奥多摩湖(おくたまこ)は、東京都西多摩郡奥多摩町と山梨県北都留郡丹波山村・小菅村に跨る人造湖。正式名称は小河内貯水池(おごうちちょすいち)。東京都水道局が保有・管理する小河内ダム(おごうちダム)で多摩川上流部を堰き止めて、1957年(昭和32年)に完成した[1]。
貯水容量は約1億9000万立方メートル[1]。竣工当時、上水道専用貯水池としては世界最大規模の貯水池だった。現在も水道専用貯水池としては日本最大級を誇っている。現在、東京都の水源は利根川水系を主としているが[2]、渇水時の水瓶として極めて重要な役割を担っている。水質は取水口近くで調査されているほか、水質観測船「みやま丸」により湖の9カ所で毎月調査されている[1]。
また、東京都交通局の水力発電施設(多摩川第一発電所)も併設されており[3]、発電された電気は東京電力へ売却され、奥多摩町・青梅市などの東京多摩地域に電力を供給している。湖畔には様々な見どころや観光施設があり、首都圏のオアシスとしても知られている。
歴史
建設計画自体は昭和初期に遡る。しかし、ダム建設予定地である旧小河内村の用地買収の難航、着工寸前に起こった神奈川県との水利権を巡る水利紛争、太平洋戦争激化による建設工事の中断などにより、着工から19年の歳月をかけて竣工した。
奥多摩湖に流入する河川
生態系
流入河川を含めて、以下の魚介類が棲息または棲息すると推定されている[6]。
東京水道水源林
奥多摩駅下流から多摩川上流を形成する奥多摩山域と奥秩父山塊の山麓の森林で秩父多摩甲斐国立公園の指定区域にあり、奥多摩湖および日原川の源流部が東京水道水源林として水源の森百選に指定されている[7]。東京都水道局は2017年、小河内貯水池(奥多摩湖)と水源林を含む7か所を東京水道名所に選んだ[8][9]。
東京都の重要な上水道源である奥多摩湖の保全を目的に、奥多摩から山梨県北都留郡および甲州市一之瀬高橋地区に跨る、東西約31km、南北約20kmの日本でも有数の水源林地帯である。所在地は、東京都西多摩郡奥多摩町、山梨県甲州市、北都留郡丹波山村および小菅村である。
ダム建設と小河内村
- 石川達三著『日蔭の村』(1937年(昭和12年)10月刊行)によって、ダム建設開始までの旧小河内村の状況が紹介された。
- ダム建設にあたり、旧小河内村と山梨県丹波山村・小菅村の945世帯約6,000人が移転を余儀なくされた。中でも旧小河内村はその大部分が水没した。移住先の一つに山梨県北巨摩郡高根町(現:北杜市)近辺があり、彼らはその後小海線清里駅付近の清里高原周辺に再移住し、清里高原における農業や畜産、観光業の発展に大きく寄与した。
- 建設中に東京都職員や建設会社社員、下請作業員ら87名が殉職した。奥多摩湖畔に慰霊碑が建てられている。
- 竣工式当日に「小河内ダム竣工記念」の額面10円の記念切手が発行された。
- 1937年(昭和12年)、旧小河内村を歌った東海林太郎『湖底の故郷』(島田磬也作詞、鈴木武雄作曲)のレコードが発売され大ヒットした。この歌の歌詞を刻んだ碑が戦後、奥多摩湖左岸に建てられた。碑の除幕式には村人たちが招待され、東海林が歌うと参列者の嗚咽がそこかしこから聞こえた。
湖の周辺
- 湖の西端からは多摩川(上流域の山梨県内では丹波川(たばがわ)とも呼ばれる)が、南西から小菅川がそれぞれ奥多摩湖に流れ込んでいる。また、東端からは多摩川が流れ出している。
- 湖のすぐそばに小河内神社がある。
- 湖面は水道専用貯水池のため、水質汚染防止など水質管理上の理由で開放されていないが、周辺は桜の名所として知られている。
- 旧小河内村には「鶴の湯温泉」という湯治場が存在していた。ダム竣工に伴う湯治場の水没により源泉からの汲み上げポンプを設置したが、長年活用されず「幻の温泉」と呼ばれていた。その後、汲み上げポンプを補修・整備し、1991年(平成3年)に「鶴の湯温泉」として正式に復活した。
- 周辺にはダム竣工時の水没からは免れたものの、当時事実上の孤島となった集落の面影が散見でき、当時放置されたと思われる、木々に埋もれたオート三輪も見つける事が出来る。
奥多摩湖の浮橋
湖面には麦山浮橋と留浦浮橋の2つの浮橋が架けられている。これらの橋は当初浮体にドラム缶を用いていたことから、今でも通称「ドラム缶橋」と呼ばれている。現在の橋ではドラム缶をやめ、ドラム缶に類似した形状の合成樹脂製の浮体が用いられている。この橋は歩行者専用で、下流側の麦山浮橋は国道411号と奥多摩周遊道路を結んでおり、奥多摩の観光名所として知られている。渇水時など貯水量が減少した際には通行止めとなる。
交通アクセス
道路
-
峰谷橋(国道411号)
-
深山橋(国道139号)
-
三頭橋(奥多摩周遊道路)
公共交通機関
- 奥多摩駅から西東京バスの路線バスが運行されている。小河内ダムそばの奥多摩湖バス停まで約15分、360円。1時間当たり1〜2本が運行されている。
- 小河内ダム建設の際に国鉄青梅線氷川駅(現・JR東日本青梅線奥多摩駅)からダムサイト近くの水根駅まで、建設資材輸送専用の東京都水道局小河内線が敷設され、直営運行していた。観光開発のために旅客線化も一部で構想されたが、工事終了以来休止のまま(事実上廃止状態)となっている。休止後も橋梁や隧道等の設備が残っている。
- 1960年代の一時期には小河内観光開発株式会社により、湖上を横断する奥多摩湖ロープウェイ(奥多摩ロープウェイ、川野ロープウェイ)が営業していたが、数年で運行休止(事実上廃線)となっている。休止後も鉄道遺構(廃墟)として、駅などの設備や廃車体が残っている。
小河内ダムが登場する作品
小説
楽曲
- 湖底の故郷(ふるさと)(歌唱:東海林太郎、1937年)
特撮
漫画
脚注
出典
関連項目
ウィキメディア・コモンズには、
奥多摩湖に関連するカテゴリがあります。
外部リンク
|
---|
北海道 | |
---|
東北 | |
---|
関東 | |
---|
中部 | |
---|
近畿 | |
---|
中国・四国 | |
---|
九州・沖縄 | |
---|
関連項目 | |
---|