猪谷駅

猪谷駅
駅舎外観(2019年5月)
いのたに
Inotani
**杉原 (8.7 km)
(7.0 km) 楡原**
地図
所在地 富山県富山市猪谷旦暮1085
北緯36度28分18.16秒 東経137度14分17.04秒 / 北緯36.4717111度 東経137.2380667度 / 36.4717111; 137.2380667座標: 北緯36度28分18.16秒 東経137度14分17.04秒 / 北緯36.4717111度 東経137.2380667度 / 36.4717111; 137.2380667
所属事業者 西日本旅客鉄道(JR西日本)*
東海旅客鉄道(JR東海)
所属路線 高山本線(JR西日本)
高山本線(JR東海)
キロ程 189.2 km(岐阜起点)
電報略号 イニ
駅構造 地上駅
ホーム 1面2線
乗車人員
-統計年度-
249人/日(降車客含まず)
-2019年-
開業年月日 1930年昭和5年)11月27日[1]
備考 無人駅自動券売機 有)
* 会社境界駅(JR西日本管轄駅)
** 杉原方 - JR東海
** 楡原方 - JR西日本
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猪谷駅
営業当時の神岡線「おくひだ号」
いのたに
INOTANI
(2.3 km) 飛騨中山
所属事業者 神岡鉄道
所属路線 神岡線
キロ程 0.0 km(猪谷起点)
駅構造 地上駅
ホーム 1線使用
開業年月日 1984年昭和59年)10月1日*
廃止年月日 2006年平成18年)12月1日*
* 神岡鉄道猪谷駅としての開業日・廃止日
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猪谷駅(いのたにえき)は、富山県富山市猪谷旦暮にある、西日本旅客鉄道(JR西日本)・東海旅客鉄道(JR東海)の高山本線である。

JRの境界駅の1つであり、在来線に4駅存在するJR東海とJR西日本の境界駅の1つである[注釈 1][2][3]。JR西日本の管理駅となっている[4]。富山県唯一のJR東海の駅で、富山県最南端の駅。

かつては神岡鉄道神岡線も乗り入れていたが[5][6]2006年(平成18年)に廃線となった[5][7][8][9][10]

概要

1930年(昭和5年)の開設当初は鉄道省飛越線(現・高山本線)の駅であったが[11][12]高山本線全通で同線に編入された[13]1931年(昭和6年)に神岡までの交通機関として神岡軌道が駅前に乗り入れたが[14]1966年(昭和41年)に当駅を起点として開通した国鉄神岡線に代わった[15][16]。この路線は、1984年(昭和59年)に第三セクター鉄道である神岡鉄道に移管された[16]

1987年(昭和62年)の国鉄分割民営化では、高山本線が当駅で分割継承され(当駅より北はJR西日本、南はJR東海)、当駅は両社の境界駅となった[3][12]。駅管理・業務はJR西日本金沢支社が行っている(管理は北陸広域鉄道部)[17][18]。その後、2006年(平成18年)に神岡鉄道神岡線は廃止され[6][7][10]、再び高山本線単独駅となった[16]

高山本線は、当駅 - 富山駅間で日本貨物鉄道(JR貨物)が第二種事業者となっている[19]。しかし当駅自体はJR貨物管轄では無い[12]

歴史

高山本線は、岐阜側から「高山線」として、富山側から「飛越線」としてそれぞれ建設され[20]、猪谷 - 笹津間の路線は1927年昭和2年)11月に、猪谷 - 打保間の路線は1928年(昭和3年)5月に決定された[21]。笹津駅 - 猪谷駅間は1930年(昭和5年)11月27日に開業している[22]。開業当初の駅員は駅長を含めて8名が充てられたと言うが、これは元来当駅開設が神岡鉱山物資搬入中継点として意図されたものであったからであると言う[23]。それまで笹津駅まで乗入れていた神岡軌道は1931年(昭和6年)9月16日から直接当駅へ乗入れるようになり[16]1933年(昭和8年)以降は年間6万トンを超える貨物を取扱うようになった[24]。時には10万トンを超える年もあったと言う[24]。鉱山の移出品は当駅において高山本線の列車に組替えられ[24]、その主たる品目は亜鉛板、粉末亜鉛鉱、濃硫酸等であった[25]。この神岡軌道乗入と共に、当駅周辺には多数の倉庫や社宅が建設されるようになったので[25]、当駅駅前の道路は整備され商店が集積し、山間の猪谷は漸く殷賑を極めるようになった[26]

しかし、1966年(昭和41年)10月6日に国鉄神岡線が開通すると[16]、それまで猪谷駅において組替えられていた神岡鉱山の貨物は直接国鉄によって輸送されることとなった[27]。これによって高山本線において随一の貨物取扱量を持っていた猪谷駅の地位は低下し、神岡軌道の作業員や貨物組換を担当していた仲仕は姿を消して、多数の倉庫もやがて撤去されていった[27]。その神岡鉱山の貨物輸送も2004年平成16年)10月16日限りで終了し、神岡鉄道神岡線は2006年(平成18年)12月1日に廃止されるに至った[16][28]

年表

駅構造

地上駅であり、島式ホーム1面2線を有する[2][5][18][45]。ホーム東側(駅舎側)が1番のりば[5]、西側が2番のりばと称されている[5][45]。かつては切欠きホームの3番線に神岡鉄道線の列車が発着していたが[5]、現在は柵が設けられている[2][18][45]。ホームと駅舎は構内踏切で連絡している[2][18]。構内にはほかに貨物線および待避線を有している[45]

開業以来の木造駅舎内部には近距離用の自動券売機(特急「ひだ」号の自由席特急券〔富山~高山間〕も購入可)があり[2][46]キヨスク跡には自動販売機もある[18]。西日本旅客鉄道に継承された後に無人駅となったが、駅舎は運輸関係職員の詰所となっている[2][18]。西日本旅客鉄道北陸広域鉄道部の管理下である[17]。JR旅客会社の境界駅としては、中小国駅[注釈 2]と並び無人駅である[2]

特急列車は全列車が停車し、当駅において東海・西日本両社運転士および車掌の交替を行う[18][45]。普通列車は両方向とも全列車が当駅で反対方向に折り返す[5]。接続列車は同一ホームでの対面乗り換えのほか[5]、一部列車は縦列停車を行う。停車する普通列車はワンマン運転であるが、ほとんどが全てのドアを開放する。駅係員は配置されていないが、普通列車の夜間滞泊が行われている。

のりば

のりば 事業者 路線 方向 行先
1・2 JR西日本 高山本線 下り 富山方面
JR東海 CG 高山本線 上り 高山下呂方面

貨物取扱

1948年(昭和23年)当時の猪谷駅周辺

当駅における貨物取扱は1971年(昭和46年)10月1日に一旦廃止されたが、その後1984年(昭和59年)10月18日に神岡鉄道神岡線連絡車扱貨物の取扱を開始した[35]。しかし、1987年(昭和62年)4月1日の国鉄分割民営化の際に当駅は日本貨物鉄道の管轄下とならず、以降は旅客駅として営業している[12]

1951年(昭和26年)12月15日付『鉄道公報』第732号通報「専用線一覧について(営業局)」別表によると、当駅接続の専用線は次の通りであった[47]

  • 神岡鉱山線(動力:手押、作業粁程:0.3粁)

1953年(昭和28年)10月10日付『鉄道公報』第1254号通報専用線一覧別表掲載中、当駅接続の専用線は次の通りであった[48]

  • 三井金属鉱業線(動力:手押、作業粁程:0.3粁)
  • 北陸電力線(第三者使用:日本通運、動力:日本通運借入機関車、作業粁程:0.3粁)

1970年(昭和45年)10月1日現在における当駅接続の専用線は以下の通りであった[49]

  • 北陸電力線(通運事業者:日本通運、動力:国鉄機関車及び手押、作業粁程:0.3粁、総延長粁程:0.4粁)

利用状況

「富山県統計年鑑」と「富山市統計書」によると、近年の1日平均乗車人員の推移は以下の通り[50][51]

年度 1日平均
乗車人員
1995年 171
1996年 153
1997年 142
1998年 137
1999年 125
2000年 113
2001年 107
2002年 102
2003年 99
2004年 86
2005年 80
2006年 88
2007年 77
2008年 70
2009年 67
2010年 59
2011年 59
2012年 57
2013年 51
2014年 43
2015年 71
2016年 263
2017年 297
2018年 287
2019年 249

駅周辺

駅周辺は神通川(宮川)・高原川合流部近傍の峡谷(神通峡)沿いに位置する小集落となっている。特急停車駅であるが、駅前には郵便局と商店が点在するのみである。

バス路線

駅前の濃飛バス「猪谷駅」バス停、国道41号沿い[注釈 3]富山地鉄バス「猪谷」バス停[54]がある。

  • 濃飛バス:神岡・猪谷線
  • 地鉄バス:笹原・猪谷線

隣の駅

特急ひだ」は列車記事を参照。

西日本旅客鉄道(JR西日本)
高山本線
猪谷駅 - 楡原駅
東海旅客鉄道(JR東海)
CG 高山本線
杉原駅 - 猪谷駅

かつて存在した路線

神岡鉄道
神岡線
猪谷駅 - 飛騨中山駅

脚注

注釈

  1. ^ 残る3駅は米原駅東海道本線)、亀山駅関西本線)、新宮駅紀勢本線)。
  2. ^ JR東日本・JR北海道境界駅(管理はJR東日本)。ただしJR北海道の定期列車の設定なし。
  3. ^ 駅から正面通りを進み、猪谷交差点を左折

出典

  1. ^ a b 澤井 2016, p. 265.
  2. ^ a b c d e f g 澤井 2016, p. 266.
  3. ^ a b c 沿線点描 高山本線 富山駅~猪谷駅(富山県)」『Blue Signal』2016年7月号、西日本旅客鉄道、2016年7月、2022年8月7日閲覧 
  4. ^ 第35期有価証券報告書” (PDF). 東海旅客鉄道. p. 27 (2022年6月23日). 2022年8月7日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h 立野 2017, p. 165.
  6. ^ a b “【よみがえる鉄路の記憶 西脇恵さん撮影】増結の気動車 追い掛けて”. 北陸中日新聞Web. (2020年9月15日). オリジナルの2021年8月8日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210808022911/https://www.chunichi.co.jp/article/120995 2022年8月7日閲覧。 
  7. ^ a b c お知らせ”. 神岡鉄道 (2005年11月15日). 2007年2月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年12月28日閲覧。
  8. ^ 神岡鉄道「おくひだ1号」復活 - 廃線を観光に活用する組織設立へ”. マイナビニュース (2017年1月31日). 2022年8月7日閲覧。
  9. ^ “「鉄道廃線跡」は地域観光の目玉になるか”. 読売新聞オンライン. (2017年4月4日). オリジナルの2021年8月8日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210808022916/https://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/20170404-OYT8T50009/ 2022年8月7日閲覧。 
  10. ^ a b c “「おくひだ1号」復活にファン大集結 10年間静態保存した地元の熱意”. 東京スポーツ. (2017年4月13日). https://www.tokyo-sports.co.jp/articles/-/197089 2022年8月7日閲覧。 
  11. ^ a b c 昭和5年11月20日鉄道省告示第307号(『官報』、1930年(昭和5年)11月20日、内閣印刷局)
  12. ^ a b c d e f g 『停車場変遷大事典 国鉄・JR編』2、JTB、1998年、168頁。
  13. ^ 昭和9年鉄道省告示第498号(『官報』、1934年(昭和9年)10月19日、内閣印刷局)
  14. ^ a b 鉄道省監督局編、『地方鉄道及軌道一覧附専用鉄道 昭和十年四月一日現在』、1935年(昭和10年)5月、鉄道同志会 
  15. ^ a b 昭和41年9月30日日本国有鉄道公示第602号(『官報』、1976年(昭和41年)9月30日、大蔵省印刷局)
  16. ^ a b c d e f 今尾恵介監修、『日本鉄道旅行地図帳 全線・全駅・全廃線 6号』(35頁)、2008年(平成20年)10月、新潮社
  17. ^ a b データで見るJR西日本2021 鉄道部・地域鉄道部” (PDF). 西日本旅客鉄道. p. 94 (2021年10月). 2021年10月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月7日閲覧。
  18. ^ a b c d e f g 郡司武編、『週刊朝日百科 JR全駅・全車両基地』48号(27頁)、2013年(平成25年)7月、朝日新聞出版
  19. ^ 国土交通省鉄道局編、『平成28年度 鉄道要覧』(60頁)、2016年(平成28年)9月、電気車研究会・鉄道図書刊行会
  20. ^ 細入村史編纂委員会編、『細入村史』(493頁)、1987年(昭和62年)3月、細入村
  21. ^ 細入村史編纂委員会編、『細入村史』(494頁)、1987年(昭和62年)3月、細入村
  22. ^ 細入村史編纂委員会編、『細入村史』(499頁)、1987年(昭和62年)3月、細入村
  23. ^ 細入村史編纂委員会編、『細入村史』(503頁)、1987年(昭和62年)3月、細入村
  24. ^ a b c 細入村史編纂委員会編、『細入村史』(508頁)、1987年(昭和62年)3月、細入村
  25. ^ a b 細入村史編纂委員会編、『細入村史』(509頁)、1987年(昭和62年)3月、細入村
  26. ^ 細入村史編纂委員会編、『細入村史』(509より511頁)、1987年(昭和62年)3月、細入村
  27. ^ a b 細入村史編纂委員会編、『細入村史』(679頁)、1987年(昭和62年)3月、細入村
  28. ^ 細入村史編纂委員会編、『細入村史』(77頁)、2005年(平成17年)3月、細入村
  29. ^ a b 今尾恵介監修、『日本鉄道旅行地図帳 全線・全駅・全廃線 6号』、2008年(平成20年)10月、新潮社[要ページ番号]
  30. ^ 昭和44年10月1日日本国有鉄道公示第309号(『官報』、1969年(昭和44年)10月1日、大蔵省印刷局)
  31. ^ 昭和46年日本国有鉄道公示第371号(『官報』、1971年(昭和46年)9月29日、大蔵省印刷局)
  32. ^ 昭和49年日本国有鉄道公示第208号(『官報』、1974年(昭和49年)9月12日、大蔵省印刷局)
  33. ^ 昭和59年日本国有鉄道公示第174号(『官報』、1984年(昭和59年)1月30日、大蔵省印刷局)
  34. ^ 昭和59年8月29日日本国有鉄道公示第53号(『官報』、1984年(昭和59年)8月29日、大蔵省印刷局)
  35. ^ a b 昭和59年10月18日日本国有鉄道公示第87号(『官報』、1984年(昭和59年)10月18日、大蔵省印刷局)
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  37. ^ 田中泰三・道下淳編、『高山線の60年』、1994年(平成6年)12月、郷土出版社[要ページ番号]
  38. ^ a b 高山本線(高山駅〜猪谷駅間)バスによる代行輸送について(インターネット・アーカイブ)- 東海旅客鉄道ニュースリリース 2004年(平成16年)10月22日
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  40. ^ 「平成30年7月豪雨」に伴う高山本線の被災状況について』(PDF)(プレスリリース)東海旅客鉄道、2018年7月11日https://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000037720.pdf2022年8月7日閲覧 
  41. ^ “代行バスの接続 不便の声 JR高山線・坂上 - 猪谷間”. 北陸新幹線で行こう!北陸・信越観光ナビ(北日本新聞). (2018年9月13日). https://www.hokurikushinkansen-navi.jp/pc/news/article.php?id=NEWS0000016257 2022年8月7日閲覧。 
  42. ^ 高山本線 全線運転再開について』(PDF)(プレスリリース)東海旅客鉄道、2018年11月5日https://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000038721.pdf2022年8月13日閲覧 
  43. ^ “「おかえり」JR高山線、4カ月ぶり全線再開 豪雨影響”. 朝日新聞デジタル. (2018年11月21日). オリジナルの2018年11月21日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20181121234956/https://www.asahi.com/articles/ASLCN03FRLCMOHGB00Q.html 2022年8月7日閲覧。 
  44. ^ “JR:高山線の坂上 - 猪谷が開通、5カ月ぶりに全線復旧”. 毎日新聞. (2018年11月21日). オリジナルの2018年11月21日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20181121093637/https://mainichi.jp/articles/20181121/k00/00e/040/272000c 2022年8月13日閲覧。 
  45. ^ a b c d e 川島令三編、『中部ライン 全線・全駅・全配線第6巻 加賀温泉駅―富山エリア』(26及び69頁)、2010年(平成22年)9月、講談社
  46. ^ a b 立野 2017, p. 166.
  47. ^ 名取紀之・瀧澤隆久編、『トワイライトゾ~ン・マニュアル8』(『レイル・マガジン』第16巻15号)、1999年(平成11年)11月、ネコ・パブリッシング[要ページ番号]
  48. ^ 名取紀之・瀧澤隆久編、『RM POCKET 11 トワイライトゾ~ン・マニュアルⅣ』、1995年(平成7年)10月、ネコ・パブリッシング[要ページ番号]
  49. ^ 日本国有鉄道貨物局編、『専用線一覧表 昭和45年10月1日』(214頁)、1970年(昭和45年)、日本国有鉄道貨物局
  50. ^ 統計年鑑 - 富山県
  51. ^ 富山市統計書 - 富山市
  52. ^ a b 澤井 2016, p. 268.
  53. ^ 立野 2017, p. 167.
  54. ^ 富山地方鉄道乗合自動車停留所表 - 富山地方鉄道

参考文献

  • 澤井泰『高山線の全駅乗歩記』文芸社、2016年10月15日。ISBN 978-4-286-16551-6 
  • 立野幸雄『とやま駅物語』富山新聞社、2017年7月20日。ISBN 978-4-8330-2104-3 

関連項目

外部リンク