「一」の筆順
1 (一 、壱 、壹 、弌 、いち、ひと、ひとつ)は、最小の正 の整数 である。0 を自然数 に含めない流儀では、最小の自然数とも言える。整数の通常の順序 において、0 の次で 2 の前の整数である。1 はまた、実数 を位取り記数法 で記述するための数字 の一つでもある。
「無 」を意味する 0 に対して、1 は有 ・存在 を示す最原初的な記号 なので、物事を測る基準単位、つまり数 や順序 を数える際の初めである。
英語 では、基数詞 でone(ワン)、序数詞 では、1st 、first (ファースト) となる。
ラテン語 では unus (ウーヌス)で、接頭辞 uni- (ユニ)はこれに由来する。
数としての1
0 を除いて最小の自然数であり、自然数のうちで最小の奇数 でもある。任意の数 x に 1 を掛けても x のままであるので、1 は乗法 に関する単位元 と呼ばれる。
x
×
1
=
1
×
x
=
x
.
{\displaystyle x\times 1=1\times x=x\,.}
この性質より、1 は 1 自身の階乗 であり、
1
!
=
1
{\displaystyle 1!=1}
.
自乗 であり、より一般の累乗 でもある。
1
x
=
1
.
{\displaystyle 1^{x}=1\,.}
0 以外の任意の数の0乗は 1 である。
x
0
=
1
(
x
≠
0
)
.
{\displaystyle x^{0}=1\qquad (x\neq 0)\,.}
多くの場合、0の階乗や0の0乗 は規約により 1 とされる。
0
0
:=
1
,
0
!
:=
1
.
{\displaystyle {\begin{aligned}0^{0}&:=1,\\0!&:=1\,.\end{aligned}}}
数字としての1
1 を表す数字の字形の変遷
ヴェネツィア の時計台の24時間計。1の代わりに大文字の J を用いている。
西洋で今日 1 を表す数字の字形 は垂直に立った棒であるが、単なる線と区別するために、しばしば上部にひげ飾りが付けられたり、下部に水平の短い線が付けられたりする。アラビア数字 はインド に起源を持ち、古くは漢字 の「一」のように水平の線で 1 を表していた。グプタ文字 ではやや丸まった線になり、デーヴァナーガリー ではときに左端に小さな黒丸が付された。これが90度回転して 9 に似た字形になり、グジャラート語 やパンジャーブ語 の文字で現在用いられる字形になった。ネパール語 でも回転した字形を用いるが、黒丸が残っている[ 1] 。この黒丸が上部のひげ飾りになった一方、下部の短い水平の線はローマ数字 の I からきたものと考えられる。ドイツ などのいくつかのヨーロッパの国では、1 のひげ飾りを比較的長く書くため、他国での 7 の字形に近くなって誤解を生じやすい。そのような国では、7 を書くときに垂直の線に水平の線を入れて区別する。
現代のほとんどの欧文の書体 において、1 は h と同じ高さであるが、古典的な書体の中には のように x と同じ高さであるものもある。古いタイプライタには 1 のキーが無いものがあり、代わりに似た字体 である小文字の l (エル)を用いた。また、体積の単位のリットル の記号は、単位名称が人名由来ではないため本来は小文字の l となるが、数字の 1 と似ていて紛らわしいことから大文字の L とすることが推奨されている。
装飾の目的のため、1 の代わりに大文字の J を用いる例も見られる。
性質
1 はちょうど1個の正の整数で割り切れる唯一の正整数である(素数はちょうど2つの正の整数で割り切れ、合成数 は3個以上の整数で割り切れ、0 はすべての整数で割り切れる。)
実数 、複素数 における乗算 の単位元 である。
乗算と除算 においては、1 を乗数や除数とする演算の積や商は、被乗数や被除数と同じ数になる。
累乗 では、指数が 0 の場合、値は必ず 1 となる。
過去には、素数の定義として「1 と自分自身で割り切れる整数」を採用することにより、1 を素数と見なす数学者もいた。1 を素数と公言した最後の数学の専門家は、1899年 のアンリ・ルベーグ である。現代では、1 は素数でも合成数 でもなく、−1 やガウス整数 における i および −i などと同じく単数 であるとされる。算術の基本定理 によれば、単数の違いを違いと見なさなければ、素因数分解 は一意である(例えば 2 = 21 = 13 × (−1)2 × 21 だが、この2つの分解は同じと見なす)。
位取り記数法 の底に用いることができない。画線法 は底 1 の記数法(一進法 )と言われることがあるが、これは位取り記数法ではない。
関数 1x は常に 1 に等しく逆関数 を持たないため、底 1 の対数 は定義しない。
あらゆる種類の図形数 、例えば三角数 、三角錐数 、五角数 、六角数 、中心つき六角数 の最初の数である。
1 = 11 = 12 = 13 = 14 …
なんらかの累乗数 の最初の数である。
次の数については後術 を参照。
n n で表される最小の数である。次は4 。
n n n で表される最小の数である。次は16 。
最小のカタラン数 である。次は2 。
最小の高度トーティエント数 である。次は2 。また、奇数 の中では唯一ノントーティエント ではない。
1 = 21 − 1
12 + 1 = 2 であり、n 2 + 1 の形で素数を生む最小の数である。次は2 。
1! + 1 = 2 であり、n ! + 1 の形で素数を生む最小の数である(0! の時も実際の値は同じである)。次は2 。
フィボナッチ数列 の最初の数かつ2番目の数でもあり、その他の多くの整数列の最初の数である。フィボナッチ数列の次の数は 2 。整数列を集めたニール・スローン の最初の本 Handbook of Integer Sequences では、1 で始まらない数列にも慣習として最初に 1 を加え、その 1 は数列を順序付ける辞書式順序 の考慮外とした。改訂版の Encyclopedia of Integer Sequences およびウェブ上の後継であるオンライン整数列大辞典 では、数列の最初に並んだ 0 や 1 は辞書式順序の考慮外となっている。
最小のベル数 である。次は2 。
交互階乗 の最小の数かつ2番目の数でもあり、2番目の場合、2! − 1! = 2 − 1 である。次は5 。
単位ベクトル の長さであり、単位行列 の行列式 である。
確率論 において、確率 の最大値 であり、必ず起こる事象 の確率である。
統計学 において、相関係数 は −1 から 1 の間の値を取り、1 に近いほど正の相関が強い。
自然数を定式化する方法によって、1 は異なる表現を持つ。
ペアノの公理 では、1 は 0 の後者である。すなわち、1 = {0} = {Ø} である(Ø は空集合 )。
プリンキピア・マテマティカ では、1 は単集合 (1つの元のみを持つ集合)全ての集合と定義される。
古代エジプト では、2 / 3 と 3 / 4 は別格として、一般の分数 を、分子が 1 で分母が異なるいくつかの分数の和として表した。例えば、2 / 5 = 1 / 3 + 1 / 15 などである。分子が 1 の分数、あるいはそれらの和で表す形式は、単位分数 またはエジプト式分数 と呼ばれる。
全ての項が 1 である数列の母関数 は次で与えられる。
1
1
−
x
=
1
+
x
+
x
2
+
x
3
+
⋯
{\displaystyle {\frac {1}{1-x}}=1+x+x^{2}+x^{3}+\cdots }
この級数は、|x | < 1 のときに限り収束する。
自然界に出現する数値や2の冪 などの数学的対象の多くはベンフォードの法則 に従い、1 で始まるものが最多で全体の約30 %を占める。
最小のリュカ数 である。次は3 。また、初項2 の後者である。
1 = 1!
最小の階乗数 である。次は2。
n ! が n 桁となる数である。他には 22 と 23 と 24 しかない。
級数 1 / 2 + 1 / 4 + 1 / 8 + 1 / 16 + ⋯ は 1 に収束する。
約数の和が 1 になる数は1個ある (1) 。約数 の和1個で表せる最小の数である。次は3 。
約数の和が奇数になる最小の奇数である。次は3 。
倍積完全数 の約数の和としては最小の数である。次は12 。
約数の和 n 個で表せる n 番目の数である。次は18 。
約数の和の個数別の最小でいうと、これも最小にあたる(1個)。次は12 (2個)。
連続してある数に対して約数の和 を求めていった場合1個の数が 1 になる。その最小の数。次は4 (2個)。いいかえると
σ
m
(
n
)
=
1
(
m
≧
1
)
{\displaystyle \sigma ^{m}(n)=1~(m\geqq 1)}
を満たす n が1個あるということである。(ただし σ は約数関数 )(オンライン整数列大辞典 の数列 A241954 )
九九 においては、1 の段で 1 × 1 = 1(いんいちがいち)と表し方が 1 通りしかない。九九で表し方が 1 通りのしかない数は他に 25 , 49 , 64 , 81 があり、計5つである。
各位の和が 1 となるハーシャッド数 は 100 までに3個、1000 までに4個、10000 までに5個ある。
各位の和が 1 となる数は、全てハーシャッド数。そのような数は、十進法 では他に 3 と 9 しかない。
最小のハーシャッド数である。次は2 。
1 を基とする最小のハーシャッド数である。次は10 。
n を基とする n 番目のハーシャッド数である。次は20 。
各位の和(数字和 )が n となる n 番目の数。次は11 。
平方数 がハーシャッド数になる最小の数である。次は4 。
立方数 がハーシャッド数になる最小の数である。次は 8 。
三角数 がハーシャッド数になる最小の数である。次は 3 。
フィボナッチ数 がハーシャッド数になる最小の数である。次は2 。
各位の積が 1 になる最小の数である。次は11 。(オンライン整数列大辞典 の数列 A000042 )
最小のカプレカ数 (第1定義)。次は9 。
1 の約数の個数は1個になり 1 の1倍になる。1~n までの約数の個数が n の整数倍になる最小の数である。次は4 (2倍)。(オンライン整数列大辞典 の数列 A050226 )
抽象代数
抽象代数学 では、乗法群 やモノイド の単位元 を 1 で表すことがあるが、e (ドイツ語 の Einheit に由来する)で表す方がより伝統的である。整数に限らない一般の環 において、乗法における単位元を 1 で表し、加法 における単位元を 0 で表すことは一般的である。1 を n 回足して 0 になるとき、その環の標数 は n であるという。通常の整数では 1 を何度繰り返し足しても 0 にはならないため、そのような環の標数は 0 と定める。例えば標数 2 の体 は、符号理論 などに応用を持つ。通常の体の定義は、1 と 0 が等しくないことを要求するので、標数 1 の体は存在しないが、一元体 という概念はある。ただし、それは単集合ではない。
その他 1 に関すること
西洋の数秘術 では、1 は万物の始まり、唯一絶対であること、神などを象徴する。
デジタル で状態を表すときの、2個の要素の内の一つであり、デジタル信号 で、信号がアクティブである場合を表す。
言語・表記
和語 系数詞 の「ひと」は単独で用いることはできず、「ひと - つ(一つ)」「ひと - よ(一夜)」など接尾辞 (助数詞 )を伴って用いられる。
ただし、通話表 で 1 を送る場合「数字のひと 」と送られる。
暦 で月 の第1日を意味する「ついたち」は「月立ち」が転訛したものである。時間としての1日(24時間)を和語系数詞では「ひとひ」と呼ぶが、現代日本語ではほとんど用いられず、専ら漢語 系数詞による「いちにち」が用いられる。
非常に多くの数字 体系で、1 は1本の棒や1つの点などで表される。
書道 では、漢字の一は基本の練習文字として多用される。
「ピンからキリまで」といった慣用句や、おいちょかぶ というゲームなど、限定された文脈においては、1 を「ピン」と呼ぶ。
日本語 圏のスレッドフロート型掲示板 において、コメント番号が 1 になることから、1 はそのスレッドを立てた人(スレ主 )のこと。
1 を乗数・除数とする演算の値が元の数と同じになる性質から、1 は、数量の概念としての複数 に対する単数 、言語としての複数形 に対する単数形 のように、特殊な取り扱いを受けることが多い。
1 の接頭辞:[拉 ]uni- 、[希 ]mono- 。
単一であること、単独であること、1倍、1重をシングル (single) という。「ダブル 」に対して使われることも多い。
1 の付く言葉
「1 のつく日」に開かれた定期市 に由来する地名 である「一日市」「一日市場」は多くの場合「ひといち」「ひといちば」と読まれる。恐らくは「ひとひ・いち(ば)」からの転訛であると思われる。
当選に必要な得票数が選挙区 によって異なることを「一票の格差 」という[ 2] 。
第1のもの
番号
SPIコードの1
スポーツ
かつては大阪近鉄バファローズ でも鈴木啓示 投手の永久欠番となっていたが、2005年 にオリックス・ブルーウェーブと合併、「オリックス・バファローズ 」が発足したのを機に失効となった[ 注 1] 。
ナンバープレート
自動車で、普通自動車のうち貨物用途の車のナンバープレート の分類番号の上1桁には 1 が付けられる(1ナンバーともいう)。
自動車のナンバープレートの希望番号制で、「・・・1」は抽選対象番号である。
テレビのチャンネル
音楽
兵器
大日本帝国 の陸軍 および海軍 で、兵器名称における「一式」は皇紀 2601年 (1941年 、昭和 16年) に制定されたことを示す。
陸軍
海軍
番号付けとして1番を与えられた兵器 (国名はISO 3166-1 の2文字コード順)
ドイツ帝国 / ドイツ国 / ドイツ
フランス
イギリス
日本 / 大日本帝国
ソビエト連邦
アメリカ合衆国
固有名詞
1の付く地名
1を始点とする概念
1 を始点とする概念や体系には、以下のものがある。
符号位置
記号
Unicode
JIS X 0213
文字参照
名称
1
U+0031
1-3-17
1
1
DIGIT ONE
1
U+FF11
1-3-17
1
1
FULLWIDTH DIGIT ONE
¹
U+00B9
1-9-16
¹
¹
SUPERSCRIPT ONE
₁
U+2081
-
₁
₁
SUBSCRIPT ONE
৴
U+09F4
-
৴
৴
BENGALI CURRENCY NUMERATOR ONE
༪
U+0F2A
-
༪
༪
TIBETAN DIGIT HALF ONE
፩
U+1369
-
፩
፩
ETHIOPIC DIGIT ONE
᧚
U+19DA
-
᧚
᧚
NEW TAI LUE THAM DIGIT ONE
⅟
U+215F
-
⅟
⅟
FRACTION NUMERATOR ONE
Ⅰ
U+2160
1-13-21
Ⅰ
Ⅰ
ROMAN NUMERAL ONE
ⅰ
U+2170
1-12-21
ⅰ
ⅰ
SMALL ROMAN NUMERAL ONE
①
U+2460
1-13-1
①
①
CIRCLED DIGIT ONE
⑴
U+2474
-
⑴
⑴
PARENTHESIZED DIGIT ONE
⒈
U+2488
-
⒈
⒈
DIGIT ONE FULL STOP
⓵
U+24F5
1-6-58
⓵
⓵
DOUBLE CIRCLED DIGIT ONE
❶
U+2776
1-12-1
❶
❶
DINGBAT NEGATIVE CIRCLED DIGIT ONE
➀
U+2780
-
➀
➀
DINGBAT CIRCLED SANS-SERIF DIGIT ONE
➊
U+278A
-
➊
➊
DINGBAT NEGATIVE CIRCLED SANS-SERIF DIGIT ONE
㆒
U+3192
-
㆒
㆒
IDEOGRAPHIC ANNOTATION ONE MARK
㈠
U+3220
-
㈠
㈠
PARENTHESIZED IDEOGRAPH ONE
㊀
U+3280
-
㊀
㊀
CIRCLED IDEOGRAPH ONE
一
U+4E00
1-16-76
一
一
CJK Ideograph, First
弌
U+5F0C
1-48-01
弌
弌
CJK Ideograph, number one
壱
U+58F1
1-16-77
壱
壱
CJK Ideograph, number one
壹
U+58F9
1-52-69
壹
壹
CJK Ideograph, number one
𐄇
U+10107
-
𐄇
𐄇
AEGEAN NUMBER ONE
𐌠
U+10320
-
𐌠
𐌠
OLD ITALIC NUMERAL ONE
𐡘
U+10858
-
𐡘
𐡘
IMPERIAL ARAMAIC NUMBER ONE
𐤖
U+10916
-
𐤖
𐤖
PHOENICIAN NUMBER ONE
𐩀
U+10A40
-
𐩀
𐩀
KHAROSHTHI DIGIT ONE
𐩽
U+10A7D
-
𐩽
𐩽
OLD SOUTH ARABIAN NUMBER ONE
𐭘
U+10B58
-
𐭘
𐭘
INSCRIPTIONAL PARTHIAN NUMBER ONE
𐹠
U+10E60
-
𐹠
𐹠
RUMI DIGIT ONE
𝍠
U+1D360
-
𝍠
𝍠
COUNTING ROD UNIT DIGIT ONE
🄂
U+1F102
-
🄂
🄂
DIGIT ONE COMMA
𝟙
U+1D7D9
-
𝟙
𝟙
MATHEMATICAL DOUBLE-STRUCK DIGIT ONE
𝟷
U+1D7F7
-
𝟷
𝟷
MATHEMATICAL MONOSPACE DIGIT ONE
𝟏
U+1D7CF
-
𝟏
𝟏
MATHEMATICAL BOLD DIGIT ONE
𝟣
U+1D7E3
-
𝟣
𝟣
MATHEMATICAL SANS-SERIF DIGIT ONE
𝟭
U+1D7ED
-
𝟭
𝟭
MATHEMATICAL SANS-SERIF BOLD DIGIT ONE
他の表現法
脚注
注釈
^ 当初、オリックス側でも背番号 1 の扱いが検討されたが、鈴木本人が「自らの永久欠番はあくまで近鉄でのもの」とし、オリックスの背番号 1 継続使用を承諾した。
出典
^ Georges Ifrah, The Universal History of Numbers: From Prehistory to the Invention of the Computer transl. David Bellos et al. London: The Harvill Press (1998): 392, Fig. 24.61
^ “一票の格差(イッピョウノカクサ)とは ”. コトバンク . 2018年2月25日 閲覧。
関連項目
ウィキメディア・コモンズには、
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