7.1(暫定値)
Mw7.0[18]
初の発表事例[19]
2024年8月8日19時15分[18][20] 巨大地震注意
2024年8月15日17時0分[21][22] (終了)
2 2025年1月13日21時55分[23] 調査中 地震 2025年1月13日21時19分 日向灘 36km(暫定値) Mj6.6(暫定値)[注釈 4]
Mw6.7[24]
2025年1月13日23時45分[24] 調査終了

現状と課題

2022年1月から2月にかけて、NHKが津波避難対策特別強化地域となっている139の自治体に対して行ったアンケートによると、すでに事前避難対象地域の指定が済んでいる、または検討の結果指定の必要がないと判断した自治体は9割であり、残りの自治体についても大半が2022年度中に指定を終えるとした。避難対象となる住民は現時点で70自治体の46万3650人である。一方で、事前避難を呼びかけた場合に対象者全員を受け入れられる避難所を確保できると答えた自治体は54%にとどまっている[25]

全域が推進地域に指定されている静岡県が2022年3月に公表した県民意識調査の中で、南海トラフ地震臨時情報を「知っている」と答えたのは3割未満であった[26]。同年、同じく全域が推進地域に指定されている高知県の県民意識調査でも、「知っている」と回答したのは2割にとどまり、前回2018年の調査時よりも低下した[27]。また前述のNHKのアンケートで、南海トラフ地震臨時情報の内容が住民に十分浸透したと答えた自治体は25%に満たず、8割の自治体が実際の発表・運用にあたって「情報が浸透していないことによる混乱」についての懸念や不安があると回答している[25]

2024年8月に初めて臨時情報が発表された際に、東京大学総合防災情報研究センターの研究チームが行ったアンケート調査によると、臨時情報の受け止めについて「空振りしても構わないので情報を公表してほしい」と回答した人が41%、「命にかかわる情報なので、どんな情報も提供してほしい」が32%と、比較的好意的な受け止めであった[28]。また臨時情報を知って地震が起こると思ったかどうかの設問では、7割以上が起こると認識していた[29]。これについて研究チームの関谷直也は、情報の内容が分かりにくいということ、また予知情報ではないことの周知という点で課題があるとした[30]

脚注

注釈

  1. ^ a b 南海トラフ巨大地震の想定震源域およびその海溝軸外側50キロメートル程度までの範囲。
  2. ^ モーメントマグニチュード7.0の地震をもれなく把握するため、マグニチュードの推定誤差を見込んで、速報段階での気象庁マグニチュード6.8以上の地震を調査対象とする。
  3. ^ a b 太平洋プレートの沈み込みに伴って発生する震源が深い地震を除く。
  4. ^ 第1報ではMj6.4、その後Mj6.9と発表され調査基準を満たしたが、のちに修正された。

出典

  1. ^ a b Monitoring of Earthquakes, Tsunamis and Volcanic Activity” (英語). 気象庁. 2022年3月20日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g 気象庁|南海トラフ地震について | 南海トラフ地震に関連する情報の種類と発表条件”. www.data.jma.go.jp. 気象庁(一部改変). 2021年2月14日閲覧。
  3. ^ 南海トラフ地震について 気象庁
  4. ^ 「南海トラフ地震に関連する情報」の発表について 気象庁報道発表資料(2017年9月26日)
  5. ^ Earthquakes and Tsunamis - Observation and Disaster Mitigation” (PDF) (英語). 気象庁. 2023年6月15日閲覧。
  6. ^ 「南海トラフ地震臨時情報」等の提供開始について 気象庁報道発表資料(2019年5月31日)、2019年6月25日閲覧。
  7. ^ “1月の九州の地震であわや『南海トラフ地震臨時情報』 1週間の事前避難必要なケースあるも認知度低く”. メ〜テレ. (2022年3月12日). オリジナルの2022年3月16日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20220316235646/https://www.nagoyatv.com/news/?id=011821 2022年4月13日閲覧。 
  8. ^ a b ひずみ計とは”. 気象庁. 2022年1月31日閲覧。
  9. ^ 気象庁|南海トラフ地震について | 南海トラフ地震に関連する情報の発表に用いるひずみ計観測点”. www.data.jma.go.jp. 気象庁(初版から現在版まで一部改変). 2021年2月14日閲覧。
  10. ^ “南海トラフ巨大地震、九州にも観測網…「ひずみ計」大分県佐伯市に設置、空白域が縮小”. 読売新聞オンライン. (2024年2月18日). https://www.yomiuri.co.jp/local/kyushu/news/20240218-OYTNT50039/ 2024年2月19日閲覧。 
  11. ^ 高精度「ひずみ計」九州に初設置 南海トラフ巨大地震の前兆を観測へ」『yahooニュース』(大分放送)2020年2月2日。2020年8月8日閲覧。
  12. ^ 延岡に「ひずみ計」設置へ 産総研 南海トラフ地震予測活用」『宮崎日日新聞』2024年6月21日。2024年8月8日閲覧。
  13. ^ 南海トラフ地震の多様な発生形態に備えた防災対応検討ガイドライン【第1版】” (PDF). 内閣府(防災担当). 2022年4月13日閲覧。
  14. ^ a b 地震防災対策推進地域・地震津波避難対策特別強化地域 地図” (PDF). 内閣府. 2024年1月16日閲覧。
  15. ^ a b 地震防災対策推進地域・地震津波避難対策特別強化地域 市町村一覧” (PDF). 内閣府. 2024年1月16日閲覧。
  16. ^ 南海トラフ地震に関連する情報”. 気象庁 (2022年1月11日). 2022年12月16日閲覧。
  17. ^ 南海トラフ地震に関連する情報”. 気象庁 (2024年8月8日). 2024年8月8日閲覧。
  18. ^ a b 南海トラフ地震に関連する情報”. 気象庁 (2024年8月8日). 2024年8月8日閲覧。
  19. ^ 南海トラフ地震臨時情報発表(気象庁) キーワード【調査中】”. ウェザーニュース. 2024年8月8日閲覧。
  20. ^ 南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)について | 気象庁”. www.jma.go.jp. 2024年8月8日閲覧。
  21. ^ 南海トラフ地震関連解説情報(第7号)”. 気象庁 (2024年8月15日). 2024年8月16日閲覧。
  22. ^ 南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)に伴う政府としての特別な注意の呼びかけの終了について | 気象庁”. www.jma.go.jp (2024年8月15日). 2024年8月16日閲覧。
  23. ^ 南海トラフ地震に関連する情報”. 気象庁 (2025年1月13日). 2025年1月13日閲覧。
  24. ^ a b 南海トラフ地震に関連する情報”. 気象庁 (2025年1月13日). 2025年1月13日閲覧。
  25. ^ a b “「南海トラフ地震臨時情報」に関する自治体アンケート”. NHK NEWS WEB. (2022年3月7日). オリジナルの2022年3月9日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20220309053553/https://www3.nhk.or.jp/news/special/saigai/select-news/20220307_01.html 2022年4月13日閲覧。 
  26. ^ “南海トラフ地震臨時情報「知っている」3割未満 静岡県民調査、コロナで防災活動低調”. 静岡新聞. (2022年3月12日). https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/1038413.html 2022年4月13日閲覧。 
  27. ^ “臨時情報、半数「知らない」 南海トラフ事前予測 高知県が意識調査”. 朝日新聞. (2022年4月16日). https://www.asahi.com/articles/ASQ4H6SRBQ4DPTLC01W.html 2022年4月29日閲覧。 
  28. ^ “「空振りでも公表して」41% 「どんな情報も提供を」32% 南海トラフ地震臨時情報に人々は好意的な受け止め 東大教授らが調査”. TBS NEWS DIG. (2024年8月14日). https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1358879 2024年8月15日閲覧。 
  29. ^ “「地震起きる」7割意識と回答 南海トラフ臨時情報に、東大調査”. 神戸新聞NEXT. (2024年8月14日). https://www.kobe-np.co.jp/news/zenkoku/compact/202408/0018009046.shtml 2024年8月15日閲覧。 
  30. ^ “4人に3人が「地震が起こると思った」 南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を地震予知情報と受け止め 専門家は丁寧な説明が必要と指摘”. TBS NEWS DIG. (2024年8月15日). https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1360990 2024年8月15日閲覧。 

関連項目

外部リンク

 

Prefix: a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9

Portal di Ensiklopedia Dunia