三次曲線の種類
数学 において、三次曲線 (さんじきょくせん、英 : cubic )、特にユークリッド幾何学 における平面三次曲線 (英 : cubic plane curve )は以下のような三次方程式 によって定義される代数曲線 である。
F
(
x
,
y
,
z
)
=
0
{\displaystyle F(x,y,z)=0}
ここで
(
x
:
y
:
z
)
{\displaystyle (x:y:z)}
は射影平面 上の斉次座標 、またはアフィン空間 の非斉次座標でz = 1 とした座標で、F は三次の斉次多項式 、すなわち以下のような0でない三次単項式 の線形結合とする。
x
3
,
y
3
,
z
3
,
x
2
y
,
x
2
z
,
y
2
x
,
y
2
z
,
z
2
x
,
z
2
y
,
x
y
z
{\displaystyle x^{3},y^{3},z^{3},x^{2}y,x^{2}z,y^{2}x,y^{2}z,z^{2}x,z^{2}y,xyz}
これら10個の項から成ることより、三次曲線は任意の可換体 K 上で9次元の射影空間 を成す。また三次曲線C を満たす1点P は1つの線形条件を課す。したがって9つの点を通る三次曲線はただ一つに決定される。 5つの点で決定する円錐曲線 と比較してみると、2つの三次曲線が9つの点を通るならば、それらは束 を成し、さらなる性質を持つこととなる(ケイリー=バッハラッハの定理 )。
特異的な三次曲線 y 2 = x 2 ⋅ (x + 1) . 媒介変数表示 t ↦ (t 2 – 1, t ⋅ (t 2 – 1)) .
三次曲線には特異点 を持つものもあり、射影直線 におけるパラメトリック方程式 となる。一方、 特異点を持たない三次曲線は複素数 のような代数的閉体 上に9つの変曲点 を持つ。これは、三次曲線を再定義するヘッセ行列 の同次座標をC と掛け合わせることにより示すことができる(ベズーの定理 )。しかし、これらの点のうちは実射影平面 上にあるのは3点だけであり、他の点は実射影平面上で曲線を描いても見ることはできない。特異点を持たない三次曲線の9つの変曲点 は、そのうちの2つを通るすべての直線がちょうど3つの変曲点を含むという性質を持っている。
実射影平面上にある変曲点はニュートン によって研究され、非特異な三次曲線の実点が1つか2つの「オーバル 」を通ることが発見された。 これらのオーバルのうちの1つは、すべて射影直線を横切るので、ユークリッド平面 に描いたときには見ることができず、3つの実変曲点を含む、1本または3本の無限の分岐として現れる。もう1つのオーバルは、存在するとしても変曲点を含まず、オーバルか2つの無限の分岐のように見える。 円錐曲線 の断面の様に直線はオーバルを最大2点で切断する。
非特異な三次曲線はK 上の楕円曲線 でもある。楕円曲線は普通、ワイエルシュトラスの楕円関数 を変形したもので研究されており、三次関数の平方根 で作られた有理関数 上で定義されている。これはワイエルシュトラス標準形の無限遠点 としてはたらくK -有理点 に依存する。K が有理数 体のとき多くの三次曲線はそのような点を持たない。
尖点 や二重点 など、特異的な三次曲線の特異点は限られている。 そのような3次曲線は、2次曲線と直線、または3つの直線に退化する。したがって2次曲線と直線の場合は、2つのニ重点または二重尖点 (英語版 ) 、3つの直線の場合はまたは3つのニ重点か1つの三重点(共点 )を持つ。
三角形の三次曲線
△ABC の辺について
a
=
|
B
C
|
,
{\displaystyle a=|BC|,}
b
=
|
C
A
|
,
{\displaystyle b=|CA|,}
c
=
|
A
B
|
{\displaystyle c=|AB|}
とする。△ABC の有名な三次曲線は様々な三角形の中心 を通る。以下は斉次座標である三線座標と重心座標 を用いる。
三線座標から重心座標への変換は以下の様に行われれる。
x
→
b
c
x
,
y
→
c
a
y
,
z
→
a
b
z
;
{\displaystyle x\to bcx,\quad y\to cay,\quad z\to abz;}
重心座標から三線座標への変換は以下の様に行われれる。
x
→
a
x
,
y
→
b
y
,
z
→
c
z
.
{\displaystyle x\to ax,\quad y\to by,\quad z\to cz.}
三次曲線の多くは以下の形式で表される。
f
(
a
,
b
,
c
,
x
,
y
,
z
)
+
f
(
b
,
c
,
a
,
y
,
z
,
x
)
+
f
(
c
,
a
,
b
,
z
,
x
,
y
)
=
0.
{\displaystyle f(a,b,c,x,y,z)+f(b,c,a,y,z,x)+f(c,a,b,z,x,y)=0.}
この式は下記のような上の式を略した表記を用いることもある。
∑
cyclic
f
(
x
,
y
,
z
,
a
,
b
,
c
)
=
0
{\displaystyle \sum _{\text{cyclic}}f(x,y,z,a,b,c)=0}
.
またX の等角共役点 をX* とする。このとき三線座標において
X
=
x
:
y
:
z
{\displaystyle X=x:y:z}
ならば
X
∗
=
1
x
:
1
y
:
1
z
{\displaystyle X^{*}={\tfrac {1}{x}}:{\tfrac {1}{y}}:{\tfrac {1}{z}}}
が成り立つ。
ノイベルグ三次曲線
△ABC のノイベルグ三次曲線 X を辺BC, CA, AB で鏡映した点をXA , XB , XC としAXA , BXB , CXC が一点で交わるようなX の軌跡である。
三線座標:
∑
cyclic
(
cos
A
−
2
cos
B
cos
C
)
x
(
y
2
−
z
2
)
=
0
{\displaystyle \sum _{\text{cyclic}}(\cos {A}-2\cos {B}\cos {C})x(y^{2}-z^{2})=0}
重心座標:
∑
cyclic
(
a
2
(
b
2
+
c
2
)
+
(
b
2
−
c
2
)
2
−
2
a
4
)
x
(
c
2
y
2
−
b
2
z
2
)
=
0
{\displaystyle \sum _{\text{cyclic}}(a^{2}(b^{2}+c^{2})+(b^{2}-c^{2})^{2}-2a^{4})x(c^{2}y^{2}-b^{2}z^{2})=0}
ノイベルグ三次曲線 (Neuberg cubic)はX* が直線EX 上(E はオイラー無限遠点X (30) 、オイラー線 方向の無限遠点 )にあるような点X の軌跡、つまりXX* がオイラー線と平行になるような点の軌跡である。X を辺BC, CA, AB で鏡映した点をXA , XB , XC とし、△XA XB XC と△ABC が配景 なX の軌跡とも定義される。
ノイベルグ三次曲線は頂点、内心と傍心 、外心 、垂心 、フェルマー点 、等力点 、オイラー無限遠点などを通る。
Cubics in the Triangle Plane ではK001 と登録されている。
17点三次曲線(Thomson Cubic)
17点三次曲線(黒い線)。17点三次曲線上のX ,X* ,X (2) (重心)は共線 である。
三線座標:
∑
cyclic
b
c
x
(
y
2
−
z
2
)
=
0
{\displaystyle \sum _{\text{cyclic}}bcx(y^{2}-z^{2})=0}
重心座標:
∑
cyclic
x
(
c
2
y
2
−
b
2
z
2
)
=
0
{\displaystyle \sum _{\text{cyclic}}x(c^{2}y^{2}-b^{2}z^{2})=0}
17点三次曲線はX* が直線GX (G は重心 )上にあるような点X の軌跡である。
17点三次曲線は頂点、内心と傍心、重心、外心、垂心、類似重心 、辺の中点などを通る。
Cubics in the Triangle PlaneではK002 として登録されている。
ダルブー三次曲線
ダルブー三次曲線、 X のBC, CA, AB に対する垂足三角形 が元の三角形と配景的であるようなX の軌跡
三線座標:
∑
cyclic
(
cos
A
−
cos
B
cos
C
)
x
(
y
2
−
z
2
)
=
0
{\displaystyle \sum _{\text{cyclic}}(\cos {A}-\cos {B}\cos {C})x(y^{2}-z^{2})=0}
重心座標:
∑
cyclic
(
2
a
2
(
b
2
+
c
2
)
+
(
b
2
−
c
2
)
2
−
3
a
4
)
x
(
c
2
y
2
−
b
2
z
2
)
=
0
{\displaystyle \sum _{\text{cyclic}}(2a^{2}(b^{2}+c^{2})+(b^{2}-c^{2})^{2}-3a^{4})x(c^{2}y^{2}-b^{2}z^{2})=0}
ダルブー三次曲線(Darboux Cubic)はX* が直線LX 上(L はド・ロンシャン点 )にあるような点X の軌跡である。ダルブー三次曲線上のX の垂足三角形 はチェバ三角形 で、チェバ三角形の元の点はリュカ三次曲線を成す。また、X の垂足三角形はX の反チェバ三角形と配景的で、その配景の中心はトムソン三次曲線を成す。
ダルブー三次曲線は頂点、内心と傍心、外心、垂心、ドロンシャン点、頂点の外接円に対する対蹠点などを通る。
Cubics in the Triangle Planeでは、K004 として登録されている。
ナポレオン-フォイエルバッハ三次曲線
三線座標:
∑
cyclic
cos
(
B
−
C
)
x
(
y
2
−
z
2
)
=
0
{\displaystyle \sum _{\text{cyclic}}\cos(B-C)x(y^{2}-z^{2})=0}
重心座標:
∑
cyclic
(
a
2
(
b
2
+
c
2
)
+
(
b
2
−
c
2
)
2
)
x
(
c
2
y
2
−
b
2
z
2
)
=
0
{\displaystyle \sum _{\text{cyclic}}(a^{2}(b^{2}+c^{2})+(b^{2}-c^{2})^{2})x(c^{2}y^{2}-b^{2}z^{2})=0}
ナポレオン-フォイエルバッハ三次曲線(Napoleon-Feuerbach cubic)はX* が直線NX 上(N = X (5) ,九点円 の中心)にある点X の軌跡である。
ナポレオン-フォイエルバッハ三次曲線は頂点、内心と傍心、外心、垂心、ナポレオン点 などを通る。
Cubics in the Triangle Planeでは K005 として登録されている。
リュカ三次曲線
リュカ三次曲線 、 X ののチェバ三角形 がダルブー三次曲線上の点の垂足三角形 となるような点X の軌跡。
三線座標:
∑
cyclic
cos
(
A
)
x
(
b
2
y
2
−
c
2
z
2
)
=
0
{\displaystyle \sum _{\text{cyclic}}\cos(A)x(b^{2}y^{2}-c^{2}z^{2})=0}
重心座標:
∑
cyclic
(
b
2
+
c
2
−
a
2
)
x
(
y
2
−
z
2
)
=
0
{\displaystyle \sum _{\text{cyclic}}(b^{2}+c^{2}-a^{2})x(y^{2}-z^{2})=0}
リュカ三次曲線(Lucas cubic)はX のチェバ三角形がダルブ―三次曲線上の点の垂足三角形となるような点X の軌跡である。
リュカ三次曲線は頂点、反中点三角形の頂点、シュタイナー外接楕円 の焦点、重心、垂心、ジェルゴンヌ点 、ナーゲル点 、ド・ロンシャン点 などを通る。
Cubics in the Triangle PlaneではK007 として登録されている。
第一ブロカール三次曲線
第一ブロカール三次曲線、第一ブロカール三角形 を△A'B'C' とし、XA', XB', XC' とBC, CA, CB, のそれぞれの交点が共線であるような点X の軌跡。
三線座標:
∑
cyclic
b
c
(
a
4
−
b
2
c
2
)
x
(
y
2
+
z
2
)
=
0
{\displaystyle \sum _{\text{cyclic}}bc(a^{4}-b^{2}c^{2})x(y^{2}+z^{2})=0}
重心座標:
∑
cyclic
(
a
4
−
b
2
c
2
)
x
(
c
2
y
2
+
b
2
z
2
)
=
0
{\displaystyle \sum _{\text{cyclic}}(a^{4}-b^{2}c^{2})x(c^{2}y^{2}+b^{2}z^{2})=0}
△A'B'C' を第一ブロカール三角形 (1st Brocard cubic)、XA , XB , XC .をそれぞれXA′, XB′, XC′ と BC, CA, AB, の交点とする。このときXA , XB , XC が共線となるような点X の軌跡を第一ブロカール三次曲線と言う。
第一ブロカール三次曲線は頂点、第一,第三ブロカール点の頂点、重心、類似重心、シュタイナー点 などを通る。
Cubics in the Triangle Planeでは K017 として登録されている。
第二ブロカール三次曲線
三線座標:
∑
cyclic
b
c
(
b
2
−
c
2
)
x
(
y
2
+
z
2
)
=
0
{\displaystyle \sum _{\text{cyclic}}bc(b^{2}-c^{2})x(y^{2}+z^{2})=0}
重心座標:
∑
cyclic
(
b
2
−
c
2
)
x
(
c
2
y
2
+
b
2
z
2
)
=
0
{\displaystyle \sum _{\text{cyclic}}(b^{2}-c^{2})x(c^{2}y^{2}+b^{2}z^{2})=0}
第二ブロカール三次曲線(2nd Brocard cubic)は直線XX* の、X ,X* を通る外接円錐曲線 に対する極がブロカール軸 上にあるような点X の軌跡である。頂点、重心、類似重心、フェルマー点、等力点、パリー点 、第二,第四ブロカール三角形の頂点を通る。
Cubics in the Triangle Planeでは K018 として登録されている。
1st equal areas cubic
第一等積三次曲線:X のチェバ三角形とX* のチェバ三角形の面積が等しくなるような点X の軌跡。
三線座標:
∑
cyclic
a
(
b
2
−
c
2
)
x
(
y
2
−
z
2
)
=
0
{\displaystyle \sum _{\text{cyclic}}a(b^{2}-c^{2})x(y^{2}-z^{2})=0}
重心座標:
∑
cyclic
a
2
(
b
2
−
c
2
)
x
(
c
2
y
2
−
b
2
z
2
)
=
0
{\displaystyle \sum _{\text{cyclic}}a^{2}(b^{2}-c^{2})x(c^{2}y^{2}-b^{2}z^{2})=0}
1st equal areas cubicはX のチェバ三角形とX* のチェバ三角形の面積が等しくなるような点X の軌跡である。X* が直線S*X 上(S = X (99) ,シュタイナー点)にあるような点X の軌跡とも定義される。
1st equal areas cubicは内心と傍心、シュタイナー点 、第一,第二ブロカール点 を通る。
Cubics in the Triangle Planeでは K021 として登録されている。
2nd equal areas cubic
三線座標:
(
b
z
+
c
x
)
(
c
x
+
a
y
)
(
a
y
+
b
z
)
=
(
b
x
+
c
y
)
(
c
y
+
a
z
)
(
a
z
+
b
x
)
{\displaystyle (bz+cx)(cx+ay)(ay+bz)=(bx+cy)(cy+az)(az+bx)}
重心座標:
∑
cyclic
a
(
a
2
−
b
c
)
x
(
c
3
y
2
−
b
3
z
2
)
=
0
{\displaystyle \sum _{\text{cyclic}}a(a^{2}-bc)x(c^{3}y^{2}-b^{3}z^{2})=0}
2nd equal areas cubicは三線座標で
X
=
x
:
y
:
z
{\displaystyle X=x:y:z}
,
X
Y
=
y
:
z
:
x
{\displaystyle X_{Y}=y:z:x}
,
X
Z
=
z
:
x
:
y
.
{\displaystyle X_{Z}=z:x:y.}
とし、XY とXZ のチェバ三角形の面積が等しくなるような点X の軌跡である。
2nd equal areas cubicは内心、重心、類似重心 X (31), X (105), X (238), X (292), X (365), X (672), X (1453), X (1931), X (2053)などを通る。
Cubics in the Triangle Planeでは K155 として登録されている。
出典
関連
参考文献
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Cerin, Zvonko (1998), “Locus properties of the Neuberg cubic”, Journal of Geometry 63 (1–2): 39–56, doi :10.1007/BF01221237 .
Cerin, Zvonko (1999), “On the cubic of Napoleon”, Journal of Geometry 66 (1–2): 55–71, doi :10.1007/BF01225672 .
Cundy, H. M. & Parry, Cyril F. (1995), “Some cubic curves associated with a triangle”, Journal of Geometry 53 (1–2): 41–66, doi :10.1007/BF01224039 .
Cundy, H. M. & Parry, Cyril F. (1999), “Geometrical properties of some Euler and circular cubics (part 1)”, Journal of Geometry 66 (1–2): 72–103, doi :10.1007/BF01225673 .
Cundy, H. M. & Parry, Cyril F. (2000), “Geometrical properties of some Euler and circular cubics (part 2)”, Journal of Geometry 68 (1–2): 58–75, doi :10.1007/BF01221061 .
EhrmannJean-Pierre & GibertBernard「A Morley configuration」『Forum Geometricorum 』第1巻、51–58頁、2001年。 .
EhrmannJean-Pierre & GibertBernard「The Simson cubic」『Forum Geometricorum 』第1巻、107–114頁、2001年。 .
GibertBernard「Orthocorrespondence and orthopivotal cubics」『Forum Geometricorum 』第3巻、1–27頁、2003年。 .
Kimberling, Clark (1998), “Triangle Centers and Central Triangles”, Congressus Numerantium 129 : 1–295 . See Chapter 8 for cubics.
KimberlingClark「Cubics associated with triangles of equal areas 」『Forum Geometricorum 』第1巻、161–171頁、2001年。https://www.researchgate.net/publication/241067469 。 .
Lang, Fred (2002), “Geometry and group structures of some cubics”, Forum Geometricorum 2 : 135–146 .
Pinkernell, Guido M. (1996), “Cubic curves in the triangle plane”, Journal of Geometry 55 (1–2): 142–161, doi :10.1007/BF01223040 .
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外部リンク