ハイドン (ジョン・ホプナー 画、1791年)
交響曲第98番 変ロ長調 Hob. I:98 は、フランツ・ヨーゼフ・ハイドン が1792年 に作曲した交響曲 。イギリス 訪問時のロンドン で作曲された、いわゆる『ロンドン交響曲 』のうちの1曲である。
概要
初演は同年の3月2日 にハノーヴァー・スクエア・ルームズ においてヨハン・ペーター・ザーロモン の演奏会で行われた。本作は初演当時から非常に人気があり、初演時には第1楽章と第4楽章の両端楽章がアンコールで演奏されたほか、1週間後に行われた再演でも同様にアンコールで演奏されたと伝えられる[ 1] 。
自筆譜はかつてルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン が所有しており、その後ベルリン のプロイセン国立図書館 が所蔵していたが、第二次世界大戦 後は長らく行方不明だった[ 2] 。現在はヤギェウォ大学 図書館が所蔵している。
楽器編成
フルート 2、オーボエ 2、ファゴット 2、ホルン 2、トランペット 2、ティンパニ 、第1ヴァイオリン 、第2ヴァイオリン、ヴィオラ 、低音(チェロ 、コントラバス )、チェンバロ (またはフォルテピアノ [ 3] )
チェンバロは第4楽章の最後近くに独奏が出現するが、これはハイドンの全交響曲の中でチェンバロが必要な唯一の箇所である。初演ではハイドン本人がチェンバロの前に座っていたと伝えられており、ハイドン本人によって演奏されたと考えられるが、チェンバロ独奏部は自筆譜にはあるものの、当時の筆写譜や印刷譜には存在しないため、本来は曲の一部ではなくその場だけのサービスのつもりだったのかもしれない[ 4] 。
曲の構成
全4楽章、演奏時間は約28分。
第1楽章 アダージョ - アレグロ
変ロ長調 、2分の2拍子 (アラ・ブレーヴェ )、ソナタ形式 。
アダージョの序奏部とアレグロの主部からなる。序奏部は弦楽器のみで演奏され短調で始まるが、既に主部の第1主題が使われているところに特徴がある。
主部はそのまま2分の2拍子で始まる。提示部終わり辺りに、オーボエによって神秘的な4つの2分音符による主題が出現する。展開部は対位法 的である。
第3楽章 メヌエット :アレグロ - トリオ
変ロ長調、4分の3拍子。
華やかなメヌエット主部では途中でフルート独奏が聞かれる。トリオ部ではファゴットと第1ヴァイオリンに旋律が現れ、途中でファゴットがフルートと交替する。
第4楽章 フィナーレ:プレスト
変ロ長調、8分の6拍子、ソナタ形式。
展開部は弦楽器のみになり、ヴァイオリン独奏による終結主題が変イ長調 で演奏され、全奏と交替する(初演ではおそらくザーロモン本人によって演奏された)。それが終わると再現部に入るが、それについで突然速度がモデラート に変わった後、最初の速度に戻って全奏で長いコーダ が演奏される。その後にさらに11小節のチェンバロの独奏が加えられた後、本物の終結に至る。
脚注
^ Vera Baur: Symphonie in B-Dur, Hob. I:98. In: Renate Ulm (Hrsg.): Haydns Londoner Symphonien. Entstehung – Deutung – Wirkung. Im Auftrag des Bayerischen Rundfunks. Gemeinschaftsausgabe Deutscher Taschenbuch-Verlag München und Bärenreiter-Verlag Kassel, 2007, ISBN 978-3-7618-1823-7 , S. 88–92.
^ 『ハイドン 交響曲集XI(93-98番) OGT 1599』音楽之友社 、1982年。 (ミニスコア、ランドンによる序文の原文は1966年のもの)
^ 自筆譜にはチェンバロが指定されており、これは第1回ロンドン旅行のザロモン・コンサートでハイドンがチェンバロの前に座ったという記述にも一致する。しかし、初演の聴衆の一人であったサミュエル・ウェスレー が後年回想したところでは、ハイドンはピアノで演奏したという。参照: Symphony No. 98 in B-flat major, Hob. I:98 , New York Philharmonic, (2018-01), https://nyphil.org/~/media/pdfs/program-notes/1718/Haydn-Symphony-No-98.pdf
^ ハイドン全集(JHW)の「ロンドン交響曲2」のロバート・フォン・ツァーンによる解説、1997年
^ Tovey, Donald Francis (1935). “Symphony in B Flat (Salomon, No. 8; chronological List, No. 98)”. Essays in Musical Analysis . 1 . Oxford University Press. p. 352
外部リンク