ケプラー62 (英語 : Kepler-62 )は、太陽系 から約990光年 の距離に存在するK型主系列星 である[ 2] [ 3] 。こと座 の方角に位置する。2013年 4月18日 、アメリカ航空宇宙局 (NASA)はケプラー宇宙望遠鏡 によるトランジット法 での観測の結果、この恒星 に5つの惑星 を発見したことを発表した。そのうちケプラー62e とケプラー62f は、生命が存在する可能性がある領域ハビタブルゾーン 内に位置する、地球に似た惑星 とみられている[ 4] [ 3] 。
名前の由来と歴史
ケプラー宇宙望遠鏡 による観測範囲
ケプラーによる観測以前は、ケプラー62は2MASS による観測でのカタログ名2MASS J18525105+4520595 として認識されていた[ 2] 。Kepler Input Catalog においてはKIC 9002278の呼称が与えられており、次いでトランジット法による惑星発見の候補であるKepler object of interest においてKOI-701 の呼称が与えられた[ 5] 。
ケプラー62の惑星は、トランジット法での太陽系外惑星 発見を目指すNASAのケプラー宇宙望遠鏡による観測で発見された[ 3] 。トランジット法では、恒星の光度の低下 から惑星による食 を検出する。惑星が地球から見た恒星の手前側を通過することで、恒星の光が遮られる食が発生し、そこから惑星の存在を検出することが出来る。ケプラー62という名称は単純に、ケプラー宇宙望遠鏡により惑星が確認された62番目の恒星であることから与えられたものである[ 5] 。
各惑星のb, c, d, e, fといった名称も、単純に発見された順番に与えられることになっている。その星系 で最初に発見された惑星がbとされ、以後アルファベット順に小文字で惑星名が付けられていく[ 6] 。一方、複数の惑星が同時に発見された場合は、公転周期の短い惑星から昇順で付けられる[ 7] 。ケプラー62の場合、5つの惑星全てが一度に発見されたことから、内側から順にb, c, d, e, fと名付けられた[ 3] 。
特徴
大きさの比較
太陽
ケプラー62
ケプラー62は、太陽 の約69%の質量 と64%の半径 を持つ、K型主系列星である。表面温度は4,925±70 K で、誕生から70±40億年が経過していると考えられている[ 3] 。 なお、太陽の表面温度は5,772 Kで[ 8] 、誕生から46億年が経過しており、ケプラー62は太陽より低温で、古い恒星と考えられる[ 9] 。半径と温度が太陽より下なので、光度 も太陽より低く2割程度である。また、金属量 も太陽の4割程度と低い[ 3] 。
地球から見た見かけの等級 は13.8等であり、肉眼 で観測することは出来ない[ 2] 。
惑星系
太陽系 と比較したケプラー62星系 。出典: NASA Ames / JPL -Caltech [ 4]
地球 (右端)と比較した系外惑星の大きさ。左から3番目がケプラー62e 、4番目がケプラー62f 。出典: NASA Ames / JPL-Caltech[ 4]
ケプラー62の発見されている全ての惑星は、恒星を通過 (トランジット)する。それはつまり、5つの惑星全てが地球から見て恒星の前を横切る軌道 を取ることを意味する。各惑星の軌道傾斜角 は、1度以下の差しかない。そのため、惑星の公転周期 と(主星と比較した)相対的な直径を、各惑星のトランジットを観測することで直接測定することができる[ 3] 。
5つの惑星の半径は全て、地球 の0.54倍から1.95倍までの範囲に収まっている。その中でも特に注目されているのがケプラー62eとケプラー62fで、これらの惑星は生命が存在する可能性がある領域ハビタブルゾーン内に位置する固体 惑星(地球型惑星 、スーパー・アース )の有力候補とみられている。eとfの半径は、それぞれ地球の1.61倍と1.41倍で、これらは地球より大きな値ではあるものの、固体惑星の範囲にあると考えられている。両惑星は、ケプラー62のハビタブルゾーンの範囲内に位置しており、その組成によっては(fであれば二酸化炭素 による温室効果 が活発であること、eであれば雲 により過熱が防がれること)いずれも表面に液体 の水 を保持する可能性がある[ 3] 。
惑星の質量は、視線速度法 やトランジット法では直接測定することが出来ない。精度の低い上限値が判るだけである。ケプラーによる観測では、eとfの質量は最大で地球の36倍と35倍となっているが、実際の値はそれより遥かに小さいだろうと予想されている[ 3] 。
ケプラー62の惑星[ 3]
名称(恒星に近い順)
質量
軌道長半径 (天文単位 )
公転周期 (日 )
軌道離心率
軌道傾斜角
半径
b
< 9 M ⊕
0.0553 ± 0.0005
5.714932 ± 0.000009
0
89.2 ± 0.4°
1.31 ± 0.04 R ⊕
c
< 4 M ⊕
0.0929 ± 0.0009
12.4417 ± 0.00001
0
89.7 ± 0.2°
0.54 ± 0.03 R ⊕
d
< 14 M ⊕
0.120 ± 0.001
18.16406 ± 0.00002
0
89.7 ± 0.3°
1.95 ± 0.07 R ⊕
e
< 36 M ⊕
0.427± 0.004
122.3874 ± 0.0008
0
89.98 ± 0.02°
1.61 ± 0.05 R ⊕
f
< 35 M ⊕
0.718 ± 0.007
267.291 ± 0.005
0
89.90 ± 0.03°
1.41 ± 0.07 R ⊕
脚注
注釈
^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
^ 出典での表記は、
log
g
[
cgs
]
=
4.68
±
0.04
{\displaystyle \log g[{\mbox{cgs}}]=4.68\pm 0.04}
出典
^ “Kepler-62f with 62e as Morning Star ”. Kepler and K2 . NASA (2013年4月19日). 2019年1月17日 閲覧。
^ a b c d e f g h i j “KOI-701 -- Rotationally variable Star ”. SIMBAD . CDS . 2019年1月17日 閲覧。
^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u Borucki, William J.; et al. (2013-05-03). “Kepler-62: A Five-Planet System with Planets of 1.4 and 1.6 Earth Radii in the Habitable Zone”. Science . arXiv :1304.7387 . Bibcode : 2013Sci...340..587B . doi :10.1126/science.1234702 .
^ a b c “NASA's Kepler Discovers Its Smallest 'Habitable Zone' Planets to Date ”. Kepler and K2 . NASA (2013年4月18日). 2019年1月17日 閲覧。
^ a b “Kepler Names Table Data Column Definitions ”. NASA Exoplanet Archive . IPAC / Caltech (2015年7月16日). 2018年10月24日 閲覧。
^ Hessman, F. V.; Dhillon, V. S.; Winget, D. E.; Schreiber, M. R.; Horne, K.; Marsh, T. R.; Guenther, E.; Schwope, A.; Heber, U. (December 2010). "On the naming convention used for multiple star systems and extrasolar planets". arXiv :1012.0707 [astro-ph.SR ]。
^ “Kepler Numbers During the Extended Mission ”. NASA Exoplanet Archive . IPAC / Caltech (2015年2月4日). 2019年1月17日 閲覧。
^ Williams, David R. (2018年2月23日). “Sun Fact Sheet ”. NASA Space Science Data Coordinated Archive . NASA GSFC . 2019年1月17日 閲覧。
^ “The Birth of the Sun ”. Universe Today (2015年12月22日). 2019年1月17日 閲覧。
関連文献
関連項目
外部リンク
ウィキメディア・コモンズには、
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探査機 主な恒星 主な惑星 K2ミッションで発見された主な惑星 一覧 公式サイト
座標 : 18h 52m 51.0518996853s , +45° 20′ 59.400075457″