機動戦士Ζガンダム
『機動戦士Ζガンダム』(きどうせんしゼータガンダム、MOBILE SUIT Ζ GUNDAM)は、日本サンライズが制作した『ガンダムシリーズ』のテレビアニメ。 名古屋テレビを制作局として、テレビ朝日系列で1985年(昭和60年)3月2日から1986年(昭和61年)2月22日まで、土曜 17時30分 - 18時00分の時間帯にて全50話が放送された。物語は1979年 - 1980年に放送された『機動戦士ガンダム』の続編にあたるが、設定はその劇場映画版3部作から連なるものとなっている。略称は「Ζ(ゼータ)」。 本項では2005年(平成17年)から2006年(平成18年)にかけて松竹系劇場にて全国公開された、劇場用映画三部作『機動戦士Ζガンダム A New Translation』シリーズについても記述する。 作品解説前作の一年戦争から7年後の宇宙世紀0087年に起きたグリプス戦役を描く。「スペースノイドとアースノイドの対立」という軸は変わらないが、前作の地球連邦対ジオン公国の戦争という明快な図式に対して、本作はティターンズとエゥーゴという地球連邦軍から発生した二つの勢力による抗争[1]を中心に、中盤以降ではジオン残党最大勢力であるアクシズが介入し、三勢力間の同盟・決裂、指導者の暗殺など、権謀術数が相まみえる構図となる。のちに製作されたOVA『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』では、この情勢に至る経緯(ジオン残党の抵抗と地球至上主義の台頭)に触れている。 登場人物は主人公カミーユ・ビダンら次世代の若者が登場し、年齢を重ねた前作の登場人物たちと絡む展開になる。アムロ・レイとシャア・アズナブル(本作では「クワトロ・バジーナ」)という前作の好敵手同士が、カミーユの仲間としてエゥーゴで一時的に共闘する。カミーユとフォウ・ムラサメの悲恋など、ニュータイプと強化人間の関係、可能性と悲劇が重層的に描かれる。 メカに関しては、移動形態へ変形する可変モビルスーツが多数登場し、主役機も前作の発展型(ガンダムMk-II)から物語後半では可変タイプ(Ζガンダム)へと交代する。また、ガンダムMk-IIが敵から強奪した機体だったり、旧ジオン系の兵器が地球連邦軍で再利用されるなど、前作の設定をアレンジしている。 ナレーションは劇中でヘンケン・ベッケナーを演じる小杉十郎太が担当した[注 1]。前作のように戦況を解説するナレーションは少なく、主に本編冒頭のモノローグ、前回のダイジェスト、次回予告が中心であった。次回予告は毎回「君は、刻(とき)の涙を見る」というキャッチフレーズで締めくくられた。 「ゼータ」に当てられる文字として読みの上で正しいのはギリシャ文字の"Ζ"であるが、入力の容易さ・形状の類似からラテン文字の"Z"(ゼット)が代用されることが多い[注 2]。 準備稿時点での作品タイトルは『逆襲のシャア』であった(後述の小説版を参照)。 製作企画の経緯企画開始当時、番組スポンサーのバンダイが玩具としてライバル視していたのは「戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー」に登場するトランスフォーマーだった[2]。その時点で『ガンダム』の爆発的ヒットを支えたロボットアニメにおけるミリタリー・ブームは過去のものとなりつつあり、プラモデルも1983年をピークに縮小傾向に転換していた[2][3]。そのため、終了する模型のオリジナル企画MSVの後続企画のMS-Xではなく、新たな商品展開が求められていた[2][3]。そこで浮上したのが、前年作の「重戦機エルガイム」からメカニック的なギミックやアイデアなどを取り入れつつ、可変MSなどのより攻めたメカニックデザインを追求したガンダム本編の続編の制作だった[2]。 それまでに『戦闘メカ ザブングル』、『聖戦士ダンバイン』、『銀河漂流バイファム』、『重戦機エルガイム』と立て続けに制作されてきたバンダイとサンライズのタッグによるロボットアニメは、商業的にはガンダムを上回ることはなかった[4]。その一方で、ガンダム自体も『模型情報』や『コミックボンボン』などの雑誌で展開していたものの、劇場版三部作が公開されていた当時よりも売上が落ち込んでいたことから、バンダイ[注 3]により企画された。 企画自体はそれ以前の『ダンバイン』の放映時、クローバーの倒産によるスポンサー撤退直後から始まっており、続編の制作は『重戦機エルガイム』が始まった時にはほぼ決まっていた[5]。既に『ダンバイン』の後番組は『エルガイム』に決定していたが、バンダイがクローバーの代わりにメインスポンサーを務める条件の一つが、ガンダムのテレビシリーズの復活であった[要出典]。 実際に富野監督がガンダムの続編の構想をスタートさせたのは1984年2月[6]。2月20日付の最初期のメモには「不足しているのは何か?/本当にやりたい事は何か?」というテーマ設定や「5年後のスタッフの発見」といったスタッフワークに関するものがあった[6]。2月から5月までは試行錯誤の時期にあたり、U.C.0111(トリプルワン)という未来を舞台にした「ゼーター・ガンダム」案、U.C.0045という過去を舞台にした「モビルスーツ アルファ・ガンダム」案が書かれている[6]。「ゼーター・ガンダム」案の方には、他人との精神的な同一状態を得る「ギャザー・スタイム」というニュータイプを超えるアイデアが書かれており、「ゼーター・ガンダムはギャザー・スタイムという機能を具有するのではないだろうか?」と書かれていた[6]。6月上旬頃に現在の形に近いストーリーラインがまとまり始め、それ以降、それをベースに推敲が重ねられた[6]。8月20日に「シチュエーション あれから7年後……。」と題した基本的な背景と1クール分のプロットのメモが完成する[6]。1984年11月、正式に企画が発表された[6]。 テレビアニメとしてはかなりの準備期間があったにもかかわらず、主役機のΖガンダムはその複雑なデザインや変形機構のため、デザイン決定や商品化が遅れた。複数のデザイナーが参加したこともあって実際のデザイン作業には予想外に時間がかかり、番組への登場は後半開始の3クール目にまでずれ込んでしまった[7]。そのため、Ζガンダム登場までの間の前半2クールの主役機を担うガンダムの必要性が生じ、ガンダムMk-II の登場が決まった[7]。バンダイからの「Mk-IIはMSVの流れを汲んだもの」というオーダーの下、RX-78からフルアーマーガンダムとヘビーガンダムへの流れの下流にあり、「可動」にも配慮がなされたデザインがなされた[8][9]。 またバンダイからの「主力のΖガンダムが20話過ぎまで登場しないのだから、そのつなぎとしてMSVは出して欲しい」というオファーで、それまでプラモデルのみで展開していたMSVの本編への登場も決まった[10]。そもそもMSVは、サンライズがなかなかガンダムの続編を作ろうとしないためにバンダイが独自に展開していたものだったので、これを機に「自分たちは本気で作っている」ということをアニメ制作者側に認知してもらうという狙いもあった[10]。 スタッフは、富野監督の「ガンダムの殻を破りたい」というリクエストと課題の一つに挙げていた若手育成のために、結果的に前作の世界観を担ったキャラクターの安彦良和とメカの大河原邦男には参加してもらいつつもその周囲を若手が固めるという体制となった[6]。 サンライズ作品では初めてメカニカル作画監督が設けられ、内田順久が採用されて番組内でクレジットされた[6]。 デザインキャラクターデザインは、前作のデザイナーであった安彦良和が担当した。1984年9月から作業に入り、監督の富野由悠季から届けられたプロットとメモの文章を基にイメージ優先でデザインしたという[6]。しかし、この方法には行き違いが多く、デザイン完成後にその役割に合わせて描き直したものもあった[6]。後年、安彦は前作で富野とは「同志」とも言える関係であったが、本作では様変わりしてしまい嫌な思いしかないと述べており、直接会って打ち合わせができたのはアポなしで富野の仕事部屋に上がり込んだ1度きりだったという[11]。また安彦はデザインのみで作画を手掛けないことも決定事項にあり、実際の作画の柱となったのはニュアンスがある柔らかい絵柄の安彦とは対照的な、立体的でデッサン的に固い絵柄の湖川友謙に影響を受けた北爪宏幸であった[6]。 メカニックデザインに関しては、クレジット上で名前があるのは大河原邦男と藤田一己で、それに加えてデザインワークスとして永野護が載っている[10]。しかし実際にはこの3人以外にも、小林誠、近藤和久、明貴美加、岡本英郎、大畑晃一、はばらのぶよし、林裕樹、佐山善則、村上克司、小田雅弘、スタジオけむ、ビシャルデザインなど、数多くのデザイナーやモデラー、漫画家、アニメーターが携わっている[10][12]。前作で登場したデザインの系譜を受け継ぎ、なおかつ新しいものを生み出すという意図のもと、若い世代のデザイナーを多数登用している。当時は今よりもメカデザイナーの数が少なかったので、デザイナーを発掘して育てていく作業と作品のためのデザイナーを決めるということを同時にやっていた[注 4][10]。 当初、富野監督の指名により、メインデザイナーには、前番組『重戦機エルガイム』にムーバブルフレームというアイデアを持ち込み、初めて設定上「齟齬なく動く」多重関節のアニメロボットをデザインした永野護が抜擢された[8]。富野監督からは「キャラクター以外のビジュアルイメージを出してデザインに専念して欲しい」と言われ、富野とSF設定考証担当の永瀬唯との3人でMSやスペースコロニーや宇宙船などの設定も考えた[5]。メカニックデザインではなく「デザインワークス」とクレジットされているのは、『Ζガンダム』およびその続編に出てくるムーバブルフレーム[注 5]や多重関節のMS、全天周囲モニターおよびリニアシート[注 6]といったメカニックの基本デザインを行なったためである[5][8]。また、永野はメカニックデザイン以外にも制服やノーマルスーツなどの衣装や拳銃などの小物類のデザインも担当しており、ヤザン・ゲーブルの設定画は永野がオリジナルを描いている[注 7][5]。 永野はMSのデザイン作業も進めていたが、彼が最初に提出したリック・ディアスとガルバルディβに対するサンライズ上層部やバンダイの評価が芳しくなかったため、番組放送前に降板することになった[16]。代わって、前作のデザイナーである大河原邦男が急遽招聘され、それに加えて当時21歳だった新人の藤田一己の参加も決まり、永野、大河原のアイデアを藤田がまとめるという方式で作業が進められた。例えばハイザックやアッシマーは大河原の案を、百式は永野の案を、ガンダムMk-IIは大河原・永野の案を、Ζガンダムは大河原・永野に加え近藤和久・小田雅弘らのデザインや変形案を、すべて藤田がクリンナップしてまとめている[17]。 最初に登場する数点のMSのデザインが終了した後、しばらく藤田が一人でデザインを担当することとなったが、さらに多くの可能性を探るため、終盤にかけて後にΖΖガンダムをデザインすることになるイラストレーターでモデラーの小林誠を筆頭に、漫画家の近藤和久、アニメーターの大畑晃一、はばらのぶよし、デザイナーの佐山善則、岡本英郎など多くの人材を登用した。また一度は降板した永野にも富野の声掛けで再度発注が行われ、キュベレイとハンブラビを描いている[5]。 戦艦は永野と藤田が担当し、永野はアーガマとグワンバンとエンドラ、それ以外を藤田がデザインしている。 音楽BGMは三枝成章(現:三枝成彰)が担当し[18]、アメリカの人気歌手・作曲家のニール・セダカにテーマ曲を依頼した。鮎川麻弥が歌う前期OPテーマ「Ζ・刻を越えて[注 8]」とEDテーマ「星空のBelieve[注 9]」は、過去のセダカのアルバム収録曲に新たな詞とアレンジがついたものであるが、森口博子が歌う後期OPテーマ「水の星へ愛をこめて」は新規に提供されたものである[注 10]。当初は「星空のBelieve」の方がオープニングテーマになる予定であったが、富野により変更された[19]。また、永野がテレビ放送当時に参加したイベントの席上で発言したところによると、当初主題歌についてはヴァン・ヘイレンに未使用曲を譲ってもらおうという案も出ていた[要出典]。 間嶋里美の歌う「ハッシャバイ」は元々『無敵鋼人ダイターン3』のイメージソングとして録音された楽曲である。間嶋の夫・古谷徹が演じるアムロ・レイの登場シーンに劇中歌として使用された(小説版の同シーンにおいても使用されている)。 アーケードゲーム『機動戦士Ζガンダム エゥーゴvs.ティターンズ』およびそのバージョンアップ版の『同DX』には「星空〜」を除く上記3曲は収録されているものの[注 11]、そのコンシューマ機移植版であるPS2・GC用『機動戦士ガンダム ガンダムvs.Ζガンダム』では収録されていない。VS.シリーズ第7作の『機動戦士ガンダム ガンダムVS.ガンダム』では、登場作品中唯一主題歌が収録されていない[注 12]。第8作となる『NEXT』でも、劇中のBGMでの代用となっている[注 13] 。しかし、『機動戦士ガンダム エクストリームバーサス フルブースト』では、劇場用主題歌 「Metamorphoze 〜メタモルフォーゼ〜」が収録されている。 オーケストラ用の『交響組曲Zガンダム』の楽譜は音源収録後に長年行方知れずになっていたが、バンダイナムコが『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』の為に資料を取り寄せた中に三枝直筆の楽譜がたまたま入っていた。この楽譜で2024年夏、仙台フィルハーモニー管弦楽団によって公演された[20][21] 反響・評価関東地区の平均視聴率6.4%、最高視聴率は11.7%、キー局である中京圏の名古屋テレビでは、関東地区よりも高い平均視聴率12.3%、最高視聴率は17.7%を記録。 人物およびメカキャラクターの刷新、作中に次々と登場する専用機や可変MS、難解な内容などのために、前作のファンからは不評を買ったが、新しいファンには受け入れられた[22]。本作は放映当時こそ賛否両論あったものの、20世紀末以降の若いファンにはスタンダードな作品になっている[4]。 商業効果本作は放映された年のガンプラの売上を倍増させるなど、商業面では好調であったが[23]、川口克己は「バンダイ側の売り上げの期待値を達成できなかった」と述べている[24]。松本悟によると、デザインの複雑化によるコストアップのための商品価格の高騰が原因としている[25]。また川口は、「コンテンツとしてのガンダムが魅力的な存在であることは間違いないので、期待値を満たすことはできなかったけど、『Ζ』のあともガンダムをTVアニメで続けて欲しいということになった」とも述べている[24]。 1994年にバンダイビジュアルから発売されたLD-BOXはPart1、2ともに3万5千セットのヒットとなった。これは当時のバンダイビジュアルの売上の2割に相当した[26]。またオリコンLDチャートではPart1が2位、Part2が1位を記録。2001年にDVD-BOXが発売され、こちらは単品換算95万枚のヒットになった[27]。前述のLD-BOXを単品換算すると45万5千枚なので売上枚数が大きく伸びている[注 14]。DVD-BOXと同時に発売された単品DVDと後のレンタルDVDを加えると128万枚に達している。 楽曲日本音楽著作権協会(JASRAC)は2005年5月18日、2004年度の著作物使用料に基づく分配額のランキングを発表。このランキングの第10位に「機動戦士Ζガンダム BGM(作曲:三枝成章)」が入った。『スーパーロボット大戦』などの関連ゲームのみならず、テレビのニュース、ワイドショー、バラエティ番組で同サウンドトラック音源が使用される機会が多い。 本作のサウンドトラックを作曲者自身によって管弦楽に編曲した「交響組曲Zガンダム」は録音後、楽譜が行方不明になっていたが2023年に作者直筆の総譜が発見され2024年8月10日に仙台フィルハーモニー管弦楽団によってはじめて劇場で演奏された[20][21]。 後期主題歌「水の星へ愛をこめて」を歌った森口博子は、この曲で歌手デビューしている。その後も長きにわたりこの曲を様々な場で歌い続けており、2018年にNHKがBSプレミアムで放送した『全ガンダム大投票 40th』の企画として実施した、当時の歴代ガンダムアニメシリーズ歌唱曲ファン投票ランキング「ガンダムソング」部門では同曲が第1位を獲得している[28]。 物語→物語における大状況の詳細については「グリプス戦役」を参照
一年戦争が終結し、7年の月日が流れた宇宙世紀0087年。ジオン公国軍に実質的勝利[注 15]を収めた地球連邦軍だったが、依然としてジオン公国軍残党による連邦軍への抵抗は続いていた。連邦軍のジャミトフ・ハイマン准将(のち大将)は、ジオン残党の脅威を大義名分として、連邦軍内部にジオン残党狩りを目的とする特殊部隊「ティターンズ」を結成する。ティターンズはジオン残党のみならず、コロニーの反地球連邦運動に対しても強硬策を採り、ティターンズのバスク・オム大佐は、反連邦集会を行っていたサイド1の30バンチコロニーに対して毒ガス使用による住民虐殺(30バンチ事件)を行い、情報統制により事実を隠蔽する。こうした動きに対し、連邦軍のブレックス・フォーラ准将は、ティターンズに反感を抱く連邦軍士官や兵士を中心に反地球連邦組織「エゥーゴ」を結成。アナハイムエレクトロニクス社を中心とする月面都市フォン・ブラウンの軍事産業から新造戦艦アーガマを提供されるなど資金と物資面での援助を受ける。 小惑星アクシズから地球圏偵察のため帰還し、連邦軍籍を得て潜入中のシャア・アズナブルはクワトロ・バジーナ大尉を詐称しエゥーゴに参加していた。 ティターンズはコロニー再建化計画において新たに整備されたサイド7グリーン・ノアを軍事拠点化しようと目論み、連邦軍の象徴たるガンダムの後継機開発計画を極秘に行っていた。かつてアムロ・レイらホワイトベース隊のメンバーたちが暮らしていたコロニーはグリーン・ノア1グリーン・オアシスとして再建されていた。そこに本作の主人公となるカミーユ・ビダンが幼馴染みのファ・ユイリィと共に暮らしていた。カミーユの両親は新型ガンダム開発計画に技術者として参加していたが、カミーユは父の不倫と、仕事にかまけて夫の素行を見て見ぬふりをする母に悩む鬱屈した少年だった。カミーユは尊敬するブライト・ノアに会うためファと共に宇宙港を訪れるがそこでティターンズの新米士官ジェリド・メサと遭遇。名前を馬鹿にされ激高したカミーユはジェリドへの暴行容疑で逮捕されるが、飛行訓練中だったガンダムMk-IIの墜落を機に基地を抜け出す。一方、軍事基地偵察の任務を負ったシャアは因縁深きコロニーに単身潜入を試みる。Mk-IIの存在を知ったシャアは機体の奪取を決意、部下2人とともにリック・ディアスで再び侵入する。混乱に乗じたカミーユはブライトとティターンズの女性士官エマ・シーンの制止を振り切り、高圧的なMPへの意趣返しのためMk-IIを奪取。さらにジェリドを心配したカクリコン・カクーラーの機体をも組み伏せる。Mk-IIのパイロットが自分たちと敵対する意志がないと判断したシャアはカミーユと二機のMk-IIを手土産にグリーンオアシスを脱出。こうして、ガンダム強奪事件を皮切りにエゥーゴとティターンズは全面抗争に突入するのだった。 Mk-II奪還のため卑劣な策を弄するバスクによりカミーユは両親を喪い、ティターンズへの反感と敵意を強めたカミーユは自らの意志でMk-IIの専任パイロットとなる。Mk-II奪還作戦に関わったエマはティターンズの非道に憤りエゥーゴへ離反。民間船テンプテーションの艦長という閑職に甘んじていたブライトもアーガマ隊に窮地を救われてエゥーゴに参加し、ヘンケンからの禅譲によりアーガマ艦長に就任。シャアは月で受領した新型機百式に乗り換え、ジャブロー降下作戦の指揮を任せられる。 一方、木星帰りの男・パプテマス・シロッコは降下作戦妨害の功でティターンズに参加。ジャミトフに忠誠を誓い一翼を担うようになっていく。また、小惑星アクシズと共に地球圏に帰還を果たしたハマーン・カーンはミネバ・ザビを傀儡に据え、彼女の摂政として辣腕を振るう。エゥーゴとティターンズの抗争に第三極として介入し、両陣営を手玉に取る。 こうして、自身の名声と過去との因縁に何度となく辛酸を舐め、凶弾に斃れたブレックスの後継者として自らの出自を明かし一軍の長となり苦悩を深めるシャア、人造ニュータイプである強化人間たちとの出会いや数々の悲劇を通じてニュータイプとして覚醒を遂げ、新型機Ζガンダムを与えられたカミーユ、謀略の数々により着々と手駒を増やし、やがてジャミトフの暗殺によってティターンズを掌握するシロッコ、シャアへの失恋を糧にジオン再興を目論むハマーンの4人を軸とし、コロニーレーザー・グリプス2をめぐりエゥーゴ、ティターンズ、アクシズ三つ巴の死闘が展開されるのだった。 登場人物→主要人物はそれぞれの項、それ以外は「機動戦士Ζガンダムの登場人物」を参照
登場兵器それ以外のものについては スタッフ(オープニングクレジットより)
主題歌・挿入歌
差し替え事例現在、日本国内で発売されている映像ソフトにおけるオープニング・エンディングパートは、上記に記載したテレビ放映時と同じ楽曲が使用されているが、一部のオンライン配信サイトおよび海外版映像ソフトでは、映像はそのままだが、楽曲のみサウンドトラック収録のBGM(オープニング曲は前期後期共に「Ζ GUNDAM」、エンディング曲は「新たな世界」)に差し替えられている事例がある(オープニング映像には、差し替えられたBGMに新たな効果音が追加されている)。これについてサンライズは「配信の『機動戦士Ζガンダム』オープニングとエンディングの楽曲がテレビ放送版と異なるのは、オンディマンド配信する際の権利上の理由によります。ご了承ください。現在の映像は富野監督に楽曲を監修いただき、インターネット配信の正式版として配信しております」と回答していた[29][注 18]。なお、2017年12月より、「元の主題歌で配信できるようになった」との報告が公式発表されている[30]。 各話リスト
放送局※系列は放送当時、放送日時は1985年12月中旬 - 1986年1月上旬時点(石川テレビについては本放送終了後に放送された日時)のものとする[31]。
劇場版劇場用映画三部作『機動戦士Ζガンダム A New Translation』(- ア・ニュー・トランスレーション)シリーズは、テレビシリーズ『機動戦士Ζガンダム』20周年を記念して全国松竹系劇場にて公開された映画作品[35]。2005年(平成17年)から2006年(平成18年)にかけてシリーズ展開された。公開に先立ち、東京国際ファンタスティック映画祭2004において、『星を継ぐ者』が2004年10月17日に先行上映された。 テレビシリーズの既存映像を用いつつも、新作映像も追加してテレビシリーズ全体を三部作の映画に再構成した作品。「A New Translation(新訳)」を謳って製作されており、物語の結末が異なるなど変更点も多い。 『劇場版∀ガンダムI 地球光』と『劇場版∀ガンダムII 月光蝶』以来3年ぶりのガンダムシリーズの劇場アニメでもある。 機動戦士ガンダム40周年プロジェクト『ガンダム映像新体験TOUR』として劇場版3部作がTCX(TOHOシネマズ独自規格ラージスクリーン)で劇場上映。第1作が2020年2月7日より、第2作が2020年2月12日より、第3作が2020年2月16日より上映[36]。 キャッチコピーは「再会は躍動する魂。とき放て、"Ζ"!!」(I)、「キスの記憶…」(II)、「誰も知らないラスト…新訳Ζ完結編。」「人は虚無の宇宙にぬくもりを見つけられるか!」(III)。 シリーズ概要(劇場版)
スタッフ(劇場版)
主題歌・BGM(劇場版)主題歌は富野の友人であり、熱烈なガンダムファンでもあるGacktが担当した。BGMはテレビ版と同じく三枝成彰が担当[注 26]。テレビシリーズのBGMを引き継いでいるほか、映画用の新規の楽曲も使用されている。 また、MSの動作音をはじめとするSEの音源がE&Mプランニングセンター(後のサウンド・リング)からフィズサウンドクリエイションのものに変更されており、結果的に『機動戦士ガンダム』や『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』との統一が計られることとなった[注 27]。
製作(劇場版)企画当初は『機動戦士ガンダム』や『∀ガンダム』と同様にテレビ版の再編集作品だったが、富野は殺伐さと悲劇しかなかった原典の物語を、新たな解釈と異なる視点を加えることで健やかな物語に再構成するというテーマのもと、自ら全三部作への再編集(監督・脚本・絵コンテ)を行った[注 30]。当時の放送局であった名古屋テレビも製作協力として制作に関わっている。 劇場版のフィルムは、テレビ版カット(以降、旧作画)に同じフレーム内で劇場版カット(以降、新作画)を加えるという特殊な方法で編集され、旧作画部分と新作画部分の質感を近づける「エイジング」(「経年変化」の意)処理が行われた[注 31]。公開当時、富野は完全に新作にしてしまうと『Ζガンダム』ではなくなってしまうため、あえてこの形式をとった旨を発言している。旧作画はトリミングされ、スタンダードサイズからビスタサイズに変更された[39]。また、カットによっては旧作画のフレーム内の一部(コクピット内のコンソール表示など)を部分的に追加・修正するといった加工もされている。 新作画部分には、テレビ版の後に製作されたOVA『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』に登場するジム・キャノンII、ジム・カスタム、ジム・クゥエルや『ADVANCE OF Ζ ティターンズの旗のもとに』のガンダムTR-1[ヘイズル]などのMSがカメオ出演している。 なお、『星の鼓動は愛』の初期題名は「三つ巴」だった。 物語(劇場版)大まかなストーリーの流れはテレビ版と同じだが、シャアのダカール演説やフォウの再登場などいくつかのエピソードがカットされた他、健やかな物語として再構成するためにテレビ版では反抗的だったカミーユの性格が素直でやや穏和になり、「修正」シーンや悲劇的な結末も回避された。ほかにもテレビ版のセリフの多くが変化・割愛されているなどの変更点がある。 出演声優(劇場版)映画化に際しては20名以上に上る大幅なキャストの変更が行われた。富野はカミーユ役の飛田展男にオーディションをしており、飛田は富野に「当日にキャスト変更もありうる」と言われたという[40]。また、ファ・ユイリィ役の松岡ミユキのようにテレビ版の声優の引退に伴う変更もあった。劇場版公開後に発売された『Ζガンダム』関係のほとんど各種ゲームでも、劇場版の声優が起用されている。 フォウ・ムラサメ役が島津冴子からゆかなに変更されたことに関して、島津は「映画出演のオファーがなかった」と明かした[41]。また、島津が公開した手記の中で、島津に問いただされた際に総監督の富野由悠季は「音響監督に騙された」「フォウは冴子にしかできない」「予め残すオリジナルキャストが決まっていて、その中にフォウも入っていた」と発言していたとされたが[41][42]、『機動戦士ΖガンダムII -恋人たち-』の公開を前にしたインタビューで「『Ζ』を新訳にするにあたり、復刻映画にするつもりは全くなく、主人公カミーユ・ビダン役の飛田展男でさえオーディションで改めて選び直した」「当初はアムロやシャアも含めたキャスティングの総入れ替えも検討していた」「フォウ・ムラサメのようなゲスト的なキャラクターに関して言えば、新人を起用するという考え方は初期段階からあった。ファースト以来のキャラクターとのバランスを考え懐かし映画にしないためフォウやサラには若い声が必要だった」「全体のバランスを音響監督と総合的に検討して考えた上で、今回のキャスティングに固めた」と前述の島津の手記の発言を否定する内容の説明が富野自身から語られた[43]。一方でガディ・キンゼーのように、Iでは別人が演じていたが、IIやIIIでオリジナルキャストに戻った例もある。 テレビ版の声優のクレジットはシャア・アズナブルが先頭だったが、劇場版『恋人たち』からはカミーユ・ビダンが先頭になっている。 なお、劇場版制作時点ではすでに故人だった井上瑤(セイラ・マス役)は『星の鼓動は愛』に『めぐりあい宇宙編』の音声を編集して出演(ライブラリ出演)している[44]。また、鈴置洋孝(ブライト・ノア役)と戸谷公次(カクリコン・カクーラー、グワダン・キャプテン役)は『星の鼓動は愛』収録後に逝去し、当作品が遺作になった。 劇場版の結末と他作品の関係
本作品の影響『機動戦士Ζガンダム -星を継ぐ者-』は上映映画館がそれほど多くなく、日本全国で83か所だったが、週間映画ランキングで3位にランクイン。上映してから5週間、ベスト10入りしている[48]。また、『第5回東京アニメアワード』において劇場映画部門優秀作品賞をも受賞している。 『機動戦士ΖガンダムII -恋人たち-』の上映は104か所、『機動戦士ΖガンダムIII -星の鼓動は愛-』では最終的に106館だった。同時期に各メディアで『機動戦士Ζガンダム』が再評価された。 DVD / Blu-ray(劇場版)発売・販売元はバンダイビジュアル。 DVD(第1作)2005年10月28日発売。
DVD(第2作)2006年2月24日発売。
DVD(最終作)2006年8月25日発売。
Blu-ray2012年5月25日発売。3作とも映像特典として特報と劇場予告編が収録され、16ページの解説書が封入されている。BOX版には劇場パンフレットの縮小版とポストカードが追加されている。
関連作品映像作品GUNDAM EVOLVEフル3DCGによる短編映像作品『GUNDAM EVOLVE(ガンダムイボルブ)』でも本作をモチーフとしたものが数編作られた。
Competition of NEW GUNDAM -RED or WHITE-『Competition of NEW GUNDAM -RED or WHITE-』は、2015年11月7日よりガンダムフロント東京・DOME-Gで公開のイベント上映作品。アナハイム・エレクトロニクス社のプレゼンテーションとして、赤いカラーのデルタガンダム弐号機と、グレーカラーのΖガンダム3号機(初期検証型)が登場する。
漫画コミカライズ機動戦士Zガンダム富野由悠季(原作)、近藤和久 (作画)、全3冊。
電撃コミックス版
機動戦士Zガンダム (星を継ぐ者/恋人たち/星の鼓動は愛)富野由悠季(原作)、矢立肇 (原案)、KADOKAWA (角川コミックス・エース)、全3冊。
機動戦士Ζガンダム Define→詳細は「機動戦士Ζガンダム Define」を参照
独自作品
フィルムコミックテレビ版放映当時、近代映画社よりジ・アニメフィルムコミックスとして本作のフィルムを使用して漫画仕立てにしたものが刊行された。1巻につき5話収録の全10巻。カバー・セル原画は作画監督として参加した瀬尾康博が担当。編集者による大幅なセリフの変更・割愛が目立つものとなっている。2009年には、近代映画社より完全復刻版が刊行された。
小説アニメの放映当時、富野由悠季による小説版全5巻が講談社から、後に角川書店から刊行されている。基本的にはアニメ版のストーリーをなぞっているが、若干展開が異なっている。また終盤にアムロやハヤトが戦死した小説版『機動戦士ガンダム』とはストーリーがつながっていない。 もともとテレビ版放映開始前の1984年頃、『逆襲のシャア』のタイトルで「ガンダム」の続編小説が企画されており、テレビ版製作決定と共にその小説版にシフトしたという経緯がある。 講談社版のカバーイラストは永野護が担当し、アニメとは異なるディテールのメカやキャラクター、コスチュームが描かれていた。特にメカニックについては当初「永野版」的扱いだったのが、模型雑誌モデルグラフィックスによって設定を付加され、後に『ガンダム・センチネル』の設定上の骨子となった「アナハイム・ガンダム」の先駆ともなった。 角川文庫版はカバーイラストを美樹本晴彦が担当。アニメに準拠したキャラクターやメカで描かれていた。一方、口絵のMSのイラストは藤田一己により、アニメに準拠したものではなく、大きくデザインが変更された[注 36]。 1986年、遠藤明吾著で『機動戦士Ζガンダム フォウ・ストーリー そして、戦士に…』がアニメージュ2月号付録として発表された。これは、フォウ・ムラサメの本編登場以前の過去を書いた物で、『機動戦士ガンダム』のあるキャラクターも主要人物として登場している。2001年9月に加筆再構成の上、角川スニーカー文庫で刊行された。なお、カバーイラスト・口絵イラスト・キャラクター紹介イラストは北爪宏幸が1986年当時に描いた物がそのまま使用されている。
ゲーム「スーパーロボット大戦シリーズ」を筆頭に本作が登場するゲーム作品は無数にあるため、ここでは本作を題材に単独商品化された作品のみ記述する。
ゲームブック
音楽
三枝成彰(作曲・編曲)、小松一彦(指揮)、オール・ジャパン交響楽団(演奏)、1985年8月8日~9日録音[56]
劇伴として作曲されたものを作曲者自身によって7楽章の交響曲形式にしたもので、LPレコードは1985年10月21日、CDは1991年3月5日にスターチャイルドから発売され、2017年にキングレコードからハイレゾ版が発売された。1985年の録音ののち楽譜は行方不明になっていたが、2023年に手書きの総譜が発見され、2024年8月10日に仙台フィルハーモニー管弦楽団によって人前初演された[20][21]。
三枝成彰(作曲)、長生淳(編曲)、佐藤義政(指揮)、航空自衛隊航空中央音楽隊(演奏)、1998年3月11日(初演)
1998年3月11日にサントリーホールで行われた「陸・海・空自衛隊コンサート」において航空自衛隊航空中央音楽隊よって初演された。 パチンコ
その他岡山県にある道の駅久米の里には、個人が制作した約1/3スケールのΖガンダムの模型が存在する。デザインは角川スニーカー文庫版『機動戦士Ζガンダム』の挿絵などに描かれている、いわゆる「藤田一己版」。脚部には油圧シリンダーなどを組み込んでおり、動かすことも可能[注 37](Ζガンダムも参照)。 参考文献
脚注注釈
出典
外部リンク
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