愛知登文会(あいちとうぶんかい)は、愛知県内における国の登録有形文化財建造物の保存と活用を図る任意団体。正式名称は、愛知県国登録有形文化財建造物所有者の会(あいちけんくにとうろくゆうけいぶんかざいけんぞうぶつしょゆうしゃのかい)。
毎年秋に建物の特別公開や案内を行う「あいちのたてもの博覧会」(あいたて博)をはじめ、文化財の保存と活用につながる様々な活動を行っている。
組織
2011年(平成23年)6月、愛知県国登録有形文化財建造物所有者の会が設立された[1][2]。大阪・京都・秋田に次いで、全国で4番目の都府県単位の国登録有形文化財建造物所有者の会である[1]。
正会員は愛知県内に登録文化財を所有する任意の個人または法人とし、準会員として所有していた登録文化財が指定文化財となった正会員とする。地方自治体が所有する文化財についてはその自治体を特別会員とする。愛知登文会の事業を援助する個人または法人を賛助会員とする[3]。
2023年度(令和5年度)は会長1名と副会長3名を含む理事13名、その他に幹事2名、名誉会長1名、相談役8名で構成されている[4]。
当初、年1回の総会は名古屋駅周辺の会議室で開催していたが、2013年(平成25年)からは登録有形文化財を会場としており、建物見学などを組み合わせた形で開催している[2]。
会員
正会員
2024年6月11日時点[5]。正会員は愛知県内に登録有形文化財を所有する者。
準会員
2024年6月11日時点[5]。準会員は所有していた登録有形文化財が指定文化財になった正会員。
特別会員
2024年6月11日時点[5]。特別会員は愛知県内の登録有形文化財を所有または管理する地方自治体。
沿革
2011年(平成23年)6月、ウインクあいちにある愛知県立大学名駅サテライトキャンパスにて設立総会を開催し、正会員43名、特別会員7名、賛助会員36名の合計86名の会員で発足した[6]。この2011年度より文化庁の補助事業の採択を受け、2016年度にかけて「愛知県内登録有形文化財の保存・活用促進にむけた文化財建造物所有者と県民の連携事業」として、3つのプロジェクトを実施した。さらに、2017年度からは2021年度には、「愛知県国登録有形文化財公開活用事業」として、建物特別公開(あいたて博)を中心に取り組んだ[7]。
2016年度公益信託 大成建設自然・歴史環境基金の助成をうけ、2017年(平成29年)3月、名古屋テレビ塔で全国登文会情報交換会を開催[8]。各地の保存団体のほか、文化庁が一堂に会する初の機会を創出。同年10月、名古屋市内の金城学院高等学校榮光館で、一般市民に向けて活動報告を行う全国登文会シンポジウムを開催、全国の登文会がネットワークを形成し、取り組んでいくことの必要性が確認された[7]。
さらに、2018年度公益信託 大成建設自然・歴史環境基金の助成をうけ[9]、2019年(令和元年)6月21・22日には日本陶磁器センタービル等で全国登文会フェスタを開催し、登録有形文化財保存の会の全国的な連携と、保存・活用の円滑化をめざして所有者間の交流促進を図った[10]。なお、この機会を利用し、半田市の小栗家住宅において全国登文会設立総会が開催された[7]。
2021年(令和3年)、ドローンや360度カメラなどを用いて文化財を撮影しインターネット公開してきた事業が評価され、東海情報通信懇談会から表彰状を贈られた[1]。
2022年(令和4年)、文化庁の補助がない年度で当初は魅力紹介冊子の発行を断念していたが、2022年度公益信託 大成建設自然・歴史環境基金の助成[11]及びクラウドファンディングによって資金調達を行い[12]、2023年(令和5年)4月に『あいちのたてもの 明治村編』を発行した[13]。
保存活動対象
愛知県内の国登録有形文化財の建造物を対象とする。愛知県内の国登録有形文化財の登録件数は、2023年(令和5年)時点で551件あり、全国で6番目[14]。
おもな活動
概要
愛知登文会の独自事業として、総会、講座、シンポジウム、県外の事例視察、『愛知登文会ニュース』の発行などを行っている[8][2]。講座などの実施にあたってはヘリテージマネージャーなど建築の専門家の協力も受けている[2]。また、2016年(平成28年)から文化財の保存や活用に力を尽くしている所有者等の顕彰を行っている[8]。
また、設立当初より文化庁補助事業の採択を受け、2011~2016年度に「愛知県内登録有形文化財の保存活用にむけた文化財建造物所有者と県民の連携事業」に取組んだ[15]。2014年(平成26年)から「登録文化財魅力体験」を謳った特別公開事業「あいちのたてもの博覧会」を開催し、建物ごとにトレーディングカード「あいたてカード」を作成する[16][8]。歴史的な施設は町の景観に貢献する一方で、所有者にとっては維持の苦労が多い[17]。エアコンが設置しにくい、窓やドアにサッシを付けにくいなどの生活上の不便が多く、修繕費用や昔ながらの広い敷地が相続税で負担になることもある。特別公開は、市民や行政とこうした課題を共有しつつ、歴史的建造物を次世代に受け継いでいくための方策を地域全体で考えるきっかけとなることを期待して開催されている[17]。
2017年(平成29年)からは文化財ガイドの育成にも力を入れ、地域固有の文化遺産の現状や課題を共有する「登録文化財保存活用シンポジウム」を開催している[8]。また、2018年(平成30年)からは登録有形文化財の魅力を紹介する冊子刊行を開始し、2023年(令和5年)までに5冊が刊行された[8]。
あいちのたてもの博覧会
2014年(平成26年)から、愛知県内の登録有形文化財において、普段公開されていない建物の公開や専門家・所有者による建物解説を行っている[16]。当初は建物特別公開と称していたが、2019年度より、「あいちのたてもの博覧会」(略称:「あいたて博」)と名称を変更した[18]。
シンポジウム等
2012年(平成24年)、愛知県立大学サテライトキャンパスを会場に、第1回「文化財建造物の保存・活用講座」を開講[19]。岐阜県高山市の市史編さん委員を講師に招き、歴史的な外観を維持しつつ現代の生活に支障なく改修する事例などについて学ぶ全7回講座で、名古屋市東区の建中寺などに会場を移しつつ開講した[19]。
その後も建物を保存し適切に活用していくためのシンポジウムや、子ども向けの歴史的建造物学習会「文化財こどもプロジェクト」などを実施する[17][1]。この文化財こどもプロジェクトでは、大人のボランティアガイドに小学生が学び、グループ学習で文化財ガイドのコースなどについて検討したりした[20]。
2023年(令和5年)にはウィキペディアを情報発信に活用すべく、ウィキペディアタウンに類似した勉強会「ウィキペディア愛知登文会」を開催し、愛知県内の登録有形文化財の記事を充実させた[2]。
刊行物
愛知県登録文化財魅力紹介冊子「あいちのたてもの」
2018年(平成30年)から年1冊のペースで愛知県内の登録有形文化財の多様な魅力を紹介する冊子を作成している。A5版でページ数は各巻56ページ。執筆担当は建築史家の村瀬良太[21]。「文化財を通じて周辺の歴史や文化を深く知ってもらえれば、建物の価値が見直されることにつながる」等と執筆意図を明かし[22]、建築の専門用語はイラスト付きで説明するなど難しい言葉の使用を避けて構成する[23]。
内容は、各巻でテーマごとに県内の登録有形文化財建造物をイラストや写真も交えてわかりやすく紹介するほか、文化財建造物に関するコラムや、名古屋大学名誉教授の飯田喜四郎のインタビューを掲載する[23]。印刷製本したものは県内公共図書館に寄贈するほか、愛知登文会のホームページからダウンロードできる[24]。
『愛知登文会ニュース』
愛知登文会では広報誌『愛知登文会ニュース』を年3回程度発行しており、団体としての活動紹介、建物の紹介などを行っている[2]。愛知登文会のホームページからダウンロードできる[34]。
脚注
注釈
- ^ なお名古屋テレビ塔自体は、2005年(平成17年)7月12日に国の登録有形文化財に登録されたが、2022年(令和4年)12月12日に国の重要文化財に指定されたため、登録有形文化財の登録を抹消されている。
出展
関連項目
外部リンク
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