西海道談綺
『西海道談綺』(さいかいどうだんき)は、松本清張の長編伝奇小説。『週刊文春』に連載され(1971年5月17日号 - 1976年5月6日号、連載時の挿絵は岩田専太郎[1])、1976年12月から1977年4月にかけて、全5巻の単行本が文藝春秋より刊行された。文春文庫版は全8巻(1981年1月 - 4月)、同文庫新装版は全4巻(1990年10月 - 11月)。『松本清張全集』(文藝春秋)では全3巻(第52巻 - 第54巻、1983年9月 - 11月)。 江戸時代の九州・日田地域を主な舞台に、隠し金山をめぐる謎・冒険などの要素を織り込み展開される大長編伝奇ストーリーで、1983年にテレビドラマ化されている。 あらすじ時は文化・文政のころ、作州・勝山藩の藩士・伊丹恵之助は、急遽宿直を早退、屋敷に取って返し、半年前に結婚したばかりの妻・志津と用人・服部源左衛門の密会を突き止めた。恵之助は屋敷を出た源左衛門を斬った上で、志津を耳陶山北麓の小童谷銅鉱に連れ出し、廃坑の中で妻を竪穴に突き落とした。 国を出て放浪の途中、恵之助は、木曾・奈良井宿にて、参勤交代旅行中の小藩の一行が、大国・加賀藩一行の我儘に苦悩するところに遭遇する。茶壺宰領の力を借りることで彼らの窮地を救う恵之助だったが、そこで縁のできた茶壺組頭の坊主・北条宗全は、恵之助の妻殺し・脱藩の過去を承知した上で、江戸の長屋に恵之助を世話する。しばらく役職のない生活を送る恵之助だったが、やがて、御家人・太田半左衛門の養子となり、太田姓を名乗る直参の身分となる。こうして「伊丹恵之助」はこの世から消えた。 そうこうするうち、恵之助は西国郡代地方手附への着任の話を持ちかけられる。突然の話に驚く恵之助だったが、西国諸鉱山の金銀産出が急激に少なくなったことが公儀で問題となり、その実態調査という密命を帯びた着任であった。こうして豊後・日田へ赴くことになった恵之助だったが、他方、恵之助の前任者・鈴木九郎右衛門が、謎の急死を遂げていたことを聞かされる。恵之助は郡代・高林伝七郎から、現地視察を名目に、豊前・四日市の陣屋への出役を命じられたのを機に、周辺で鈴木急死の真相を探り始めるが、その矢先、姿を見せなくなっていた恵之助の同行者が殺害死体で発見された。 恵之助の前に姿を現わす、法螺貝を響かせる宇佐石体権現の山伏・行者の列。彼らは呪術的な超能力を駆使する変幻自在の集団として恐れられていた。さらに、津江の山中から一条の光が立ち昇る怪奇現象に遭遇する恵之助。闇からの謎の警告や、犬神の祟りが交錯する中、ついに恵之助を待ち受ける大掛かりな策謀が動き出した。罠を承知で出向く恵之助。敵と味方が入り混じり、各人の怨念・執念も絡みつつ、山中での神秘的な対決が幕を開ける。 主な登場人物
関連項目
テレビドラマ
「松本清張の西海道談綺」。1983年9月30日、フジテレビ系列の「時代劇スペシャル」枠(20:03-22:48)にて3時間拡大版として放映。テレビ西日本開局25周年記念番組として制作された。サブタイトル「妻の密通は彼の運命を変えた!!日田天領に渦巻く巨悪の陰謀は!?愛憎かけめぐる一大伝奇」。視聴率16.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。
脚注・出典 |
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