ジャパンカップ
ジャパンカップは、日本中央競馬会(JRA)が東京競馬場で施行する中央競馬の重賞競走(GI)。英称の頭文字から、JCという略称も用いられることがある[3]。 正賞は農林水産大臣賞、アイルランド大使賞、ロンジン賞、日本馬主協会連合会会長賞、東京馬主協会賞[1][2]。 概要1981年に創設された国際招待競走で、日本初の国際GIでもある[4]。また、国際競走であるため、JRAの厩舎関係者表彰においては、最優秀騎手賞と最優秀調教師賞の資格を得るにあたり「1着をとらねばならない競走」のひとつに指定され、いわゆる「八大競走」と同格の扱いを受けていた[5]。 かつては中山グランドジャンプとジャパンカップダートも国際招待競走になっていたが、中山グランドジャンプは2011年より[6]、ジャパンカップダートは2014年よりチャンピオンズカップに改称の上、いずれもJRAが馬や関係者の諸費用を負担しない国際競走となっている。 ![]() 本競走は2014年にスイス発祥の世界大手時計メーカー・ロンジンとパートナーシップを締結し、公式計時もロンジンがサポート[7]しており、2022年現在の正式名称は「ジャパン・オータムインターナショナル ロンジン賞 ジャパンカップ」となっている[1]。 なお、ジャパンカップダート(現・チャンピオンズカップ)との同日開催となった2004年[8]と2012年以後は平年の第5回中山競馬[注 1]相当分が代替されない限り、ジャパンカップが東京競馬場の年内最終競走となっている(それ以外の年は、ジャパンカップ終了後に一般、または特別競走が最終競走として行われていた。また他場への振り替えは、2002年に東京競馬場の馬場の拡幅工事及びスタンドの建て替え工事により、中山競馬場で代替された1例だけである)。 国際的評価世界の競馬開催国は、平地競走については国際セリ名簿基準書においてパートIからパートIIIまでランク分けされており[注 2]、2014年時点で日本は平地競走が最上位のパートIにランク付けされている[9]。 国際競馬統括機関連盟(IFHA)が公表した「世界のトップ100GIレース」によると、2018年度の格付ランキングでは、世界7位、日本のレースの中では有馬記念を抜いて1位(有馬記念は日本2位)に位置付けられた[10]。2019年度のランキングでは世界46位、日本の中では7位であった[11]。2020年度のランキングでは世界3位、日本の中では1位であった[12]。2021年度のランキングでは世界12位、日本の中では4位であった[13]。2023年度に1~4着馬の平均値(牝馬は4ポンド加算)で決まるワールドベストレースにレースレーティング126.75ポンドで日本競馬史上初めて1位に選定された[14]。これを受けて、JRAは2024年2月3日の第11競走「早春ステークス」(4歳以上3勝馬クラス・東京芝2400m)[15]のレース名を「ジャパンカップ 2023年度ロンジンワールドベストレース受賞記念」に急遽改題した[16]。 ![]() 優勝馬:ヴェラアズール(鞍上: ライアン・ムーア) ![]() 優勝馬:イクイノックス(鞍上: クリストフ・ルメール) 競走条件以下の内容は2024年現在のもの。
負担重量:定量(3歳56kg、4歳以上58kg、牝馬2kg減) 日本馬の出走権
外国馬の出走権出馬投票を行った外国馬は、優先出走が認められている[19]。 また、JRAが指定した競走(下表参照)の上位馬に対し優先出走権を与えている[20]。
賞金本賞金2024年の1着本賞金は5億円で、以下2着2億円、3着1億3,000万円、4着7,500万円、5着5,000万円。1着本賞金は有馬記念と並んで中央競馬・地方競馬を通じて最高額[21][注 3]。 第1回(1981年)の1着本賞金は、当時有馬記念・東京優駿・天皇賞と同じ中央競馬最高額である6,500万円であった。第9回(1989年)に初めて1着本賞金が1億円を超え1億300万円となった。第2回(1982年)から第12回(1992年)までは毎年増額されたが、第13回(1993年)と第14回(1994年)は前年と同額(1億3,000万円)に据え置かれた。第15回(1995年)に1億3,200万円となり、その後第19回(1999年)まで同額であった。第20回(2000年)には2億5,000万円と前年比で約90%増額され、この年初めてジャパンカップの1着本賞金が単独で最高額となった。その後第34回(2014年)まで2億5,000万円に据え置かれていたが、第35回(2015年)に3億円に増額された。ちなみに、その翌年2016年に有馬記念の1着本賞金も3億円に増額され、この年以降はジャパンカップと有馬記念の1着本賞金は同額である。第42回(2022年)に4億円、第43回(2023年)に5億円、と2年続けて1億円ずつ増額されたが、これは年々香港国際競走(特に同距離に近い香港カップ・香港ヴァーズ)への出走馬の流出が相次いでいること、日本国外においてもサウジカップ(1000万USドル)、ドバイワールドカップ(696万USドル)、凱旋門賞(285万7000ユーロ)などに代表される世界最高賞金額のレースが増えてきており、「海外の主要競走に対する競争力を高める」ことが理由である。[24] 褒賞金制度天皇賞(秋)・ジャパンカップ・有馬記念の3競走を同一年にすべて優勝したJRA所属馬には内国産馬2億円、外国産馬1億円の褒賞金が交付される[25][26]。 なお、指定競走(下表参照)の当年優勝馬がジャパンカップに出走した場合に褒賞金を交付している[27]。
過去の指定外国競走
歴史1970年代後半より「世界に通用する強い馬づくり」が提唱され[4][29]、日本国外の調教馬を招待して国際競走を開催する計画も持ち上がっていたが、招待馬の選定にあたりJRAと各国との意向に齟齬があり実現しなかった[30]経緯がある。1981年に日本初の国際招待競走として、ジャパンカップが創設された。同時に、開催時期が近接していたNCK(現・JRA)の重賞競走『TBS杯クモハタ記念』が廃止された。 →「中央競馬の冠競走一覧 § 廃止・撤退した競走」、および「クモハタ記念 § 概要」も参照
第1回は北アメリカとアジア地区から招待馬を選出したが、翌年からは招待範囲がヨーロッパ、オセアニアにも広げられ[4]、参加国の多さから「世界一の競走」「競馬のオリンピック」と評されることもあった[29]。さらに1983年からは、地方競馬の所属馬も招待対象に加えられた[4]。 第1回の優勝馬・メアジードーツは、アメリカからやってきた成績の目立たない牝馬の上、当時のコースレコードを1秒更新したことから、日本の競馬関係者に「(日本馬は)永遠に勝てないのではないか」と思わせる衝撃を与えた。そうした懸念は極端なものであったが[31]、創設から1990年までの10年間は外国招待馬の8勝に対し、日本馬はカツラギエース(1984年)とシンボリルドルフ(1985年)の2勝にとどまり、外国招待馬の活躍が目立っていた[4][注 4]。しかし、その後は日本馬の活躍が目立つようになり、また外国招待馬の頭数も減った(後述)ことから、2004年から2013年までの10年間でみると外国招待馬は1勝、日本馬は9勝と完全に逆転[4]。中央競馬は海外のホースマンからも世界最高峰との名声を得るに至った。創設から2024年までの優勝は外国招待馬14勝、日本馬30勝である。 年表
歴代優勝馬コース種別を記載していない距離は、芝コースを表す。 優勝馬の馬齢は、2000年以前も現行表記に揃えている。 外国馬の所属表記は、調教国の出典が示されているもののみ記載する。
外国調教馬の成績→詳細は「海外調教馬による日本への遠征 § ジャパンカップ」を参照
ジャパンカップの記録![]()
外国馬の参戦についてジャパンカップを含む一連のジャパン・オータムインターナショナルシリーズの直後に、香港国際競走が行われ、そちらへ外国調教馬の参戦が多くなりつつあり、実際ジャパンカップは2019年の開催で外国馬の参加が1頭もないという異常事態となったことを踏まえ、2021年6月28日に日本中央競馬会関西定例会見(大阪市)の席で、「これまで、外国馬の関係者からは、帯同馬を連れていきたいが、走るレースがないと聞いたことがあったのです。今はジャパンカップの前日(平年の第5回東京競馬第7日)に「キャピタルステークス」がありますが、今年(2021年)から、外国馬の大量参戦を促すために、ジャパンカップが開催される週に、賞金条件戦クラスで国際競走を新設する」ことを目指すと、国際・競走担当理事の臼田雅弘が明かした[49]。 そして2021年8月1日に発表された「令和3年度秋季競馬番組」[50]において、調教などで帯同する予定の馬の出走機会を拡大しつつ、ジャパンカップに出走を予定する外国馬がジャパンカップに出走しやすい環境を提供することを目指し、次の競走を国際競走に指定することになった。
さらに、外国馬はこれまで、競馬学校(白井市)か、三木ホースランドパーク(三木市)の国際厩舎で原則1週間程度の検疫を受けなければならなかったが、より一層の外国馬の参戦を促す観点から、東京競馬場内馬場内に、国際厩舎の建設を行うことになった。これは諸外国においてはレースが開催される競馬場内での検疫が行われるのが通例であり、その流れを受けてのものである。2022年5月末に完成し、秋競馬より運用が開始されることになった。これにより、外国馬は国際厩舎6棟・最大12頭が検疫を受けながら、競馬場で直接調整できるようになった[51]。同年10月1日付で東京競馬場の国際厩舎は農林水産省より輸出入検査場所としての指定を受け、正式に検疫厩舎となった。国際厩舎のクラブハウスには24時間馬房を画面で確認できる警備室や打ち合わせのための食堂などを設置。防疫のため、基本的に国際厩舎とクラブハウス間を行き来する際にはシャワールームを通過する構造になっている。さらに施設の周りには一周292mの楕円形追い馬場ダートコースが設置されている[52]。 これらの改革では、2021・22年ともに開放された一般・特別戦の国際競走には帯同の海外調教馬の出走は皆無であったが、ジャパンカップについては2021年は3頭、東京競馬場の国際厩舎が竣工した2022年は4頭と、海外調教馬が皆無であった2019年と比較してコンスタントに参戦が続いている。特に競馬場内の国際厩舎に関しては海外調教馬の陣営からも概ね好評価を得ており、特に競馬場内の厩舎で検疫が可能になったことや、24時間馬房の様子をモニタリングできるシステムなどの環境面での評価を得ている[53]。 脚注・出典注釈
出典
各回競走結果の出典
参考文献
関連項目外部リンク
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