Google Web Toolkit (GWT) は、Javaを使ってウェブ用Ajaxアプリケーションを開発できるオープンソースのJavaソフトウェア開発フレームワークである。Apache License 2.0でライセンスされている[2][3]。
GWTは再利用可能で効率的なAjaxソリューションであることを強調しており、すなわち非同期RPC、履歴管理、ブックマーク、ブラウザ間の移植性の良さなどを特徴とする。
歴史
GWT version 1.0 RC 1 (build 1.0.20) は2006年5月16日にリリースされた[4]。Googleは2006年のJavaOneでGWTを発表した[5]。
リリース履歴
バージョン
|
日付
|
GWT 1.0 |
2006年5月17日
|
GWT 1.1 |
2006年8月11日
|
GWT 1.2 |
2006年11月16日
|
GWT 1.3 |
2007年2月5日
|
GWT 1.4 |
2007年8月28日
|
GWT 1.5 |
2008年8月27日
|
GWT 1.6 |
2009年4月7日
|
GWT 1.7 |
2009年7月20日
|
GWT 2.0 |
2009年12月8日
|
GWT 2.1.0 |
2010年10月19日
|
GWT 2.2.0 |
2011年2月11日
|
GWT 2.3.0 |
2011年5月3日
|
GWT 2.4.0 |
2011年9月8日
|
GWT 2.5.0 |
2012年10月25日
|
GWT 2.5.1 |
2013年3月9日
|
GWT 2.6.0 |
2014年1月30日
|
GWT 2.6.1 |
2014年5月10日
|
GWT 2.7.0 |
2014年11月20日
|
GWT 2.8.0 |
2016年10月20日
|
GWT 2.8.1 |
2017年4月24日
|
GWT 2.8.2 |
2017年10月19日
|
GWT 2.9.0 |
2020年5月13日
|
GWT 2.10.0 |
2022年6月9日
|
開発
GWTを使うとAjaxアプリケーションをJavaとJava用開発ツールを使って素早く開発できる。そして、そのアプリケーションを配布する際には、GWTクロスコンパイラがJavaからJavaScriptへの変換を行い、オプションで高度に最適化された(読みにくい)コードも生成できる。
GWTは単にインタフェースまわりの開発にとどまらず、JavaScriptを使った任意の高機能クライアントを構築できる。GWT開発者は、GWTは単なるライブラリではなく、新たなAjaxライブラリの実装というだけではないことを強調する。そのオープンエンドの哲学は徹底しており、多くのアーキテクチャ上の決定がGWTを利用する開発者に委ねられている。GWTの目的を記した文書を見ると、GWTの役割と開発者の役割をわかりやすく解説している。例えば、履歴トークンはGWTが管理するが、履歴トークンがアプリケーションの状態とどう対応するかは開発者に委ねられている。
GWTアプリケーションは以下の2つのモードで動作する。
- ホステッドモード : JavaバイトコードとしてJava仮想マシン (JVM) 上で動作する。一般に開発途中で利用するモードで、コードのホットスワップやデバッグをサポートしている。
- ウェブモード : JavaScriptとHTMLとして動作する。元は Java のソースコードである。開発完了後は、この形態で使用する。
GWTにはコマンド行ユーティリティapplicationCreatorがあり、GWTプロジェクトを開始するのに必要な全ファイルを自動生成する。Eclipse用プロジェクトファイルを生成することもできる。GWTを使ったIDEでの開発を支援するオープンソースのプラグインがいくつかある。例えばNetBeans向けのGWT4NB、Eclipse向けのCypal Studio for GWTやGoogle社が作成、提供しているGoogle Plugin for Eclipse、JDeveloper向けのgwtDeveloperなどである。
コンポーネント
主なGWTコンポーネントは以下の通り。
- GWT Java-to-JavaScript Compiler
- Javaで書かれたプログラムをJavaScriptに変換する。
- GWT Hosted Web Browser
- 開発時にGWTアプリケーションをホステッドモードで動作させる(JavaScriptに変換することなく、JavaアプリケーションをJVM上で動作させる)
- JREエミュレーションライブラリ
- Javaの標準クラスライブラリでよく使われるクラス(java.langパッケージのクラスやjava.utilパッケージの一部のクラス)をJavaScriptで実装したもの
- GWT Web UIクラスライブラリ
- ウィジェット生成のためのカスタムインタフェースとクラス群
機能
- 動的かつ再利用可能なUIコンポーネント : 実装に時間のかかる動的機能(ドラッグ・アンド・ドロップや仮想ツリー構造など)が予め実装されたクラスを使うことができる[6]。
- 単純なRPC機構
- ブラウザ履歴管理
- 高機能Javaデバッガサポート[5]
- ブラウザ間の非互換問題への対処[5]
- JUnit統合
- 国際化が容易
- JavaScript Native Interface (JSNI) を使って、人間が書いたJavaScriptコードとJavaソースコードを組み合わせることができる。
- Google のAPIをGWTアプリケーションで使えるようサポート(Google Gears など)。
- オープンソース
- JavaScriptではなくJavaを使って開発できるので、純粋なオブジェクト指向でアプリケーションを設計できる[6]。誤字やデータ型の不一致など、JavaScriptで実行時に発生する主なエラーは、コンパイル時に検出できる。
- GWTコンパイラが生成するJavaScriptのコードは、人間が読みやすい形式とダウンロードが高速な(読みにくい)形式を選択できる[6]。
- GWT向けの各種ライブラリをGoogleやサードパーティーが提供している。それを使ってGWTの機能を拡張可能[6]。
使用可能なウィジェット
version 1.4(2007年8月)で提供しているウィジェットは以下の通り[7]。
- HTMLプリミティブ(ボタン、ラジオボタン、チェックボックス、テキストボックス、パスワードテキストボックス、テキストエリア、ハイパーリンク、リストボックス、テーブルなど)
- プッシュボタン、トグルボタン
- メニューバー
- ツリー
- タブバー
- ダイアログボックス
- 各種パネル (PopupPanel, StackPanel, HorizontalPanel, VerticalPanel, FlowPanel, VerticalSplitPanel, HorizontalSplitPanel, DockPanel, TabPanel, DisclosurePanel)
- リッチテキストエリア
- サジェストボックス(自動補完)
- デートピッカー(日付選択)
GWTにない一般的ウィジェットはサードパーティのライブラリで実装している。例えば、Ext GWT、GWT Component Library、GWT Widget Library、GWT-Ext、GWTiger、Rocket GWT などがある。
関連項目
脚注
参考文献
- Dewsbury, Ryan (2007年). Google Web Toolkit Applications. Prentice Hall. ISBN 978-0321501967
- Chaganti, Prabhakar (2007年). Google Web Toolkit: GWT Java Ajax Programming. Packt Publishing. ISBN 978-1847191007
- Geary, David (2007年). Google Web Toolkit Solutions: More Cool & Useful Stuff. Prentice Hall. ISBN 978-0132344814
- Hanson, Robert; Adam Tacy (2007年). GWT in Action: Easy Ajax with the Google Web Toolkit. Manning. ISBN 978-1933988238
- Cooper, Robert; Charlie Collins (2008年). GWT in Practice. Manning. ISBN 978-1933988290
外部リンク