関西広域連合
関西広域連合(かんさいこういきれんごう)は、日本の行政機構の一つ。救急医療の連携や防災等の府県域を越えた行政課題に取り組むこと、および国の出先機関の受け皿となって地方分権を推進させることを目的として、近畿地方(関西)及び鳥取県、徳島県の8府県が地方自治法の規定に基づいて設立した特別地方公共団体(広域連合)である。2012年8月以降、域内の4政令指定都市も参加している。 概要「関西から新時代を作る」としており、「さあ、関西の時代へ」というキャッチフレーズを使用している[1]。 これまでも広域連合は地方自治法の規定に基づいて多数設置されているが、複数の都道府県によるものは全国初である。 設立当初の事務は広域防災、広域観光・文化振興、広域産業振興など7分野の事業から始められるが、港湾の一体的な管理、国道・河川の一体的な計画・整備・管理等の分野にも拡大される。さらに国からの権限・事務の移譲へ向けた取り組みが進められている。 設立のねらい
前近代的かつ国家社会主義的な中央集権体制・一極集中体制には、低成長や超少子化をはじめとする、様々な歪みや大きなデメリットが生じている。このような現状に際し、国による地方分権改革を待つだけでなく、地域自らが主体的な分権改革を推進していく必要がある[2]。 また、地域主権・地方分権により、より地域住民に寄り添った住民サービスや、地域ごとに特有ある課題の解決に資することができる。さらに、広域防災体制・広域医療体制の構築による減災、防災、救命等の地域課題を広域的に対応することが可能となる。将来的には、交通・物流基盤(港湾など)の一体的運用管理により、都市圏競争力の強化や地域経済の成長にも寄与する。 このような観点から、関西広域連合は設立されるに至った。 構成団体2010年10月27日までに、設立時に参加の全7府県の府県議会にて設立が議決された。2012年4月には大阪市と堺市、同年8月には京都市と神戸市が構成指定都市に加わり、域内の政令指定都市の全てが参加することになった。また、2015年12月には奈良県が参加した。 広域連合に参加している地方自治体(構成団体)は、以下のとおり。 連携団体福井県・三重県(設立当初は奈良県も)は、本広域連合の検討段階には参加していたが、設立当初からの正式参加は見合わせ、密接な連携が必要とされる自治体(連携団体)として、各県知事が広域連合委員会へオブザーバーとして参加している。 奈良県の参加奈良県は地理的に関西圏ではあるが、設立当初からの参加を見合わせた理由として、責任の所在の不明瞭化や権限の調整、経費増大など、上位自治体の設置に伴う弊害が様々に見込まれること、同等の事務は広域連携を充実させるだけでも達成可能であるとの考え、住民の身近で行うべき行政に距離感が生じてしまい、とりわけ、県が課題としている南部の地域振興に悪影響が及ぶと予想されること、大阪府に編入されていた明治時代に災害復旧費が十分に廻ってこなかったことから来る危惧、および、後から参加することも可能であることを挙げている[3]。 歴史的文化遺産の宝庫である奈良県は関西の観光の目玉であるにもかかわらず、同県が参加を見合わせていることから、関西広域連合はこれをPRに活かせないでいる[4]。特に、国際向けの観光PR事業で「奈良」を欠くことは無視できない大きなマイナス要素であり、関西広域連合と奈良県は歩み寄りが望まれつつも、互いに関係を計りかねている[4]。 また、奈良県民の中にも不参加が招く将来的悪影響を懸念する声がある[5]。 こうした動きを受けて、奈良県の荒井正吾知事は2015年6月の奈良県議会での所信表明演説で、災害時の広域防災体制の強化と観光客誘致促進などの効果をさらに高めることを目的に、関西広域連合への参加の意向を表明した。なお、奈良県が部分参加するのは、関西広域連合が扱う7分野の事務(下記の「広域行政の内容」を参照)のうち、「広域観光・文化振興」と「広域防災」の2分野である[6]。 関西広域連合は、奈良県の加入に伴う関西広域連合広域計画の改定案を2015年11月に関西広域連合議会の臨時会に上程し[7]、2015年12月4日に規約改正が総務大臣に許可され、奈良県が関西広域連合の構成団体として正式加入した[8]。 しかし、その後2016年4月に、リニア中央新幹線の停車駅誘致をめぐり荒井知事が「京都や関西広域連合とは絶対に仲良くしてはダメ」と発言するなど、両者の間にやや距離がある状態となった時期もあった[9]。 2023年の知事選挙で荒井を下して当選した、山下真(日本維新の会所属)が知事に就任すると、全分野で加入する意向を表明した。同年12月15日に奈良県議会で関西広域連合に全面参加する議案が賛成多数で可決され[10]、2024年1月9日付けで総務大臣あて関西広域連合規約の変更許可申請を行ったうえで、2月20日付けで許可された[11]。 人口域内の人口は2府6県で2,000万人を超える。
財政主な財源は構成団体からの負担金である。また、広域連合には課税権が与えられていないので「広域連合税」のような独自の地方税はない。
広域行政の内容設立当初は、広域防災、広域観光・文化振興、広域産業振興、広域医療、広域環境保全、資格試験・免許等、広域職員研修の7分野の事務が取り扱われる。 これらの広域行政に関する事務は、関西広域連合に加入している2府6県及び4政令市が対象区域となっている。ただし、下記の地方公共団体については、記載された特定分野のみの部分参加となっている。
徳島県は、加入当初は「資格試験・免許等」に関する事務については不参加だったが、2012年4月以降は当該事務を含めた全ての広域行政事務の対象区域となっている。また、奈良県は2015年12月以降、「広域防災」、「広域観光・文化振興」に関する事務についてのみ参加していたが、2024年4月から全ての事務に参加している。 広域防災
広域観光・文化振興
広域産業振興広域医療
ドクターヘリの広域運用複数の府県で連携したドクターヘリの運航は広域連合の設立前から始まっており、それを広域連合に集約させる形で事業が進められている。まず、2011年度に京都府・兵庫県・鳥取県3府県共同運航のドクターヘリ1機が広域連合に移管された。加えて大阪府と和歌山県の各1機と、広域医療局を置く徳島県が導入した1機が移管された。さらに2015年には滋賀県と京都府が共同に運行する1機が追加された。
広域環境保全資格試験・免許等
広域職員研修
その他
組織・役職
沿革
広域連合と道州制の関係関西広域連合は設立前からマスコミや各府県議会などで、しばしば道州制に関連させて論じられているが、その関係性については「関西広域連合設立案」のなかで次のように説明されている[32]。
関連書籍
脚注注釈
出典
関連項目外部リンク |