『バラッズ 』(Ballads )は、2000年 12月に発売されたメアリー・J. ブライジ のコンピレーション・アルバム [ 1] 。メアリー・J. ブライジの発案・監修による日本企画のアルバムで、世界初のCD化となったスティーヴィー・ワンダー の「オーヴァージョイド 」をカバーしたナンバーが収録されている[ 1] 。
ジャケット裏には「TO MY FANS 」と題し、「My fans in Japan are really special. You have been so supportive of me from the beginning of my career all the way to right now. This BALLADS album is my way to thank you personally. As I share this music with you, I hope you can relate to the songs. Love, Mary J. Blige (サイン)」(日本のファンの方たちは本当に特別な存在。私のキャリアの最初から今に至るまでずっと、私を応援し支えてきてくれました。この〈バラッズ〉は、そんな皆さんの一人一人に私個人が感謝をこめて贈るアルバムです。この音楽を皆さんと分かち合うにあたって、皆さんがこれらの歌に心をあずけて下さることを願っています。愛をこめて… メアリー・J. ブライジ)というメッセージが付記されている[ 1] [ 注釈 1] 。
トラック・リスト
※ - 1992年 7月の『ホワッツ・ザ・411? 』(What's the 411? )収録
☆ - 1994年 11月の『マイ・ライフ 』(My Life )収録
★ - 1997年 4月の『シェア・マイ・ワールド 』(Share My World )収録
▲ - 1998年 7月の『ザ・ツアー 』 (The Tour )収録
◎ - 1999年 8月の『メアリー 』(Mary )収録
収録曲解説
トラック1「オーヴァージョイド 」は、メアリー・J. ブライジとスティーヴィー・ワンダー双方の友人であるマイケル・ジョーダン が企画し2人を引き合わせたのがきっかけでカバーが実現したものである[ 1] 。このカバー曲は、アメリカ国内ではジョーダンがイメージ・キャラクターを務めるナイキ のCM中で一部分が流れただけでCD化されてなく、企画者ジョーダン本人が楽曲管理しているためシングル・リリースがほぼ不可能となっている[ 1] 。そのためこの曲が収録されている『バラッズ』は世界のメアリー・ファンにとっては貴重なものとなっている[ 1] [ 注釈 2] 。
トラック2「ユー・リマインド・ミー 」は、1992年にリリースされたメアリーのデビュー・シングルで、同年のデビュー・アルバム『ホワッツ・ザ・411? 』(What's the 411? )に収録されたが、初出は1991年の映画『ストリクトリー・ビジネス』(Strictly Business )のサウンドトラック『Strictly Business 』が先である[ 2] [ 1] 。13週間という長いチャート・インを経て1992年7月25日付のR&Bチャートで1位となった[ 3] 。バラードというよりミディアム・テンポの曲だが、パトリース・ラッシェン とカレン・エヴァンス (英語版 ) 作詞・作曲の1982年の曲「リマインド・ミー」(Remind Me )がサンプリングされているメロウな曲調で、21歳のメアリーの瑞々しい伸びやかなボーカルが光っているナンバーである[ 4] [ 5] [ 1] 。リミックス・バージョンもあり、『ホワッツ・ザ・411? リミックス 』(What's the 411? Remix )に収録されている[ 6] 。
トラック3「ビューティフル」は、テリー・マクミラン の小説が原作の1998年の映画『ステラが恋に落ちて 』のサウンドトラック『How Stella Got Her Groove Back 』に収録された曲である[ 1] 。このサウンドトラックはジャム&ルイス が全面的に手掛けており、「ビューティフル」も彼らの制作曲である。6分以上の長い曲であるが、主人公の心情をメアリーが思い入れたっぷりに歌っているナンバーである[ 1] 。
トラック4「エヴリシング 」も、ジャム&ルイス制作・プロデュースの曲で、1997年の3rdアルバム『シェア・マイ・ワールド 』(Share My World )からのシングルとしてイギリス のUKシングルチャートでメアリー初のトップテン入りの6位を記録したナンバーである[ 7] 。サンプリングが、スタイリスティックス の1971年 のヒット・バラード「ユー・アー・エヴリシング 」(You Are Everything )と、坂本九 の1963年 (アメリカ発売年)のヒット曲「上を向いて歩こう 」(Sukiyaki )と、ジェームス・ブラウン の1973年 のナンバー「ペイバック」(The Payback )という意外な組み合わせで見事な好ナンバーに仕上がった曲である[ 8] [ 7] [ 1] 。
トラック5「スロー・ダウン」は、1992年の『ホワッツ・ザ・411?』からの大ヒットシングル「リアル・ラヴ 」と同じ制作者コンビによる同アルバム収録のバラード・ナンバーで、冒頭のセリフの囁きなどに若いメアリーの恥じらいと可愛らしさが垣間見られる曲である[ 1] 。
トラック6「アイ・ネヴァー・ウォナ・リヴ・ウィズアウト・ユー」は、1994年の2ndアルバム『マイ・ライフ 』(My Life )収録のバラードで、メアリー自身がメインに作詞した曲であるが、当時の恋人のK-Ciヘイリー (英語版 ) (ジョデシィ (英語版 ) メンバー)への思いの深さが伝わるナンバーである[ 1] 。
トラック7「セヴン・デイズ 」は、『シェア・マイ・ワールド』からのシングルで、ジョージ・ベンソン のギターをフィーチャリングしたジャジーなムードが漂う物憂げなボーカルが印象的なバラードである[ 1] 。マイナー調のバラードが多い4thアルバム『メアリー 』(Mary )の原型ともいえる先駆的なナンバーである[ 1] 。
トラック8「ナチュラル・ウーマン 」は、ジェリー・ゴフィン やキャロル・キング らが作詞・作曲した1967年のアレサ・フランクリン のヒット曲のカバー・ソングである。アメリカの人気ドラマ『ニューヨーク・アンダーカヴァー』(New York Undercover )のオリジナル・サントラから1995年にシングルカットされた曲で[ 1] 、イギリスや日本では『シェア・マイ・ワールド』のボーナストラックとして収録されている[ 8] [ 7] [ 注釈 3] 。
トラック9「アイ・ドント・ウォント・トゥ・ドゥ・エニシング」は、K-Ciヘイリーとのデュエット曲で、1992年の『ホワッツ・ザ・411?』の収録曲であるが、この『バラッズ』では1993年の『アップタウン・MTV・アンプラグド』(Uptown MTV Unplugged )からのライブ・バージョンとなっている[ 1] 。恋人同士だった2人の生のボーカルが炸裂し合うハーモニーに、魂と魂を響かせて熱唱する彼らの熱い恋情や臨場感が感じられるステージ・ナンバーとなっている[ 1] 。
トラック10「ギヴ・ミー・ユー」は、1999年の4thアルバム『メアリー 』(Mary )からのシングルで、甘美な曲のヒット・メーカーとして知られるダイアン・ウォーレン による作詞・作曲のバラードで、ギター伴奏にはエリック・クラプトン が参加している[ 1] [ 3] 。やや大仰になりがちなダイアン・ウォーレンの明るい曲調に、思いを込めて歌うメアリー独特の哀愁漂うボーカルが調和し、そのボーカルに寄り添うように聴こえるギターの音色も印象的な好ナンバーである[ 1] [ 3] 。
トラック11「ノー・ハッピー・ホリデイズ」も、『メアリー』の収録曲でメアリー本人の作詞と、キヤマ・グリフィン (英語版 ) 作曲の物憂げなメロディーラインのバラードで不倫が題材となっている楽曲である[ 1] 。本人曰く、内容は友人の経験でメアリー自身の経験を綴ったものではないらしいが、妻子ある人を好きになってしまった悲しみの感情移入が真に迫っているのでリアルな独白のようにも聞こえるナンバーである[ 1] 。
トラック12「ユア・チャイルド」も、『メアリー』の収録曲で三角関係の歌詞だが、制作はジェラルド・アイザック (英語版 ) による作詞・作曲の静かなトーンのナンバーである[ 3] 。この曲はシングルカットされて全米クラブチャートでヒットとなった[ 1] 。
トラック13「ミッシング・ユー 」は、『シェア・マイ・ワールド』からのシングルで、一聴しただけでベイビーフェイス が制作したものだと分かるベイビーフェイス節のバラードであるが、バック・ボーカルをシャニース (英語版 ) が担当しているという豪華さである[ 8] [ 1] 。ベイビーフェイスの曲も鮮やかに歌いこなし、恋心を絞り出すように熱唱するメアリーのボーカルが神がかり的に光る好ナンバーである[ 1] 。
トラック14「アイ・ラヴ・ユー」は、1994年の『マイ・ライフ』の収録曲で「ユー・ブリング・ミー・ジョイ 」とカップリングでシングルカットされたナンバーである。別れてしまった人への想いを綴ったメアリー自身による作詞で、ショーン・パフィ・コムズ が制作した曲であるが、印象的なピアノの音色などはアイザック・ヘイズ が作曲した1970年の曲「アイクズ・ムード・アイ」(Ike’s Mood I )からのサンプリングである[ 9] 。
トラック15「ドント・ゴー」も、『マイ・ライフ』の収録曲で、別離をテーマに「Baby, don't go 」という悲しい呟きが散りばめられているナンバーである[ 1] 。サンプリングにはガイ の1988年の曲「グッバイ・ラヴ」(Goodbye Love )が使われ[ 2] [ 10] [ 1] 、デバージ の「ステイ・ウィズ・ミー」(Stay with Me )なども部分的に取り入れられている[ 10] 。
トラック16「ミスティー・ブルー 」は、ボブ・モンゴメリー 作詞・作曲の1976年のドロシー・ムーア のヒット・バラードのカバー・ソングで、1998年4月にロサンゼルス のギブソン・アンフィシアター で行われた「シェア・マイ・ワールド・ツアー 」(Share My World Tour )からの音源である[ 11] [ 12] 。メアリーはこの曲のイントロで、母に捧げると言ってコンサートのラストで歌っているが、収録アルバム『ザ・ツアー 』 (The Tour )のクレジットにも「Dedicated to my mam, Cora Blige. In memory of her best friend, Liz Waters.」と付されている[ 11] 。
関係スタッフ
脚注
注釈
^ 帯コピーは「クイーン・オブ・ヒップホップ・ソウル、メアリーからの日本のファンへのスペシャル・プレゼント 」である[ 1] 。
^ ちなみに、スティーヴィー・ワンダーの楽曲をメアリーが初めてカバーしたのは、MCAレコード 系アーティストたちの1999年の企画アルバム『マイ・クリスマス・アルバム』(My Christmas Album )に収録された「想い出のクリスマス 」(Someday at Christmas )で、「オーヴァージョイド」は2曲目のスティーヴィー・ワンダーのカバーとなる[ 1] 。
^ メアリーは憧れのアレサ・フランクリンと4thアルバム『メアリー 』で念願の初デュエットを果たしている[ 3] 。
出典
参考資料
バラッズ (ライナーノーツ). メアリー・J. ブライジ. ユニバーサル・ミュージック株式会社 . 2000. UICC-1009。
ホワッツ・ザ・411? (ライナーノーツ). メアリー・J. ブライジ. MCAビクター株式会社 . 1992. UPTD-10681。 - 輸入盤
ホワッツ・ザ・411? リミックス (ライナーノーツ). メアリー・J. ブライジ. MCAビクター株式会社. 1993. MVCM-433。
マイ・ライフ (ライナーノーツ). メアリー・J. ブライジ. MCAビクター株式会社. 1994. MVCM-496。
シェア・マイ・ワールド (ライナーノーツ). メアリー・J. ブライジ. MCAビクター株式会社. 1997. MVCE-24009。
シェア・マイ・ワールド (ライナーノーツ). メアリー・J. ブライジ. ユニバーサル・ミュージック株式会社. 2015. UICY-77599。 - 限定盤
ザ・ツアー (ライナーノーツ). メアリー・J. ブライジ. MCAビクター株式会社. 1998. MCAD-11848。 - 輸入盤
メアリー (ライナーノーツ). メアリー・J. ブライジ. ユニバーサル・ミュージック株式会社. 1999. MVCA-24168。
ザ・ブレイクスルー (ライナーノーツ). メアリー・J. ブライジ. ユニバーサル・ミュージック株式会社. 2005. UICF-1064。
リフレクションズ~ア・レトロスペクティブ (ライナーノーツ). メアリー・J. ブライジ. ユニバーサル・ミュージック株式会社. 2006. UICF-1083。
アルバム
スタジオ・アルバム 企画アルバム・ベストアルバム サウンドトラック・アルバム ライブ・アルバム
カテゴリ
シングル
スタジオ・アルバム収録 (■印はシングルカットでない チャートイン曲 ◎印はサントラ提供曲)
アルバム未収録 企画・ベストアルバム収録 (◎印はサントラ提供曲)
サウンドトラック収録
カテゴリ
参加楽曲
サントラ曲・トリビュート曲 ★印はシングルあり ☆印は自作アルバム収録あり(括弧内は映画・ドラマ名)
1990年代 2000年代 2010年代 2020年代
「キャント・ビー・ライフ」(Can't Be Life) (『ボディカメラ 』)
「イッツ・オール・ラヴ with ジャスティン・ティンバーレイク 、アンダーソン・パーク 、ジョージ・クリントン 」(It's All Love with Justin Timberlake , Anderson .Paak , George Clinton ) (『トロールズ ミュージック★パワー 』)
「ジャスト・シング with ジャスティン・ティンバーレイク、アンダーソン・パーク、キーナン・トンプソン 、ケリー・クラークソン 」(Just Sing with Justin Timberlake, Anderson .Paak, Kenan Thompson , Kelly Clarkson ) (『トロールズ ミュージック★パワー』)
「アトミック・ドッグ ワールドツアー・リミックス withジョージ・クリントン、パーラメント/ファンカデリック (英語版 ) 、アンダーソン・パーク」(Atomic Dog World Tour Remix with George Clinton, Parliament-Funkadelic , Anderson .Paak) (『トロールズ ミュージック★パワー』)
「イッツ・オール・ラヴ (ヒストリー・オブ・ファンク) withアンダーソン・パーク、ジョージ・クリントン」(It's All Love (History of Funk) with Anderson .Paak, George Clinton) (『トロールズ ミュージック★パワー』)
「ジャスト・シング (トロールズ・ワールドツアー) with ジャスティン・ティンバーレイク、アナ・ケンドリック 、アンダーソン・パーク、ケリー・クラークソン、キーナン・トンプソン、ジェームズ・コーデン 、レイチェル・ブルーム (英語版 ) 、アンソニー・ラモス 、Red Velvet 、アイコナ・ポップ 、サム・ロックウェル 」(Just Sing (Trolls World Tour) with Justin Timberlake, Anna Kendrick , Anderson .Paak, Kelly Clarkson, Kenan Thompson, James Corden , Rachel Bloom , Anthony Ramos , Red Velvet , Icona Pop , Sam Rockwell ) (『トロールズ ミュージック★パワー』)
「シー・ホワット・ユーヴ・ダン」(See What You've Done) (『Belly Of The Beast 』)
「ウェン・アイ・キャント・ドゥ・ベター」(When I Can't Do Better) (『The Color Purple 』)
客演(フィーチャリング)曲 ★印はシングルあり ☆印は自作アルバム収録あり(括弧内は共演者と収録アルバム)
カテゴリ
コンサート・ツアー 自伝映画 関連楽曲