ルパン三世 EPISODE:0 ファーストコンタクト
『ルパン三世 EPISODE:0 ファーストコンタクト』(ルパンさんせい エピソードゼロ ファーストコンタクト)は、モンキー・パンチ原作のアニメ『ルパン三世』のTVスペシャルシリーズ第14作。2002年7月26日に日本テレビ系の『金曜特別ロードショー』にて放送された。視聴率は20.6%[1]。 製作本作ではルパン・ファミリーの出会いのエピソードが描かれる。原作や既存の話とは矛盾または整合性が取れていない描写が多く存在する(例えばルパンと石川五エ門の出会いや、斬鉄剣の来歴は原作や過去のアニメでも明確に描かれており、本件の内容はこれに完全に反する[注 1])が、最後にルパンが女を口説くために作った創作であるかのようなどんでん返しが設けられた上に、その後に作り話の中の存在に過ぎないはずの「クラム・オブ・ヘルメス」やジョージが登場するなど完全な虚偽とも言えず、事実性が曖昧な造りとなっており、ある程度の整合性が図られている。 製作初期段階では、このどんでん返しの想定はなく、原作者であるモンキー・パンチの承諾も得て、シリーズとしては本作限りの設定だが実際にあった過去のエピソードとして製作が進められていた。しかし、飯岡順一や柏原寛司ら長年ルパンシリーズに携わったスタッフにこの構想を尋ねたところ、「原作の琴線に触れるものは止めたほうがいい」という反対意見が出され[注 2]、議論を重ねた結果、映画『ユージュアル・サスペクツ』を参考に完成版のような構成になったという[2]。 演出は、ルパンと次元の初めの勝負するシーンは出崎統が監督を務めたTVスペシャルの止め絵、ルパンと五ェ門が勝負するシーンは『TV第1シリーズ』第5話「十三代目五ェ門登場」の演出とほぼ同じである、第1話のラストの「裏切りは女のアクセサリーみたいなものさ」という台詞があるなど、初期のTVシリーズや劇場版、TVスペシャルなどをイメージした演出が目立つ。 キャラクターデザインは長年TVスペシャルで作画を担当してきた平山智が担当しており、本作で興されたデザインは2010年放送のTVスペシャル『ルパン三世 the Last Job』まで使用された他、クロスオーバー作品である2009年放送の『ルパン三世VS名探偵コナン』や、釧路バスで運行されているルパン三世ラッピングバス等にも使用されるなど、TVスペシャル以外でも比較的目にする機会の多いデザインとなっている。シリーズによって異なるルパンの衣装のカラーリングは1997年放送のTVスペシャル『ルパン三世 ワルサーP38』以来となる黒いシャツに黄色のネクタイ、黒いズボンの組み合わせであった。また、同じくシリーズで変わる不二子のヘアカラーは、過去の話をする構成から過去では茶髪、現代では金髪となっている。両方のカラーリングの不二子が見られるのはこの作品が唯一である。 音楽は変わらず大野雄二が担当し、過去のTVスペシャルのBGMや大野のソロアルバムのナンバーに、書下ろし楽曲も加えたものとなっている。本作ではオープニングに「ルパン三世のテーマ'89」、エンディングに「ルパン三世のテーマ'78」のアレンジバージョンが用いられており、それぞれに「ルパン三世のテーマ」が使用されるのは初である。さらに従来、「ルパン三世のテーマ」は複数個所で使う場合でも同一バージョンか、そのアレンジバージョンを用いていたのに対し、異なるバージョンを用いたのも珍しい。また、TVスペシャルのエンディングでインストゥルメンタルが使用されたのも本作が初であった。また挿入歌の「LOVE SQUALL(po do amor)」は『ルパン三世 PARTIII』のエンディングテーマを歌唱したソニア・ローザが起用された。 評価TVスペシャルの中では特に人気の高い作品とされており、以下の人気投票ではいずれも上位を獲得している。
あらすじルパン一味の出会いを「ファーストコンタクト」と呼び、取材している女記者エリナは、次元大介との賭けに勝ち、彼から具体的な話を聞けることになる。以下、次元の回想としてルパンとの出会いを中心に、石川五ェ門や峰不二子、さらに銭形警部も関わった昔話が展開される。 今回のルパンの狙いは、ニューヨークの大物マフィアであるガルベスが所有する、ダイヤモンドよりも硬い合金の製法が入った円柱状の筒「クラム・オブ・ヘルメス」(以下「ヘルメス」と略)であった。しかし、最初の盗みはガルベスの護衛として雇われた裏社会№1のガンマンと評される次元大介の活躍で阻まれる。ルパンは旧知の泥棒で同じく「ヘルメス」を狙うブラッドから次元のことを教えられ、彼に興味を持つ。一方、次元は同僚のシェイドに非難されつつ、ガルベスの言葉によってルパンと決着をつけなければならないと決心し、以降、何度もルパンを襲撃するが決着はつかない。 間もなくして、ブラッドが「ヘルメス」を盗み出すことに成功する。ルパンは彼のアジトに向かうが、ブラッドは既に何者かに射殺されており、「ヘルメス」は彼の恋人・峰不二子が持っていた。不二子はルパンよりブラッドの死を伝えられ動揺する。ルパンはそれ自体も特殊合金である「ヘルメス」を開けるには特殊な「鍵」が必要だと教えつつ、ガルベス・ファミリーから逃げるためすぐにニューヨークから出るように警告する。 一方、日本の剣士・石川五ェ門は長年探していた「剣」の場所を知り、ニューヨークへとやってくる。また、日本の警視庁に所属する銭形警部は指名手配犯の不二子の行方を追ってニューヨークへやってくる。早々にヘマをして市警本部長クロフォードに睨まれる銭形は、資料庫に追いやられ、やる気のない老刑事ジョージを相棒にあてがわれる。 不二子はガルベス・ファミリーに捕まるが、彼が持っていた「ヘルメス」はルパンによってすでに偽物にすり替えられていた。そこで不二子は、自分がルパンを籠絡し、「鍵」もすべて手に入れるとガルベスに協力を提案、彼はこれを認める。しかし、次元はこの横取りという方法に不快感を示し、護衛を辞めることをガルベスに伝える。 ルパンは巧妙に取り入った不二子と共に貿易会社社長のハンスが所有する「鍵」を狙い、盗みの予告状を送る。不二子がルパンと関係があるという情報を掴んだ銭形も現場に潜入する。ルパンはクロフォードに変装してまんまと「鍵」を盗み出すことに成功するが、銭形はルパンの変装を見破り、たびたび彼を危機に陥れる。最終的に「鍵」を盗んで現場からの脱出を果たしたルパンであったが、不二子が付けた発信機でガルベス・ファミリーに捕捉される。次元も現れるが決着はつかず、そこに不二子が「鍵」を横取りされ、そのままルパンと次元がガルベス・ファミリーに捕まってしまう。また男たちを出し抜いたつもりの不二子もシェイドに捕まる。 ガルベスは余興でルパンに裏切り者の次元の始末を命じて拳銃を渡す。しかし、ルパンは彼を殺さずに縄のみ切り、逆にガルベスをコケにする。その光景にルパンと次元が馬鹿笑いしていると停電が起こり、そこに現れた五ェ門が暗闇を利用して「鍵」を奪う。「鍵」の正体は斬鉄剣であり、「ヘルメス」を開けるとは、同じ合金で作られた斬鉄剣で斬ることを意味していた。五ェ門の介入で混乱する中、ルパンと次元は隙を突いて脱出する。 ルパンは次元に泥棒の夢として、いつか難攻不落の連邦準備銀行を襲いたいと話し、そのためには信頼できる相棒が必要だとスカウトする。一方、製法書も手に入れたい五ェ門は「ヘルメス」と「斬鉄剣」を賭けてルパンに果たし状を送る。また、不二子よりもルパンに興味を抱いた銭形は、彼を捕まえようとしてそのアジトを襲撃するが、失敗する。代わりに五エ門の果たし状を見つけるがクロフォードに捏造を疑われ、日本への強制送還が決まったとして牢屋に入れられる。 五ェ門との決闘にはルパンへの借りを返したい次元が現れ、2人は熾烈な戦闘を行うが決着はつかない。そこにルパンが現れて五ェ門は彼に矛先を向けるが、ルパンは巧みに躱した上、わざと「ヘルメス」を斬らせてしまい、中の製法書を手に入れる。そこにガルベス・ファミリーも現れ、製法書は不二子に横取りされる。不二子はジョージによって脱獄した銭形に追い詰められるが、これをルパンが気絶させる。そこにシェイドが現れ、不二子と組んでいることを明かし、ルパンに対して優位に立つが、ルパンはブラッドを殺したのはシェイドだと指摘する。不二子はシェイドを撃ち、致命傷を負ったシェイドは手榴弾で自爆し、その爆炎で製法書は燃えてしまう。 ルパンらは現場から逃亡し、銭形とジョージは偶然からガルベスを逮捕する。クロフォードは今までの評価を一転し、2人を讃える。銭形はジョージからルパンを追うならICPOに志願することを勧められ、銭形はその提案を受け入れ、ルパンを捕まえることを決意する。 ここで視点は現在に戻り、エリナは「ヘルメス」はどうなったかと次元に尋ねるが、そこに五ェ門や不二子を連れたもう一人の次元が現れ、女を口説くには良い作り話だと評する。驚くエリナをよそに、彼女が取材していた相手は次元ではなく変装していたルパンであった。そこでルパン一味は今までの話がまったくデタラメであるかのような会話を行う。 エリナは自分たちが連邦準備銀行の向かいの路地に来ていることを知る。そのままルパン一味は銀行を襲撃し、警官隊を率いた銭形も現れる。銭形の追跡を躱したルパン一味は地下金庫から目当てのものを盗んで建物から出てくる。ルパンの手の中にあったのは、作り話のお宝であったはずの「ヘルメス」であった。 登場人物メインキャラクター
ゲストキャラクター以下、エリナ以外は過去の人物である。
用語
声の出演
スタッフ
出典・脚注
注釈
関連項目外部リンク
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