福島県浜通り地震
福島県浜通り地震(ふくしまけんはまどおりじしん)は、2011年(平成23年)4月11日17時16分、福島県浜通りを震源として発生した地震。地震の規模はマグニチュード7.0で、福島県と茨城県で最大震度6弱を観測した。 概要福島県浜通りの北緯36度56.7分、東経140度40.3分、深さ約6kmを震源とする地震。規模は気象庁マグニチュードはMj7.0、モーメントマグニチュードは、アメリカ地質調査所ではMw6.6(W-phase)から6.7(CMT)[1]、気象庁ではMw6.6(遠地)[2]、6.7(CMT)[3]、Mw6.8(近地)[4]と解析されている。福島県浜通り・中通りと茨城県南部で最大震度6弱を観測した。 この地震の発震機構は東北東 - 西南西方向に張力軸を持つ正断層型であり、地殻内で発生した地震(大陸プレート内地震)であるとされる。気象庁は、ちょうど1ヶ月前に発生した東北地方太平洋沖地震の震源域で発生した余震であるとしたが、プレート境界域における海溝型地震であった東北地方太平洋沖地震とは、地震発生のメカニズムが異なる。東北地方太平洋沖地震の震源域における西南端部での発生ではあるが、大きな海溝型地震に誘発されて内陸部の断層がずれることで発生する誘発地震とみることもできる。 茨城県北部や福島県浜通り地方では東北地方太平洋沖地震以前はほとんど地震活動はなかったが、3月11日以降活動が活発化した。この地震活動は大きく南北2つの領域で発生していた。南北2つの領域の間ではこれまで地震がほとんど発生していなかったが、4月11日の地震はこの間を埋める領域で発生した[5]。 気象庁は地震発生直後、茨城県沿岸に津波警報を発表し、宮城県・福島県と千葉県の九十九里・外房に津波注意報を出したが、震源域が主に陸域であったため、4日前の宮城県沖地震同様、津波は観測されず[6]、同日18時05分に全て解除した。 なお、翌日14時07分には福島県中通りを震源とするマグニチュード6.4の地震が発生し、福島県浜通り(いわき市)・茨城県北部(北茨城市)で震度6弱の揺れを観測した。(後述の通り) 翌年2012年4月11日には土砂崩れの現場で余震としては唯一の一周忌の合同追悼行事が行われた。 震源断層→「井戸沢断層」も参照
推定活断層とされていたが、大きな地震の発生が予想されていなかった井戸沢断層・湯ノ岳断層の活動によるもので、井戸沢断層の西側延長線に沿って明瞭な正断層型の地震断層が出現した。さらに産業技術総合研究所の調査では井戸沢断層の他に湯ノ岳断層と未知の断層である塩ノ平断層の活動が確認された。これらの断層が数秒の間隔で動いた事による地震としている[7]。なお、2011年9月に井戸沢断層付近で行われたトレンチ掘削調査[8]の結果では、ひとつ前の活動時期が12500~17000年前で、869年の貞観地震の際に活動した痕跡は見出せなかった[9]。 震度震度5弱以上の揺れを観測した地点は以下の通り[10]。
北は北海道野付郡別海町、西は鳥取県境港市で震度1を観測するなど、北海道から中国地方にかけて震度1以上の揺れを観測した。また、防災科学技術研究所が設置した強震観測網によれば北茨城市で震度6弱相当(計測震度5.8)の揺れを観測した[12]。 なお、この地震で震度6弱の揺れを観測した、茨城県鉾田市の当間にある震度計は、後の調査で、地盤が不安定な場所に設置されていることが判明したため、震度計の使用が中止されることになった[13]。 関連性が高いとされる地震時系列による主な地震3月11日の東北地方太平洋沖地震以降、福島県の浜通り(特にいわき市やその周辺)から茨城県の北部(特に北茨城市や高萩市、日立市)にかけて、地震が相次いで発生し、4月11日以降も活発な余震が続いた。東北地方太平洋沖地震の本震の発生から6年近くが経過した2016年12月にも、茨城県高萩市で震度6弱の揺れを観測する強い地震が発生している。これらはいずれも震源の深さが比較的浅く、ほとんどが正断層型の地震である[9]。ただし、4月12日14時7分に起きたM6.4の地震は、逆断層型の地震であった[5]。関連性が高いとされる揺れの大きかった地震は下記のとおり[14][15]。
福島県中通り地震
福島県浜通り地震の翌日である、2011年(平成23年)4月12日の午後2時7分ごろには、福島県中通りの深さ15kmを震源とする、マグニチュード6.4の地震が発生し、福島県と茨城県で震度6弱の強い揺れを観測した[17]。前述の通り、この地震は、前日に浜通りで起きた地震(マグニチュード7.0)とは違い、逆断層型の地震であった。震度5弱以上を観測した地点は以下の通り[17]。
この地震で、1人が負傷した。 茨城県北部地震
2016年(平成28年)12月28日の午後9時38分ごろには、茨城県北部の深さ11 kmを震源とする、マグニチュード6.3の地震が発生し、[18]茨城県高萩市で震度6弱の強い揺れを記録した[19]。この5年前の福島県浜通り地震と同様、正断層型の地震である。震度5弱以上を観測した地点は次の通り[19]。
なお、気象庁の推計震度分布図によれば、茨城県北茨城市では、震度5弱 - 震度5強程度の揺れを一部で観測したとみられる[20]。この地震で、長さ15kmほどの未知の活断層がずれた[21][22]。 被害震動による顕著な家屋被害は無く地表地震断層の直上の建物では最大変位80cmの変位による変形や傾斜などが発生した[23]ほか、土砂崩れが発生するなどして、高校生などを含む4人が死亡し、負傷者を10人出した。また、翌日14時07分に発生した地震においても、負傷者を1人出した。 土砂崩れ福島県いわき市田人町石住で土砂崩れにより住宅3棟が倒壊し、3人が死亡した。 県道いわき石川線では数か所で土砂崩れが発生し、走行中の車が巻き込まれ、1人が死亡した。 電力
福島第一原子力発電所では、1号機から3号機の外部電源が途絶し一時注水が中断されたが、約50分後に再開された[24]。
福島県内で204,342戸の停電が発生。また、4月12日14時07分に発生した地震により、新たに5,910戸で停電が発生した[25]。 交通
JR東日本では、常磐線・東北本線・磐越東線・磐越西線・水郡線で運転を休止した[26]。 それ以外の鉄道もJRを中心に大きく乱れた。
常磐自動車道では、土砂崩れが発生したことによりいわき勿来インターチェンジ〜いわき湯本インターチェンジ間が通行止めとなった[26]。 また、福島県道14号いわき石川線でも大規模な土砂崩れが発生した。 火災影響
NTTコミュニケーションズでは、企業向けデータ通信サービスが停電により一部で利用ができなくなった[28]。 メディア全国ネットのテレビ局では、本地震発生当時は夕方のニュース番組を放送していたため、すぐに緊急地震速報や地震速報、津波警報の報道に切り替わった。このうちNHK総合テレビの『首都圏震災ニュース』(関東ローカル)[29]では、水戸局(当時)の向井一弘アナウンサーが茨城県北茨城市の避難所である体育館から中継している最中に本地震が発生。向井アナが当時の体育館の様子を実況するとともに周囲へ注意を呼び掛けている最中に緊急地震速報が発表された。これを受け中継を急遽打ち切り、スタジオに映像を切り替え池田達郎アナウンサーが改めて視聴者に警戒を呼び掛け茨城県水戸市の中継映像が流れてる最中に同番組が強制打ち切り終了となり、全国向けニュース用のスタジオから井上二郎アナウンサーが地震の第一報を伝えた。その後、前述の通り最大震度6弱を観測したためNHK全波で地震報道に切り替り(七波全中)[注 2]津波警報が発表されたことを受けNHK全波で緊急警報放送を実施した[30]。また、フジテレビでも『スーパーニュース』の震災1か月関連の特集で安藤優子キャスターが福島県内から中継をしている最中に本地震が発生。地震発生時は東京のスタジオにいたコメンテーターの木村太郎が福島県の現状についてコメントしている最中に緊急地震速報が発令され、すぐに奥寺健アナウンサーが視聴者に揺れへの警戒を呼びかけた。その直後、中継先での揺れの様子が放送された。 NHK教育テレビでは、にほんごであそぼを放送している最中に緊急地震速報が発表され[31]、地震発生数分後から6時20分まで地震関連ニュースのサイマル放送を行い[32]、6時20分からは、東北地方太平洋沖地震の影響で放送開始が延期され、本地震発生日の4月11日に放送開始が予定されていた新番組『大!天才てれびくん』が通常通り放送された。 脚注注釈出典
外部リンク
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