夢見るシャンソン人形
「夢見るシャンソン人形」(ゆめみるシャンソンにんぎょう、夢みるシャンソン人形、フランス語原題:Poupée de cire, poupée de son)とは、セルジュ・ゲンスブールが作詞作曲したフランスのポピュラー音楽である。 フランス・ギャルが最初に歌い、1965年にルクセンブルク代表として第10回ユーロビジョン・ソング・コンテストでグランプリを獲得したのをきっかけに、この歌は大ヒットしヨーロッパだけでなく中南米や日本でも人気を博した[4]。 ギャル盤は日本では1965年8月10日に発売され、1か月半足らずで20万枚を売り上げた[4]。ビートルズやエレキ・ブームの最中に大いに気を吐いた[4]。 ギャルは岩谷時子の訳による日本語の歌詞で本作を録音し日本でシングル(B面はクロード・フランソワの「ドナ・ドナ・ドーナ」日本語版)とEP盤を発売(フランス語オリジナルも収録)し、このバージョンも日本でヒットした[5]。またドイツ語やイタリア語・スペイン語の歌詞でも唄っている[4]。他にも数多くの言語やアーティストによるカバーが存在する。 ベートーヴェン作曲のピアノソナタ第1番第4楽章Prestissimoから、旋律の一部が取られている。 タイトル
この歌のタイトルは「蝋と音の人形」と訳されることが多い。フランス語では前置詞 “de” の後ろに(広義の)物質名詞が冠詞なしで置かれる場合、「de+名詞」は「素材・材料」を表す修飾句となるのが普通である。よって、前半の “poupée de cire” はまさに「蝋を材料とする人形、蝋人形」の意味であるが、後半の “poupée de son” は通常「音を材料とする人形」と解するわけにはいかず、また「音の人形、音の鳴る人形」という意味にはならない。「音の人形」(音の鳴る人形)という意味にするならば “son” に冠詞(通常、定冠詞)を付ける必要があり、つまり “poupée du son” であるが、実際のこの歌の題は冠詞なしの “poupée de son” であるのでこの場合、“son” は「音」ではなく同音異義語の「ぬか、もみ殻」、広くは「(人形等の詰め物に用いる)木くず」をも意味する。つまり、後半の “poupée de son” は「詰め物をした人形」のことである。よって、タイトル全体は直訳すると「蝋人形、詰め物をした人形」となる。ゲンスブールが、フランス語では「音」と「詰め物(または「もみ殻」)」が同じ “son” であることを利用して語呂合わせをしていると言える。 その後発売されたフランス・ギャルのベスト盤CDでの対訳は『蝋の人形、ヌカの人形』と表記されている。ギャルのシングル盤が日本で初めて発売された時に対訳を担当した蒲田耕二は “poupée de son” を「音を出す人形」と訳したが、刷り上がった歌詞カードには「フスマを詰めた人形」と差し替えられていたため、「アイドルがこんな歌詞をうたうのは、当時のレコード会社(日本の)にとって常識外だったのだろう」と解釈した[6]。「レコード歌手が自嘲気味にみずからを『音を出す人形』にたとえる歌詞も、大衆的ポップスというよりは、50年代の左岸派シャンソンの感覚だ」とも、蒲田は評している(同書)。 ゲンスブールの歌詞とギャル歌詞の一部を見ると人生経験も浅く、年も若いアイドルが恋愛について歌うのを揶揄する内容の詞を綴ったものである。 ギャルに与えた歌におけるゲンズブールの作詞を詳しく考察すると、他にも皮肉や嫌味が入っている歌があり、時としてそれは悪意の領域にまで達している。1966年に、同じくゲンスブールがギャルに提供した「Les sucettes」(邦題:アニーとボンボン)が著しい。 後年、ギャルは1960年代では「蝋人形、詰め物人形」の歌詞やタイトルに込められていた二重の意味に気付かなかったと述べ、後年は本作より距離を置き、歌うこともなくなったという。 主なカバー各言語でのタイトル表記
日本以外のアーティスト
日本のアーティストオリジナルと同時期に発表(競作)
その後のカヴァー
テレビ番組・CMへの起用
その他
脚注
関連項目外部リンク
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