ボイジャーのゴールデンレコードボイジャーのゴールデンレコード (Voyager Golden Record)、またはボイジャー探査機のレコード盤とは、1977年に打ち上げられた2機のボイジャー探査機に搭載されたレコードである。パイオニア探査機の金属板に続く、宇宙探査機によるMETI(Messaging to Extra-Terrestrial Intelligence)=Active SETI(能動的な地球外知的生命体探査)の例である。 地球の生命や文化の存在を伝える音や画像が収められており、地球外知的生命体や未来の人類が見つけて解読することを期待している。ただし、ボイジャー探査機が太陽以外の恒星近傍(その恒星まで1.6光年離れた地点)へ到達するには4万年を要するため、もしボイジャーの方向に地球外知的生命体がいたとしても、そこに到達するまでには長い時間がかかる。 背景2013年時点で、ボイジャーは海王星軌道以遠に出た3番目と4番目の人工構造物である。1972年、1973年に打ち上げられたパイオニア10号・11号は、遠い未来に宇宙旅行者に発見されたときのために、発射の時刻と場所を記した金属板を積んでいた。 そして、アメリカ航空宇宙局 (NASA) は、ボイジャー1号・2号に、さらに総合的で電子的なメッセージを積載した。それは一種のタイムカプセルで、われわれの世界を異星人に伝えてコミュニケーションを図ったものだった。
レコードは8枚が製造され、うち2枚が探査機(ボイジャー1号と2号)に搭載された[1]。2023年、レコードのマスターテープがサザビーズの競売に掛けられることが決まった[1]。 収録内容レコードに収められた内容は、コーネル大学のカール・セーガンを委員長とする委員会によって決められた。セーガンらは115枚の画像と波、風、雷、鳥や鯨など動物の鳴き声などの多くの自然音を集めた。さらに様々な文化や時代の音楽、55種類の言語のあいさつ、ジミー・カーター大統領と国際連合事務総長クルト・ヴァルトハイムからのメッセージ文なども加えられた。 宇宙探査機パイオニア10号・11号に積んだ金属板に、裸体の男女の線描を載せたことで以前NASAが批判を受けたため、裸の男女の写真や線描、妊娠した裸の女性の写真は許可されず、その代わりに男女のシルエットが収められた。 次の文は、ボイジャーが太陽系外に向けて旅立つにあたり、1977年6月16日にカーター大統領が発した公式コメントの抜粋である。
115の画像はアナログ形式でコード化され、残りの音声情報は16と3分の2回転で再生できるように作られた。最初には、6000年前にシュメールで話されていたアッカド語が、そして最後には中国の呉語が収録された。 以下が、ゴールデンレコードに収録された55の言語である。
以上の『地球の音』のセクションに続けて、90分の音楽が選ばれて収録されている。収録曲は、次のとおり東洋と西洋の古典や様々な民族音楽を含むものである。
他に数枚の写真が収められた。
レコードに収められた画像は、白黒画像ではあるが、カール・セーガンらが1978年に出版した著書『Murmurs of Earth: The Voyager Interstellar Record』で見ることができる。CD-ROM版も1992年にワーナー・ニュー・メディアから出版された。両方とも絶版であるが、1978年版は多くの大学や公共図書館で読むことができる。 2017年12月にはレコードに収められた音源がCD化され、『THE VOYAGER GOLDEN RECORD』のタイトルでOZMA RECORDSから発売された。 1983年7月、BBCラジオで「Music from a Small Planet」という45分番組が放送され、その中でセーガンらは選考の経緯を説明し、曲の抜粋を紹介した。この番組がBBCのオリジナルなのかアメリカのラジオ局から輸入したものかは明らかではない。 このほか、ラテン語で「困難を通じて天へ(=困難を乗り越えて星の世界へ、困難を克服して栄光を掴む)」を意味する成句「ad astra per aspera」のモールス信号が収められている。 セーガンは当初、ザ・ビートルズの「ヒア・カムズ・ザ・サン」を収録しようと打診した。メンバーは喜んだが、EMIが許可しなかったため断念することになった。その後の2008年、同バンドの「アクロス・ザ・ユニバース」がNASA創設50周年を記念する通信に用いられた。 日本から選ばれた「鶴の巣篭り」は、日本伝統音楽の中でも高く評価される尺八本曲である[2]。 レコードの素材レコード本体は金メッキされた銅製である。レコードカバーはアルミニウム製で、その表面は、超高純度ウラン238で覆われている。ウラン238の半減期は45.1億年で、このレコードを受け取った文明は、同位体組成を解析することにより、いつごろ収録されたかが分かるようになっている。 宇宙飛行ボイジャー1号は1977年に打ち上げられて冥王星軌道を1990年に通過し、2004年11月にヘリオポーズを抜けて太陽系を脱出した。現在は星間にいるが、およそ4万年後にへびつかい座のAC+79 3888まで1.6光年の地点を通過する。一方、ボイジャー2号はおよそ29万6000年後にシリウスまで4.3光年の地点を通過する。 2005年5月、ボイジャー1号は太陽から87億マイルの距離を年間3.5AU(時速61,000km)のスピードで飛行している。2号は太陽から65億マイルの距離を年間3.13AUのスピードで飛行している。 ボイジャー1号はヘリオシースへ突入したが、これは星間ガスの圧力によって太陽風の速度が弱まる地点である。ここでは太陽風の速度が秒速300kmから700kmになり、次第に濃く、熱くなってくる。 カール・セーガンは「宇宙のどこかに宇宙旅行をする技術を持った文明があったときのみ、この宇宙船に積まれたレコードを再生できるだろう。しかし、このボトルメールはこの惑星の住人に希望をもたらすものだ」と記している。 フィクション作品への登場
脚注
関連項目外部リンク
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