『フラガール』は、2006年9月23日全国公開の日本映画である。主演は松雪泰子で、シネカノン制作・配給である。
第80回キネマ旬報ベスト・テン日本映画ベストテン第1位および読者選出ベスト・テン(日本映画)第1位。第30回日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞作。
2008年以降たびたび舞台化されている。
概要
1965年(昭和40年)、大幅な規模縮小に追い込まれ危機的状況に陥った福島県いわき市[注 1]の常磐炭鉱を舞台に、炭鉱で働く人々が職場を失う現実・苦悩に立ち向かい、町おこし事業として立ち上げた常磐ハワイアンセンター(現:スパリゾートハワイアンズ)の誕生から成功までを実話を元に描く。ハワイアンミュージックと本格的なフラダンスショーが描かれている。
プロデューサーの石原仁美が、炭鉱の危機を救うために元炭坑夫の男たちがヤシの木を植え、娘たちがフラダンスを学ぶという常磐ハワイアンセンター創設にまつわるドキュメンタリーをテレビでたまたま見かけて「これは絶対に映画になる」と映画化を構想し、その翌日に常磐興産へ連絡をとって取材を開始。当初は社長の中村豊を主人公とした『プロジェクトX〜挑戦者たち〜』のような作品の構想を抱いていたが、取材を進める中で次第に素人フラダンスチームに惹かれていき、最終的に横浜から招いた講師による指導を受けながら努力を重ねてステージに立つまでの感動の物語を描くこととした[4]。原作の無い作品であることから脚本を何度も書き直し、構想から3年をかけてようやく制作に漕ぎ着けた。実話と同様に素人の女の子が数ヶ月に及ぶ厳しいレッスンを共にして気持ちを1つに通じ合わせることでいい映画を作り上げたいとの思いから、主役の松雪泰子・蒼井優から台詞のないダンサー役に至るまでダンス経験のない女優をキャスティングし、全員が一からダンスのレッスンを受けて撮影に臨んでいる[5]。
公開前はそれほど注目を浴びた作品ではなかったものの、口コミを通じて評判を呼んだことで最終的に観客動員130万人、興行収入14億円を記録する大ヒット作品となり、第80回キネマ旬報ベスト・テン日本映画第1位、第30回日本アカデミー賞最優秀作品賞など多くの賞を受賞した[5]。
あらすじ
登場人物
常磐ハワイアンセンター関係
フラガールズ
- 常磐音楽舞踊学院1期生 小野(旧姓 豊田)恵美子がモデル[6]。
常磐炭鉱の人々、他
- 紀美子の兄
- 紀美子の母
- 早苗の父
- 早苗の妹
- 早苗の弟
- 早苗の末の妹
- 初子の息子
- まどかを追いかける借金取り
- 洋二朗の親友。ハワイアンセンターに転職する
- 小百合の父
- 常磐炭鉱の労務係長
- 元炭鉱夫。ハワイアンセンターに転職しバンドマンとなる
スタッフ
ロケ地
作品の評価
興行成績
公開前はそれほど注目されていなかったが、口コミによって評判が伝わり、ロングラン上映をする劇場が多く、最終的には目標を上回る観客動員125万人、興収14億円という大ヒットとなった。
受賞歴
第79回アカデミー賞の外国語映画賞の日本代表に選出(本選の第1次選考で落選)。また、第30回日本アカデミー賞最優秀作品賞に選ばれたが、大手映画会社4社(東映、東宝、松竹、角川)以外の作品が受賞するのは1996年の『午後の遺言状』(日本ヘラルド映画)以来11年ぶりである。実質的にダブル主演である松雪と蒼井は下記のように主演女優賞を分け合ったが、蒼井はクレジット三番手という扱いもあって助演女優賞を受けるケースも目立った。
- 第80回キネマ旬報ベスト・テン(2007年1月9日発表)
- 邦画第1位 - 「フラガール」CITEREF『80回全史』2007
- 読者選出邦画ベストテン 第1位 - 「フラガール」
- 助演女優賞 - 蒼井優
- 第31回報知映画賞(2006年11月28日発表)
- 最優秀作品賞 - 「フラガール」
- 最優秀助演女優賞 - 蒼井優
- 第19回日刊スポーツ映画大賞(2006年12月5日発表)
- 作品賞 - 「フラガール」
- 主演女優賞 - 松雪泰子
- 助演女優賞 - 富司純子
- 新人賞 - 蒼井優
- 第61回毎日映画コンクール(2007年1月19日発表)
- 日本映画優秀賞 - 「フラガール」
- 助演女優賞 - 蒼井優
- 第49回ブルーリボン賞(2007年1月25日発表)
- 作品賞 - 「フラガール」
- 主演女優賞 - 蒼井優
- 助演女優賞 - 富司純子
- 第21回高崎映画祭
- 最優秀監督賞 - 李相日(フラガール)
- 最優秀主演女優賞 - 蒼井優(フラガール)
- 第28回ヨコハマ映画祭
- 日本映画ベストテン 第2位 - フラガール
- 主演女優賞 - 蒼井優
- 2007年エランドール賞
- 作品賞(映画) - 「フラガール」
- 新人賞 - 蒼井優
- 第16回東京スポーツ映画大賞
- 第11回日本インターネット映画大賞
- 日本映画部門作品賞(第1位) - 「フラガール」
- 助演女優賞 - 蒼井優
- 第30回日本アカデミー賞(2007年2月16日発表)
- 最優秀作品賞 - 「フラガール」
- 最優秀監督賞 - 李相日
- 最優秀脚本賞 - 李相日、羽原大介
- 最優秀助演女優賞 - 蒼井優
- 優秀主演女優賞 - 松雪泰子
- 優秀助演女優賞 - 富司純子
- 優秀新人賞 - 蒼井優、山崎静代
- 話題賞 - 「フラガール」
- 第16回日本映画批評家大賞
- 第44回ゴールデン・アロー賞(2007年3月1日発表)
実話との相違点
映画は当初、センターの設立を企画創案し、創業者となった常磐炭礦副社長、中村豊を主人公に企画が考えられたため、フィクションを脚色した部分がある。
- 主人公の平山まどかは鼻っ柱の強い女性講師で、借金を抱え、都落ちしたSKD(松竹歌劇団)のダンサーという設定だが、実際のモデルは日本のフラダンス界の草分け、カレイナニ早川(本名・早川和子)で、ハワイ留学から帰った彼女がテレビに出ていたのを中村豊がぜひにと頼み込み、その考えに感銘し、講師を引き受けたのである。
- 蒼井優が演じた谷川紀美子のモデルは、小野(旧姓、豊田)恵美子である。映画では踊りに縁のない女子高生として描かれているが、実際の小野恵美子は舞踏学院一期生の最年長21歳で、小学2年生からクラシックバレエを続け、磐城女子高等学校時代はダンス部の主将も担当。リーダーとして早川の右腕的存在であった[7]。
エピソード
- 映画の舞台である福島県いわき市常磐湯本にあるいわき市石炭・化石館(炭鉱内部シーンのロケ地として撮影が行われた)では、企画展として「あの感動をもう一度。フラガール展」が開催された。
- 映画の舞台になった「スパリゾートハワイアンズ」内に、映画の衣裳や小道具などが展示されている「フラ・ミュージアム」が2007年11月にオープンした。
- フラガールの上映以前、ハワイアンズではフラダンスショーはプールに設立された一時的なショータイムの認識が強く、食事や休息の合間に見物する客がほとんどであった。そのため、空席が目立っていたが、上映以降はショータイムを目的とした客が増え、特に長期休暇期間には30分前には席が埋まり、立ち見客や二階テラス、さらには隣接されている巨大プールからの見物客が出るほどの賑わいとなっている。見物料は基本的に上映以前から無料(ただし入園料は別)であるが、現在は有料の予約席がある。
- 映画の公開に先立って、2006年5月3日から4日に、ダンサー役で出演する女優たちが「お台場ハワイアンフェスティバル」に出演する[8]。
- フラ発祥の地であるハワイ州でも、2006年10月30日(現地時間)、ハワイ国際映画祭の大トリとして、ホノルルのハワイ・シアターを使い、アメリカ合衆国内としてのプレミア上映が行われた。上映前に、ジェイク・シマブクロのライブ演奏と、ジェイクの伴奏によるジェニファー・ペリの歌も披露された。なお、その際上映された作品は、借金取りの石田(寺島進)が登場するシーンは完全にカットされ石田が一切登場しないことになっており、また日本国内での宣伝映像に使われた、まどかの初訪問(「私のハワイ、どこ?」と絶句する)シーンなど他の一部シーンもカットされた、日本国内で上映されたものとは一部異なるものとなっていた。
- 2006年12月20日、映画のイベントの一環として、ダンサー役の出演者が現役のダンサーとハワイアンズの舞台で共演するスペシャルステージが実施される[9]。
- 2011年3月11日に発生した東日本大震災で被災したいわき市を支援するために、当映画に出演した松雪泰子、蒼井優、富司純子、山崎静代らが1,000万円の義援金をいわき市に送った[10]。また、山崎静代を始め、ダンサー役の出演者が、新橋SL広場で開催された震災の応援イベント「がんばっぺ!いわき」に出演する[11]。
- 『フラガール』というタイトルであるが、映画のクライマックスのダンスは「タヒチアン」である[12]。
関連商品
サウンドトラック
ビデオ
- 2007年3月16日に、1枚組の『スタンダード・エディション』と、本編ディスクに加え2枚の特典ディスクとシナリオを付録した『メモリアルBOX』が、ハピネットから発売された。
舞台
2008年版
2008年7月から8月にかけて、東京・TBS赤坂ACTシアターをはじめ全国5都市で上演された。
映画版も手掛けた羽原大介が脚本を手掛け、映画にはなかったエピソードも盛り込まれる。山田和也が演出を担当。谷川紀美子役の福田沙紀と平山まどか役の片瀬那奈がダブル主演を務め、福田は本作が初舞台にして初主演[13]。また、現役のスパリゾートハワイアンズのダンサー2名もフラガールズ役で出演する[14]。
また、池永亜美は映画に引き続き舞台版の出演者となる。
- キャスト(2008年版舞台)
- スタッフ(2008年版舞台)
- 脚本 - 羽原大介
- 演出 - 山田和也
- テーマ音楽 - ジェイク・シマブクロ
- 舞踊振付・指導 - カレイナニ早川
- 音楽 - 佐橋俊彦
- 美術 - 大田創
- 照明 - 高見和義
- 音響 - 山本浩一
- 衣裳 - 原まさみ
- ヘアメイク - 鎌田直樹
- 振付 - 西祐子
- アクション - 渥美博
- 演出助手 - 豊田めぐみ
- 舞台監督 - 北條孝
- 共同プロデューサー - 熊谷信也
- プロデューサー - 河出洋一
- ロゴデザイン - 大寿美トモエ
- 宣伝美術 - COM Works
- 宣伝写真 - 川田洋司(mosa.inc)
- 主催 - TBS、TBSラジオ、朝日新聞社
- 特別協賛 - イトーキ
- 後援 - ハワイ州観光局、タヒチ観光局
- 協力 - シネカノン、スパリゾートハワイアンズ
- フラダンス衣裳協力 - メネフネプランテーション
- 公演日程(2008年版舞台)
昭和芸能舎版
2018年6月から2019年1月にかけて、羽原大介の作・演出により東京・赤坂レッドシアターをはじめ全国3都市で上演された。舞台の舞台に近隣であるいわき市でも上演されている。2019年11月から、2都市で再演。
及川いぞう、田久保宗稔、石井咲は2008年版のオリジナルキャストである。
- キャスト(昭和芸能舎版)
- 稲村梓
- 池内理紗
- しるさ
- 中川絵美
- 藤田美歌子
- ちかみ麗
- 及川いぞう
- 山村紘未
- 仲本ユウ
- 竹井ゆず
- 桐山桂奈
- 里内伽奈
- 原悠里奈
- 巻島みのり
- ゆかわたかし
- 高橋みのる
- 浦島三太朗
- アフロ後藤
- 渡邊慶人
- 井上颯
- 田久保宗稔
- 石井咲(再演に出演)
- スタッフ(昭和芸能舎版)
2019年版
『フラガール - dance for smile -』[15]のタイトルで、2019年10月から11月に上演[16][17]。主演は、乃木坂46(当時)の井上小百合[16][17]。
初演では映画から追加された後半の紀美子のシーンがカットされた改訂が行われている。[要出典]
映画ではタヒチアンの衣装で雑誌の集合撮影を行ったが、2019年舞台版はハワイアンフラの衣装だった他、熊野小百合の設定などが映画と異なる部分が複数点ある。
- キャスト(2019年版舞台)
東京公演最終公演のみゲスト出演 - 早苗の弟 役 佐久本宝、大石敦士
- スタッフ(2019年版舞台)
- 公演日程(2019年版舞台)
2021年版
2019年初演の『フラガール -dance for smile-』の再演[18]。主演の樋口日奈(当時乃木坂46)は舞台単独初主演[18]。
- キャスト(2021年版舞台)
- スタッフ(2021年版舞台)
- 公演日程(2021年版舞台)
2022年版
『フラガール -dance for smile-』の再々演[20]。
- キャスト(2022年版舞台)
- スタッフ(2022年版舞台)
- 公演日程(2022年版舞台)
関連項目
脚注
注釈
- ^ 実際には合併でいわき市が成立したのは1966年。当時は常磐市。
出典
参考文献
外部リンク
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括弧内は作品年度を示す、授賞式の年は翌年(2月)
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