北欧神話の固有名詞一覧(ほくおうしんわのこゆうめいしいちらん)では、北欧神話に登場する神名、人名、地名、物品名などを取り扱う。
丸括弧()内には(特に但し書きのない限り)古ノルド語の綴りおよび別カナ表記を、鉤括弧「」内にはその名前の意味として一般的な説を挙げた。また日本語版に記事がない項目については、他国語版へのリンクを併記したものもある。
人物
種族・総称
- アース神族(áss, アース;(複数形)æsir, エーシル;(女性形)ásynja, アーシュニヤ;(女性複数形)ásynjur, アーシュニウル) - 北欧神話の中心となる神族。オーディン、ソールらが所属する。
- アールヴル(álfr, アールヴ; (複数形)álfar, アールヴァル; (英語形)elf, エルフ) - エルフを参照。
- ヴァルキュリヤ(valkyrja, ヴァルキュリャ, ヴァルキュリア, ヴァルキリア; (複数形)valkyrjur, ヴァルキュリウル; (ドイツ語形)Walküre, ヴァルキューレ、ワルキューレ; (英語形)valkyrie, ヴァルキリー、バルキリー)
- ヴァン神族(vanr, ヴァンル;(複数形)vanir, ヴァニル) - 北欧神話に登場するもう一つの神族。フレイル、フレイヤ、ニョルズルらが所属する。
- ヴォルヴァ(vǫlva; (複数形)vǫlur, ヴォルル) - ゲルマン人の信仰におけるシャーマンの一種。「巫女」と訳されることもあるが、歴史的には女性に限らず、男性のヴォルヴァも居たとされる。
- エインヘリヤル(einherjar, エインヘリャル) - ゲルマン人の信仰において、勇敢に戦い死んだ者が死後に成るとされた存在。ヴァルホッルにてラグナロクの準備を行う。
- スヴァルトアールヴル(svartálfr, スヴァルトアールヴ; (複数形)Svartálfar, スヴァルトアールヴァル) - ドヴェルグルと同一視されることもある。
- ディース(dís; (複数形)dísir, ディーシル) - 霊的存在の一種。
- デックアールヴル(dökkálfr, døkkálfr, デックアールヴ; (複数形)dökkálfar, døkkálfar, デックアールヴァル) - ダークエルフを参照。ドヴェルグルと同一視されることもある。
- ドヴェルグル(dvergr, ドヴェルグ; (英語形)dwarf, ドワーフ) - ドワーフを参照。
- ノルン(norn; (複数形)nornir, ノルニル) - 「運命の女神」と呼ばれることもある。
- ハミンギヤ(hamingja, ハミンギャ, ハミンギア) - 霊的存在の一種。あるいは「幸運、運勢」に関する概念。
- フュルギヤ(fylgja, フィルギャ, フュルギャ, フュルギア; (複数形)fylgjur, フュルギユル, フィルギュル, フィルギウル) - 霊的存在の一種。
- ムースペッル(múspell, ムスペル, ムスペッル, ムースペル) - 巨人族の一つ。「炎の巨人」と訳されることもある。
- ヨトゥン(jǫtunn) - 巨人族の一つ。「霜の巨人」と訳されることもある。
- リョースアールヴル(ljósálfr, リョースアールヴ; (複数形)ljósálfar, リョースアールヴァル) - 一般にアールヴルと同一視される。
アース神族・ヴァン神族
ヴァルキュリヤ
巨人族
ドヴェルグル
- アウストリ - ドヴェルグ。ユミルの頭蓋骨(天)を東方で支えている。
- アウルヴァング(Aurvangr,「高名な戦士」) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつで、同詩の後段で、土から誕生したドヴェルグたちは「アウルヴァングの住居」を探しに行ったとされている。
- アーナル(Ánarr,「憧れの目で見る者」) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。
- アルヴィース - 『アルヴィースの言葉』に登場するドヴェルグ。
- アルスィオーヴ(Alþiófr,「大泥棒」) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。
- アーン(Ánn,「長年の友」) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。
- アンドヴァリ(英語版) - ドヴェルグ。
- アンナル - ノートの2番目の夫。ドヴェルグのアーナルと関連のある名前。
- イアリ(Iari,「戦士」) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。
- ヴィト(Vitr,「賢者」) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。
- ヴィーリ (Víli) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。
- ヴィンダールヴ(Vindárfr,「風の妖精」) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。
- ヴェイグ(Veigr,「強者」) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。
- ヴェストリ - ドヴェルグ。ユミルの頭蓋骨(天)を西方で支えている。
- ヴェルンド(Vǫlundr ヴォルンドル)
- エイキンスキアルディ(Eikinscialdi,「樫の楯を持つ者」) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつだが、同詩の後段において言及されている、「アウルヴァングの住居」にいたとされる同名の存在との関連は不明。
- エイトリ - 『詩語法』に登場するドヴェルグ。ミョルニルなどの宝物を鍛え上げた。
- オト(英語版) - ドヴェルグ。
- ガラール(英語版) - ドヴェルグ。
- ガンダールヴ(英語版)(Gandálfr,「魔法の心得のある妖精」) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。
- キーリ (Kíli) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。
- シンドリ(英語版) - ドヴェルグ。エイトリと同一視される。
- スヴィーウル(Svíurr,「旅人」) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。
- スズリ - ドヴェルグ。ユミルの頭蓋骨(天)を南方で支えている。
- スラーイン(Þráinn,「頑固者」) - ドヴェルグ。『巫女の予言』で列記されるドヴェルグの名のひとつで、『オージンのワタリガラスの呪文歌』に登場するスラーインと同一と思われる。
- スロール(Þrór,「実り豊かな者」) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。
- セック(Þekr,「気持ちいい者」) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。ロキの変装である女巨人セックとは別人。
- ソリン(Þorinn,「無鉄砲者」) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。
- ダーイン(Dáinn) - ドヴェルグ。『ヒュンドラの歌』によれば彼とナッビがヒルディスヴィーニを共作。名剣ダーインスレイヴも鍛えている。『オージンのワタリガラスの呪文歌』に登場するダーインと同一と思われる。
- ドヴァリン(英語版)(Dvarinn,「躊躇う者」) - ドヴェルグ。『ヘルヴォルとヘイズレク王のサガ』では、ドゥリンと共にティルヴィングを鍛えたとされている。『巫女の予言』にもその名前が言及されており、ドヴェルグの先祖を遡れば「ドヴァリンの群」に行き着くとされている。
- ドゥリン(英語版)(Durinn,「眠る者」) - ドヴェルグ。『巫女の予言』において、2番目に生まれ、また2番目に偉いドヴェルグであり、モートソグニルと共に土から他のドヴェルグたちを作ったとされている。また『ヘルヴォルとヘイズレク王のサガ』では、ドヴァリンと共にティルヴィングを鍛えたとされている。
- ナッビ(Nabbi) - ドヴェルグ。『ヒュンドラの歌』によれば彼とダーインがヒルディスヴィーニを共作した。
- ナーリ(Náli,「針」) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。
- ナール(Nár,「死者」) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。
- ニージ(英語版) (Niði) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。
- ニューイ(英語版) (Nýi) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。
- ニューラーズ(Nýráðr,「新案を決定した者」) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。
- ノーリ(Nóri,「いじけた者」) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。
- ノルズリ - ドヴェルグ。ユミルの頭蓋骨(天)を北方で支えている。
- バーヴォル (Bávorr) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。
- ハーナル(Hánarr,「器用な者」) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。
- ビーヴォル (Bivorr) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。
- ファフニール - ニーベルンゲン伝説に登場するドヴェルグ。のちに竜へと姿を変えた。
- フィアラル(Fialarr, 「うかがう者」) - ドヴェルグ。または、『巫女の予言』において、「アウルヴァングの住居」にいたとされる存在。
- フィーリ (Fíli) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。
- フラール(Frár,「急ぐ者」) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。
- フレイドマル(英語版) - ドヴェルグ。
- フレーグ(Frægr,「有名な者」) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。
- ブロック - 『詩語法』に登場するドヴェルグ。ミョルニルなどの宝物を鍛え上げた。
- フンディン(Fundinn,「拾い子」) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。
- ヘプティ(Hepti,「柄」) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。
- ベムブル(Bömburr,「太っちょ」) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。
- ベーリング(英語版) - ドヴェルグ。
- ホルンボリ(Hornbori,「角に穴を開ける者」) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。
- ミョズヴィトニル(Miöðvitnir,「蜜酒の狼」) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。
- モートソグニル(Mótsognir,「疲れてため息をつく者」) - ドヴェルグ。『巫女の予言』において、最も初めに生まれ、また最も偉いドヴェルグであり、ドゥリンと共に土から他のドヴェルグたちを作ったとされている。
- ラーズスヴィズ(Ráðsviðr,「賢明な決定をする者」) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。
- リト(英語版)(Litr,「色の付いた者」) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。
- レギン(英語版)(Reginn,「権力者」) - ドヴェルグ。ニーベルンゲン伝説に登場し、その名前は『巫女の予言』にも見られる。
- ローニ(Lóni,「照らされた者」) - ドヴェルグ。『巫女の予言』に列記されるドヴェルグ名のひとつ。
- ローファル(英語版)- ドヴェルグ。
その他の神的存在
- アーイ(Ái,「曾祖父」) - 『巫女の予言』において、ドヴェルグの名前が列挙されている部分と、その後の「アウルヴァングの住居」にいたとされる存在が列挙される部分の両方に見られる名前。『リーグルの唄』に登場する人間アーイとは別人。
- アウズ - 夜の女神ノートと夫ナグルファリの間の息子。
- アールヴ(Álfr, 「妖精」) - 『巫女の予言』において、「アウルヴァングの住居」にいたとされる存在。種族名のアールヴとの関連は不明。
- ヴィルヴィル (Virvir) - 『巫女の予言』において、「アウルヴァングの住居」にいたとされる存在。
- ヴェルザンディ - ノルンの一人。
- ウルズ - ノルンの一人。
- ギンナル(Ginnar, 「ペテン師」「誘惑者」) - 『巫女の予言』において、「アウルヴァングの住居」にいたとされる存在。
- グローイ(Glói, 「輝く者」) - 『巫女の予言』において、「アウルヴァングの住居」にいたとされる存在。
- スカーヴィズ(Scárfiðr, 「目の鋭い者」) - 『巫女の予言』において、「アウルヴァングの住居」にいたとされる存在。
- スキルヴィル(Scirvir, 「ちび」) - 『巫女の予言』において、「アウルヴァングの住居」にいたとされる存在。
- ソール - 太陽の女神。
- ドラウプニル(Draupnir, 「滴る者」) - 『巫女の予言』において、「アウルヴァングの住居」にいたとされる存在。腕輪のドラウプニルとの関連は不明。
- ドールグスラシル(Dólgþrasir, 「戦に逸る者」) - 『巫女の予言』において、「アウルヴァングの住居」にいたとされる存在。
- ハウグスポリ(Haugspori, 「丘に住む者」) - 『巫女の予言』において、「アウルヴァングの住居」にいたとされる存在。
- ハール (Hár) - 『巫女の予言』において、「アウルヴァングの住居」にいたとされる存在。同じく『巫女の予言』第21聯[1]において用いられているオーディンの別名ハールとの関連は不明。
- ヒューキ - 月の神マーニに従う子供。
- ビュグヴィル - 『ロキの口論』に登場するアールヴ。
- フィン(Finnr, 「ラップ人」) - 『巫女の予言』において、「アウルヴァングの住居」にいたとされる存在。
- フレーヴァング(Hlévangr, 「風から守られた野に住む者」) - 『巫女の予言』において、「アウルヴァングの住居」にいたとされる存在。
- フロスティ(Frosti, 「冷たい者」) - 『巫女の予言』において、「アウルヴァングの住居」にいたとされる存在。
- ベイラ - 『ロキの口論』に登場するアールヴ。
- ユングヴィ(Yngvi, 「突く者」) - 『巫女の予言』において、「アウルヴァングの住居」にいたとされる存在。フレイの別名とされるユングヴィとの関連は不明。
人間
動物
馬
狼
その他の動物
地名
世界
- アースガルズル(Ásgarðr, アースガルズ, アスガルド)
- アールヴヘイムル(Álfheimr, アールヴヘイム, アルフヘイム)
- ヴァナヘイムル(Vanaheimr, ヴァナヘイム)
- ウートガルズル(Útgarðar, ウートガルズ, ウトガルド)
- スヴァルトアールヴァヘイムル(Svartálfaheimr, スヴァルトアールヴヘイム, スヴァルトアルフヘイム)
- ニヴルヘイムル(Niflheimr, ニヴルヘイム, ニフルヘイム)
- ニヴルヘル(Niflhel)
- ヘルヘイムル(Helheimr, ヘルヘイム)
- ミズガルズル(Miðgarðr, ミズガルズ, ミッドガルド)
- ムースペッルスヘイムル(Múspellsheimr, ムスペルヘイム)
- ヨトゥンヘイムル(Jǫtunheimr, ヨトゥンヘイム, ヨツンヘイム)
館
川
その他の地名
実在の地名
物品
剣
その他の武器
装身具
船
その他の物品
概念・用語
- ウールヴヘジン(úlfheðinn) - オオカミのように強い力を持った戦士のこと。狼男も参照。
- ガルドル(gardr, ガルド; (複数形)galdrar, ガルドラル) - 魔術の一様式。
- ガンドル(gandr, ガンド) - 魔術の一つ。
- 九つの世界 - 北欧神話の世界観を説明する術語の一つ。
- スンベル(Symbel(古英語), sumbl(古ノルド語) スムブル) - ゲルマン人の信仰における「宴」を表す術語。
- セイズル(Seiðr, セイズ) - 魔術の一様式。あるいはその魔術を用いる者。
- ニーズ(níð)
- フィンブルの冬(fimbulvetr, フィンブルヴェトル, フィンブルヴェト, フィムブルヴェト) - 北欧神話において、ラグナロクの前に訪れるとされる出来事。
- フェーデ(ドイツ語: Fehde) - 「血讐」と訳されることもある。
- ブロート(blót) - ゲルマン人の信仰における「供犠、贄、人身御供」の概念を表す術語。
- フェーラグ(Félag) - ヴァイキング時代のゲルマン人社会における集団の一つ。
- ベルセルクル(berserkr, ベルセルク; (英語)berserker, バーサーカー) - ある種の強い力を持った戦士のこと。「狂戦士」と訳されることもある。
- ホルグル(hörgr, ホルグ, ヘルグ; (複数形)hörgar, ホルガル) - ゲルマン人の信仰における「祭壇、神殿」の概念を表す術語。
- ヨール(jōl; (英語形)yule, ユール) - ゲルマン人の信仰における冬至の祭のこと。
- ラグナロク(ragnarök, ラグナレク; ragnarök(k)r, ラグナロック, ラグナロックル) - 北欧神話における「世界の終末」。
脚注
- ^ a b c 聯番号はV.G.ネッケル他編(谷口幸男訳)『エッダ』に依った。
参考文献
関連項目
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