ダラ・シン・ランダワ (Dara Singh Randhawa 、1928年 11月19日 – 2012年 7月12日 )は、インド のプロレスラー 、俳優 、政治家 。1952年から演技の経歴を開始し、インドのラージヤ・サバー (上院)に指名された最初のスポーツマンであった[ 2] 。ヒンディー語 とパンジャーブ語 の映画プロデューサー 、映画監督 、脚本家 として働き、映画やテレビで活躍した。レスリングで世界的な無敗の連勝で知られており、後には成功した映画スターになった。 映画『Bajrangbali 』(1976年)とラーマナンド・サガール (英語版 ) 監督のテレビドラマ『Ramayan 』(1987年)のハヌマーン 役は、彼の人気を高めた[ 3] 。2018年、レガシーカテゴリでWWE殿堂 入りした[ 4] 。
生い立ち
1928年11月19日、インドのパンジャーブ州 マジャ (英語版 ) 地区のダームーチャク村で、ジャート シク の家庭に出生名ディーダール・シン・ランダワとして生まれる[ 5] [ 6] 。当時、同地はまだイギリス領インド帝国 の植民地支配下にあった[ 7] [ 8] 。
経歴
プロレス
1947年にシンガポール に移住し、ドラム缶製造工場で働き、大世界 (英語版 ) のハーナム・シンの下でレスリングのトレーニングを始めた[ 9] 。成人になると、身長188cm、体重127kg、胸囲130cmの偉丈夫となっていた。その体格のため、数年間訓練したインドのレスリングスタイルであるパハラワーニー を活かすよう勧められた。プロレス転向後、ビル・ヴァーナ、フィルポ・ズビスコ、ジョン・ダ・シルバ 、力道山 、ダニー・リンチ 、スカイ・ハイ・リー などの対戦相手と世界中で試合を行なった。キングコング との試合は永らく記憶された[ 10] 。
1954年、Rustam-e-Hind(インドのチャンピオン)トーナメントに出場し、決勝でタイガー・ジョキンダー・シン (英語版 ) を破り勝利を収め、マハーラージャ ・ハリ・シング からシルバーカップを受け取った[ 11] 。1959年、カルカッタ でジョージ・ゴーディエンコ を破り、連邦選手権で優勝した。1968年5月29日、ボンベイ でルー・テーズ に勝利したことにより、世界選手権に出場を果した[ 12] [ 13] 。テーズによれば、シンは「本物のレスラーであり、コンディションも非常に良かった」ので、敗れるべくして敗れた[ 14] 。彼が引退を表明した最後の試合は、1983年6月にデリー で開催された[ 15] 。
多くの勝利を重ねたが、カルカッタ(現在のコルカタ )のダーマタラ (英語版 ) におけるブラームデフ・ミシュラとの試合では2分半で敗北を喫している[ 16] [ 17] 。
映画・テレビ
2010年2月、プラン の誕生日パーティーにて
1948年に故郷の村を離れてシンガポールに向かった[ 8] 。1952年に映画『Sangdil 』で俳優としてのキャリアを開始した[ 18] 。長年スタントマンを務め、バーブバーイ・ミストリー (英語版 ) 監督の映画『キングコング』(1962年)で初の主役を演じた[ 19] 。1963年頃から女優のムムターズ (英語版 ) と頻繁に共演し、16本のヒンディー語の映画に出演した。2人は最高給取りのB級 俳優になり、シンは映画1本あたり約4洛叉 ルピー を受け取った[ 20] 。
1980年代後半にテレビに転向し、ヒンドゥーの叙事詩ラーマーヤナ のテレビドラマ化 に際しハヌマーン 役を演じた[ 21] 。また『Veer Bheem Sen』や『Ramayan』などの多くの映画や、テレビドラマに出演した。さまざまなマハーバーラタ 映画でビーマ 役で主演し、バララーマ も演じ、多くの神話映画でシヴァ 役で主演した。
最後のヒンディー映画は『Jab We Met 』、病に倒れる前に公開された最後のパンジャーブ映画が『Dil Apna Punjabi 』であった。ナショナル・フィルム・アワードの1997年最優秀パンジャーブ映画を受賞したバルワント・シン・ダラット監督の映画『Main Maa Punjab Dee』に出演している。『Sawa Lakh Se Ek Ladaun』、『Nanak Dukhiya Sub Sansar』、『Dhyanu Bhagat』、『Rab Dian Rakhan』など7本のパンジャーブ映画を監督している。また、ヒンディー語で2本の映画を監督した。『Bhakti Mein Shakti』と『Rustom』(1982年)は、彼が1970年に設立した「ダラ・フィルム」の下で製作・監督された[ 19] 。マラヤーラム語 の映画『Mutharamkunnu P.O.』でダラ・シンというレスラーを演じた。
映画会社
シンはパンジャーブ州 モーハーリー県 (英語版 ) モーハーリーにあるダラ・スタジオの所有者であった[ 22] 。ダラ・フィルム・スタジオは1978年に設立され、1980年から映画会社として運営されていた。
政治家
シンは1998年1月にインド人民党 に入党した[ 23] 。彼はインドの国会 の上院であるラージヤ・サバー に任命された最初のスポーツ選手となり、2003年から2009年までの任期を務めた。また、政治団体ジャート・マハーサバー (英語版 ) の総裁であった[ 18] [ 24] 。
コミック
シンの息子であるヴィンドゥ・ダラ・シン (英語版 ) は、2019年2月にニューデリー のオックスフォード書店から最初のコミック書籍『The Epic Journey of the Great Dara Singh』を発売した。
また、漫画『プロレススーパースター列伝 』のタイガー・ジェット・シン の章にて、グレート・ガマ と共にインドレスリングの伝説の強豪選手として紹介されている。ただし、トレーニングの一環として、水の代わりにコールタール が入ったプールの中で、ガマがワニ と、シンが水牛 と戦うという荒唐無稽な脚色されたエピソードも紹介されている。
私生活
シンは二度結婚している。彼にはパルドゥマン・ランダワやヴィンドゥ・ダラ・シンなど3人の息子と3人の娘がいた[ 1] 。兄弟のランダワ (英語版 ) も同様にレスラーであり、俳優であった。
死去
2012年7月7日、重篤な心筋梗塞 によりコキラベン・ダーラブハイ・アンバニ・ホスピタル (英語版 ) に入院した。2日後、血流不足による脳損傷が確認された[ 25] 。彼は回復のために為せることが無いことを理由に2012年7月11日に退院し、翌日ムンバイの自宅で死去した[ 26] 。同日ジュフー (英語版 ) 斎場で荼毘に付された[ 27] 。
受賞と栄誉
1996年、レスリング・オブザーバー・ニュースレター殿堂 (英語版 ) 入り。2016年、インド史上のトップレスラーにリストアップされた[ 28] 。2018年4月7日、レガシークラスでWWE殿堂 入り[ 4] 。
フィルモグラフィー
王座・業績
脚注
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参考文献
自伝
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外部リンク