紀伊田辺駅
紀伊田辺駅(きいたなべえき)は、和歌山県田辺市湊にある、西日本旅客鉄道(JR西日本)紀勢本線(きのくに線)の駅。事務管コードは▲622067[2]。 概要田辺市の代表駅で、特急「くろしお」を含むすべての定期列車が停車する。普通列車は、当駅が終点であり、線内の普通列車で当駅を越えて運転されるのは、朝の周参見発御坊行きと、夜の御坊発新宮行きのみである。また、亀山駅から当駅までは単線だが、当駅から和歌山駅までは複線となる。 かつては紀伊田辺機関区が併設されており、D51形・D60形・C57形・C58形などの蒸気機関車、入換用に、8620形・C50形なども配置されていた。扇形車庫などもあり、和歌山機関区・新宮機関区・亀山機関区と並ぶ紀勢本線の重要な車両基地であった。現在も紀伊田辺運転区・紀伊田辺保線区・田辺電気区が設置され、紀南エリアの拠点であると同時に、紀勢本線運行上の要衝としての役割を果たしている。 歴史第二次世界大戦後は、田辺地方引揚援護局の設置に伴い、主に台湾などからの戦後引揚者を輸送する引揚列車の起点としても重要であった。 年表
駅構造単式ホーム1面1線と島式ホーム1面2線、合計2面3線のホームを持つ地上駅で、構内に留置線があり、折り返しが可能である。また、ホームと接する線路の間にもう1本線路がある。単式ホームの1番のりば側のビル内に駅事務室があり、島式ホームの2・3番のりばへは跨線橋で連絡している。以前は1932年の開業当時に建設された洋館風の駅舎があったが、老朽化等の理由で取り壊され、新たに駅舎が建設された(詳細は後述)。 駅長が配置された直営駅であり、管理駅として周参見駅 - 初島駅間の各駅を管理している。みどりの窓口、自動券売機、みどりの券売機[10]が設置されているが、自動改札機は設置されていない(ICカード専用簡易改札機のみ設置されている)。このほか、駅レンタカー業務も行っている。トイレは改札外では隣接する田辺観光センターに、改札内には一番乗り場に設置されている。 自動体外式除細動器 (AED) が1台設置されている[11]。また、「こども110番の駅」にも指定されている[12]。 当駅において、夜間滞泊を行う車両がある。 なお、きのくに線でICカード「ICOCA」が使用できるのは和歌山駅から当駅までの区間と「くろしお」の停車駅のみであったが、2021年(令和3年)3月13日より当駅 - 新宮駅間の全駅でもICカード「ICOCA」が利用可能となっている[13]。 のりば
また、2006年に施行された高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー新法)への対応の一環として、新宮側に架設されていたそれまでの跨線橋を撤去したうえ、新たに御坊側に車椅子対応型エレベーター2基と跨線橋を約2億7000万円で設置(うち3分の1はJR西日本が負担)し、2009年3月29日から供用を開始した。なお、同日には完成記念式典が行われ、JR西日本和歌山支社長・仁坂吉伸和歌山県知事・二階俊博経済産業大臣・真砂充敏田辺市長らが出席し、設備の完成を祝った[15]。 利用状況
駅周辺駅前広場は、田辺市の「都市再生整備計画」に伴う改修が2012年に事業化された。中心市街地活性化の一環として行われるもので、一般駐車場の移設に伴いスペースを確保するとともに、公共交通機関の乗降場などが整備され、交通混雑の解消やバリアフリー対応がなされるほか、観光案内施設の建設も計画に含まれた。2012年6月の報道では、工事は2012年7月から年度末にかけて実施し、事業費は約4億1千万円とされた[17][18][19]。 実際の工事は総工費約4億8千万円で2013年9月までかかり、同年9月28日に完成記念式典が行われ、駅舎に隣接して田辺市観光センターも同時にオープンした[20][21]。 駅周辺の「味光路」は2017年の報道では、200軒以上の飲食店がひしめく和歌山県随一の飲食街として紹介されている[22]。
バス路線
駅舎の改築2013年9月、JR西日本和歌山支社が現駅舎を北西の隣接地に建て替える案を田辺市に提出していたことが報じられた[24]。JR側は1932年建築の現駅舎を耐震化する場合の経費や、現駅舎の場所での改築する場合の仮駅舎費用などがかさむことをその理由とし、予想される南海地震時の津波避難施設としても活用できる4-5階建てのビルとする構想で、2016年の完成後は現駅舎は取り壊すとされた[24]。これに対しては、現駅舎の位置を前提として市が進めている駅前広場整備事業への影響を懸念する反応[24] や、歴史的価値から現駅舎の保存活用を求める声が地元から上がり、田辺市中心市街地活性化協議会は11月17日に、新駅舎をJR案通りに建設することは承認する一方で現駅舎の保存活用を求める意見書を市に提出した[25]。12月20日に開かれた中心市街地活性化協議会で、JR側は現駅舎を取り壊す場合に跡地の一部に駅舎を設置して現在と変わらない動線を維持すること、現駅舎を市に無償譲渡して市が保全活用することを提案した[26][27]。この提案に対して市側は現駅舎の耐震補強に億単位の費用が必要なことに加え、その後の維持管理や利用者の安全管理まで市が責任を持つ点に市民の合意を得ることが困難であると述べた[26][27]。 2014年6月4日、JR西日本和歌山支社は現在の駅舎のある位置に動線を維持する形で、利用客に熊野の歴史や自然の魅力を感じてもらえる空間をイメージした内装と約300人が津波から避難できる機能を持つ3階建の駅ビルに建て替えることを明らかにした[28]。この時点では、2015年度初頭に工事に着手、2016年度末までに完成させるとしていた[28]。市は現駅舎について「公費投入による耐震化と維持管理は不可」という主張を改めて示し、保存を求めていた田辺市中心市街地活性化協議会も「やむを得ない」と建替に同意した[28]。 駅舎の改築は前記の発表では2015年度初頭の着手とされていたが、2015年10月には「2016年中」とされ、それに先立つ2015年10月から12月に開催された「紀の国トレイナート2015」ではイベントの一環として駅舎の外壁に壁画イラストが描かれた[29][30]。その後改築着手はさらに遅れ、田辺市は2016年11月に、2017年1月から新駅舎の設計を開始し、同年6月に工事着手、2019年3月末に完成というスケジュールを明らかにした[31]。駅舎については田辺市側から現駅舎の外観イメージの継承などを求める要望が出たため、市が追加工事分を負担する前提でJRと合意したという[31]。2017年の報道では、市の負担は設計費も含めた総工費3億6000万円のうち約6000万円とされている[32]。 2017年8月17日、JR西日本は駅舎の一部(正面向かって左側)の解体に着手した[32]。同年8月の報道によると駅舎本体の解体は平成30年度(2018年 - 2019年)に実施し、2019年3月に新駅舎の完成を目指すとしていた[32]。3階建ての駅事務室ビルが隣接地に完成したことを受け、2018年5月より駅舎の解体が本格的に開始された[33]。新駅舎の屋根には、これまでの駅舎の特徴である大屋根や闘鶏神社の意匠を取り入れられた[33][34]。 2019年1月に旧駅舎の解体が完全に終了した[35]。その後、建築が進められていた新駅舎が同年7月までに完成し、同月23日よりコンコースや構内待合室の使用が開始された[9]。なお、田辺観光協会や田辺商工会議所など8団体が寄贈した観光案内パネルやデジタルサイネージも構内に設置されている[34]。 同年8月7日には新駅舎完成を祝う式典が開かれた[36]。また同日に「セブン-イレブン ハートイン」の営業も開始された[34][注釈 1]。 その他
隣の駅脚注注釈出典
関連項目外部リンク
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