河童の三平
『河童の三平』(かっぱのさんぺい)は水木しげるによる日本の漫画作品、およびそれを原作として作成された特撮テレビドラマ、アニメーション映画。 概要河童に似た少年・三平が河童に出会うことで始まる物語。人間と動物と妖怪が山で一緒に暮らす牧歌的な世界を描いた、水木の代表作の一つである[1][2][3]。 作品は1955年頃に発表された紙芝居から始まり、1961年に貸本漫画として刊行[4]。その後も1966年の『月刊ぼくら』、1968年の『週刊少年サンデー』、1993年の『小学1年生』と掲載誌を変えて新たなシリーズが発表され、1968年にはテレビドラマ『河童の三平 妖怪大作戦』、1993年には劇場用アニメ『カッパの三平』が製作された。 単行本は体裁を変えて何度も出版されており、貸本版とサンデー版は文庫で読むことが出来る。他のシリーズに関しても『水木しげる漫画大全集』で全ての作品が復刻された。 作品の背景『河童の三平』の物語は、水木の故郷・鳥取県境港の下ノ川に河童が棲んでいるという伝説から着想を得て[3]、幼い姪に語って聞かせた物語「河童のカー坊」が下敷きになっている。毎晩のようにカー坊の話をせがまれた水木は、少年時代の体験をカー坊に置き換えるなどして即興で物語を作っていったという[2][4]。 やがて、紙芝居作家になった水木は気に入っていたカー坊の話を『河童の三平』として紙芝居に仕立てる。三平が見つけた河童の国から河童たちが地上に現れるという内容で評判が良く、前後編80巻(1巻は10枚前後)ほど続いた[4][注 1]。しかし、版元から「もっと面白く」と注文されるごとに河童を人間社会に多く出し過ぎてしまい、物語の収拾がつかなくなって続けることが困難になってしまう[2][4]。 その後、紙芝居の物語を貸本漫画として再構築した際は、先の反省を生かして河童を出し過ぎないようにした。三平の田舎の雰囲気は水木の妻・布枝の故郷である島根県安来市大塚を参考にし、三平のお爺さんは布枝の父をモデルにして描いた[5]。 主人公の三平は河童に似ているだけで特別な力は持っていない子供だが、水木はこのような主人公が好きだと述べている[6]。一方、他の水木の代表作と比較して、テレビアニメ化などメディアミックス化に恵まれた作品ではなかったことついて「あくどさが少ないから人を惹きつけないのかな」と水木は推測している[7]。 主な登場キャラクター
漫画貸本版1961年から1962年にかけて兎月書房から全8巻まで刊行。河童にそっくりな人間の子ども・河原三平が河童の世界に迷い込むことがきっかけで、河童の長老の息子が人間世界へ留学することから始まる長編物語。水木と兎月書房の関係は長いが、原稿料の未払いが続いた影響で関係が途絶えていた時期があり、本作は和解直後の作品である[4][8]。しかし、間もなく倒産してしまう兎月書房から突然8巻で終了と告げられ、やむなく話の途中の段階で三平を死なせて物語を終わらせてしまう。これによりいくら書きたくても続きが書けなくなってしまい、生涯の最大の失敗だったと語っている[6]。 『ぼくら』版1966年に『月刊ぼくら』で全7話を連載。『週刊少年マガジン』で『墓場の鬼太郎』の掲載が始まった頃、同誌に対抗意識を持っていたとされる『月刊ぼくら』から熱心に連載の依頼が来たという[5]。内容は貸本版のリライトだが、貸本版や後の『少年サンデー』版にはないエピソードも描かれている。低年齢層向けの雑誌ゆえにタイトルを『カッパの三平』と片仮名に改め、背景はあまり細かく描き込まない方針で作られた[9][3]。また、三平の家族の死の表現を控えめにし、後半は河童とタヌキとの共同生活を主体とするなど、読者を意識した作りになっている[10]。 『少年サンデー』版1968年から1969年にかけて『週刊少年サンデー』で連載。『別冊少年サンデー』には外伝の読み切り作品が掲載された。貸本版と『ぼくら』版をもとにしたリライトだが、複数のオリジナルエピソードが加えられている。『ぼくら』版で見られた短編のスタイルから長編として組み直されており、中盤からは三平と河童が妖怪と戦いながら七つの秘宝を探しに行く冒険活劇「ストトントノス大王七つの秘宝」が描かれた。これは妖怪退治の要素が加えられたテレビドラマ版を意識した展開とされる[11]。その後は短編シリーズを挟んでから、後半は『ぼくら』版で省かれていた都会のエピソードへと繋がっていく[11]。 『小学一年生』版1993年から1994年にかけて小学館の学年別学習雑誌『小学一年生』に連載されたオールカラー作品。『ぼくら』版と同じ『カッパの三平』のタイトルだが、これまでにない全編オリジナルストーリーが描かれた。本作は河童が三平のふりをして学校に通う物語であり、三平は最後まで登場しない。貸本版と『少年サンデー』版の物語で三平が死んでしまった流れを汲む作品とされている[3]。 読み切り版
テレビドラマ1968年10月4日から1969年3月28日までNET系で全26話が放送された。 →詳細は「河童の三平 妖怪大作戦」を参照
アニメ1993年にっかつ配給で劇場用アニメ『カッパの三平』が公開された。脚本は雪室俊一。90分のカラー作品。カッパに似た少年・三平がカッパのガータローと友達になり、行方不明になっている三平の母を探しに一緒に旅立つ物語。水木の追悼企画として本作のリマスター作業を行い、2016年に初めてDVDが発売された[13]。 スタッフ
キャスト主題歌
DVDデジタルリマスター化したDVDがポニーキャニオンから発売。初回限定生産の愛蔵版には、原画デザインのスリーブケース、劇場パンフレットのミニチュア版などの特典付き。
舞台
演劇集団 円による「円・こどもステージ」40周年を記念して、『河童の三平』が初舞台化された[14][15]。脚本は京極夏彦。
書誌情報各シリーズ別に比較的新しい書誌を記載。(絶版含む) 貸本版
サンデー版
また、eBookJapanから電子書籍として全5巻が配信されている。 その他
脚注注釈出典
参考文献
外部リンク |
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