クルンテープ・アピワット中央駅
クルンテープ・アピワット中央駅(タイ語:สถานีกลางกรุงเทพอภิวัฒน์、英語:Krung Thep (Bangkok) Aphiwat Central Terminal)はタイの首都・バンコク都チャトゥチャック区にある、タイ国有鉄道(SRTとも)の駅。 高架新駅(以下、中央駅と称す)は2021年12月にバーンスー中央駅[注釈 2] として開業したが、翌年には国王の命名による新駅名(クルンテープ・アピワット中央駅)が発表され[2][3]、2023年現在、各種案内の変更が進められている[4][5]。 在来のバーンスー駅(以下、地上駅と称す)は、日本語出版物ではバーンスー分岐駅、同ジャンクション駅などとまちまちに呼ばれている[注釈 3]。 地名の「バーンスー」については、日本語では表記ゆれのバンスーも多くみられる。 概要長年にわたり首都バンコクのターミナル駅として機能してきたフワランポーン駅(クルンテープ駅など別表記あり、当該記事参照)に代わる[6]新しい玄関口として大規模な整備が行われた。総工費 341億バーツ、総面積 2,475ライ(396ヘクタール)[7]、駅舎の長さ596.6メートル、幅244メートル、高さ43メートル、床面積が274,192平方メートルと、東南アジア最大規模を誇る鉄道駅である。また、150億バーツを投じて駅付近に2,325 ライ(372 ha)におよぶSRTの車両基地が建設された。 かねてからタイではバンコクの道路渋滞解消や国内交通網の高速化が長年の課題であり、連続立体交差事業および高速鉄道の導入を見据えてターミナル駅移転が計画された。政治的判断や世界情勢を受け当初予定から大幅に遅れながらも[注釈 4]、2021年には近郊路線のダークレッドライン・ライトレッドラインが開業。さらに2023年より長距離列車の高架線移行が実現した。タイ政府は当中央駅を足掛かりに空港連絡鉄道やラオス方面高速鉄道などの整備を進め、タイ国内のみならず東南アジアの玄関口を目指すとしている[3]。 乗り入れ路線タイ国鉄北本線上に位置し、走行経路を共有する東北本線・南本線の列車が多く停車する。2023年ダイヤ改正以降は優等列車の起点(終点)。普通列車の大半はフアランポーン駅まで乗り入れる(詳細は後述)。
2023年現在、フワランポーン駅方向(南側)の高架線は当駅近傍で分断され、在来線との接続箇所も構内にはない。したがって、中央駅発着列車はすべて当駅止まりとなる。逆に、フワランポーン駅に乗り入れる列車は従来通り地上の旧駅に停車し、中央駅は通過する(後述)。
当駅からの接続路線将来
過去旧駅前の西口を発着する路面電車が存在したが、1968年に全廃された。 →「en:Trams_in_Bangkok」を参照
中央駅開業当駅付近の国鉄線近代化を目指したホープウェル計画は計画倒れに終わったが、2007年、バンコクの都市鉄道整備計画におけるレッドライン計画として再始動した。当初計画時は、以下のような内容となっており[9]、後に駅の設置場所など見直しが加えられたものの、基本的な要件はほぼ踏襲されている。 2021年、従来のバーンスー駅の東側に、新ターミナルとしてバーンスー中央駅が開業した。北方へ向かうダークレッドライン(濃赤線)[11]と、西方へ向かうライトレッドライン(淡赤線)の2路線が乗り入れる。前述の通り、この時点において本線列車は引き続き地上の在来線を経由し、旧駅発着とされた。
→「SRTダークレッドライン」を参照
第1期区間としてバーンスー - ランシット間の建設が2014年に始まり、2016年に三菱重工業、日立製作所、住友商事が軌道、架線、変電、信号、通信、車両他、土建を除くシステム建設一式を合計約1,120億円(約323.99億タイバーツ)で受注した。三菱重工は信号・通信・軌道・電力などのシステムの設計・調達を、日立製作所は車両の設計・製造を、住友商事は商務の取りまとめ及びシステム現地据付を担当する[12]。当初は2020年開通予定であったが、2021年8月2日に無料運行扱いで開業した[13]。
→「SRTライトレッドライン」を参照
第1期区間のバーンスー - 南本線タリンチャン間が2021年8月2日に無料運行扱いで開業した[13]。 COVID-19蔓延対策の一環として、2021年5月24日より当駅コンコースがバーンスー中央接種センターとして利用されていた[14]。同年10月までの接種回数は約260万回に上ったが[15]、2022年9月末、中央駅としての本格稼働を前に閉鎖された。 2023年1月19日、ダイヤ改正により長距離列車は当駅発着となり、フワランポーン駅への直通運転が終了した[3]。同時に、地上在来線経由から高架線経由に変更された。一部の列車については引き続きフワランポーン駅へ直通するが、そのうち北本線系統の列車は高架線経由に変更された。当駅付近では中央駅のかわりに地上線を走行するが、チャトゥチャック-ワット・サミアンナーリー間にて地上線・高架線間の転線を行う。 中央駅駅構造![]() ![]() ![]() 駅舎は地上3階建て。地下階は地下駐車場となっており、1階(地上階)が切符売り場と待合室、商業エリア[16]があるコンコースである。 ホームは2階・3階それぞれ島式ホーム6面12線、合計12面24線。ほかに旧駅(地上ホーム)3面4線を有する。旧駅は前述の経緯により中央駅開業後も引き続き、フワランポーン駅直通列車の発着に使用されている(2023年現在)。後述。
チャトゥチャック駅近くに新設されたレッドライン用電車基地は、当駅向きに直結した出庫線が存在しないため、いったん北側の退避線に出庫した後に地上線を折り返して当駅に入線する[21]。長距離列車もほぼ同様で、当駅東側の車両基地からチャトゥチャック駅付近まで走行し、同様に折り返して入線する[22]。ただし1,2,5,6番線に入線する場合、電車基地付近に折り返し線があるため若干走行距離が短い[22]。 中央駅の駅舎内は旧ターミナル駅であるフワランポーンとは異なり改札口が設置され、スワンナプーム空港と同等の厳格なセキュリティシステムを備える。列車の切符を持っていない乗客はホームに入ることはできない。違反した場合はタイの高速鉄道公社法に規り起訴される。 のりば![]() ![]() ![]() 2階ホームの乗り場情報はタイ国鉄公式案内(2023年現在)に基づく[23]。
表中のHSRは、高速鉄道の略(計画中)。 隣の駅
地上駅
沿革最初のバーンスー駅は1898年にバンコクとアユタヤを結ぶタイ初の官営鉄道の中間駅として開業した[25][注釈 9]。1927年1月1日には北本線・東北本線と南本線の分岐点となった。
また南本線接続と同時に、北本線クルンテープ駅から当駅までの区間の複線化が実施された[27]。さらに1942年、北本線バーンパーチー駅までの複線化が完了した[28]。 遡ること1915年、当駅付近でサイアム・セメント社バーンスー工場が操業を開始した。以来、北本線沿線のバーンモーから原料となる泥灰土の輸送が行われていた[29]。 1994年から2004年にかけて実施された改良工事により、当駅から南本線ナコーンパトム駅までの複線化が完了した[31]。複線化工事に関する詳細は個別の路線記事を参照。 2004年7月3日にはタイ初の地下鉄路線であるMRTブルーラインのバーンスー - フワランポーン間が開通し、当駅と接続した(やや離れている)。 2023年1月19日、ダイヤ改正により優等列車は中央駅発着となり、地上駅の役割は大きく低減した。 駅構造地上駅であり、旅客ホームは地上に設けられている。オンライン公式時刻表など各種案内では中央駅と呼称せず、従来通りバーンスー駅と表記されている。 構内が広く、北本線関係部分が南方に、南本線関係部分が北方に互い違いに配置されており、出入り口はその中間点に位置する。北本線関係部分をバーンスー・ジャンクション1、南本線関係部分をバーンスー・ジャンクション2という名称で案内されることが多く[32]、管理・運用上もそれぞれに駅長が配置され、発券システムも原則としてそれぞれの路線にのみ対応したものとなっており、事実上は別駅として扱われていた。 北本線用ホームは新駅開業に伴い撤去されたが、南本線用ホームについては引き続き、フワランポーン駅発着一部在来線列車の受け皿として供用され[8]、2023年1月のダイヤ改正後も同様である。 のりば
操車場・貨物駅
タイ国有鉄道各線の貨物輸送の中継拠点として、旅客取扱い区域(プラットホーム)の北東方に隣接して大規模な操車場が設けられた。また、機関区も設置されている[34]。当機関区内は写真撮影が禁止されている。 第二次世界大戦中、バーンスー操車場は連合国軍による主要爆撃目標の一つとなり、構内の約8割が爆撃で破壊される被害を受けた[35][36]。戦後は復旧工事が行われて運用を再開し、その後も輸送量増大や新線建設計画を見越した構内の改良が行われている。 1960年には、フワランポーン駅の貨物取扱機能が当駅へ移転され、以来バンコクにおける貨物ターミナルの機能も果たした[37]。 当機関区区域は北バスターミナル(モーチット・マイ・バスターミナル)に隣接し、一時期は高速バス利用者の便宜を図って、バーンスー駅とは別駅扱いで貨物駅構内にプラットホームを設置し、パホンヨーティン駅という旅客駅が開設されたこともあったが、バスターミナルからの徒歩移動の不便さや停車列車の少なさから利用者の不評を買い、定着しないまま旅客扱いは廃止された。廃止後もプラットホームは残され駅扱貨物の集積場所として利用されていた時期もあったが、中央駅の建設により閉鎖され現存しない。 貨物列車は、北本線・東北本線・南本線各方面のほか、チットラッダー王室駅 - マッカサン駅間短絡線を経由してバンコク港(メーナーム駅)・東本線方面との間でも運行されている。 貨物列車が地上線を走行すると踏切渋滞を招くため、都心部北側をう回して東線クローンタン駅との間にバイパス線を建設する計画があるが、実現していない[38]。 貨物列車については2023年1月のダイヤ改正以降も引き続き地上線を走行するが、踏切での渋滞を減らすべく時間調整が行われる見込み [24]。 駅周辺
注釈
脚注
参考文献
関連項目外部リンク
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