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近代三角形幾何学 」は
暫定的なもの です。
(2024年6月 )
エミール・ルモワーヌ (1840–1912)
数学 において、近代三角形幾何学 [訳語疑問点 ] (きんだいさんかくけいきかがく、 英語 : modern triangle geometry, new triangle geometry )は19世紀 後半から急激に発展した、三角形 の性質に関連する研究の体系である。
三角形の諸性質はユークリッド の時代から研究され続けてきた。ユークリッド原論 では、三角形の重要な心として重心 (幾何中心)、内心 、外心 、垂心 が記述されている。17世紀 のブレーズ・パスカル 、ジョバンニ・チェバ 、18世紀 のレオンハルト・オイラー 、19世紀 のカール・フォイエルバッハ など多くの数学者により三角形の研究が成された。19世紀前半から後半にかけての三角形幾何学 (ドイツ語版 ) は近世三角形幾何学と呼ばれる[ 1] [ 2] [ 3] 。
1873年のエミール・ルモワーヌ の論文 On a remarkable point of the triangle はネイサン・アルトシラー・コート によって
laid the foundations...of the modern geometry of the triangle as a whole
と評価されている[ 4] [ 5] [ 6] 。ルモワーヌの著作を出版したAmerican Mathematical Monthly (英語版 ) は
To none of these [geometers] more than Émile-Michel-Hyacinthe Lemoine is due the honor of starting this movement of modern triangle geometry
と宣言している[ 7] 。ルモワーヌのこの論文は、19世紀の最後の四半世紀 以後の三角形の性質への関心を非常に高めることとなった。1914年 に出版された Klein's Encyclopedia of Mathematical Sciences (英語版 ) は100ページを超える三角形幾何学の記事で、このような高まりを物語っている一例である[ 8] [ 9] 。
「new triangle geometry」は、ただ三角形に関する図形などの対象を指すこともあった。例えばルモワーヌ点 、ブロカール円 、ルモワーヌ線 が挙げられる。後に、幾何的な変換 から派生した結果をまとめる理論も開発された。この理論の発展から 「new triangle geometry」は単に対象を指す言葉ではなく、対象の分類や研究の方法に対しても使われる言葉になった。1887年 のヨーロッパとアメリカで使われた幾何学の教科書 Teaching new geometrical methods with an ancient figure in the nineteenth and twentieth centuries では
Being given a point M in the plane of the triangle, we can always find, in an infinity of manners, a second point M' that corresponds to the first one according to an imagined geometrical law; these two points have between them geometrical relations whose simplicity depends on the more or less the lucky choice of the law which unites them and each geometrical law gives rise to a method of transformation a mode of conjugation which it remains to study
との記述がある[ 10] 。
しかし、この高まりは一度収束して、20世紀 まで、完全に姿を見せなかった。 エリック・テンプル・ベル の Development of Mathematics 内で、三角形幾何学についてこのような言及がある[ 9] 。
The geometers of the 20th Century have long since piously removed all these treasures to the museum of geometry where the dust of history quickly dimmed their luster.
フィリップ・J・デイヴィス は三角形幾何学の衰退に以下のようないくつかの理由があると述べた[ 9] 。
専門性が低く初等的だと感じる
研究方法の可能性の枯渇
視覚的な複雑さ
解析的な手法が優先されたこと
タイル張り 、フラクタル 、グラフ理論 など他の視覚的な分野との競合
近代的なコンピュータ の登場は、三角形幾何学の復興に大きな影響を与えた。熱心な幾何学 者らによって、三角形幾何学は再び活発な分野となった。 その典型例として、クラーク・キンバーリング (英語版 ) の三角形の心 をまとめたウェブサイト Encyclopedia of Triangle Centers や、Bernard Gibertの三角形の三次曲線 をまとめたウェブサイト、Catalogue of Triangle Cubics が挙げられる[ 11] [ 12] 。他にも、フロリダ・アトランティック大学 のパウル・ヨウ によるジャーナル Forum Geometricorum が近代の三角形幾何学の発展に貢献している。
ルモワーヌ幾何学
ルモワーヌ点
△ABC の重心をG とする。AG,BG,CG をそれぞれA,B,C の角の二等分線 で鏡映 した線は類似中線 (Symmedian)と呼ばれる。3本の類似中線は共点 で、この点を類似重心 (ルモワーヌ点、グリーブ点)という。△ABC のそれぞれの辺をa,b,c として、類似重心の重心座標 はa 2 :b 2 :c 2 である。 類似重心は「one of the crown jewels of modern geometry」と言われている[ 13] 。 この点に関する文献にはジョン・スタージャン・マッカイ (英語版 ) の「history of the symmedian point」などがある[ 14] 。
類似重心と重心のような関係は等角共役 として一般化されている。△ABC と点P について、AP,BP,CP をそれぞれA,B,C の角の二等分線で鏡映した直線は、一点で交わる。これをP の等角共役点 という。
ルモワーヌ円
類似重心を通り各辺に平行 な直線と他二辺の交点、計6点は同一円上にある 。この円を第一ルモワーヌ円 という。円の中心は、類似重心と外心 の中点 である。また、この性質も一般化されている(三角形の円錐曲線 を参照)
類似重心を通る各辺の逆平行線 と、他二辺の交点も共円である。この円を第二ルモワーヌ円 または余弦円(cosine circle)という。中心は類似重心である。
ルモワーヌ軸
△ABC とその接線三角形 (類似重心の反チェバ三角形 )の配景 の軸をルモワーヌ軸という。これは類似重心の三線極線 である[ 15] [ 16] 。
初期の近代三角形幾何学
ルモワーヌの論文が発表された後の三角形幾何学に関する発見を挙げる(1910年のウィリアム・ゲラトゥリ の書籍と1929年のロジャー・アーサー・ジョンソン の書籍に基づく)[ 17] [ 18] 。
Poristic triangles
内接円 と外接円 を共有する三角形はPoristic triangles(条件付不定[ 19] 三角形)と呼ばれる。オイラーの定理 によれば、外接円、内接円の半径をそれぞれR,r として外心と内心の距離の二乗はR 2 -2Rr で表される。Poristic trianglesに対して、重心 などいくつかの点の軌跡 は円 または点となる(ヴァイルの定理 、ポンスレの閉形定理 も参照)[ 20] 。
シムソン線
△ABC の外接円上の点P について、P から各辺に降ろした垂線 の足は共線 である。この線はシムソン線 と呼ばれる[ 21] 。
垂足三角形と反垂足三角形
点P から各辺に降ろした垂線の足が成す三角形をP の垂足三角形 という[ 22] 。A,B,C を通り、それぞれAP,BP,CP に垂直 な直線の成す三角形を反垂足三角形という。 P の垂足三角形とQ の反垂足三角形が相似の位置 (英語版 ) にある且つ、Q の垂足三角形とP の反垂足三角形が相似の位置にある場合、P,Q はcounter points と呼ばれる[ 23] [ 24] 。
直極点
任意の直線 l について、A,B,C からl に降ろした垂線の足をP,Q,R とする。P,Q,R を通るBC,CA,AB の垂線 は一点で交わる。これをl の直極点 と言う。近代の三角形幾何学の文献には直極点を扱ったものが多く存在する[ 25] [ 26] 。
ブロカール点
BC,CA,AB に接して 、それぞれC,A,B を通る円は一点で交わる 。同様にB,C,A を通る円も共点である。この2点をブロカール点 という。
Ω
,
Ω
′
{\displaystyle \Omega ,\Omega ^{\prime }}
で表される場合が多い。接弦定理 から示すことができる[ 27] 。また、この時∠PBC ,PCA ,PAB は等しい。この角をブロカール角 といい、
ω
{\displaystyle \omega }
で表される。ブロカール角に関して、以下の等式が成り立つ。
cot
ω
=
cot
A
+
cot
B
+
cot
C
.
{\displaystyle \cot \omega =\cot A+\cot B+\cot C.}
ブロカール点、ブロカール角は多くの興味深い性質を持つ[ 28] [ 29] 。
画像
現代の三角形幾何学
三角形の心
20世紀のもっとも重要な三角形幾何学の概念の一つに三角形の中心 が挙げられる。1994年にクラーク・キンバーリング (英語版 ) によって導入され、非常に多くの点が統一的に扱われるようになった[ 30] 。 この概念の導入後は、三角形の中心なしでは三角形の諸性質は完結しなくなった。
三角形の心の定義
3つの実数 a,b,c について関数 f を以下の様に定義する。
斉次性: f (ta ,tb ,tc ) = t n f (a ,b ,c ) ( n は任意の定数 で、t はすべての正の実数 )
2,3つ目の変数に対する対称性: f (a ,b ,c ) = f (a ,c ,b )
f が零関数 でない且つ上の二条件を満たすならばそれをtriangle center function と呼ぶ。a,b,c が三角形の各辺 の長さであるならば、重心座標 または三線座標 において表記された点f (a ,b ,c ): f (b ,c ,a ) : f (c ,a ,b ) を三角形の心 という。この定義によれば、傍心 やブロカール点 は三角形の中心でない[ 31] 。
クラーク・キンバーリングは、三角形の心をまとめたEncyclopedia of Triangle Centers を運営している。このウェブサイトには2024年現在、62000個程度 の三角形の心が登録されている。
Central line
現代の三角形幾何学のもう一つの重要な概念にCentral line が挙げられる。Central lineは三角形の心と密接に関わっている。
central lineの定義
△ABC において、三線座標 (x : y : z ) を変数とし、以下の式で表される直線をCentral line という[ 32] [ 33] 。
f
(
a
,
b
,
c
)
x
+
g
(
a
,
b
,
c
)
y
+
h
(
a
,
b
,
c
)
z
=
0
{\displaystyle f(a,b,c)x+g(a,b,c)y+h(a,b,c)z=0}
ただしf (a ,b ,c ): g (b ,c ,a ) : h (c ,a ,b ) は三角形の中心である。
幾何的なcentral lineの作図
三角形の円錐曲線
三角形の円錐曲線 は三角形に対して定義される平面円錐曲線 である。代表的なものに外接円 と内接円 、シュタイナー楕円 、キーペルト双曲線 がある。他に2点と1辺の組に対して定義されるアルツト放物線 、いくつかの円錐曲線の集合であるホフスタッター楕円 やイフ円錐曲線 などもある。「Triangle conics」と言う語に正確な定義はされていないがMathWorld には42個の「Triangle conics」と書かれた項が存在する[ 34] 。
三角形の三次曲線
三次曲線 は三角形の研究に、主に軌跡 を調べる場合などに自然に出現する。 例えば、点P を三角形の各辺BC,CA,AB で鏡映 した点P A ,P B ,P C について、AP A ,BP B ,CP C が共点 であるとき、P の軌跡はノイベルグ三次曲線 と呼ばれる三次曲線を成す。三角形の三次曲線はBernard Gibertの運営するCatalogue of Triangle Cubics に1200個程度登録されており、重心座標による方程式や、軌跡などのさまざまな情報が記載されている。
三角形幾何学とコンピュータ
20世紀、21世紀のコンピュータの発展は三角形幾何学の発展に大きな影響を与えた。例えばGeoGebra やGeometer's Sketchpad (英語版 ) が挙げられる。
フィリップ・J・デイヴィス はコンピュータが三角形幾何学にどのように影響したか以下のように言及している[ 9] 。
Computers have been used to generate new results in triangle geometry.[ 35] A survey article published in 2015 gives an account of some of the important new results discovered by the computer programme "Dircoverer".[ 36] The following sample of theorems gives a flavor of the new results discovered by Discoverer.
Theorem 6.1 Let P and Q are points, neither lying on a sideline of triangle ABC. If P and Q are isogonal conjugates with respect to ABC, then the Ceva product of their complements lies on the Kiepert hyperbola.
Theorem 9.1. The Yff center of congruence is the internal center of similitude of the incircle and the circumcircle with respect to the pedal triangle of the incenter.
The Lester circle is the circle which passes through the circumcenter, the nine-point center and the outer and inner Fermat points. A generalised Lester circle is a circle which passes through at least four triangle centers. Discoverer has discovered several generalized Lester circles.
Sava Grozdev、奥村博 、Deko Dekovなどはユークリッド幾何学に特化した百科事典の運営を行っている[ 37] 。
関連項目
出典
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参考文献