えちごトキめき鉄道日本海ひすいライン
日本海ひすいライン(にほんかいひすいライン)は、新潟県糸魚川市の市振駅から同県上越市の直江津駅までを結ぶえちごトキめき鉄道の鉄道路線である。 概要元は西日本旅客鉄道(JR西日本)北陸本線の一部で、2015年(平成27年)3月14日の北陸新幹線長野駅 - 金沢駅間延伸開業の際に並行在来線として経営分離された区間のうち、えちごトキめき鉄道が継承した新潟県内の区間にあたる。なお、石川県内はIRいしかわ鉄道が、富山県内はあいの風とやま鉄道が継承した。 当線を含む3社の各路線は、北陸本線や信越本線・羽越本線・奥羽本線などとともに日本海縦貫線の一部を構成している。 路線名は移管前に公募の上、株主アンケートの結果を踏まえ、検討委員会から取締役会に提案されたもので[4]、地域の特産であるヒスイから、光り輝く日本海のイメージを表現したものである[5]。 日本貨物鉄道(JR貨物)も引き続き、全線にわたり第二種鉄道事業者となっている。 この区間は全区間が電化されているものの、輸送密度が移管前の2007年実績で全線で1,470人/日(通過する特急利用者含まず)[6]と経営分離区間の中でも特に輸送密度が低く[注 1]、加えてえちご押上ひすい海岸駅 - 梶屋敷駅間のデッドセクションを境に糸魚川方が交流電化 (20kV60Hz) 、梶屋敷方が直流電化 (1,500V) と電化方式が異なっていることを踏まえ、交直流電車の新造・購入費および維持費などのコストを考慮し[7][8]、線内の旅客列車は一部を除き気動車を使用している[注 2]。 なお、貨物列車は引き続き通過するため、電化設備は存置されている。 海岸沿いの断崖が続く親不知付近や、フォッサマグナ西縁部の地すべり多発地帯を通過する路線であるが、北陸本線時代の1965年から1969年にかけ段階的に行われた複線化・電化と同時に、防災対策の一環としてトンネル主体の新線へ切り替えが進んだことにより(詳細は「北陸本線#輸送改善」「頸城トンネル」を参照)、路線延長の55.8%がトンネルとなっている[9]。 このうち、頸城トンネル(11,353m)はJR以外の日本の鉄道ではハピラインふくい線の北陸トンネルに次ぐ長さのトンネルであり、途中に筒石駅を有する。このため、気動車での運転に当たって移管時に避難誘導設備の強化が行われている[10]。 路線データ
歴史→えちごトキめき鉄道移管前(国鉄・JR時代)については「北陸本線#歴史」を参照
国鉄・JR時代
えちごトキめき鉄道移管後
運行形態本節では、一体的な運用が行われる泊駅 - 市振駅間のあいの風とやま鉄道線も含め記述する。なお、妙高はねうまラインと異なり、特別料金が必要な定期旅客列車の運転は行われていない[注 3]。 以下、特記のない限り、2019年(平成31年)3月16日ダイヤ改正時点での運行である[39]。また文中における「上り」「下り」は、市振駅方から直江津駅方に進む列車を「下り」、その逆を「上り」とする。 普通列車2019年(平成31年)3月16日ダイヤ改正で、全ての定期旅客列車は乗り入れ列車も含め普通列車となった[39]。ダイヤは拠点駅の直江津駅、北陸新幹線と接続する糸魚川駅を中心とした編成となっている。 運行本数はおおむね1時間に1 - 2本の運行であり、各区間とも19往復/日が確保されている[48]。 自社車両使用列車泊駅 - 糸魚川駅 - 直江津駅間の運行を基本(上り15本、下り14本)とし[注 4]、朝と夕方の通勤通学時間帯に糸魚川駅 - 直江津駅間(4往復)、早朝と夜間に泊駅 - 糸魚川駅間(2往復)、日中に泊駅から妙高はねうまライン新井駅へ直通する列車(下り1本)が設定されている[48]。気動車単行によるワンマン運転(車内精算方式[49][注 5])を基本に、朝夕は2両編成で運転する。 運行はあいの風とやま鉄道線区間を含め、えちごトキめき鉄道直江津運転センターの乗務員が担当する。 泊駅では、富山方面へ向かうあいの風とやま鉄道の普通列車もしくは、あいの風ライナーと同駅の2番線(中線)に縦列で停車し乗り換えの便を図っている[注 6]。接続時間は2分 - 40分程度を確保している[48][注 7]。 あいの風とやま鉄道車両使用列車富山方面との直通列車に使用される。糸魚川駅以東の直江津方面には乗り入れない[50][51]。 金沢駅 - 糸魚川駅間に1往復[注 8]が設定され、朝に下り列車、夕夜間に上り列車が運転されている[48]。またワンマン運転は実施されない。この1往復のみ市振駅 - 糸魚川駅間も含めあいの風とやま鉄道運転管理センターの乗務員が運行を担当する。 2022年3月12日の改正で、富山駅 - 糸魚川駅間の直通を1往復に縮小(削減分は泊駅で乗り継ぎ)した。[52] 観光急行2021年(令和3年)7月4日から、JR西日本から購入した413系・455系電車を使用した観光急行が土休日に運行されている(列車種別・列車名とも「急行」で、「急行1号」のように列車ごと号数が振られる)[47]。直江津駅 - 市振駅間、直江津駅 - 糸魚川駅間に各1往復の計2往復が設定されている。乗車には乗車券のほか急行券が必要で、大人500円・小児250円で発売される。 なお1号車(泊方先頭車)は指定席とされており、『JR時刻表』でも当該列車に一部指定席の印がつけられているが、運行開始時点では自由席扱いで、急行券のみで乗車できた。 その後、同年9月からは旅行商品専用として指定席扱いが開始されたが、空席の場合は引き続き一般客も急行券のみで利用可能となっている[53]。 えちごトキめきリゾート雪月花2016年(平成28年)4月23日から自社の専用車両ET122形1000番台を用いたリゾート列車「えちごトキめきリゾート雪月花」が運行されている。 ただし団体専用であり、一般旅客は利用できない。 貨物列車移管前からJR貨物による貨物列車が引き続き運行されている。ただし線内には経営分離前の2008年(平成20年)3月15日に青海駅を発着する車扱列車が廃止されて以降[54]、定期貨物列車が発着する駅はなく、青海オフレールステーション(青海駅構内)でトラック便の取扱があるのみである[55]。 過去に運転されていた列車快速えちごトキめき鉄道開業当初、糸魚川地区における特急「北越」の代替として、泊駅 - 直江津駅間に1往復、糸魚川駅 - 新潟駅間(直江津駅から信越本線直通)1往復が設定され、朝に下り列車、夕夜間帯に上り列車が運転された。線内運転列車はET122形気動車、新潟発着列車は東日本旅客鉄道(JR東日本)新潟車両センター所属の485系電車を使用した[56][57]。 しかし、2017年(平成29年)3月4日のダイヤ改正で信越本線直通列車が直通終了・普通列車化したことで[注 9]、線内運転の1往復のみとなった。その後、2018年(平成30年)3月17日ダイヤ改正で朝の下り列車[38][注 10]、2019年(平成31年)3月16日ダイヤ改正で夜間の上り列車が廃止され[39][注 11]、消滅した。 廃止時点での停車駅は、直江津駅・名立駅・能生駅と、梶屋敷駅 - 泊駅間の各駅[注 12][注 13]であった。 利用状況輸送実績えちごトキめき鉄道日本海ひすいラインの近年の輸送実績を下表に記す。 表中の輸送人員の単位は万人。輸送人員は年度での値。 表中の最高値を赤色で、最高値を記録した年度以降の最低値を青色で、最高値を記録した年度以前の最低値を緑色で表記している。
管内鉄軌道事業者輸送実績(国土交通省北陸信越運輸局)[58]、鉄道統計年報運輸成績表(国土交通省)[59]より抜粋。 使用車両移管後の定期営業列車での使用車両について記載する。 現在の使用車両
過去の車両
駅一覧便宜上、市振側の全旅客列車が乗り入れるあいの風とやま鉄道線・泊駅 - 市振駅間も合わせて記載する。
線内13駅のうち、有人駅は糸魚川駅・直江津駅・能生駅の3駅のみで(いずれも直営)、それ以外の10駅は全て無人駅である。 このうち、終日駅係員が配置されるのは直江津駅のみで、糸魚川駅と能生駅は早朝・深夜は係員無配置となる。 廃止信号場いずれも旧線上・新旧切替点に所在。
新駅設置計画→詳細は「えちご押上ひすい海岸駅」を参照
えちごトキめき鉄道と新潟県、日本海ひすいライン・妙高はねうまライン沿線の3市では路線の駅間が長い市街地区間について新駅設置の検討を進めている。日本海ひすいラインでは糸魚川市内に2駅の構想・計画があり、青海駅 - 糸魚川駅間の今村新田駅(仮称)[注 14]と、糸魚川駅 - 梶屋敷駅間にある西海踏切付近の押上駅(仮称)について、整備方法などを検討している[62][43]。 構造は、前者が相対式2面2線、後者が千鳥式2面2線で計画されており、ホーム長は前者が4両分、後者が2両分となる。 これらのうち、県立糸魚川高校と県厚生連糸魚川総合病院への通学・通院需要が見込める押上駅(仮称)については、費用対効果がより高いとして、先行して整備する方針とされた[63][43]。2019年(令和元年)9月に押上新駅(仮称)として設置が認可され[40]、2020年8月9日には駅名が「えちご押上ひすい海岸駅」に決定し[46]、2021年(令和3年)3月13日実施のダイヤ改正時に開業した[42][45][44]。 今村新田駅については、糸魚川市により2018年(平成30年)度をめどに押上駅と同時に施設設計に入るとされたが、開業時期は未定とされている[63]。 脚注注釈
出典
関連項目
外部リンク
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