『名探偵コナン 漆黒の追跡者』(めいたんていコナン しっこくのチェイサー)は、2009年4月18日に公開された日本のアニメ映画で、劇場版『名探偵コナン』シリーズの第13作目にあたる。上映時間は110分。興行収入は35億円[1][2][3][4][5][6][7]。第33回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞受賞作品。キャッチコピーは「逃げ切れねぇ、か…」「江戸川コナン、最も危険な事件」。
概要
主人公・江戸川コナンの最大の敵である黒ずくめの組織が登場するのは2001年公開の第5作『天国へのカウントダウン』以来、8年ぶり2作目となる[注 1]。
13作目と忌み数とされている13をかけて[注 2]、主人公・江戸川コナンと宿敵・黒の組織の対決を物語の軸の1つに据えている。
表題の「チェイサー」は「口直しの水、あるいは軽い酒」の意味も含んでおり、タイトルが示す通り、組織に追われるコナンと組織のコードネームである酒の名前を表現した。
本作のオープニングは尺が長くとられており、BGMはメインテーマと「ブラックインパクト」のメドレー形式で使用されている。オープニングの解説は原作のストーリーの一部[注 3]にも触れられている。オープニング映像の一部は過去の劇場版から流用されているため、ジンの髪の色が本編と異なっている。
最後の「小さくなっても頭脳は同じ、迷宮入りなしの名探偵!真実はいつも一つ!」のセリフは、今作のみ、コナンと新一が同時に発している。
TVシリーズからの劇場版初登場のキャラクターが多く、ベルモット[注 4]、キャンティ、コルン、ピスコ[注 5]、松本清長、横溝参悟[注 6]、大和敢助、上原由衣[注 7]、第10作『探偵たちの鎮魂歌』でモブ出演していた山村ミサオ[注 8]が正式に初登場を果たした。
本作の事件は京都府で起こった火災と関係しているため、服部平次と遠山和葉も『探偵たちの鎮魂歌』以来3年ぶりに、第7作『迷宮の十字路』に登場した京都府警の綾小路文麿警部は6年ぶりに再登場した[注 9]。
本作では、BREAKERZのメンバー・DAIGOが水谷浩介役で出演し、本作以降このような「スペシャルゲスト出演」が恒例となる。
本作と同じく黒の組織との対決がメインだった『天国へのカウントダウン』では連続殺人犯の様子を描いた回想シーンが見られたのに対し、本作は連続殺人犯の殺害動機や動機となる事件のシーンは、コナンと犯人の会話で語られるのみである。また、ラストは本編の内容を反映し、シリアスな終わり方で締められている。
本作以降は劇場版の公開に合わせその劇場版で活躍する人物や劇場版のテーマにちなんだエピソードが本放送枠で再放送されるようになり、公開間近の3月23日にはピスコが登場したテレビアニメ第176話 - 178話「黒の組織との再会」が再放送された。
公開から約5か月後に神谷明が降板したため、神谷が演じる毛利小五郎が登場する劇場版は本作が最後になった[注 10][注 11]。次作『天空の難破船』以降の劇場版は、2009年10月から2代目小五郎役を引き継いだ小山力也が担当している。また、2014年1月17日に加藤精三が死去したため、加藤が演じる松本清長が登場する劇場版は本作が唯一である(ただし、松本も管理職を交代して以降登場しなくなったため、後任は未定)。
本作の小説版が小学館のジュニア文庫から2013年1月9日に発売された[11]。また、第3作『世紀末の魔術師』に続いて、漫画版が2013年6月18日に発売された。
2016年に開催された歴代映画19作品の人気投票で、今作は10位を獲得した[12]。
劇場版シリーズの定番となっているエンディング後の次回作の予告は、今作でも放映された。エンディング終了後に、嵐の中の海の上を飛ぶ飛行船が映し出された後、「名探偵コナン」のロゴが浮かび上がり、字幕とともに江戸川コナン役の高山みなみの声で「劇場版名探偵コナン、第14弾製作決定!」というセリフが流れた。のちに次回作は、飛行船を舞台に怪盗キッドがメインとなる『天空の難破船』であることが発表された。
原作102巻File.2-4収録「秘密基地のメッセージ」では長野県警の大和勘助警部、上原由衣警部補が今作の事件について言及しているシーンがある。
ストーリー
東京・神奈川・静岡・長野で計6人が殺害される事件が起こった。どの現場にも縦線とアルファベットが書かれた麻雀牌が残されていたことから、同一犯もしくは同一組織による広域連続殺人事件と認定される。警視庁で各県警の刑事を集めて合同捜査会議が開かれ、特別顧問として小五郎も参加する事になった。事件のうち5件はスタンガンを使って拉致され、別の場所へ移してから刺殺されたもので、6人目の犠牲者は死の前に「七夕、きょう」という言葉を言い残していた。麻雀牌は1つが一筒、ほかは七筒で、それぞれ別の位置の丸が1つずつ赤く塗られており、被害者は所持品が1つずつ持ち去られていた。
会議終了後、コナンは山村警部が童謡「七つの子」に聞こえるプッシュ音を耳にしたことを聞く。これは黒ずくめの組織のボスのメールアドレスを示すもので、それを打った刑事がジンの車である黒のポルシェ356Aで去ったことから、コナンは捜査会議に組織の人物、おそらく変装の達人であるベルモットが紛れ込んでいたことを確信する。
七夕前日の7月6日、米花町に現れた容疑者の1人が逮捕されるが、その現場には変装したベルモットもおり、それを見抜いたコナンは彼女を追い、組織が今回の殺人事件を追う理由を追求する。ベルモットによると、被害者の中に一般人を装った組織の工作員がおり、犯人に持ち去られた所持品の中に工作員のリストが収められたメモリーカードが入っていたため、組織は警察より早く犯人を押さえてそれを取り戻す必要があるのだと言う。それを聞いたコナンは事件の捜査員の中に別の組織の一員を潜入させていると気付き、ベルモットからはコードネームが「アイリッシュ」であると教えられる。捜査会議には、警視庁や各県の顔見知りの警察官たちや、埼玉県警の荻野彩実警部らが居た。
ある人物から「犯人に心当たりがある」という通報が警察に入るが、その人物は組織や警察が到着する前に拉致されてしまっていた。犯行現場を見た佐藤刑事は、現場へ向かう途中に自動車の両輪が同時にパンクしたこともあり、犯人以外になんらかの組織が動いていることや、内通者の存在を懸念する。一方、捜査員の中に潜入したアイリッシュはコナンと新一の指紋を照合し、彼らが同一人物であるという確信を得る。
通報した人物が7人目の犠牲者として発見される中、「きょう」が「京都」と言いかけたものである可能性に気付いたコナンは平次の協力で、被害者たちが一昨年の七夕に京都のホテルで火事に遭ったことを突き止める。その火事では本上なな子という人物が死亡しており、2人はなな子がそのホテルの7人乗りのエレベータから追い出されたために逃げ遅れ、彼女の恋人であり、同じくホテルに泊まっていたものの外出していたため難を逃れた水谷浩介が復讐を図ったもので、麻雀牌の縦線はエレベータの扉、印はエレベータ内の人物配置を意味すると推理する。その後、なな子の実家を訪ねたコナンは、彼女の兄の和樹から、水谷が「許せない者が8人、まだ1人残ってます」と言っていたことを聞く。また、犯行現場が北極星と北斗七星を描いている[注 12]ことに気付いたコナンは最後の現場になる東都タワーを訪れ、小五郎も一歩遅れてそのことに気づき、警察もそちらへ向かう。
コナンは東都タワーで水谷と相対するが、なな子と水谷が好きだった星の位置を犯行現場に当てはめる理由が理解できなかったことや性格の違いから、犯人は彼ではなく、こちらもタワーに来ていた、和樹だということを見抜いていた。なな子は自発的にエレベータを譲った[注 13]のだが、和樹はそれでも火事の生還者たちや、駆け落ちした水谷を許せなかった。そこで水谷に対してはなな子がエレベータから追い出されたと嘘を吐き、なな子を救えなかった自責の念に駆られていた水谷に対し、自分が殺害を実行する代わりに罪を被ったうえで自殺するよう要求したのだった[注 14]。水谷もその計画に同意していたのだが、コナンに諭されて身代わりになることをやめ、和樹に自首を促すが、和樹は逆上してコナンに襲いかかる。そこに松本警視が現れ、コナンは彼が和樹を掴んだところに時計型麻酔銃を向けるが、針は外れて水谷に刺さってしまう。
この松本警視こそがアイリッシュの変装であり、コナンはベルモットがそのまま潜入を続けなかった理由を体格が大きく異なるため変装ができなかったためとの考えから、彼が偽物であると見当をつけていた。アイリッシュはコナンと新一が同一人物であることを掴んでいたが、ジンに対する恨み[注 15]から、コナンをボスのところへ連れていきジンを失脚させるため。[注 16]に、まだ誰にも話していなかった。コナンは逃げながらアイリッシュと戦い、タワーの外縁部に出るが、そこへジンら組織のメンバーがAH-64攻撃ヘリコプター[注 17]に乗ってやって来る。アイリッシュはメモリーカードを取り戻したことを彼らに示すが、タワー周辺に警察が終結し逃げ切れないと判断したジンの命令で、キャンティによってメモリーカードともども撃ち抜かれ重傷を負う。コナンはアイリッシュを救命しようとするが、その存在に気付いたジンの命令でキャンティの狙撃を受けてしまう。しかしコナンのその行動に感じ入ったアイリッシュが致命傷を負う代わりにコナンを庇い、コナンに「いつまでも追い続けるがいい」と言い残して死亡した。組織はコナンを始末するべくヘリに搭載されたM230チェーンガンで銃撃しながらタワーの上の方へと追い詰め、姿を確認しようとするが、コナンは以前阿笠博士から貰った、100メートルまで自在に伸ばせるサスペンダーを使って飛び降り、自身は落下の勢いを殺しながら破損したライトを反動で射出することで、組織のヘリを撃墜する。
ヘリからは遺体は発見されず、全員が脱出したものと思われた。また、監禁されていた松本警視は、阿笠の通報で佐藤刑事と高木刑事によって救出された[注 18]。コナンは今後組織と戦ううえで武器になると考えていたNOCリストを入手できず、組織もコナンの正体を掴めないままの幕引きとなるが、コナンはアイリッシュが死に際に残した「いつまでも追い続けるがいい」という言葉を思い返し、組織と戦い続ける決意を新たにするのだった。
登場人物
レギュラーキャラクター
江戸川コナンと周辺の人物
本作で起きた複数の事件の背後には黒の組織の暗躍が絡み、コナンたちも様々な立場で事件に関わっていく。
- 江戸川 コナン(えどがわ コナン)
- 声 - 高山みなみ
- 本作の主人公。本来の姿は「東の高校生探偵」として名を馳せている工藤新一だが、黒ずくめの組織に飲まされた毒薬・APTX4869の副作用で小学生の姿になっている。
- 広域連続殺人事件を独自に捜査する中、黒の組織のメンバー・アイリッシュに正体を見抜かれてしまう。
- 毛利 蘭(もうり らん)
- 声 - 山崎和佳奈
- 本作のヒロイン。新一の幼馴染かつガールフレンドで、関東大会で優勝するほどの空手の達人。
- アイリッシュとの格闘戦で互角に渡り合い、相手の至近距離からの射撃に対し、引き金と銃口の向きを観察して銃弾を紙一重で回避する驚異的な動体視力を見せる。
- 毛利 小五郎(もうり こごろう)
- 声 - 神谷明
- 蘭の父親で「眠りの小五郎」の異名で有名な私立探偵。コナンの保護者。元警視庁捜査一課強行犯係の刑事。
- 広域連続殺人事件の特別顧問として警視庁に招かれる。
- 工藤 新一(くどう しんいち)
- 声 - 山口勝平
- コナンの本来の姿で高校生探偵。
- 新一としての登場は、アイリッシュとの格闘で負傷した蘭を助けるべくコナンが変声機で陰から話しかけるシーンのみ。
- 灰原 哀(はいばら あい)
- 声 - 林原めぐみ
- 元黒の組織の一員かつAPTX4869の開発者で、「シェリー」のコードネームを与えられていた。コナンの正体を新一と知る数少ない人物の1人。
- 黒の組織の動向から、自分やコナンの正体を見抜いたのではないかと危機感を募らせる。
- 阿笠 博士(あがさ ひろし)
- 声 - 緒方賢一
- コナンの正体を新一と知る数少ない人物の1人で、発明家。
- 本作でも発明でコナンに協力する。
- 本作でビートルズ世代ということが分かり、少年探偵団に熱く語った。
- 彼らから、何者かが監禁されているかもしれないという連絡を受け、灰原と共に向かう。
- その後、子供達の安全確保のためそれぞれの家へ送り届け、自らの通報で駆けつけた高木刑事、佐藤刑事と合流した。
- 鈴木 園子(すずき そのこ)
- 声 - 松井菜桜子
- 蘭の同級生で親友。鈴木財閥の令嬢で、蘭や新一とは幼馴染でもある。
- 終盤で偶然テレビに映ったコナンの姿を見て蘭に連絡し、共に東都タワーへ向かう。
- 吉田 歩美(よしだ あゆみ)、小嶋 元太(こじま げんた)、円谷 光彦(つぶらや みつひこ)
- 声 - 岩居由希子(歩美)、高木渉(元太)、大谷育江(光彦)
- 少年探偵団の3人。
- 阿笠のビートルズに関するクイズを真に受けて独断で捜査を開始するが、結果的にある人物を救うことになる。
- 服部 平次(はっとり へいじ)
- 声 - 堀川りょう
- 「西の高校生探偵」として有名で、新一とは「東の工藤・西の服部」と並び称されるライバルであるが、彼の親友でもある。コナンの正体を新一と知る主な数少ない人物の1人。
- コナンからの依頼を受けて地元にて情報を収集。黒の組織の暗躍に立ち向かうコナンを心配し、「今度大阪へ遊びに来たら美味いお好み焼きを食わせてやる」と言って必ず事件を解決するよう約束させ無事を祈る[注 19]。
- 遠山 和葉(とおやま かずは)
- 声 - 宮村優子
- 平次の幼馴染かつガールフレンド。平次に好意を持っており、蘭とも仲が良い。合気道部に所属しており有段者でもある。
- 平次と共に登場するが、ストーリーには絡まない。
警察
- 目暮 十三(めぐれ じゅうぞう)
- 声 - 茶風林
- 警視庁刑事部捜査一課強行犯捜査三係の警部。
- 吉井リサにナイフで腹部を刺されるが、分厚い皮下脂肪が内臓の損傷を防いでくれたために命に別条はなく、その後は職務へ復帰した。
- 佐藤 美和子(さとう みわこ)
- 声 - 湯屋敦子
- 警視庁捜査一課の刑事で警部補。格闘技に長けていて洞察力も鋭い。
- 七人目の被害者の元へ向かう際、キャンティとコルンの狙撃で乗っていた覆面パトカーの前両方のタイヤをパンクさせられてしまうが、具体的に黒の組織の存在までは特定できなかったものの裏で暗躍する存在には薄々感づいていた。コルンからは「いい女…」と評される。
- 高木 渉(たかぎ わたる)
- 声 - 高木渉
- 警視庁捜査一課の刑事で巡査部長。
- 佐藤と共に七人目の被害者の元へ向かうため覆面パトカーを運転した際にキャンティとコルンの狙撃で前両方のタイヤをパンクさせられてしまう。その際にキャンティから「カワイイ坊や」と評されている。
- 白鳥 任三郎(しらとり にんざぶろう)
- 声 - 井上和彦
- 警視庁捜査一課のキャリア組警部。
- 週2回ジムに通っている事が判明するが、小五郎からは「太ったんじゃねえか?」と言われてしまう。
- 千葉刑事(ちばけいじ)
- 声 - 千葉一伸
- 警視庁捜査一課の刑事で巡査部長。
- 肥満体型だが、一応ダイエットは始めているらしく、コナンから「少しやせたんじゃない?」と聞かれる。
- 松本 清長(まつもと きよなが)
- 声 - 加藤精三
- 警視庁刑事部捜査一課の管理官。階級は警視。
- 大和 敢助(やまと かんすけ)
- 声 - 高田裕司
- 長野県警察刑事部捜査一課の警部。隻眼で杖をついている。コナンや平次と比べても遜色のない推理力の持ち主で、「眠りの小五郎」を牛耳っているのがコナンであることを看破している数少ない人物の1人。
- 逃走中の深瀬稔を取り押さえるが、ナイフを足で払いのけたことで由衣に危機を招いてしまう。
- 上原 由衣(うえはら ゆい)
- 声 - 小清水亜美
- 長野県警察刑事部捜査一課の刑事。大和敢助とは幼なじみで頭脳明晰。敢助のことは幼少時から「敢ちゃん」と呼んでいるが、現在は上司でもあるため仕事中は彼からたしなめられることが多い。
- 吉井リサにナイフで攻撃されかけるが、間に目暮が入って代わりに刺されたため守られる形になった。
- 本作ではテレビアニメ557話「危険な2人連れ」[13]の放送に先駆け長野県警に復帰し、姓も旧姓に戻している。
- 横溝 参悟(よこみぞ さんご)
- 声 - 大塚明夫
- 静岡県警察刑事部捜査一課の警部。性格は温厚だが、早とちりで「眠りの小五郎」を信奉しすぎる傾向がある。
- 医者から糖分を制限されている事が判明する。
- 横溝 重悟(よこみぞ じゅうご)
- 声 - 大塚明夫
- 神奈川県警察刑事部捜査一課の警部で、参悟の双子の弟。参悟とは顔や声がうり二つで階級も同じく警部だが、性格は正反対。直情的な部分が目立つが、根は弱い者を守り悪を憎む正義漢である。ブラックコーヒーを好む。
- 殺人が3件も続いたことへのストレスで、「糖分でも取らなきゃやってられねえ」と愚痴っている。
- キャラクターとしての名前の由来は、参悟の名前を数字に変えての掛け算の答え(3×5=15)からで、その駄洒落()のようなネーミングを本作では高木刑事に笑われている。
- 山村 ミサオ(やまむら ミサオ)
- 声 - 古川登志夫
- 群馬県警察刑事部捜査一課の警部。明るい性格だが、洞察力や推理力はどうして刑事になれたのかと疑問を持たれるほど低く、「ヘッポコ刑事」と呼ばれている。
- 軽率な言動や行動は健在であり、そのためコナンや小五郎や敢助たちにもあきれられている。
- 劇場版に本格的初登場の本作で警部に昇進し、後にアニメ[14]と原作[15]でも描写されている。
- 綾小路 文麿(あやのこうじ ふみまろ)
- 声 - 置鮎龍太郎
- 京都府警警部。
- 第7作『迷宮の十字路』以来2度目の登場で、相変わらずペットのシマリスを肩に載せている。
- 警視庁からの依頼で京都で起こった火災事件を調べ上げ、平次も捜査していたことを教えた。
黒の組織
新一に薬を飲ませて幼児化させた世界規模の犯罪組織。本作では2001年公開の劇場版第5作『天国へのカウントダウン』以来8年ぶり、2作目の登場を果たしている。
- ジン (Gin)
- 声 - 堀之紀
- 本作のキーパーソン。組織の実行部隊のリーダーで射撃にも優れている。
- 本作でも変わらず残忍な面を見せている。
- 『天国へのカウントダウン』では金髪だったが、本作より髪の色が原作と同じ銀髪に変更されている。
- ベルモット (Vermouth)
- 声 - 小山茉美
- 組織の女性幹部。本名はシャロン・ヴィンヤード (Sharon Vineyard)で、かつてハリウッドでアカデミー賞を受賞した大女優。コナンの正体を新一と知る数少ない人物の1人。
- ウォッカ (Vodka)
- 声 - 立木文彦
- 組織の幹部でジンの腹心。ジンに忠実で極悪非道な性格。
- キャンティ (Chianti)
- 声- 井上喜久子
- 組織に所属する気性の荒い女性スナイパー。
- コルン (Korn)
- 声 - 木下浩之
- 組織に所属する無口で冷静な男性スナイパー。
- ピスコ (Pisco)
- 声 - なし[注 20]
- 元・組織の幹部で、故人。本名は枡山 憲三(ますやま けんぞう)で、かつては「経済界の大物」と評された大手自動車メーカーの会長だった。
- アイリッシュの回想及び背景に登場。実はアイリッシュから親の様に慕われていたことが明かされた。
オリジナルキャラクター
組織のメンバー
- アイリッシュ(Irish)
- 声 - 幹本雄之
- 本作のキーパーソン。組織ではジンたちと同格の幹部クラス。金髪の大男で、本名・国籍は不明。
- 変装して警視庁で潜入活動をしていたが、捜査会議の後に、偶然出会ったコナンの活躍を聞いて、正体が新一ではないかとの疑惑を抱いた。組織の元幹部でジンに始末されたピスコを親のように慕っており、ジンの信用失墜を目論んでいる。東都タワーの対決では、拳銃でコナンの秘密道具の一部を使用不能にさせ、格闘戦で油断した蘭を気絶させるなど圧倒的な実力で追い詰めた。
- キャラクター原案は原作者の青山剛昌が担当した。組織のオリジナルキャラクターにコードネームが与えられるのは、劇場版シリーズで初である[注 21]。
容疑者
- 水谷 浩介(みずたに こうすけ)
- 声 - DAIGO
- フリーター。
- 本上なな子と駆け落ちしアパートの一室で同棲していた。
- 恋人を失ったショックから立ち直れず、現在は仕事にも就いていない。
- 本上 和樹(ほんじょう かずき)
- 声 - 菅原正志
- 公認会計士。本上なな子の兄。
- コナンから水谷について聞かれ、なな子を連れ駆け落ちしたことから両親は快く思っていなかった事実を明かした。
- 沢村 俊(さわむら しゅん)
- 声 - 神奈延年
- 城南大学工科大学院の学生で、水谷浩介が住んでいるアパートの隣人。
- コナンに、水谷浩介と本上なな子の関係や本上和樹の居場所を教える。
- 深瀬 稔(ふかせ みのる)
- 声 - 西村朋紘
- 逃亡犯。27歳。
- 吉井リサの恋人で、トロピカルランドで陣野修平を刺す傷害事件を起こして現在も逃走している。
- 肩を痛めているため右腕が上がらない。
- 吉井 リサ(よしい りさ)
- 声 - 水樹奈々
- ホステス。21歳。
- 深瀬稔の恋人で、逃亡を手助けしていることから警察にマークされていた。
- 深瀬のことは「稔」と呼んで惚れ込んでいる。
- 荻野 彩実(おぎの あやみ)
- 声 - 鶴ひろみ
- 埼玉県警察の警部。横溝参悟が埼玉県警時代に勤務していた頃の後輩。
- 数々の事件に関わってきたコナンの存在に興味を示す。
被害者
- 陣野 修平(じんの しゅうへい)
- 声 - なし
- 東都大学理工学部准教授で原子力研究所副所長。43歳。
- 広域連続殺人事件の最初の被害者。犯人にペンダントを持ち去られる。
- 加賀 志津子(かが しづこ)
- 声 - なし
- 料亭の女将。45歳。
- 広域連続殺人事件の2番目の被害者。犯人に巾着を持ち去られる。
- 岡倉 政明(おかくら まさあき)
- 声 - なし
- 代議士秘書。32歳。
- 広域連続殺人事件の3番目の被害者。犯人にお守り袋を持ち去られる。
- 北島 梓(きたじま あずさ)
- 声 - なし
- IT企業派遣社員。31歳。
- 広域連続殺人事件の4番目の被害者。犯人にコンパクトケースを持ち去られる。
- 財津 耕三(ざいつ こうぞう)
- 声 - なし
- バイク店店主。61歳。
- 広域連続殺人事件の5番目の被害者。犯人にギターのアクセサリーを持ち去られる。
- 竜崎 努(りゅうざき つとむ)
- 声 - 梅津秀行
- 不動産業者。28歳。
- 広域連続殺人事件の6番目の被害者。犯人にマスコットの人形を持ち去られる。殺害方法が唯一刺殺ではなく運転していた車の横転。
- 新堂 すみれ(しんどう すみれ)
- 声 - なし
- 抽象画家。34歳。
- 犯人に心当たりがあると警察に通報するが、翌日、広域連続殺人事件の7番目の被害者となって発見される。犯人に赤い絵の具を持ち去られる。
水谷浩介の関係者
- 本上 なな子(ほんじょう ななこ)
- 声 - 折笠富美子
- 保育士。
- 水谷浩介の恋人だったが、京都の「HOTEL VEGA」で発生した火事で亡くなった。
- 水谷からは「なな」と呼ばれ、同じアパートで同棲していた。
東都タワー
- 木谷 友美(きたに ともみ)
- 声 - 喜多村英梨
- 東都タワーの受付嬢。
- コナンからスケートボードを預かっていたが、東都タワーが閉鎖する時間になっても戻ってこなかったので心配していた。
米花ショッピングモール
- 警備員
- 声 - 柳沢栄治
- 米花ショッピングモールで勤務している警備員。
- 変装を解いたベルモットが、対峙しているコナンを振り切るために迷子だと嘘をついて呼び寄せた。
警察関係者
- 寺林 省二(てらばやし しょうじ)
- 声 - なし[注 22]
- 千葉県警察の刑事。
- 正確には本作オリジナルのキャラクターではなく、本作以前に原作とテレビアニメの「園子のアブない夏物語」にも登場していた。本作では捜査にも同行しているが、ビジュアルだけの登場で喋るシーンはなかった。
メディア関係者
- レポーター
- 声 - 大塚瑞恵
- オープニングで東都タワーの解説をしていた女性レポーター。
- 中継で東都タワーに入るコナンの姿を、偶然にもテレビで見ていた園子が気づき、蘭に知らせた。
スタッフ
興行成績
全国341スクリーンで公開され、2009年4月18日と翌19日の初日2日間で観客動員50万1732人、興行収入5億9327万2350円と戦慄の楽譜対比で141%なり、興行通信社の調査による映画観客動員ランキングでは初登場第1位となった[16][17][18]。
5月8日、6日時点で動員237万人、興収27億6000万円を突破し、前作の戦慄の楽譜の興収24億2000万円を上回った[19]。
5月19日、興収30億円を突破したことが発表された[20]。
『名探偵コナン 迷宮の十字路』動員数・興行収入の推移
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動員数 (万人)
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興行収入 (億円)
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出典・備考
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週末
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累計
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週末
|
累計
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1週目の週末 (2009年4月18日・19日)
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1位
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50.1
|
50.1
|
5.9
|
5.9
|
[17]
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2週目の週末 (4月25日・26日)
|
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105
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12
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[21]
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3週目の週末 (5月2日・3日)
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[19]
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4週目の週末 (5月9日・10日)
|
3位
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[22]
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5週目の週末 (5月16日・17日)
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30.*
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[20]
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6週目の週末 (5月23日・24日)
|
5位
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[23]
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7週目の週末 (5月30日・31日)
|
9位
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[24]
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最終成績
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298万人
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35億円
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テレビ放送
回数 |
番組名(放送枠名) |
放送形態 |
放送日 |
放送時間(JST) |
放送分数 |
平均世帯視聴率 |
平均個人視聴率 |
備考
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1
|
金曜ロードSHOW!
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2010年4月16日
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21:00-22:54
|
114分
|
12.8%
|
|
[25]
|
2
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|
2011年11月25日
|
10.4%
|
|
|
3
|
金曜ロードショー
|
|
2023年4月14日
|
8.8%[26]
|
5.7%[26]
|
[注 23]
|
音楽
主題歌
- 倉木麻衣「PUZZLE」
- 作詞 - 倉木麻衣 / 作曲 - 望月由絵・平賀貴大 / 編曲 - 小澤正澄
- 倉木が映画主題歌を担当するのは本作で3回目となる。また、倉木は初めて黒の組織が関わった、『天国へのカウントダウン』でも主題歌を担当している。
- 前作までとは異なり、エンドロール開始と同時に曲が始まる。フルバージョンで使用されているが、冒頭のドアが開くS.E.はカットされている。
サウンドトラック
収録曲
- クリスタル
- ブラックインパクトA展開
- 名探偵コナン メイン・テーマ (漆黒メドレーヴァージョン)
- アマリリス
- アメジスト
- ハテナレンコン
- 虹をつかんだ
- サスペンスウィンドウ
- 事件のドア
- 色違いのポスト
- 立たないコマ
- グレイゾーン
- 不透明な果実1
- 不透明な果実2
- ブラックロジック
- ビートルジュース
- 記憶の色
- 不透明な果実3
- スズランの花
- しなやかな刑事たち
- キープアウト
- ペインサウンド
- ベルモット
- ブラックインパクトB
- サスペンスロード
- 不透明な果実4
- ブラックインパクトC展開
- 不透明な果実5
- ダークな予感
- 夕暮れ色のメロディ
- ブラックインパクトD
- 京都
- 黄色い直感1
- 黄色い直感2
- 風の通り道
- 不思議な色
- 当たってないよ
- 困った色違い
- もれてくる蛍光灯
- スズランの花2
- 橙色の空
- 残念
- ウールのおくりもの
- 晴れるといいな
- 注意深い目
- 事件の手がかり
- 隠れたアサガオ
- 不安な手鏡
- あぶない予感
- 包み込む湯気の中から
- ひし形の感情
- どんでん
- ブラックファンファーレ
- からみつく黒い糸
- ブラックインパクトE
- レンガの壁
- ブラックドラム
- 扉の向こうへ
- にじみ出てくる液体
- 重なる色彩
- 絶体絶命
- メタルな触感
- 真っ赤な触角
- ギリギリの輝き
- スポットライト
- からくれないの雲
- アンズな気持ち
- エピローグ
- 明日ヘ向かって
- 名探偵コナン メイン・テーマ (漆黒フルヴァージョン) (ボーナストラック)
映像ソフト
新一と蘭・麻雀牌と七夕の思い出
『名探偵コナン MAGIC FILE3 新一と蘭・麻雀牌と七夕の思い出』は、2009年のOVA作品。OVA第10作。エピローグシーンで、『漆黒の追跡者』の伏線が描かれている。
登場人物(OVA)
エンディングテーマ
脚注
注釈
- ^ 後に、第20作『純黒の悪夢』と第26作『黒鉄の魚影』にも登場する。
- ^ 本編に13に関する話は特に出ておらず、公式パンフレットで触れられている程度。
- ^ コナンがベルモットと対決した事[9]、それにより組織のボスのメールアドレスを入手した事[10]。
- ^ 第9作『水平線上の陰謀』の冒頭解説において姿は現しているが、劇場版本編に登場するのは本作が初である。
- ^ 回想シーンのみで、台詞は無い。
- ^ 双子の弟で神奈川県警警部の横溝重悟は第10作『探偵たちの鎮魂歌』で初登場しており、3年ぶりに登場した。
- ^ 本作ではテレビアニメに先駆けて長野県警に復帰している。
- ^ 本作で警部に昇進していたことが発覚した後、原作でも共通の公式設定となった。
- ^ 綾小路警部は、本作以降も準レギュラーとして劇場版にたびたび登場することになる。
- ^ なお、本作のパンフレットには、神谷のコメントが記されていない。
- ^ 小五郎役を降板後の神谷は、2019年4月公開の第23作『紺青の拳』の予告映像の一つで、『北斗の拳』とのコラボとしてケンシロウ役にてナレーションを担当し、変則的な形式ではあるが、本作公開から10年ぶりに劇場版『名探偵コナン』の出演を果たした。
- ^ アルファベットは、それぞれの星のバイエル符号のギリシャ文字の大文字。
- ^ コナンは被害者の一部でなく全員が匿名で花を贈っていたのは、罪の意識ではなく感謝の念のはずであるという理由からこれも見抜いていた。
- ^ 被害者の所持品を持ち去ったのは、水谷にそれを受け渡すことで彼が犯人であると認定させるため。
- ^ かつて慕っていたピスコをジンが始末したため
- ^ ジンが始末したはずの新一が生きており、またコナンの正体を掴めなかったことはジンの重大な失点となる。
- ^ 現実のAH-64とほぼ同じ形状だが、タンデム複座の現実と異なり縦2人・横2人の4人乗りとなっているなど細部は異なる。
- ^ 阿笠はカブトムシにVの字型にコンビニのテープが貼られていたのを、ビートルズの5枚目のアルバム『HELP!』になぞらえ、救いを求めるメッセージであるという解釈でクイズを出したのだが、少年探偵団はそれを真に受けて捜索に乗り出していた。結果的にそれは当たっており、佐藤はビートルズ世代の松本のものであるという可能性をみて急行した。
- ^ お好み焼きの件は次作『天空の難破船』やその後日談に当たるOVA『大阪お好み焼きオデッセイ』でも触れられている。
- ^ テレビアニメでは村松康雄が担当していた。
- ^ 『天国へのカウントダウン』に原佳明(はら よしあき、声 - 橋本晃一)が登場しているが、ウォッカもジンも彼のことを「原」と呼んでおり、コードネームはない。
- ^ テレビアニメでは宝亀克寿が担当していた。
- ^ 2023年4月14日に最新作公開を記念して11年ぶりに放送。
出典
関連項目
外部リンク
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