キ73 (航空機)キ73は、大日本帝国陸軍が計画した偵察実験機。実機の製作には至っていない。連合軍が与えたコードネームは「Steve」[1]。 概要1940年(昭和15年)、陸軍は同年の研究方針によって超高速偵察実験機キ73を開発することとし[2][3]、試作発注は三菱重工業に対して行うものとされた[3]。同年6月28日、陸軍航空本部は三菱に設計基礎要項案を提示した。要求は最大水平速度750 km/h以上、行動半径6,000 km + 余裕1時間、常用高度5,000 m以上というもので、エンジンはこの時点では三菱「ハ203」または「ハ211」双発が予定されていた[2]。 陸軍航空技術研究所(航技研)の当初の計画では、初号機は1942年(昭和17年)6月完成を目指すものとされていたが[2]、幾度か計画が変更され[2][3]、最終的に初号機完成は1944年(昭和19年)12月、審査完了は1945年(昭和20年)10月と予定された。試作機2機と増加試作機3機が製作されることになっていたが[3]、計画のみで終了している[2][3]。 機体は敵飛行場の航空偵察を想定した複座の高速機で、偵察用の航空撮影装備[2][3]のほかに無線機を有する[3]。反面、武装は要求されていない[2]。三菱が進めた計画では[2]、エンジンは「ハ203」液冷H型24気筒(離昇2,600 hp)を用いる予定で[2][3]、エンジン数は単発・双発どちらをとるか決定されないままに終わったとする資料と[3]、双発で決定されていたとする資料がある[2]。目標とされた最大速度は800 km/h以上で[3]、二重反転プロペラの使用も検討されていた[2][3]。 また、安藤成雄航技中佐を中心として[4][5]1941年(昭和16年)に航技研で作成された「飛行機の技術的要求条件の調査研究第六次(将来機基礎計画に関する研究)記事」に[4][6]第八案として盛り込まれた「試案高速機」のうち[6][7]、三菱「ハ211-II」空冷複列星型18気筒エンジン[8](離昇2,100 hp[9])4基を2基ずつ前後に向け串型に配して双発形式で装備し[6][10]、最大速度870 km/h(高度8,500 m時)を発揮する案も、キ73の案のひとつとして検討されていた[11]。 なお、キ73はハ203を装備する単発の[12]重戦闘機だったとする異説を示した資料もある他[12][13]、海外には「キ83の単発型」としてキ73のレジンキットを製作・販売している模型メーカーも存在する[14]。 脚注
参考文献
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