2ちゃんねる
2ちゃんねる改め5ちゃんねるとは、1999年5月に開設された日本最大級の電子掲示板(匿名掲示板)サイトである。西村博之が個人サイトとして開設し、2014年に管理者が交代ののち、2017年に「5ちゃんねる」に名称が変更された。通称・略称は「2ちゃん」 「2ch」(「5ちゃん」「5ch」)など[4]。公式姉妹サイトに8chan(現・8kun)がある[5][6][7]。 「2ちゃんねる」および「2ch」は、西村博之が日本国内で権利を有する商標である[8]。 日本のメディアでは「匿名掲示板」であると紹介されることが多いが、2003年1月7日から全書き込みについてIPアドレスの記録・保存を始めており、厳密には匿名掲示板ではなくなっているとCNET Japanは報じている[9]。 概要2ちゃんねるは、あめぞう掲示板の後継サイトとして開設されたスレッドフロート型掲示板であり、複数の電子掲示板の集合体である。「2ちゃんねる」時代の掲示板利用者は「2ちゃんねらー」「ねらー」「ちゃねらー」などと呼ばれることもあった。「『ハッキング』から『今晩のおかず』まで」というキャッチフレーズの通り、幅広い分野の話題が投稿されている。 2009年1月1日、サイト管理者と名義が西村博之からシンガポールにある「パケットモンスター社」へ移転する(後述)[1]。 2014年2月、2ちゃんねるの実質的管理権限が何らかの理由によりジム・ワトキンス(以下「ジム」)に移転、「ジム」が2ちゃんねるの実質的管理者となる[10]。「ひろゆき」はこれに対抗し、「2ちゃんねる (2ch.sc)」を新たに開設した。 以下、管理権限移転以前の「2ちゃんねる」は、区別が必要な文脈において、「2ちゃんねる(2ch.net)」と表現する。 「2ちゃんねる(2ch.net)」が5ちゃんねる(ごちゃんねる)へと2017年10月1日に名称変更したことに伴って、ドメイン名も5ch.netへと変更された。ウェブ上の2ch.netへのアクセスは、すべて5ch.netに転送されるようになっている(後述参照)[11]。 かつてGoogleが提供していたウェブサイト「Google Ad Planner」によると、2009年時点での2ちゃんねるの利用者は次のように分析されている[12]。男女比は68:32で、年齢層は35~44歳が34%、25~34歳が17%、45~54歳が17%、0~17歳が14%[12]。学歴は高校中退以下が31%、高卒が30%、大卒が34%、大学院修了が4%となっており、世帯年収は500万円未満が46%を占めているが、1000万以上が14%いるとされる[12]。 2014年4月11日には、ユーザーが自由に編集できる「2ちゃんねる公式Wiki」が登場した[13]。 2024年7月には、SimilarWebなどが調べたデータによれば、日本国内ウェブサイトのアクセスランキングは58位となり、爆サイ.comに次いで日本で利用者が多いインターネット掲示板とされている[14]。 →2ちゃんねる内の掲示板については「2ちゃんねるの板の一覧」を参照
歴史→詳細は「2ちゃんねるの歴史」を参照
1996年のインターネット黎明期には、あやしいわーるどなどの総合掲示板が存在したが、1998年に閉鎖。その後にあめぞう掲示板がそれらを引き継ぎ、総合掲示板として利用されていた。 しかし、あめぞうは安定したサーバー環境を確保できず、スクリプト荒らしなどにも遭ったため、1999年5月にあめぞうの避難所として2ちゃんねるが開設され、宣伝が行われた。2ちゃんねるの開設日は同年5月30日とする説と、5月16日とする説がある[15]。当初の掲示板はクサチュー語変換や落書き帳など、ひろゆきが面白いと思うものを集めたウェブサイト内の一要素という位置づけで[16]、その掲示板もあめぞうのスクリプトを流用したものではなく、最初は「クサチュー語変換スクリプト」を用いた「クサチュー語掲示板」であった[17]。 こうして開設された2ちゃんねるは初期から日に1万の来訪者数があり[16]、「東芝クレーマー事件」を大きく取り上げたことや[18][19][20]、同年9月30日に発生した東海村JCO臨界事故の実況[20] などにより参加者が急増した[18][19][20]。その後、あめぞう掲示板が同年10月から11月に機能不全に陥り、翌2000年には閉鎖したことで、より多くの利用者が2ちゃんねるに移動した。 利用者の増加とはいえ、設立初期は一般社会にまで影響力を与えるほどの存在ではなく、芸能人や著名人本人がスレッドに書き込みをしてもそれほど騒ぎにならなかった。一例として、糸井重里は『2ちゃんねる宣言 挑発するメディア』9章の対談で、あめぞう時代からの利用者であることを語っている[21]。また夏目房之介は、2ちゃんねる「降臨」[22]直後に生出演したNHK・BS2『BSマンガ夜話漫画夜話』において「いやぁ〜、年甲斐もなく掲示板でアツくなっちゃって、寝不足です」と語っている。 しかし、2000年5月の西鉄バスジャック事件で犯人が2ちゃんねるに書き込んでいたことから急激に知名度を上げた。翌2001年3月には日本生命が誹謗中傷の書き込みをされたとして、東京地方裁判所に書き込み削除の仮処分申請を訴えた「日本生命事件」が起き[20][23]、同年8月に東京地裁は書き込み削除を求める仮処分命令を下した[20][23]。こうした事件により、2ちゃんねるは一般社会に広くその存在を知られるようになった[20][24][25]。 2004年には訪問者が700万人を超え[26]、Alexa Internet社の世界ウェブサイトのアクセスランキングで34位となった[要出典]。 2009年には2ちゃんねるの利用人口は1,170万人となったが[27]、ブログ、SNS、動画投稿サイト、携帯電話専用サイトなど他サービスの台頭の影響で、世界ウェブサイトのアクセスランキングは相対的に順位を下げ294位となった[要出典]。 2024年7月には、更に順位を下げ、SimilarWebなどが調べたデータによれば、世界ウェブサイトのアクセスランキングは507位となった[14]。 高齢化2010年4月時点にて「若者の2ちゃんねる離れが進みユーザーが高齢化している」「2ちゃんねるは見ないが、『痛いニュース』は見るというように『まとめサイト』を見て必要情報を効率的に得ている可能性もある」と報道され[28]、その7年後の2017年3月時点においても、同様の報道をされた。若者の間では本名やハンドルネームなどでのSNSが主流であり、匿名で一つの物事を深く掘り下げるような2ちゃんねるに魅力を感じていないことが原因として指摘されている[29]。 2022年4月に「1985年(昭和60年)生まれ(プレッシャー世代)が、最もゲームの進化を体感できた世代」というスレが立ち、それに反論するもっと年上の世代(概ね後期しらけ世代から前期バブル世代までの世代〈いわゆる新人類と呼ばれた世代〉)が多くいたことから「ファミコン以前のゲーム事情を今も記憶している人たちの書き込みって結構多い。やっぱり5ちゃんねるっておっさんの巣窟だ。」と評された[30]。 初代管理人の西村博之は、西鉄バスジャック事件の際に取材を受け「うそはうそであると見抜ける人でないと(掲示板を使うのは)難しい」[31]と答えた他、2ちゃんねるでは騙されないための自衛策として、「ソース(情報源)はどこ?」と聞くのが常識となっていたが、その後のスマートフォンの普及に伴い電子掲示板からSNS全盛期に時代が移り変わると、ソースを確かめないで拡散してしまう人が増え、大衆のネットリテラシーが後退したと評している[32]。 また、西村博之は「2ちゃんねるはメディアの出演者などの悪口を書く文化も作ってしまった」という指摘に、「そういう需要がもともとあって、2ちゃんねるが廃れた後、Twitterに書かれるようになっただけだ」「今のTwitterをはじめとしたネット社会は、ソースがないものを平気でばらまいても、誰もそれを責めない。2ちゃんねるの文化の方がまともだったではないか。騙された人が騙されたまま放置されている状態がかなり多い。騙されている人って、自分が騙されていることも分からない。でも『それは助けた方がいいよね』といってくれる人もいない。困っている人は、ずっと困っているままなのかなと思うことがある」と主張している[33]。 ひろゆきは2ちゃんねるが廃れた理由として訴訟問題を挙げ、「需要とそれを提供する側の問題で、当時は提供する人が僕しかいなかった。日本国内でやるとトラブルが多いので、今はTwitterだったりFacebookだったり日本で使われているサービスは全部外国が作ったサービスだ。日本でやると、いろいろなところで文句を言われて足を引っ張られるので、日本でやる人がいなくなって、外国のサービスにみんないってしまった」と評している[33]。 一方で2017年11月に10代女子向け総合メディア「マイナビティーンズ」が発表した13~19歳の女性1006人にアンケートを取り集計した「10代女子が選ぶ今年の流行語」の「コトバ」編の第3位に5ちゃんねるの「なんj」(実況ch#なんでも実況J板)由来である「ンゴ」が選ばれたこともあった[34]。「わろたンゴ」「泣いたンゴ」「お疲れンゴ」「おいしかったンゴ」と語尾につけるものとして流行ったが、由来が5ちゃんねるで元東北楽天ゴールデンイーグルスのドミンゴ・グスマンが2008年開幕戦でリリーフ失敗してしまったことを揶揄した書き込みから発祥した自虐的な意味合いとしてではなく、語尾の響きが面白いという理由で使われているとねとらぼは報じている[35]。 5ちゃんねるの「冷笑文化」は2023年現在のSNSの文化に影響を与えており、中央大学講師でジャーナリストの渋井哲也は「ネットの冷笑文化のルーツは1999年に誕生した掲示板『2ちゃんねる』にさかのぼります。そこでウケるのは“本音を言っているように感じられる表現”。匿名で書き込めて、レスが伸びる(多くコメントがつく)ことで、気分が高揚する点が特徴です」「暗黙のルールの多い2ちゃんは、書き込むにはハードルが高いけれど、閲覧だけしている人も少なくない。今に通じるネットでの冷笑的な振る舞いは、2ちゃんや2ちゃん的なものによって強化されたといえるでしょう」「ひろゆき氏が冷笑文化を浸透させたわけではなく、世の中の映し鏡です」「冷笑文化は自然発生的に生まれたもので、端的に言えば“祭り”です。祭りを盛り上げるために冷笑的な言動をしたり、“マジレス”をしたりする。本物の祭りだって何の神様かわからないのに参加しますよね。それと同じで、騒がれていることが事実かどうかは重要ではありません。盛り上がって楽しむネタになればいい。こうした構図は2ちゃんねるもSNSも同じで、変わっていません」と主張している[36]。 →2ちゃんねるのユーザーについては「2ちゃんねらー」を参照
訴訟と所有権の移転→詳細は「西村博之」を参照
2ちゃんねるでは誹謗中傷や名誉毀損、第三者の個人情報、著作物の無断転載、薬物の密売情報などが書き込まれた際に必要十分な対処がされないことが多く[23][注釈 1]、管理人(当時)のひろゆきに対する民事訴訟が後を絶たなかった。 しかし、ひろゆきは代理人弁護士を立てず、裁判への出席もしなかったため、ほとんどの裁判で敗訴した(→擬制自白)。にもかかわらず損害賠償金を支払っていない。本人はそれについて次のように語っている。
2006年から2007年にかけて破産宣告の第三者申し立てが行なわれ「2ちゃんねるのドメイン(2ch.net)」を含むひろゆきの財産仮差押えの申請がなされるなどし[38][39]、2009年1月2日に、ひろゆきはシンガポールの「PACKET MONSTER INC.」に運営権を移転し管理人から退くこととなった[40]。しかし、実質的な運営権は移転しておらず管理会社は名義貸しをしただけであり[41]、ひろゆきは2013年に東京国税局から約1億円の広告収入の申告漏れを指摘された[42]。 2010年1月には、2ちゃんねる内の書き込みを書籍化した『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』のひろゆきに支払われていた印税が差し押さえられ、初めて損害賠償金が回収された[43][44][45]。 2ch.scと5ch.net→詳細は「2ちゃんねるの歴史 § 管理権限紛争」を参照
2014年2月19日、2ちゃんねるの実質的管理権限が何らかの理由によりジムに移転、ジムが2ちゃんねるの実質的管理者となる。ジムと思われる人物の主張によれば「『N.T.Technology』会長ジム・ワトキンスがサーバー料金の未払いを理由に、当時の運営陣であるひろゆきらを全員解任し、管理人にワトキンス本人とその親族が就任する」という主旨の発表であった[46]。 同年4月1日、ひろゆきは運営から外されたことについて「違法な乗っ取り行為である」と宣告し、2ちゃんねる(「2ch.sc」。略称「sc」)という名称の電子掲示板を設立し、自身が管理人に就任した[10]。 →2ch.scについては「2ちゃんねる (2ch.sc)」を参照
これに対しジムは「2ch.net」のドメインは「Race Queen Inc.」が所有し、現在の運営体制にも違法性はないとした上で、ひろゆきに対する法的対応を検討すると応酬した。「ひろゆき氏側とは協議を続ける意向だが、何ら司法判断が存在しない状態で、Race Queen inc.と商取引(広告掲載契約等)をすることに違法性があるということは法的には誤った判断」と批判し、「かかる商行為に違法性があるとの西村博之さんの主張は、Race Queen Inc. の名誉を著しく毀損するものであり、法的対応を検討せざるをえません」としている[47]。 一方でひろゆきは、2009年1月に2ちゃんねるを名義上シンガポールの「パケットモンスター社」に譲渡し、同5月には著書『僕が2ちゃんねるを捨てた理由』を扶桑社から出版し「2chを手放した」と公言していた[48][49]ため、2ちゃんねらーたちは「西村は嘘つきだ」とバッシングをした[50][51]。 2015年9月、ひろゆきは4chanのQ&Aセッションでワトキンスを相手取り、日本において2ちゃんねるの所有権をめぐる訴訟を提起したことを表明[52]。 2016年5月 - 7月、日本国内における「2ch」「2ちゃんねる」の商標権をひろゆきが取得した[53][54]。一方で世界知的所有権機関(WIPO)は、ひろゆきからの「『2ch.net』のドメインが不法占拠されている」という申し立てを却下した[55]。これを受け、Race Queen Inc. は「2ch.net」のTOPページにおいて「西村氏によるこれまでの一連の主張は全くもって虚偽で、2ch.scを含む西村氏の言動は運営を妨害する違法行為なので今後厳正に対処する」とコメントした[56]。結果として、日本国内における「2ch」「2ちゃんねる」の商標権はひろゆきが、ドメイン「2ch.net」の登録権限は Race Queen Inc.が管理している状況となった[57]。 この時期、特許庁はRace Queen Inc.が申請していた「2ch」「2ちゃんねる」の商標登録の無効審判請求を棄却した[58]。この判決を受けて、ワトキンスは同年10月1日、2ちゃんねるを「Race Queen Inc.」から「Loki Technology社」に譲渡すると発表した。ワトキンスは「西村博之からの妨害行為により、ユーザーに安全かつ快適な利用を提供することが困難になったため」としている[59]。譲渡先とされた「Loki Technology社」は、「権利関係で無用な紛争を生じさせないため、掲示板を新たに『5ちゃんねる(5ch.net)』として運営する」ことを発表した[60]。ちなみに「5ちゃんねる」および「5ch」は、2ちゃんねるの技術担当者であり、8chan(現・8kun)の元管理人であるCode Monkey★が日本国内で権利を有する商標である[61][62][63]。 2018年6月22日、ひろゆき(東京プラス株式会社)が2ちゃんねるの所有権をめぐり「NTテクノロジー社」を相手取った民事訴訟で、NTテクノロジー社の債務不履行を認め、同社に損害賠償および前払いのサーバー使用料の返還を命じる東京地裁判決が出た[64]。翌2019年4月25日には、「8chan(8ch.net)」のTwitterアカウント(@infinitechan)において「東京高等裁判所にて一審判決を破棄し、東京プラス社の請求がすべて棄却された」という趣旨の発表がなされた[65][66]。2019年12月4日、「5channel (5ch.net)」のTwitterアカウント(@5chan_nel)において「最高裁判所での上告棄却により、東京プラス社の請求がすべて棄却された東京高裁判決が確定した」という趣旨の発表がなされた[67]。 2020年10月27日、8chan(現・8kun)創設者でありワトキンスのビジネスパートナーであったフレドリック・ブレンナンは「5ちゃんねる」への名称およびドメイン変更の理由について「西村博之はUFMJRA(統一外国金銭判決承認法。アメリカ合衆国法)を用いた2ちゃんねるの差し押さえを画策しており、それを回避するための物だった」という見解を述べている[68]。 ジャーナリストの清義明は、ウェブサイトの持つ所有権の不透明性を利用して「2ちゃんねるは脱法ビジネスのごとく運営されてきた」と指摘しつつ、管理権紛争をめぐる判決結果をもとに「2ちゃんねるとは誰なのか」ということについて次のように総括した。
この間、ひろゆきは2ちゃんねるの所有権をめぐる訴訟以外に、2ちゃんねるの商標権をめぐる損害賠償請求をワトキンス(Race Queen Inc.)に起こしている。これは、ひろゆきが所有する「2ch」「2ちゃんねる」の商標権をRace Queen Inc.が2014年のサイト乗っ取りから2017年にサイト名を改称するまでの間、不当に侵害していたとして損害賠償1億7500万円、およびドメイン名(2ch.net)の使用を中止するまで月額500万円を支払うように求めたものである[69]。 2019年12月24日、「Race Queen Inc.」のTwitterアカウント(@RQueeninc)は「西村博之側の請求が棄却されるとともに、2ちゃんねるの商標法上の先使用権が認められた」という趣旨の発表を行った[70]。 翌2020年、Race Queen Inc.が「2ちゃんねる」の名称を使うことを禁ずる判決が出た。しかし、それ以外の損害賠償請求は棄却されたため、これを不服としたひろゆきは判決直後に控訴した。この裁判は2023年現在も両者間で係争中である。なお、この裁判ではジム側の証人として当時の2ちゃんねる関係者がサイトの運営実態にまつわる赤裸々な証言を行っており、たとえば「FOX★」こと中尾嘉宏は陳述書の中で、2ちゃんねるが転送量増大でサーバーが落ちかけたのをUNIX板の住人が救った2001年の「8月危機」について「事実と異なる部分が多数あります」とし、実際はジムと提供してきたサーバーが広告料の見返りに合わず、サーバーを落としたのが真相だと述べている[69]。 まとめサイト・転載禁止2007年12月、ニュース速報板に立てられたスレッド(スレ)を、アフィリエイト広告などを設置して営利目的で無断転載するまとめブログが増え、スレ住人の間でその是非を巡る議論が高まったことを受け、当時の2ちゃんねる管理人であるひろゆきがニュー速(嫌儲)板を新設した。 2012年5月、情報の真偽を確認せず2ちゃんねるの書き込みを転載し、間違った情報を広めてしまうまとめサイトに対して未だ抗議があった[71]。またスレッドの文脈を無視した編集がされる場合があり、時には本来存在しなかった書き込みが捏造される場合もあった。これについて当時の2ちゃんねる管理人であったひろゆきは、特に悪質とされた複数のまとめサイト[注釈 2]に対し、名指しで転載禁止の処置を取った[72][73]。ひろゆき自身はまとめサイトの根絶は不可能であると考えていたが、悪質なサイトに対しては引き続き対策をしていくとコメントした。 2014年2月、前述の通り2ちゃんねるの実質的運営者がジム・ワトキンスに代わる。その後2014年3月、2ちゃんねらーたちによる投票により複数の板が転載禁止になり[74]、程なくして全ての板が転載禁止となった。5ちゃんねるとなった後の2017年11月にはまとめサイトに関するルールが変更され、まとめサイトは引用ではなく転載であるため「許可が必要」として、無断使用にはDMCA侵害として申し立てるとともに、民事訴訟・刑事訴訟による法的対応も取るとされた[75]。 個人情報流出事件→詳細は「2ちゃんねる個人情報流出事件」を参照
2013年8月25日、「2ちゃんねる個人情報流出事件」が発生し、約4万件の2ちゃんねるビューア(通称「●」。現:プレミアムRonin)利用者の顧客情報と書き込み履歴、約15万件分の「●」と「お試し●」の管理情報、利用者のトリップの情報、運営に関わる者のキャップの情報の流出が確認された[76]。 掲示板のシステム2ちゃんねるは、スレッドフロート型掲示板と呼ばれる形態である。 それぞれの掲示板は、「カテゴリ」と呼ばれる大きな分野単位で区切られており、ニュース、食文化、ネット関係などがある。 その中で分野ごとに「板」(いた)と呼ばれるジャンルに分けられている。2ちゃんねる内には多くの板が存在するが、利用者数は板によって大きく異なる。極端に利用者が少ない板は過疎板と呼ばれ、その逆に極端に利用者が多い板は過密板と呼ばれている。 各板には、その分野に属する話題ごとに細かく分けられたスレッド(スレ)が存在する。掲示板への書き込みや閲覧は、このスレッドの中で行われる。スレッドに書き込まれた文章をレス(レスポンス=返信の略)と呼ぶ。 2016年5月現在、およそ905個の板があり、各板には数十から数百のスレッドがある。板は時折新設されるほか、「バーゲン板」のように特定の季節にだけ開設される板もある。2002年5月 - 6月には2002 FIFAワールドカップ実況板(4板)、2004年8月にはオリンピック期間中限定の専用板が新設されたこともある。また過去には、当時の管理人ひろゆきの誕生日に、彼を祝福することのみを目的とした板が新設されたこともある。 各スレッドでは匿名での投稿が可能となっており、利用者が名前を入力しないで投稿を行うと、板ごとに設定された仮の名前が自動的につけられるようになっている。仮の名は「名無しさん」を基本として板によりさまざまなバリエーションがあるが、ほとんどの利用者は匿名で投稿を行うため、一見すると「名無しさん」という名前の人間が連続して投稿を行っているように見えることがある。このため、以前は「名無しワールド」と呼ばれることもあった[注釈 3]。 基本的には規制されなければ(#規制参照)誰でも書き込むことができるが、規制情報板と●板、beカテゴリの3板は書き込みが制限されている。規制情報板は2ちゃんねるで規制されているプロバイダーの情報を掲載しているという理由から、規制に関わる規制人や報告人しか書き込めない。●板は●(2ちゃんねるビューア)を持っている人のための板であるため、●を持っていないと書き込めない。閲覧に関しては制限はない。 beカテゴリの3板はbe@2chのアカウントを持ってログインした状態でないと書き込めない。閲覧に関しては制限はない。 なお、電子掲示板全般での2ちゃんねるの存在は際立っており、このため機能や形態などが2ちゃんねるを参考に作られた掲示板は数多く存在する。その類型は無数に存在するが、単に同種のスレッド表示型から、インターフェイスから使用背景画像まで似せたものまでさまざまである。 スレッド概要2ちゃんねるでは、一つのスレッドに投稿できる書き込み(成功)数が1,000回または、データ容量が約500KB(キロバイト)までと制限されている[注釈 4][信頼性要検証]。 連番には、スレッドの話題に関係ある助数詞を用いることも多い(学校関連スレなら○時間目、事件関連スレなら○件目、2ちゃんねる各板にある「ホームランスレ」なら第○号など)。ほかにも語呂合わせが使われることもある。 参加者の人数や書き込み数が増加し、特定のサーバの負荷が高くなった場合には、一般のブラウザではアクセスできなくなる「人大杉」(=「人が多すぎる」)と呼ばれる現象が発生することがある。この状態で板を利用するには、2ちゃんねる専用ブラウザを使用する必要がある。 また、上記の「容量上限制」を逆手に取ったスレッド潰し[注釈 5]がされることもある。 一切の書き込みができない、広告的要素のスレッドも存在する。これは全掲示板に出現し、位置がある程度下がるとふたたび上がるようになっている[注釈 6][信頼性要検証]。 終了後発言数が1000番を超えたスレッドの1001番目および、データ容量が約500KBを超えたスレッドの次番目には、もう書き込めないことを表す表示(板によって異なる)がされ、書き込めなくなる。書き込めなくなったスレッドは、数時間後に板のスレッド一覧から削除される。 以下では、スレッドの終了に関する2ちゃんねる特有の用語を説明する。
名無し名前欄を無記入で投稿した場合、「名無しさん」もしくは、その板に準ずる名前が自動的に書き込まれる。 この「名無し」のシステムにより、利用者間の個人的な交流が減少した結果、以下のような特徴が生まれた。
「名無し」について、管理人(当時)のひろゆきは「たとえば安倍首相が実名でネット掲示板に書き込んだら議論どころじゃなくなる。純粋に議論をするのなら、人格はないほうがしやすい」[77]「ほかの日記やブログサイトというのは、個々人のコミュニケーションが目的としてサイトが作られているわけですが、2chの場合は情報を蓄積することを目的としている」[78]などと語っている。 「名無し」のシステムは、あめぞうより引き継いだものである。 ID→「トリップ (電子掲示板)」も参照
2ちゃんねるでは、ID機能を取り入れている板がある。これにより、名無しの匿名性を利用した自作自演を限定的であるが防ぐ効果がある。 IDは、強制的につく板、任意でつく板(メール欄に文字入力するとID:???と表示される、または名前欄に!idと入力する)、表示されない板の3種類である。IDは主にIPアドレスと日付の情報を暗号化したものが使用される。この機能は、利用者が個々の書き込みについて、書き込んだ者を特定・名寄せすることを意図したものではない。 ID機能は自作自演を防止し、無意味なレスをつけてスレッドを浪費することを緩和する。従って、過疎板において、仮に荒らし(スレッドに関係のない書き込み、またはそれをする者)が常駐してまったく機能しないスレッドがあったとしても、それを理由にID機能の導入を申請しても運営側は受け入れない。 なお、管理者側はこれを考慮して、無責任な書き込みを減らす一環として、2004年11月ごろから「be@2ch掲示板」システムを実験的に導入している。これにより、直接個人を特定できるわけではないが、ログインしている者について、どの書き込みを行ったかある程度判別できるようになった。 一方で、固定ハンドルネームを名乗る利用者(コテハン)が存在しており、スレッドによっては議論の要になることがある。また、ほとんどのコテハンはトリップと呼ばれる騙り防止機能を利用している。これは一連の書き込みが同じ人間によるものであることを証明する。中には、ハンドルネームを持たないままトリップ機能を利用する「名無し」のコテハンも存在する。 iモードの普及と携帯電話への対応によって携帯電話とコンピュータとの2つのIDを持つことが平易になったため、この2つの区別が出来るようIDの末尾に携帯電話からの書き込みには「O(オー)」、コンピュータの書き込みには「0(ゼロ)」が付くようになった(ただし板の設定によってつかない場合がある)また公式2ちゃんねるビューアー「p2」を介して書き込むと、末尾はPになっていた。さらに新体制になってからはp2が破棄される一方でスマートフォンの普及とMVNOやWiFi方式による公衆無線LANの興隆に伴い、さらに複数のIDが持ちやすくなったことから、これらの接続回線ごとにIDの末尾が詳細化され、さらにはキャリアを示す呼号やISPやブラウザなどの情報をハッシュ化した別のID(「KOROKORO」と呼称)を表示するシステム「BBS_SLIP」を導入した[79]。しかし、これらの対策をもってしても複数台の端末や回線を使った自作自演がしばしば指摘される。 キャップ★→詳細は「キャップ (電子掲示板)」を参照
2ちゃんねるでは、運営にかかわる各種のボランティアなどに対して★(騙り防止の星印)が発行される事がある。 これはおもにキャップと呼ばれ、トリップ導入以前はメールを送れば簡単に手に入れることができた。用途に応じた種類があり、代表例として「削除人★」「案内人★」「記者★」など。キャップは、キャップを管理している運営陣が不定期にメールで公募する。スレ内で活動する、トリップを使用している◆(ひし形)がついたコテハンとは違い、スレッド(スレ)外の利用者の目には触れにくい運営の部分で活動するのがおもな特徴である。 また、2ちゃんねる中の質問スレッドで時折出る「どうしたら削除人になれるか?」という質問だが、詳細な実態は不明である。こぞって「そういう質問をしないことから」が謳い文句だが、これはいわゆる「くれくれ君」を除外するためであり、そういう質問をせず自力で削除人になる方法を探し出せる人物が求められているということらしい。肝心の手続きは、案内人(案内人制度以前は復帰屋)から下積み修行を行い、募集に応えること(およびほかの削除人からの推薦)で手にできるということである。 キャップ保持者はその情報を漏らすことを固く禁じられており、スレ立ての際の不手際などによりキャップを漏らしてしまった場合、ただちに上位管理者に報告しなければならないとされる。キャップを漏らしてしまったことにより、二軍降格などの懲罰も存在する。 2011年1月6日、個々人の漏らしではなく、ハッキングツールにより過去最大級のキャップ情報の流出が起こった[80]。 キャップの種類
その他、色々なことが自由にできる上級運営人なども存在する。例えば「root▲▲ ★」はその名の通り、管理者特権が使用できるサーバのシステムチューニングを担当している。 (旧)キャップ(旧)キャップとは、コテハン騙り防止のためのシステムであった。名前は「騙り防止」→「帽子」→「キャップ」に由来する。管理人(当時)であったひろゆきにメールで申請することによって取得できた。投稿者名欄に事前に発行されたパスワードを入力することによって使用する。 例:「二桁%」という投稿者名に「po5253」というパスワードのキャップが設定されていた場合、
なお、スペルミスなどの理由で漏れてしまうことがあった。fusianasan機能は、もともと漏れてしまったパスワードの対策目的であった。fusianasan機能とは、2ちゃんねるに投稿する際に、名前欄にfusianasanと記載することで自分のパソコンなどの機器のホスト名を2ちゃんねるに公開する機能である。コテハン機能とは別に個人を証明するために存在する機能でもあるが、fusianasan機能を知らない2ちゃんねらーを騙し「危険な情報が裏2ちゃんねるにある」と偽り、名前欄にfusianasanと書かせ匿名性をなくさせるような投稿が多い。これに騙され、業務中に2ちゃんねるを使っていたことが判明した一般の公務員や会社員も多数いる。 なお、パスワードは2000年6月ごろからすでに流出していたが(掲示板cgiスクリプトの流出)、同年12月、固定ハンドルユーザーの1人によりロビーに転載され、同日に対策が行われ現行のキャップシステムに変更となった。 現行のシステムで実際に使用するときは、メールアドレス欄に「#」とその後ろにパスワードを入力する。するとサーバーに登録されている「ハンドルネーム★」での書き込みとなる。名前欄になにかしらの記載がある場合、ハンドルネームの前に「名前欄の記載内容@」が付加される。通常、メールアドレス欄において「#」以降の文字列は無視されるため、万が一スペルミスなどがあった場合でもパスワードが漏れる可能性は低くなっている。 規制
プログラムを利用した大量投稿などを阻止するために、ホスト規制がしばしば実施されることがある。その際、該当ホスト利用者が巻き添え規制されることがある。ホスト規制は運営による恣意的な判断が認められているため、内容如何によっては1回の投稿でも長期もしくは無期限のホスト規制がかけられる。また、ホスト規制だけでなく、NGワードによる規制(Rock54)、Cookieによる端末規制も併せて行われる。2018年ごろから規制(他所でやって下さい表示等)が広範化されたことで投稿数は大きく落ち込む傾向にある。
文化2ちゃんねるは、それ以前に隆盛したアンダーグラウンド掲示板「あやしいわーるど」や直接の派生元である「あめぞう」の流れを受けた文化を持っており、大半が固定ハンドルを用いることなく参加し、ネットスラングや絵文字が多用される[81][82]。また、攻撃的言辞や不謹慎な書き込みも多い[83]。 名無し多くのウェブサービスと違い、システム上名前を入力することが必須ではなく、そのため書き込みをする人も固定の名前を使うより「名無し」で発言することが多い。これはあめぞうからの影響が多大である。そのためか、固定ハンドルネームで書き込む利用者はNGに入れられたりなど、嫌われる傾向にある。 独特の用語→詳細は「2ちゃんねる用語」を参照
アスキーアート→詳細は「アスキーアート」を参照
ネット右派との親和性2ちゃんねる発足同時期の1999年からネオナチ・極右ユーザーがリベラル系のサイトをターゲットに攻撃を仕掛けており、瀬戸弘幸は実名で頻繁に投稿を繰り返していた。時事関連の板で外国人労働者や外国人参政権に関連した荒らし紛いの論戦が繰り広げられていた[84]。 2000年4月、2ちゃんねるで初の大規模炎上が発生する。石原慎太郎東京都知事の「三国人発言」に抗議のメールを都庁宛てに送るよう呼びかけた当時の小金井市女性市会議員をターゲットに「都知事・府知事板」に大量の誹謗中傷メッセージが書き込まれる。性犯罪を示唆するような内容も含まれていた。市議のホームページの掲示板も荒らされ閉鎖に追い込まれた。市議は2ちゃんねるの運営に書き込みの削除を要請したが、このことが2ちゃんねらーの反発を買い、さらに激しい攻撃を受けるようになった。市議は心労により5月29日、市の委員長を辞任するも炎上は収束せず[84]。 社会への影響と問題励起ネットワーク社会への影響日本語による最大の匿名掲示板である2ちゃんねるは、炎上現象の発生源になるなど社会や個人にさまざまな影響を与えており、2ちゃんねるからと思われる閲覧者をリファラやNGワード機能を用いてアクセス禁止にしているサイトもある。 また2ちゃんねるは、運営陣のほとんどがセキュリティ関連の知識に疎いと言われており、アクセス量に対して管理者が少なく、DoS攻撃やゼロデイアタックの攻撃対象となりうる[注釈 9]。サーバのURLを投稿するだけでも、ユーザーのアクセスが集中してDDoS攻撃となることもある。いずれにしても、総じてトラフィック上の負荷に与える影響は大きい。このため、2ちゃんねるのサーバはTyan製マザーボードが用いられており、またネットワーク負荷に耐えるためにアメリカ・サンフランシスコ市内の通称「365 Main」と呼ばれるインターネットエクスチェンジ網直結のインターネットデータセンターに設置されている。 プライバシーと犯罪行為との兼ね合い→「実名報道」を参照
2ちゃんねるはその特性上、一部ではあるが、投稿による特定の個人に対するプライバシーの暴露や誹謗中傷を含む書き込みが存在している。2ちゃんねるに限った話ではないが、総務省が匿名掲示板でたびたび発生する人権侵害事案に対処するため、「名誉毀損・プライバシー関係ガイドライン」を改訂、書き込まれた内容について被害者本人に代わって法務省人権擁護局が削除を要請できるようにする方針を決めた。このガイドラインに基づき、各地の法務局の人権擁護課が未成年犯罪者の実名掲載などの削除要請を行っている。 これに対して当時の管理人・ひろゆきは以下のように述べ[85]、要請に応じなかった(法務省もこれに対する明確な答えを出していない)。
犯罪予告と投稿監視西鉄バスジャック事件以降、誘発されるように犯罪予告を書き込んで逮捕される者や、それを実行に移し逮捕される者が現われる。また、爆破・殺人の予告書き込みによる逮捕者を出しているため、大きな事件があると、各板で頻繁に書き込まれている殺害・襲撃予告と事件の関連性を関係機関がチェックしているとされる[要出典]ほか、警察庁のサイバーフォースが定期的に検索をかけ書き込みを監視している[要出典]。また明らかにいたずら目的と思われる些細な犯罪予告の書き込みでも、ほかのユーザーが運営側に通報して逮捕などに至ることがあり、多くのユーザーの間では犯罪予告は禁句となっている。犯罪予告であるというだけでは2ちゃんねるでの削除基準に触れることはなく、証拠保全すべきものとして扱われているため、犯罪予告を削除依頼してもまず削除されることはない。だが、監視が頻繁に行われている一部の板では、管理人が犯罪予告と判断したスレッドを強制的に停止するという措置もとられている[要出典]。 その後は秋葉原通り魔事件を受けて、2008年にサービスを開始した予告.inに通報・自動通報されることで、ある程度は抑制・逮捕することが可能になった[要出典]が、完全な撲滅にはほど遠い状況が続いている。 さらに、デマや悪意のある書き込みで企業が不利益を被らないよう、それらの監視を専門とする部署を設け、監視を外部に委託する企業が大企業を中心に増えているとも言われており[誰によって?]、実際に大手広告代理店の電通がガーラ[注釈 10]と業務提携し、掲示板の自社に関する書き込みを監視・通報するASPサービス「電通バズリサーチ」を顧客企業に有償で提供している(月額100,000円(消費税別)/1クライアント)[86][87]。これらの2ちゃんねるを使ったサービスの提供により利益を得ることは、ユーザーや運営側も当初から問題視されており、2005年ごろにはトップページの下部にそれに対する注意を喚起する記載があった[88]。 また、パソコンが遠隔操作され4人が誤認逮捕されたパソコン遠隔操作事件では、2ちゃんねるが遠隔操作ウイルス感染のきっかけとなった。警視庁などの合同捜査本部は2012年11月26日、書き込みなどに使われたインターネット掲示板、「2ちゃんねる」の関連先とされた会社への家宅捜索で、有料会員のデータや投稿マニュアルなどを差し押さえた。捜索は2012年8月9日、2ちゃんねるに東京都江東区で開かれたイベントをめぐり「コミケで大量殺人」と殺人予告が書き込まれたことで会場警備が強化された。2ちゃんねるへの一連の書き込みは送信元を特定されないように匿名化するソフトが使われていたが、一度だけソフトが使われていない可能性があることが判明した[89]。 少年・児童に対する教育上の問題キッズgooなどの一部の子供向け検索サイトではフィルタリングされており、フィルタリングソフトでは「掲示板」カテゴリに入っている。 2007年2月にWebフィルタリング業者ネットスターが発表した調査によると、「小・中学生の2ちゃんねる利用率は12.2%」[90][信頼性要検証]という結果が出ており、すでに小・中学生の1割以上が「2ちゃんねらー」であるとする統計がある[要出典]。 学術研究の公正性への貢献医学等の学術論文における捏造疑いの指摘が2000年ごろから生物板で持続的になされている。多くの書き込みが問題の本質を突いていると評価する文献もある[91]。2ちゃんねるでの指摘が契機となり懲戒解雇などの処分をされた大学教員は多数存在する(詳しくは11jigenや匿名Aによる論文大量不正疑義事件を参照)。 社会の反応好意的な利用法2ちゃんねるはありとあらゆるテーマの掲示板がジャンルを問わず存在し、交換される情報は非常に多種多様である。消費者や技術者などが商品・サービス・技術などに関する情報を交換するCGMサイトとして利用されている板や、学問上の議論に利用される学問カテゴリもある。 しかし、それらが厳密な意味で「公正で偽りのない情報交換の場」、あるいは「明確な目的を持った学術的な討議の場」として正確に機能しているとは言いがたく、利用者の良識に委ねられている。 また、学問的な貢献の例としては、韓国の黄禹錫によるヒトの胚性幹細胞(ES細胞)の捏造の発見に、韓国の掲示板とともに貢献した(2005年12月)ケースがあり、福岡大学のNTPサーバへのアクセス集中問題の公表・解決に貢献したこともある(2005年1月)[92]。 災害時などには情報蓄積・提供サイトとしても利用され、2004年10月の新潟県中越地震では、Yahoo!掲示板や地震情報まとめサイトなどとともに個人レベルを中心とした情報提供に活用された[93]。地震速報板などの地震専用板も常時開設されている。 →詳細は「2ちゃんねらー § ボランティア・支援」を参照
否定的・批判的評価2ちゃんねるは「便所の落書き」と言われることが多々ある[83]。たとえば、2001年8月12日に東京・渋谷の株式会社アスキー本社で開催された「アスキーの西氏が取締役を退任」スレッドのオフ会で、西和彦は「2ちゃんねるは便所の落書きみたいなものだ」[94]と、オフ会に参加していた管理人(当時)であったひろゆきの前で語っている。この呼び名は2ちゃんねる内でも利用されることがある。 2ちゃんねるは、「あやしいわーるど」や「あめぞう」など、それ以前から存在する同種の掲示板利用者から嫌われる傾向にあり[95]、「痰壺」(たんつぼ)などと呼ばれることがある。開設者のひろゆきは、それをブラックジョークとして、2ちゃんねるのトップページに「壷」を表示した[注釈 12]。 政界と2ちゃんねる政党レベルでは、2000年5月10日に民主党の菅直人が、自らを騙った人物のものと思われる「民主党の菅直人からみなさまにお願い」という書き込みを削除するよう、弁護士を通じて2ちゃんねるに通知書を送付している[96]。 2007年の自由民主党の総裁選後に麻生太郎は、「自分は2ちゃんねるにたまに書き込む」と語っている[要出典]。 選挙の時期が来るたびに又吉イエスやマック赤坂を応援する内容の書き込みが多く投稿されるが、書き込みの大半は面白半分によるものなため、票にはまったく結びついておらず、一度も当選したことはなく落選し続けている[要出典]。また特定の政治家や企業などのイメージダウンを狙った意図的なデマも頻繁に書き込まれており、与野党を問わず政党を中傷する怪文書的な書き込みも多く投稿されている。選挙のシーズンになるとこの傾向は一層に強くなる傾向にある。 メディア日本のマスメディアにおいて、各種メディアで「インターネットの掲示板で」と報じられた場合は、2ちゃんねるを指していることがある[要出典]。ただし、2ちゃんねる以外の電子掲示板のことを指している場合も当然存在する。 また、2004年以降、テレビ番組でも2ちゃんねるや2ちゃんねらーが取り上げられるケースが増えてくるなど、一般的な2ちゃんねるのイメージが変わりつつあるとされる(ただし、必ずしもよいイメージとは限らない)。TBS系「Pooh!」やフジ系「EZ!TV」などの番組で紹介されるとともに、ハンドルネームを名乗って利用する者が顔出しで登場し、その度に実況板は利用者過多によりサーバが停止するほどの祭りになった。また、芸能人が2ちゃんねるを利用していることを公言することがある。青木さやか、長井秀和、南野やじなどのお笑い芸人がネタとして用いたり[要出典]、品川庄司の品川が自身を「つまらない」と書かれた際「そんなことないよ、品川庄司おもしろいよ」と書き込んだら「コイツ品川っぽくね?」と書かれたことを「行列のできる法律相談所」で明かしたり[要出典]、爆笑問題が自身のアスキーアートを褒めたりするケースもある[注釈 13][要出典]。 すべてがそうではないが、芸能リポーターや夕刊紙、週刊誌が芸能ネタを探すのに利用していることもあり[要出典]、それを逆手に取って架空の交際ネタや交際写真を捏造しリポーターなどに掴ませ、笑い物にしている例もある[要出典]。特にアナウンサーがらみの交際ネタが多いとされ、アナウンサーの顔写真をポルノ画像に合成したアイコラ画像が2ちゃんねるから多く出回っており、そのことがテレビ局主催イベントでの過度の撮影規制の原因になっていると一部で言われている[要出典]。 論壇誌『諸君!』の「麹町電網(インターネット)測候所」は、ほぼ毎号2ちゃんねるを中心にした内容であり、2ちゃんねるの紹介を図っている[要出典]。後述する他のサイトなどの反応の政治系サイトと類似している。『週刊文春』は近い観点で批判することもあるため、新潮社と同様に関係は良好とされることがある[要出典]。 毎日新聞は2007年1月1日に特集連載「ネット君臨」の第1部「失われていくもの」で、2ちゃんねらーの囃し立てた「死ぬ死ぬ詐欺」を、「難病児募金をあざける『祭り』」と題して紹介した。赤報隊事件を賛美し時効を喜んだ書き込みなども取り上げたが、2ちゃんねる自体への批判ではなく、社会現象として取り上げた[要出典]。しかし、奈良小1女児殺害事件などに関する犯罪報道では、確たる証拠もなく2ちゃんねらーが犯人ではないかと疑わせる報道を行うこともあった[要出典]。 メディアが何気なしに報道したものが2ちゃんねる内で爆発的に定着したものもある。「ニート」などがその代表例で、フジテレビ系「情報プレゼンター とくダネ!」でニート特集をした際、映っていた人物の顔や発言が極めて特徴的かつ自然的だったので、その人物のアスキーアートが作られ、顔部分がほかのものに差し替えられた変造版も含めて、瞬く間に2ちゃんねる中に定着していった[要出典]。
2ちゃんねると冷笑主義―CHANカルチャーの世界展開→詳細は「CHANカルチャー」および「虚偽報道 § ニューエイジとオカルトから右派陰謀論、そしてポスト・トゥルースへ」を参照
2ちゃんねるは、4chanや8chanなど海外の匿名掲示板文化「CHANカルチャー」の原初にもなった。このような日本発の匿名掲示板文化が日米で流行した理由について、アメリカ合衆国のニュースサイトは、90年代以降の低迷を続ける社会経済とオタク・コミュニティの台頭が背景にあるとして次のように総括した[97]。
2ちゃんねるの背景にある、現代日本のサブカルの特徴として、反リベラル主義が挙げられる。戦後、1960年代より兵器のプラモデルなど戦闘サブカルチャーが流行し、その系譜は『宇宙戦艦ヤマト』『機動戦士ガンダム』『新世紀エヴァンゲリオン』などへ脈々と受け継がれていく。また、日教組教職員への反発もあり、ナチス要素も取り入れるなど、戦争に関して戦後民主主義と違う価値観を描いていたサブカルチャーに若者は心酔した。さらに小林よしのりや山野車輪など、反戦後民主主義を漫画表現で訴える者も現れ、それぞれヒットを飛ばすなど、サブカルチャーが右派と接近[98]。「アニオタ保守本流」として保守論壇で注目され、後に転向した古谷経衡も架空戦記に熱中したことが保守論壇入りのきっかけだったという[99]。 リベラルは彼らの世直しのエネルギーを回収することに失敗した[100]。対照的に、自民党の麻生太郎は(彼がオタクであったかの真偽は疑問であるものの)メディア戦略により、2000年代に2ちゃんねらーをはじめとしてオタク層との関連付けに成功。2010年代を経て、サブカルチャーの右傾化は決定化し、ナショナリストの右翼雑誌『ジャパニズム』(青林堂)にアニメ絵が用いられたり、SNSで保守的発言をするオタク産業文化人が台頭するなど、秋葉原=右翼の街というような認識すら目立つようになった[98][101][102]。 時期を同じくして、2010年代には「アメリカ版ネット右翼」といわれるオルタナ右翼が、2ちゃんねるから分派した4chanや8chanの非ポリコレ板「/pol/」で台頭した。オルタナ右翼は政治的なコラージュを施したアニメ絵をインターネット・ミームとして拡散するなど、日本のオタク文化やネット右翼とも親和性が高い[103]。ライターの常川拓也は、4chanのような匿名掲示板が過激な思想をまき散らす有害なプラットフォームになっているとして次のように論じている[104]。 一般的に、ネット上では匿名性が高くなると悪意が強くなり、反社会的な振る舞いを隠さなくなりやすい(オンライン脱抑制効果)[107]。能町みね子は、建前や偽善を徹底的に嘲笑する「2ちゃんねる」と「鬼畜系」の親和性について次のように指摘した。
一方、ライターの御田寺圭は、ひろゆきが冷笑主義の親玉という見方に対し疑念を呈している。
ポスト・トゥルース時代における言語ウイルス、そして新反動主義へ鬼畜系の創始者であり総体でもあった村崎百郎は、生前最後のインタビューで、ウィリアム・バロウズの言語ウイルス論[注釈 15]を用いて、2ちゃんねるに懐疑的立場を取った。 文筆家の木澤佐登志も、バロウズの座右の銘「真実などない。なにもかも許されている」を言語ウイルス論[注釈 15]と共に引用し、ポスト・トゥルース時代におけるフェイクニュースの拡散、そして啓蒙主義や民主主義へのアンチテーゼとして登場した、新反動主義=加速主義=暗黒啓蒙[注釈 14]の台頭を次のように論じた。
このような事態を招いた理由として、政治の機能不全による自由民主主義の失速が背景にある[114]。リベラル層への反感は、そのままリベラル的な価値観とエリート(マスコミや学者など既得権益者)の否定につながり、2010年代後半には、排外主義的な右派ポピュリストやオルタナ右翼の台頭を招いた[115]。さらにこの流れは、鬼畜系雑誌『危ない1号』でも提唱された「正義や真実、普遍的価値など本当は存在しない」というシニカルな相対主義をより加速させた[116]。客観的事実よりも個人の感情や思い込みへの訴えかけのほうが、世論の形成に影響力を与えるような社会状況は、ポスト・トゥルース(ポスト真実)と呼ばれている[117]。 ドイツの哲学者であるマルクス・ガブリエルいわく「ウイルスには、自然種としてのウイルスと、精神(の生み出す虚構/虚妄)としてのウイルス(=言語ウイルス)があり、そのいずれもが社会に影響を与えるだけの実在性を備えている」という[118]。またガブリエルは、言語ウイルスを地で行くような流言飛語にもとづき、自明の真実すらも否定するポスト・トゥルースと、その根幹をなすポストモダン的な相対主義について「間違っているというだけでなく、民主主義にとって非常に危険な考え方」「真実がいくつも存在するという相対主義の見方は、事実に直面するのを避けるための言い訳に過ぎない」と厳しく批判した[119][116]。マルクス主義の立場から政治哲学者の斎藤幸平も「相対主義に従えば、他者と互いに理解し合うことなどはできない、それぞれ、分断された世界に住んでいるのだということになる」「相対主義者は『他者性』(文化・価値観の違い、よその伝統など)をつくり上げることによって、自分が見たいものだけを見ている」と一蹴した[116]。 日本発祥の匿名掲示板文化(=CHANカルチャー)によって育まれたオルタナ右翼、トランプ支持者、QAnon陰謀論者ら(イタリアゲート陰謀論など選挙不正のデマを広げた)が、アメリカ合衆国議会議事堂を襲撃・占拠したのは、2021年1月6日のことである[120]。 脚注注釈
出典
参考文献
出典関連研究
関連書籍
関連雑誌
関連項目
2ちゃんねる関連の主な事件
問題点
類似する掲示板
外部リンク
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