パプリカ (曲)
「パプリカ」(英: Paprika)は、小中学生[注 1]の音楽ユニット「Foorin」(フーリン)の楽曲。作詞・作曲・編曲・プロデュースは米津玄師。 2018年8月15日にソニー・ミュージックレコーズからCDリリースされ、翌2019年に入ってロングヒットとなった[4]。 ミュージック・ビデオの再生回数が1億回を超え[5][6]、ダンス動画が数多く投稿されるなど、子供から大人まで幅広い年代にわたる社会現象となった[6][7][8][9]。 第61回日本レコード大賞受賞曲[10]。 概要NHKが「2020年とその先の未来に向かって頑張っている全ての人を応援するプロジェクト」として開始した「〈NHK〉2020応援ソングプロジェクト」による応援ソングとして、米津の作詞・作曲、プロデュースにより制作された[11][3]。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会により「東京2020公認プログラム」として認証されている[3]。 制作「〈NHK〉2020応援ソングプロジェクト」の打診を受けた米津は、それまで制作してきた自身の楽曲は「わかりやすい応援ソング」と対極だったことから「果たして自分でいいのか」との疑問を抱きつつも、「それを作ることによって新たな場所に行けるのかな」と話を受けることを決意。与えられた「歌って踊れる応援ソング」「歌う人は自分以外の人間」「名の売れている人ではない」といったキーワードから、自分以外の名前の売れてないアーティストが歌う「子供たちが歌って踊れる応援ソング」をテーマに制作を開始した[12]。 米津はこれまで「灰色と青」(菅田将暉)、「打上花火」(DAOKO)、「fogbound」(池田エライザ)などの提供楽曲はアーティストありきで制作してきたため、本楽曲を歌うアーティストが身近に思い浮かばなかったことからオーディションを実施。当初より小学生ユニットをプロデュースする発想はなかったものの、小学生から18歳くらいまで約150人が参加したオーディションでカラオケ風の歌い方や身振り手振りに染まらない子どもたちのほうが美しく魅力的に映ったことから、まずは無垢かつワイルドでいぶし銀な声質のひゅうが(吉田日向)と、優等生で度胸があり声質も良いもえの(住田萌乃)の対極的な2人を選出。続いて、自分の原体験の漫画やバンドで「5人くらいが一つのチームになって、いろんなキャラクターたちが相互作用を起こしていく」様子をイメージしつつ、「ルフィ海賊団」を選ぶようにメンバーのキャラクターを考えて残る3人(たける〈楢原嵩琉〉、りりこ〈池下リリコ〉、ちせ〈新津ちせ〉)の選考を進めていった[12]。 オーディション時点で楽曲のデモや原型は一切なく、オーディションで選出した5人を通じて、米津が5人と同じ小学生だったころに徳島の山中にあった祖父母の家で、山で遊び回り、川で泳いだときの記憶を思い浮かべて自己投影をしていった。米津が小学生だったころに聴いていた、あらためて聴きなおすと決して子供におもねることなく制作者が面白いと感じるものをきっちり提示していた音楽に思いを馳せ、「果たして子供に歌えるんだろうか」「子供が歌うんだったらこのくらいにしておいたほうがいい」と子供におもねることなく、「27歳の自分がいいと思えるもの」をそのまま表現していった。子供のころから不信感、嫌悪感を抱いていたわかりやすい、壮大な応援ソングに対し、森で駆け回る子供たち、田舎の日常の中で遊ぶ子供たちの情景を描いた「小さな物語」が童謡、風土感、ノスタルジーなどを介しNHKという大きな背景で結果として拡大していくのが自身が作れる応援ソングであり[13]、大人になった時に子供の頃この曲を歌っていたことを思い出して子供のときの自分に応援される「応援ソング」としている[14]。 「ユニット名は仰々しい名前ではなく小さなものでいい」という発想から、からっとした感じがちょうどいいと、歌い踊る5人の姿を風鈴に例えて「Foorin」となった[12][14]。曲名は語感に加えてパプリカそのものの持つポップさ、かわいさから「パプリカ」となり、特にわかりやすい意味はなく、子供向け絵本の中のどこか荒唐無稽なイマジネーションの世界のような、理論的な思考で説明できないようなところから音楽のエモーションが生まれるとしている[14]。 メンバーのボイストレーニングはスタッフが担当し、米津はレコーディングより参加している。練習の成果と成長スピードの速さから、サビの「パプリ〜カ」の部分を指導した以外は特に直すところもなく、レコーディングは滞りなく終了した。振付はかねてより親交があり信頼を置く辻本知彦と菅原小春に依頼し、デモをもとに曲の説明した後、2人の思うようにと委ねられた。サビの「パプリ〜カ」の部分は「おばあちゃんでもこたつに入りながらできるように」など、「子どもからお年寄りの方まで踊れること」を意識して振付されている[15]。「小さな空気感」を演出するため、ダンスレッスンにて密かに録音されたじゃんけんなどの会話の音声が曲の前後や曲間に用いられた[14]。 Foorin
Foorin(フーリン[注 5])は、「〈NHK〉2020応援ソングプロジェクト」による応援ソングの歌唱のためにオーディションによって選出された5人の小中学生[注 1]男女で構成される混声ユニット。ユニット名は、グループの楽曲を手がける米津がメンバーの歌い踊る姿を風鈴に例えたことに由来する[12][18]。 2019年12月には平均年齢11.2歳で「第61回日本レコード大賞」にて日本レコード大賞を受賞し、もえの、りりこ、ちせの3名は同賞史上初の小学生での受賞者に[19]、また受賞時に9歳のちせは、史上最年少での同賞受賞者になった[10][20][21]。また史上初めて、受賞者が全員21世紀生まれであった。 2021年9月27日、派生ユニットのFoorin team E、Foorin 楽団バージョンと共に解散した[16]。 元メンバー
出演
解散後の出演
NHK紅白歌合戦出場歴(Foorinとして)
作品展開2018年
2019年
2020年
2021年
2024年
リリース2018年8月13日0時からダウンロード並びにサブスクリプションにより先行リリース、8月15日にソニー・ミュージックレコーズのMASTERSIX FOUNDATIONレーベルより通常版とCD+DVDの初回限定盤の2形態にてシングルリリースされた[32]。 米津のライブ映像やミュージックビデオを手がける映像作家の加藤隆がジャケットのイラストを手がけている[33]。初回限定盤は付属DVDに2種のミュージックビデオならびに振付担当の辻本知彦と菅原小春によるTeacher Video(教則ビデオ)を収録し、あわせてポスター型歌詞カードと『みんなのうた』の楽譜が付属する[32]。 営利目的で発売できないことから、CD販売の収益や米津の印税などは日本スポーツ振興センター内の「スポーツ振興基金」へ寄付され、次世代アスリートの育成などに使われる[3][33]。 リリース後はBillboard Japan Hot 100にてリリース週に23位を記録した後は100位圏外が長く続いていたが、2018年末の『第69回NHK紅白歌合戦』の企画コーナーへの出演をきっかけに人気に火が点き、2019年1月に圏外から一気にランクインして以降は音楽配信(ダウンロード、ストリーミング)、CD、カラオケと長期に渡ってチャートにランクインを続けるロングヒットとなっている[4]。 オリコンデジタルシングルチャート2018年
2019年
収録内容
参加ミュージシャンプロモーションリリースに先立ち、2018年7月24日に放送されたNHKの特番『内村五輪宣言! 〜TOKYO 2020開幕 2年前スペシャル〜』において、Foorinと2020年東京オリンピック・東京パラリンピックの公式マスコットキャラクターであるミライトワとソメイティの共演により初披露された[11][3][33][34]。また、7月19日にはYouTubeにてダンスミュージックビデオが、8月10日には世界観ミュージックビデオと称したドラマ仕立ての映像が公開された。 2018年8月にはNHKの『みんなのうた』で2018年8-9月の曲として同期間に放送、映像はFoorinのダンスによる「ダンスVer.」と、2020年東京オリンピックマスコットのミライトワとソメイティが登場する「マスコットVer.」がある[35]。「パプリカ Foorinバージョン」として2019年8月-9月の曲として同期間に再放送された。 2018年より各都道府県で「みんなでパプリカダンスを一緒に踊ろう!」というコンセプトのイベントを開催している。 2019年4月1日からは、NHK Eテレにて『〈NHK〉2020応援ソングプロジェクト「パプリカ」』と題し、毎週月曜日から金曜日の午後4時44分より、Eテレ番組の出演者によるコラボレーションバージョンが放送されている[36]。 →詳細は「§ テレビ番組」を参照
パフォーマンス2018年12月31日に放送された『第69回NHK紅白歌合戦』の「夢のキッズショー〜平成、その先へ〜」コーナーにてFoorinと『おかあさんといっしょ』、『いないいないばあっ!』、松田聖子、King & Prince、SexyZone、AKB48、乃木坂46、欅坂46らのメンバーによりコーナー最終楽曲として披露され話題となった[27][28][37]。 2019年12月31日に放送された『第70回NHK紅白歌合戦』にFoorinが紅組から正式枠で出場し[38]、全編英語詞の「Paprika Foorin team E version」を歌う「Foorin team E」との共演により、「パプリカ -紅白スペシャルバージョン-」[29]として披露された[30]。 称賛・栄誉2019年12月30日に開催された「第61回日本レコード大賞」において日本レコード大賞を受賞した[10]。2019年11月18日にノミネート作品が発表され、優秀作品賞にノミネートされ[39]、日本レコード大賞のノミネート作品となる優秀作品賞を受賞[40]。同年12月30日に放送された『輝く!第61回日本レコード大賞』(TBSテレビ・ラジオ)で中継された「第61回日本レコード大賞」において日本レコード大賞を受賞[10]、歌唱したFoorinは史上最年少での同賞受賞者となった[20][41]。 受賞歴
米津玄師バージョン
「パプリカ 米津玄師バージョン」と題して米津がセルフカバーし、NHK総合テレビ『みんなのうた』にて2019年の「8-9月のうた」に採用され8月1日から放送[42][43]、2020年の「2月-3月のうた」として再放送。また、2020年2月3日に配信リリース[44][45]。 映画『海獣の子供』の主題歌「海の幽霊」のオーケストラ編曲を手掛けた坂東祐大が、「馬と鹿」に続き本作の編曲を米津との共作で手掛けている[46]。また、演奏者として杵屋勝国悠(三味線)と多久潤一朗(笛)の二名がクレジットされている。 Foorin「パプリカ」 のシングルジャケットを手がけた加藤隆が映像を担当したミュージックビデオが2019年8月9日より公開され[47]、公開より4日と9時間で1,000万回を超える再生回数を記録している[48]。2020年6月14日に1億回再生を記録した。 2020年2月1日より開催されるアリーナツアー『米津玄師 2020 TOUR / HYPE』の開幕に合わせ、同年2月3日に米津玄師のセルフカバーバージョンが配信[49]され、同年8月5日に発売のアルバム『STRAY SHEEP』にも収録された。 日本レコード協会からは、2020年2月度にゴールド認定[50]、2020年11月度にプラチナ認定を受けた[51]。 2024年8月・9月には「パプリカ 特別再放送」として、本曲が「パプリカ ぼんおどり」と共に本放送枠で再放送された(本放送枠での再放送は1997年に「ごっつおさま」の代替で「わたしのふるさと」が放送されて以来27年ぶり)。 Foorin team E バージョン
「Paprika Foorin team E version」と題して、英語ネイティブの子どもたち5人により結成された「Foorin team E」(フーリン・チームイー)が歌う全編英語詞バージョンが、NHK総合テレビ『みんなのうた』にて「2019年12月-2020年1月の曲」として2019年12月1日より放送[52]、12月2日にデジタル配信で、2020年1月22日にCDシングルでリリースされた[53]。 「国境を越えて『パプリカ』で世界中のみんなと繋がってひとつになる」をテーマに、「日本のこども達から、世界のこども達へ、大きな輪をひろげていきたい」と世界への輪の拡大を意図して制作された[52]。歌詞の英訳はネルソン・バビンコイ[注 8]が担当し、原曲の旋律を崩すことなく、原詞にできるかぎり忠実に、韻を踏みつつ翻訳を行っている[55]。また、メンバーオーディションおよびレコーディング監修にも携わっている[56]。 2019年11月19日に東京・NHKホールで開催された「ABUソングフェスティバル in TOKYO」で初披露[57]。同年12月2日にミュージックビデオが公開され[53]、公開から5日間で180万回を超える再生回数を記録した[58]。同年12月31日にNHK総合ほかで放送の『第70回NHK紅白歌合戦』でもFoorinによる「パプリカ」とともに披露される[30][59]。 2020年1月22日のCDリリースにあわせて新たなミュージックビデオ「Paprika(world video)」が公開、Foorin Team Eに加えてフランス、ギリシャ、シンガポール、オーストラリア、南アフリカ、アメリカ、ブラジルなど全27か国29都市の子供たちが各地の名所で「パプリカダンス」を踊る映像が収められている[60][61]。 Foorin team E
オーディションによって選出された6歳から12歳の英語ネイティブの子どもたち5人により結成された[30][59]。ユニット名の「team E」(チームイー)はEnglish nativeチームの意である[52]。 Foorinのパプリカを、英語で歌う。 2021年9月27日に解散した。 メンバー(Foorin team E)
リリース(Foorin team E バージョン)2019年12月2日に全世界に向けてデジタル配信リリースを開始、2020年1月22日にCDシングルが国内発売された。初回盤は7インチの紙ジャケットはFoorin「パプリカ」ジャケットを手掛けた加藤隆が担当し、ポスターサイズの歌詞カード、ミュージックビデオを収録したDVD、折り紙を同梱する[53]。 Foorin「パプリカ」と同様に、本作における米津の印税は全額が日本スポーツ振興センター内の「スポーツ振興基金」へ寄付され、次世代アスリートの育成に用いられる[53]。 Foorin 楽団バージョン
「パプリカ Foorin 楽団バージョン」と題して、「Foorin」メンバー5人と病気や障害を持つ子たち10人により結成されたバンド「Foorin楽団」が演奏するバージョンが、NHK総合テレビ『みんなのうた』にて「2019年12月 - 2020年1月の曲」として2019年12月1日より放送されている。 歌やダンスに加え、ドラム、ピアノ、ガラクタ楽器、手歌、ボディパーカッションなどメンバーそれぞれが好きなこと、得意なことで演奏に参加し、さまざまな音楽表現を織り交ぜた新たな形の「パプリカ」となる[62][63]。通常は接点が少ない異なる病気・障害を持つ子どもたちがFoorinメンバーたちと一緒に「ごちゃまぜ」となって「パプリカ」を合奏することで、「共生社会」へ向けた試みの一つと位置づけられている[64]。 2019年11月8日開催の「第46回日本賞」授賞式で初披露された[63]。 2021年9月27日解散した。 メンバー「*」が併記されたメンバーはFoorinのメンバーでもある。
関連番組製作過程を3か月にわたって記録したメイキング映像が、1話5分のミニドキュメント番組としてNHK Eテレで2019年12月23日から12月27日に放送されている[65]。 現在はNHK_for_schoolで配信している。
その他のバージョン
その他の使用例選抜高等学校野球大会入場行進曲2020年3月19日より開催予定であった第92回選抜高等学校野球大会の入場行進曲に採用され[70]、同年1月28日には酒井格の編曲、新通英洋の指揮、Osaka Shion Wind Orchestraの演奏による行進曲の録音が行われた[71]。冒頭ではFoorinが歌う時のように明るく軽やかに、中間部では米津が歌う時のように少し大人の雰囲気でしっとりと編曲したものとされた[72]が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行の影響により開会式、後に大会自体が中止されることが決定し、大会入場行進曲としては陽の目を見ることはなかった[注 9]。 翌2021年の第93回大会でも、「(中止となった)前回大会と同じ曲を採用することで、すべての高校野球ファンに『復活』というメッセージを伝えたい」という日本高野連の意向により戦後初の2年連続同一行進曲として採用され[72]、同年2月2日には前年同様、Osaka Shion Wind Orchestraの演奏による録音が行われた。調が改められたほか、拍子も4/4拍子から6/8拍子に変更しており、前年のものよりも軽やかな印象に仕上がっている[73][74]。 接近メロディ京浜急行電鉄が2020年に開業10周年を迎える空港線羽田空港第3ターミナル駅の新しい接近メロディに使用する楽曲の募集を同年9月に行った結果、「英語版も制作され、世界でも広く知られている楽曲である」として本曲が採用され、同年11月21日から使用されている[75]。編曲は塩塚博が手掛けた[76]。 2021年3月19日から4月1日までは、前述の第93回選抜高等学校野球大会の開催に合わせて、大会が行われる阪神甲子園球場の最寄り駅である阪神電気鉄道甲子園駅でも接近メロディとして使用されていた[77]。編曲は向谷実が手掛けた[78]。 教科書への採用2022年度より使用される高校の「書道Ⅰ」の教科書(東京書籍より刊行)にて、漢字仮名交じり書の題材としてパプリカのサビ部分の歌詞が取り上げられた[79]。 カバー以下のカバー音源が発売されている。
テレビ番組
『〈NHK〉2020応援ソングプロジェクト「パプリカ」』と題し、NHK Eテレにて2019年4月1日(土曜日は2020年4月4日)から月曜から木曜(金曜のみ「からだ☆ダンダン」、「オハヨッシャ!」隔週)の16時44分から16時45分と土曜の9時29分から9時30分と17時34分から17時35分に放送されている。 FoorinやNHK Eテレの番組に登場する人気キャラクター・出演者たちが、「パプリカ」を歌い踊る1分番組。 脚注注釈出典
外部リンク
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