海街diary (映画)
『海街diary』(うみまちダイアリー)は、吉田秋生による日本の漫画『海街diary』を原作とした日本の実写映画。監督・脚本は是枝裕和。物語の中心となる“四姉妹”を綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずが演じた。第68回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作品[3]および第39回日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞作品。 漫画を読んだ是枝が映画を希望し、2013年夏より脚本の執筆を開始[4]。映画化は2014年5月27日に発表された[5]。撮影は2014年4月から12月にかけて行われた[4]。 あらすじ15年前に家を出た実父が闘病の末に亡くなった。その父が再々婚しており、遠く山形に暮らしていたことを香田家の三姉妹は知る。自分たちを捨てた父親との確執から、長女の幸は仕事を理由に次女の佳乃と三女の千佳を告別式に送り出す。面倒くさがりながらも山形に向かった二人を出迎えたのは中学生になる腹違いの妹すずだった。式の最中に泣きじゃくる義母を支え、義弟の世話もしていたすずは、式の終わりに義母と叔父から参列者への挨拶を頼まれるが、来ないはずだった幸が現れ、これは大人の仕事だと止める。看護師である幸は、すずの置かれた肩身の狭い境遇と、家族の中で唯一彼女だけが熱心に父の看病をしていたことを感じ取る。幸はすずに父との思い出の場所に案内して欲しいと頼むと、彼女は小高い山の上に三人を案内した。佳乃たちはそこが鎌倉の風景によく似ていると話す。すずとの別れに際し、幸は鎌倉で一緒に暮らさないかと持ちかけると、すずは行きますと即答した。 こうしてすずを迎えた香田家は四姉妹となった。サッカー好きで明るい性格のすずは鎌倉の生活にもすぐに溶け込み、チームでコンビを組む風太と親しくなり、三姉妹を温かく見守ってきた『海猫食堂』のおかみさんさち子や、食堂の常連である仙一にも気に入られる。 葬儀への参列を頑なに拒んでいた幸を諭したのは交際中の小児科医椎名だった。椎名は心の病を抱える妻との離婚に踏み切れずに幸との関係も続けていた。幸は大叔母の史代からすずを引き取ったことについて、あの子はあんたたちの妹だけど、あんたたちの家庭を壊した女の子供なんだよと心配される。 ある日、市民病院で働く幸には新設される終末期病棟への転属の話が持ち上がっていた。「看取る」ことの難しさは椎名に言われるまでもなく幸も感じていた。 酒と男が生き甲斐という佳乃は、金を貢いでいた若い恋人に捨てられる。それを機に、信用金庫の窓口嬢だった佳乃は融資担当で外回りの仕事への配属変えを受け入れる。佳乃はさち子が弟から遺産相続分を請求され、海猫食堂が存続の危機に陥っていることを知ってしまう。佳乃は上司の坂下と共に店の存続のために奔走する。だが、さち子にはもう一つ深刻な問題が持ち上がっているのだった。 千佳は勤め先の店長と交際していた。彼の趣味に合わせ、すずたちの居るサッカーチームのサポーターとなり、渓流釣りにも興味を示す。だが、元は山男だった店長はエベレストで遭難し、凍傷で足の指を6本失いながらも山への未練を捨てきれずにいた。 サッカーチームの勝利を祝すため千佳はすずに梅ジュースを飲ませるが、それは佳乃が自分用に作った梅酒だった。酔っぱらったすずは義母や父に溜まっていた鬱憤をぶちまける。姉妹たちは非の打ち所のないすずに深い悩みがあることを知る反面、酒乱の癖が佳乃に似ていることに苦笑する。 新学期になりすずはクラス替えで風太と同じクラスになる。同級生たちから二人は付き合っていると噂を立てられていたが、即座に否定する。チームメイトたちと『山猫亭』を訪れたすずは、仙一が父の古い馴染みであることを知る。亡父を思いだしセンチメンタルになるすずを風太は自転車に乗せ、満開の桜並木が作り出すアーチを走る。 そんなとき、北海道で暮らす幸たちの実母・都が法事にやってくる。身勝手で子供じみた母にかねてから反発していた幸。すずは都から何を言われるのかと心中穏やかではない。都はすずと衝突することはなかったものの、突然家を処分しろと言いだす。都と幸は大喧嘩になり、史代から叱責される。だが、佳乃はいずれ皆この家から巣立つとクールに語る。明るいすずも、不倫の子であることで、姉たちには内心引け目を感じていた。幸と料理をしていたすずは、不倫は良くないねと話すが、幸は言葉に詰まってしまう。彼女が不倫の恋をしていることは誰も知らなかった。 翌日、夜勤で日中家に居た幸を都が訪ねてくる。都は渡しそびれたと姉妹たちへのお土産を置いていく。お土産は、すずの分も用意されていた。雨の中、都と祖母の墓参りに行った幸は、都が母親との根深い確執に悩み、家は彼女を縛り付ける窮屈なものだったが、幸たちにとっては大切な場所だと思い知らされたと謝罪される。母親の本音を聞いた幸は、北海道に帰る彼女に、家族の思い出の品である梅酒を手渡すのだった。 移り変わる季節を通して四姉妹は絆を深めていく。他人行儀だったすずも、次第に幸たちをお姉ちゃんと呼ぶようになっていた。 季節は夏を迎え、花火大会が近付いていた。幸はすずのために自分の浴衣を仕立て直す。浴衣を着たすずは風太らサッカーチームのメンバーと洋上で花火見物をする。その帰り、すずは風太に「ここに居ていいんだろうか」「自分の存在が人を常に不幸にしている」と、姉たちにも言えない悩みを打ち明ける。自宅に戻ったすずを浴衣を着た姉たちが待っていた。四姉妹は庭で手持ち花火に興じる。 千佳とすずは一緒に作ったちくわ入りのカレーを食べる。香田家のカレーは都が幸に唯一伝えた料理である「シーフードカレー」だったが、それをあまり覚えていない千佳にとって家のカレーといえば、姉たちには不評な「ちくわカレー」であり祖母との思い出の味だった。千佳たちの祖母を知らないすず、父をほとんど覚えていない千佳。千佳はお父さんのこと教えてねとすずに話す。 佳乃と坂下の奔走により、融資により店が続けられることをさち子に伝える。だが、さち子は余命が限られており、店を畳み、終末期病棟に入ることを決めていた。幼少期から面倒を見てくれたさち子を救うことはできないのかと酷く落ち込む佳乃だったが、坂下はさち子のために遺言書を作成することは出来ると話す。人の人生と真剣に向き合い、頼りがいのある坂下に佳乃は惹かれていく。 椎名は研究のため渡米する決意を固め、幸に一緒に来て欲しいと告げる。人生の岐路に立たされた幸は思い悩む。すずは以前に自分が言った一言が幸を傷つけてしまっていたと動揺する。大人の事情で子供時代を奪われたすずを思い、幸は妹たちとの生活を選んで椎名に別れを告げる。椎名は幸もまた大人の事情で子供時代を奪われたのだから、ゆっくり取り戻せばいい、と幸との渡米を断念する。 幸とすずは二人で山に登る。そこはかつて父が幸を連れてきた場所で、父が家族を捨ててからは一人で来る場所だった。その風景はすずが姉たちを案内した山形の風景にそっくりだった。幸は「おとうさんのバカ」すずは「おかあさんのバカ」と叫んだあと、幸はすずに、ここに居ていいんだよと告げる。 幸は看護師としてさち子の最期を看取った。葬儀で大泣きする佳乃。さち子の遺影は、仙一が誘った最後のデートのものだった。さち子との想い出をひとしきり語った仙一は、帰り際に姉妹の中からすずを呼び止め、お姉ちゃんたちには内緒でお父さんのこと聞きにおいで、と告げる。浜辺を散策する四姉妹は人生の最後について語り合う。無邪気に波と戯れるすずを見ながら、お父さんはダメな人だったけれど、いい人だったんだね。こんな妹を残してくれたんだから。と幸は語る。こうして、四姉妹は鎌倉の古い家を離れることなく、また新たに日々を重ねて行くのだった。 キャスト
スタッフ
公開2015年5月13日、第68回カンヌ国際映画祭が開幕。『海街diary』(仏語タイトル:Notre petite sœur)は5月14日に上映された[1]。是枝と主演の4人が出席した。賞の受賞はならなかったが、上映後には歓声が起こり、是枝らが退出するまでスタンディングオベーションが送られた[6][7][8]。 同年6月13日、全国323館にて封切られた[9]。オープニングの週末2日間で観客動員は18万1642人・興行収入は2億2911万7100円を記録し、観客動員ランキングでは2位にランクインした。 受賞
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脚注注釈
出典
外部リンク
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