電源開発
電源開発株式会社(でんげんかいはつ、英: Electric Power Development Co.,Ltd.)は、東京都中央区に本店を置く電力会社(発電事業者[3]、送電事業者[4])である。愛称としてJ-POWER(ジェイパワー)が使われる。 概要太平洋戦争の日本敗戦後、GHQの指示で作られた過度経済力集中排除法の指定を受け日本発送電が解体、地域電力会社に分割された。しかし、分割されたばかりの地域電力会社は資本的にも非常に貧弱で、復興のために必要となる電力を満足に供給できず、発電所新設の投資もままならない状態であった。そのため、国内での電力需要の増加に対応して制定された電源開発促進法により、1952年(昭和27年)9月16日に国の特殊会社として設立された(資本構成は66.69 %を大蔵大臣(のちに財務大臣)、残りを9電力会社が出資)。 電源開発の最初の大事業は佐久間ダムであるが、10年はかかるとされた工事を、アメリカ合衆国からの技術導入により、3年で完成させた。続けて“OTM”と呼ばれる奥只見ダム、田子倉ダム、御母衣ダムなど大規模なものを含む水力発電所を次々に建設し、戦後復興期を電力面から支えた。なお、佐久間ダムの佐久間発電所が現在も年間発電量日本一の水力発電所であるなど、これら発電所は現在でも国内最大級の規模を有する。 高度経済成長期、大きく伸びる電力需要に合わせて、財務を立て直した電力会社と共に供給力も大きくしていったが、電力会社間の連携不足や昼夜間の需要ギャップ拡大など、効率面が問題となってきた。これに対し電源開発は複数の電力会社が利用できる広域火力発電所、電力会社間の連系送電線や佐久間周波数変換所などの連系設備、長距離直流送電、大規模揚水発電所を建設。電力会社の補完的事業を行う。 更に後、電力会社も十分な財務体質を有し、各社間で連系送電線やその他連系設備を建設していった。電源開発は当時斜陽化していた国内炭鉱産業支援のため、国内炭専用の火力発電所を建設したり(のち海外炭火力へと変更)、海水揚水発電所等の実証試験プラントや海外協力事業を積極的に行うなど、国策的性格が強い事業を行うようになった。 1997年、特殊法人合理化の中で5ヵ年程度の準備期間を置いた後に民営化することが閣議決定され、2003年に電源開発促進法を廃止。2004年10月6日に東京証券取引所第1部に上場し、電力会社及び政府出資の民営化ファンドの保有株式の全てを売却した(初値は2,795円)。また合わせて愛称を「でんぱつ」から「J-POWER(ジェイパワー)」に変更した。 現在では、日本国内に水力、火力合わせて60か所以上の発電所を有し、発電能力は旧一般電気事業者(10電力会社)以外としては突出しており、旧一般電気事業者と比較しても四国電力などを抜き、東北電力に匹敵する。特に石炭火力発電に関しては日本一の規模で、熱効率も世界最高水準を誇っている[5]。また、水力発電の規模も日本トップクラスである。 送電・変電設備、電力会社間の連系送電線やその他連系設備も多数保有しており、特に本州 - 九州間を連系する送電網を有するのはJ-POWERのみである。以前は北海道 - 本州間、50 Hz・60 Hz間、本州 - 四国間の連系を保有するのもJ-POWERのみだったが、現在はそれぞれ3分の2、40 %、75 %を保有している。なお、現在は原子力発電所を有していないが、青森県において大間原子力発電所を建設中である。風力発電についても東京臨海風力発電所など、2023年(令和5年)7月現在で国内に27地点を有し、国内事業者第2位の規模である[6]。海外においてもポーランドでの事業に参画(ザヤツコボ風力発電所[7] [8])するなど、積極的な展開を進めている。 また、近年の電力自由化の流れに対応すべく事業を多角化(水道事業など)。併せて、これまで主にはアジア地域におけるコンサルティングを展開してきた海外事業も、近年はIPPへの積極投資(タイ・カエンコイ2発電所、アメリカ合衆国・テナスカフロンティア、エルウッド、グリーン・カントリーなど)、炭鉱開発(豪州・クレアモント炭鉱など)などにより拡大しつつある。 2019年4月1日、100%子会社として電源開発送電事業分割準備株式会社を設立。2020年4月1日に同社を電源開発送変電ネットワーク(J-POWER送変電)と改称し、送電事業が移管された[9]。 沿革(主要設備運転開始時期等)
人事代表権のある取締役のみ、2024年6月28日現在。
特殊会社時代には最高責任者の役職名は「総裁」であったが、一般の株式会社に改組してからは「社長」となっている。 歴代最高責任者
主要事業所一覧国内海外
発電施設計 93箇所、1822万7179kW(2024年3月31日現在)[13]
水力発電所61箇所 857万7369kW
火力発電所運転中7箇所、841万2000kW(2024年3月31日現在)
原子力発電所建設中・開発中1箇所 138万3000kW(2024年3月31日現在)
新エネルギー運転中
過去に存在した発電施設火力発電所
* 若松火力発電所跡地には、研究・実験・研修施設としての若松総合事業所が建設された。 海外実績
提供番組
関連会社連結子会社電気事業(9社)
電力周辺関連事業(17社)
海外事業(45社)
その他の事業(5社)持分法適用会社電気事業(12社)
海外事業(77社)
不祥事・トラブル等TCIによる株式取得をめぐる問題電源開発の発行済株式の9.9%を保有する英国のザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI)は、2007年6月の定時株主総会の時点で増配要求を出すなど、経営方針に対して不満を表明していた[31]。2007年11月には、社外役員の派遣を経営陣に要請したものの、電源開発の取締役会は2008年1月7日、この提案に反対する旨の回答をする[32]。 そこでTCIは、1月15日、電源開発の株式の保有率を20%まで引き上げるため、外為法による事前届出[33]を行った。しかし関税・外国為替等審議会外国為替等分科会外資特別部会は4月15日、この株式取得は日本の「公の秩序の維持が妨げられるおそれがあるもの」とする意見[34]を出した。この意見を受けて、額賀財務大臣と甘利経済産業大臣は、TCIによる株式の取得の中止の勧告[10]を出すと同時に、「日本政府の対日直接投資促進は不変」という談話[35]を発表し、電源開発もこの勧告と談話を許容する内容のコメント[36]を発表した。 4月25日に入り、TCIは経済産業省から出された弁明の機会の付与[37]に対し中止勧告の応諾の拒否を通知したため、額賀財務大臣と甘利経済産業大臣は、外為法27条10項の中止命令のための手続に着手し、5月13日に中止命令[38]を発した。7月14日、TCIはこの中止命令に従い、不服申し立てを断念する旨の声明を発表した[39]。 一方でTCIは、4月16日に、6月の電源開発の定時株主総会において、期末配当に関する提案と、条件が受け入れられない場合の社長の解任を内容とする株主提案を行うことを発表した。電源開発は4月18日にこの提案を受領した旨を発表し、4月30日にTCIの全提案に反対する旨の取締役会の意見[40]を発表した。その後TCIと電源開発との間で書簡の往来が続いたものの意見の対立は埋まらず、5月22日には、定時総会に向けて委任状勧誘を行うことをTCIが発表した。 6月26日の第56期定時株主総会にて、TCIによる株主提案はすべて否決されたものの[41]、それと前後して、TCIは電源開発の経営陣の責任を追及する訴えを提起のための手続を進めており、また、持合い株主の議決権の投票結果の開示を要請する[42][43][44][45][46]など、定時株主総会によるTCIの株主提案の否決後も係争は続いていた。 しかし、2008年10月31日に、電源開発はTCIが保有している全株式を買い取ることを発表し、一連の問題に終止符を打つこととなった。なお、TCIが株式の売却を決めた理由については、電源開発が2008年7月末に決めた子会社事業を本体に取り込む事業再編[47]によるものとする報道[48]と、2008年9月に発生した世界規模の金融危機の影響によるものとする報道[49]とがあり、錯綜している。 天下り問題→詳細は「日本の電力会社 § 天下り問題」を参照
福島第一原子力発電所事故以降、経済産業省と電力会社の天下り問題が、監督官庁である経産省の原子力発電所の安全基準を甘くさせる構造として批判が集まった。 その他放送送信施設本店屋上にはコミュニティ放送局である中央エフエムの送信所が置かれていたが[50]、2013年6月4日に歌舞伎座タワーに移転した[51]。 脚注注釈出典
関連項目外部リンク
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