水銀に関する水俣条約
水銀に関する水俣条約(すいぎんにかんするみなまたじょうやく、the Minamata Convention on Mercury)は、水銀および水銀を使用した製品の製造と輸出入を規制する国際条約。 略称は「水銀条約」「水俣条約」。 概要地球規模の水銀および水銀化合物による汚染や、それによって引き起こされる健康、および環境被害を防ぐため、国際的に水銀を管理することを目指すものである。 2013年からは日本国政府が主導して、発展途上国で水俣病のような水銀による健康被害や環境汚染が起きていることから、悪化を防ぐために一定量以上の水銀を使った製品の取り引きなどを国際的に規制する目的で採択させた条約。 2013年1月19日にジュネーブで開かれた国際連合環境計画(UNEP)の政府間交渉委員会にて、名称を「水銀に関する水俣条約」とすることを日本政府の代表が提案し、全会一致で名称案を可決した。 条約は熊本県で2013年10月7-8日の準備会合を経て、2013年10月10日に採択され、92ヶ国(含むEU)が条約への署名をおこなった[1]。 発効は50か国が批准してから90日後とされており、2017年5月18日に発効の要件の50以上の国で締結されたため[2]、同年8月16日に発効した[3][4]。 第5回締約国会議が2023年11月3日に閉幕し、直管蛍光灯の製造と輸出入を27年末までに禁止(使用と販売は許可)、水銀を使用したボタン型電池や化粧品、水銀含有触媒を使用するポリウレタンについても25年末までに製造や輸出入を禁止、水銀で汚染された廃棄物の基準値を15PPMとすることで同意した[5]。 経緯
締約国2019年6月10日現在で、128か国(欧州連合を含む)が署名し、うち109か国(欧州連合を含む)が締結している[6]
日本日本は、2013年(平成25年)10月10日に署名した後、2015年(平成27年)3月10日に条約の承認を求める議案を水銀による環境の汚染の防止に関する法律案と大気汚染防止法の一部を改正する法律案とともに第189回国会へ提出[7][8][9]した。 条約の承認を求める議案は、2015年5月12日に衆議院[7]で、5月22日に参議院[10]でそれぞれ満場一致で承認された。条約を実施するための2法は、2015年5月26日に衆議院[8][9]で、6月12日に参議院で[11][12]それぞれ満場一致でに可決され成立した。両法とも条約が日本国について効力を生ずる日から施行されている。 2016年(平成28年)2月2日には、受諾書を寄託した[13]。 EU2017年11月5日、欧州連合(EU)理事会は水銀に関する水俣条約を締結する決定を採択した[14]。2017年11月5日に署名したのは21の加盟国である(クロアチア、キプロス、ラトビア、ポーランドは2014年9月24日、マルタは2014年10月8日に署名済)[14]。 内容この条約の主な内容 前文この条約の締約国は、水銀が、その長距離にわたる大気中の移動、人為的に環境にもたらされた場合の残留性、生態系における生物蓄積能力並びに人の健康及び環境への重大な悪影響を理由として、世界的に懸念のある化学物質であることを認識し、効率的かつ効果的な一貫した方法で水銀を管理するための国際的行動を開始する。 序論第一条 目的 この条約は、水銀及び水銀化合物の人為的な排出及び放出から人の健康及び環境を保護することを目的とする。 第二条 定義 供給及び貿易:水銀の供給源および貿易第三条 水銀の供給源及び貿易 鉱山からの水銀産出の禁止、水銀の貿易に関しては条約で認められた用途以外の禁止 製品と製造プロセス:水銀添加製品、水銀使用製造プロセス、締結国の要請による除外第四条 水銀添加製品 第五条 水銀又は水銀化合物を使用する製造工程 第六条 要請により締約国が利用可能な適用除外 人力小規模金採掘第七条 零細及び小規模の金の採掘 水銀が不法に使用されないようにする 大気への排出、水及び土壌への放出第八条 排出 附属書Dに掲げる発生源の分類に該当する発生源からの排出を規制するための措置を通じ、水銀の大気への排出を規制し削減する。 第九条 放出 この条約の他の規定の対象となっていない発生源からの水銀の土壌及び水への放出を規制しは削減する。 石炭・石油等を燃焼させた排ガスの規制・排水の規制 保管、廃棄等第十条 水銀廃棄物以外の水銀の環境上適正な暫定的保管 環境上適正な保管 第十一条 水銀廃棄物 有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約の関連する定義は、バーゼル条約の締約国に関し、この条約の対象となる廃棄物について適用する。 第十二条 汚染された場所
資金・技術支援第十三条 資金及び資金供与の制度 自国の政策、優先度及び計画に従い、この条約の実施を意図する各国の活動に関する資金を提供することを約束する。 第十四条 能力形成、技術援助及び技術移転 普及啓発、研究等第十五条 実施及び遵守に関する委員会 第十六条 健康に関する側面 危険にさらされている人々や被害を受けやすい人々を特定し、保護するための戦略及び計画の作成及び実施を促進する。 第十七条 情報の交換 第十八条 公衆のための情報、啓発及び教育 第十九条 研究、開発及び監視 第二十条 実施計画 この条約の義務を履行するために実施計画を作成し提出する。 第二十一条 報告 この条約を実施するためにとった措置や効果について報告する。 第二十二条 有効性の評価 締約国会議は、定期的にこの条約の有効性を評価する。 第二十三条 締約国会議、第二十四条 事務局、第二十五条 紛争の解決、第二十六条 この条約の改正、第二十七条 附属書の採択及び改正、第二十八条 投票権、第二十九条 署名、第三十条 批准、受諾、承認又は加入 第三十一条 効力発生 この条約は、五十番目の批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託の日の後九十日目の日に効力を生ずる。 第三十二条 留保 この条約には、いかなる留保も付することができない。 以上は仮訳より 実生活への影響日本国内において生活するうえで影響があるのは、蛍光灯や乾電池など水銀が使われた製品(第4〜6条)である。 蛍光灯・CCFLについて規制対象となるのは以下の蛍光ランプである。[15]
乾電池について乾電池は水銀0使用(水銀を原材料としては使っていないという意味、水銀がまったく含まれていないという意味ではない)がほとんどであるが、アルカリボタン電池、輸入された電池、家庭などで出てくる昔の電池には水銀が使われている可能性がある。そのため地元の最終処分場の環境や清掃工場の焼却炉を守るため注意が必要である。 脚注
参考文献
関連項目外部リンク
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