交響曲第70番 ニ長調 Hob. I:70 は、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンが作曲した交響曲。
ハイドン研究家として著名なH.C.ロビンス・ランドンが、「ハイドンの最も興味深い交響曲のひとつ」として挙げたことで知られる。
概要
1779年12月に、火災ののち再建されることになったエステルハージ宮殿(英語版)の劇場の定礎を記念して作曲された。対位法の大規模な使用が大きな特徴で、ランドンは「先人たちや同時代人たちの中にあって、ヘラクレスのように突出した作品」と形容している[1]。
楽器編成
本作以降のハイドンの交響曲では常にフルートが使用されるが、これは1778年4月からフルート奏者がエステルハージ侯爵家の楽団に加わったことを反映している。トランペットとティンパニは後から加えられた。
構成
全4楽章、演奏時間は約20分。
- 第2楽章 二重対位法によるカノンの一種:アンダンテ
- ニ短調、4分の2拍子。二重変奏曲形式。
- 「二重対位法によるカノンの一種」(Specie d'un canone in contrapunto doppio)と題がつけられており、ニ短調の主題(A)とニ長調の主題(B)の2つが「A-B-A1-B1-A2」のように交互に変奏される。2声で書かれた冒頭は、後に上下の声部が交換される。
- 第3楽章 メヌエット:アレグレット - トリオ - コーダ
- ニ長調、4分の3拍子。三部形式。
- ハイドンの交響曲のメヌエットには珍しく、コーダを持っている[2]。
- 第4楽章 フィナーレ:アレグロ・コン・ブリオ
- ニ短調 - ニ長調、2分の2拍子(アラ・ブレーヴェ)、3つの主題を持つフーガ。
- 冒頭で同音連打が主題を予示し、その後「3つの主題を持ち、二重対位法による」(à 3 soggetti in contrapunto doppio)と記された技巧的なフーガが始まる。「真の力を持つ」フーガとランドンが評した[3]。最後の部分でニ長調に転調する。
注釈
- ^ a b Landon 1955, p. 371.
- ^ Hodgson, Anthony(1976). The Music of Joseph Haydn: The Symphonies. London. The Tantivy Press. p.100
- ^ Landon, H. C. Robbins (1966).Haydn Symphonies. Seattle. University of Washington Press. p.33
参考文献
外部リンク