第37回東京国際映画祭
第37回東京国際映画祭(だい37かいとうきょうこくさいえいがさい、37th Tokyo International Film Festival)は、2024年(令和6年)10月28日(月)から11月6日(水)の10日間に渡って開催された[1][2]。香港の俳優であるトニー・レオンがコンペティション部門の審査委員長を務めた[3]。最高賞の東京グランプリは吉田大八監督の日本映画『敵』が受賞した[4]。自国である日本映画が受賞するのは第18回の『雪に願うこと』以来19年ぶり、3回目である。 概要今回は前回に引き続き「東京から映画の可能性を発信し、多様な世界との交流に貢献する。」というミッション(理念)を掲げ、「世界との交流」、「未来の人材育成」、「女性への視座」をポイントとして映画祭が行われた[1]。上映会場は日比谷・有楽町・丸の内・銀座エリアをメイン会場とし、複数の劇場及び施設・ホール[注釈 1]を使用して実施した[5][6]。 初日に行われるオープニングセレモニーは前回にひきつづき東京宝塚劇場、クロージングセレモニーは前回にひきつづきTOHOシネマズ日比谷のスクリーン12にて行われた[7][8]。また、初日のレッドカーペットや屋外上映のイベントなどでは東京ミッドタウン日比谷の日比谷ステップ広場にて開催される[9]。オープニング作品は白石和彌監督による『十一人の賊軍』、クロージング作品は第77回カンヌ国際映画祭に出品され、審査委員の一人であるキアラ・マストロヤンニ主演のクリストフ・オノレ監督による『マルチェロ・ミオ』が上映された[10]。また、2024年の東京国際映画祭において最も存在感を放ち、当年の映画シーンを象徴する1本として『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』のアジアン・プレミア上映が行われ、本作のためだけに特別枠・センターピース作品として上映された[11]。 今回から東京都と連携し女性監督の作品、あるいは女性の活躍をテーマとする作品に焦点をあてたウィメンズ・エンパワーメント部門を新設した[12]。 黒澤明監督の業績を長く後世に伝え、新たな才能を世に送り出していきたいとの願いから世界の映画界に貢献した映画人、そして映画界の未来を託していきたい映画人に贈られる黒澤明賞は山田洋次、奈良橋陽子、川本三郎、市山尚三の4名の選考委員による選考の結果、『ケイコ 目を澄ませて』、『夜明けのすべて』が国際的に高い評価を受け、これから大変期待をおける監督として三宅唱と1980年代の台湾ニューシネマの伝統を現代に引き継ぐ監督であり、2024年公開の『本日公休』において庶民の生活を暖かい目線で描いた手法を高く評価されたフー・ティエンユーの2名が受賞し、開催期間中の11月5日に帝国ホテルにて授賞式が開催され、それぞれに授与した[13][14]。 特別功労賞にはサラエボに映画学校を創設するなどして、後進の育成に取り組み、今年の2月には福島県で行ったワークショップを行い、今回、そこで制作された映画の上映とトークイベントが行われるハンガリーの映画監督タル・ベーラが受賞した[15]。なお、賞の受賞を受けて、タル・ベーラ監督は来日予定だったが、都合により会期中の29日に急遽中止となることが発表された[16]。 経緯
上映作品ワールド・プレミアは世界初上映、インターナショナル・プレミアは製作国以外で初上映、アジアン・プレミアはアジアにて初上映、ジャパン・プレミアは日本初上映、*はエシカル・フィルム賞の対象作となったことを意味する[36]。 コンペティション2024年1月以降に完成した長編映画を対象に、110の国と地域から2,023本の応募作品[注釈 2]の中から、選出された15本の作品を上映し、国際的な映画人で構成される審査委員のもと、クロージングセレモニーで各賞が決定される[23][37][38]。
アジアの未来長編3本目までのアジアのフレッシュな作品をを世界に先駆けて上映するアジア・コンペティション部門。すべてワールド・プレミア上映の10作品を上映し、最優秀作品には「アジアの未来 作品賞」を決定する[37][39]。
ガラ・セレクション今年の世界の国際映画祭で話題になった作品、国際的に知られる巨匠の最新作、本国で大ヒットした娯楽映画など、日本公開前の最新作を13本プレミア上映する[37][40]。なお、本項目では13本に加えて、オープニング作品、クロージング作品、センターピース作品、特別上映を明記する[41][42]。
特別上映
ワールド・フォーカス多彩な特集上映とともに現在の世界の映画界の潮流を示す作品を上映する[37][43]。
第21回ラテンビート映画祭 IN TIFF第32回から6年連続となる「ラテンビート映画祭」とのコラボレーションで、スペインや中南米の秀作も上映する[37][43]。
メキシコの巨匠 アルトゥーロ・リプステイン特集メキシコのアカデミー賞であるアリエル賞を9回受賞し、"インディペンデント映画のゴッドファーザー"として知られ、ダークでスローペースな作風で孤独を探求するメキシコの巨匠 アルトゥーロ・リプステインの特集上映[37][43]。
「日伊映画共同製作協定」発効記念上映日本・イタリア両国の映画製作団体間の交流や両国間の映画共同製作が拡大するとともに、共同製作映画を通じた両国国民の相互理解の促進を目的とした「日伊映画共同製作協定」が発効されたことを記念とし、ナンニ・モレッティ監督や生誕100周年となるマルチェロ・マストロヤンニの特集上映が行われた[37][43][44]。 ナンニ・モレッティ監督特集
生誕100周年 マルチェロ・マストロヤンニ特集
Nippon Cinema Now日本映画の新作を対象に、特に海外に紹介されるべき日本映画という観点から選考された作品を上映する部門[37][45]。
監督特集:入江悠2009年の自主制作による『SR サイタマノラッパー』が大きな話題を呼び、以降ジャンルの垣根を越えた形で振り幅の大きい野心作を次々と撮り続けており、本年に公開された『あんのこと』も話題となった入江悠監督の作品作品5本を特集上映[12][37][45]。
アニメーション国内の最新作と海外での話題作12作品を上映することに加え、レトロスペクティブとして「宇宙戦艦ヤマト」放送開始50周年を記念した劇場版の4K上映を行い、アニメーション関連のシンポジウムが3つ開催された[37][46]。
『宇宙戦艦ヤマト』50周年記念上映
アニメ・シンポジウム
日本映画クラシックス生誕100周年の増村保造監督や没後10年の高倉健の特集上映、公開から45年を迎えた『あゝ野麦峠』と公開から70年を迎えた『ゴジラ』の4Kデジタルリマスター版が上映された[37][47]。
生誕100周年 増村保造特集
没後10年 高倉健特集
ユース少年少女に映画の素晴らしさを体験してもらう部門で、「TIFFティーンズ映画教室」は西川美和監督を特別講師に招き、中学生たちが限られた時間の中で映画を作り、その成果をスクリーンで発表する。「TIFFチルドレン」はサイレント映画の名作を第31回(2018年)より続いている声優としても活躍している弁士の山崎バニラによる大正琴やピアノの弾き語り活弁を行うパフォーマンス付きでお届けし、「TIFFティーンズ」は国際映画祭で評価された作品の中から高校生世代に刺激を受けてもらいたい秀作を上映する[37][48][49]。 TIFFティーンズ
TIFFチルドレン
TIFFシリーズTV放映、インターネット配信などを目的に製作されたシリーズものの秀作を日本国内での公開に先駆け、スクリーンで上映する部門[37][50]。
ウィメンズ・エンパワーメント今回から新設された女性監督の作品、あるいは女性の活躍をテーマとする作品に焦点をあてた部門。ドイツから香港、テヘランから近未来的日本まで、女性の複雑な諸相を描いた女性監督による作品を取り上げ、女性のアイデンティティやたくましさ、変容に光をあてた作品群によって世界中の女性の多様性と強さを称えた[12][51]。
サーチライト・ピクチャーズ設立30周年企画1994年の設立以来、5度のアカデミー賞作品賞受賞作品を送り出してきたサーチライト・ピクチャーズが2024年で設立30周年を迎えたのを記念して、サーチライト・ピクチャーズが生み出してきた200本を超える作品の中から代表作6作品を特別上映した[20][52]。
黒澤明の愛した映画黒澤明監督の業績を長く後世に伝え、新たな才能を世に送り出すために世界の映画界に貢献した映画人や映画界の未来を託していきたい映画人に贈られる黒澤明賞の授与に伴い、世界のクロサワが愛した名作5本を上映する特集上映[53]。 共催: CAPCOM
東京国際映画祭 屋外上映会2024東京ミッドタウン日比谷の日比谷ステップ広場における屋外上映会では「コロンビア・ピクチャーズ100周年特集」と「宇宙戦艦ヤマト50周年特集」のほか、ふたつの大ヒットシリーズ『ミッション:インポッシブル』と『ワイルド・スピード』の第1作と最新作が上映された[54][55]。 共催:東京都 協賛:東京ミッドタウンマネジメント株式会社、一般社団法人日比谷エリアマネジメント イベント共催・提携企画審査員
プログラミング・ディレクター ・作品選定コミッティメンバー
受賞結果11月6日にTOHOシネマズ日比谷で行われたクロージングセレモニーにて各賞が発表された[4]。
脚注注釈
出典
上映作品
イベントレポート
外部リンク
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