キョウチクトウ科 (キョウチクトウか、Apocynaceae , 夾竹桃科)は、真性双子葉植物 の科である。
高木 から草本 まで含み、つる性 のものも多い。大部分は熱帯 から亜熱帯 に分布し、特に熱帯雨林 に分布する高木が多いが、乾燥地に生育し茎が太くなった多肉植物 もある。温帯 にも主に多年草が分布する。猛毒性がある。
旧来(Brown 1810 など)のガガイモ科 Asclepiadaceae を含む。
特徴
多くは乳液 を含み、種々のアルカロイド または強心配糖体 を含むので有毒種 が多いが、一部は薬用に用いられる。葉は単葉で、対生またはらせん状に配列する。花は両性、放射相称で、大きく目立つものが多く、多くは総状または集散花序をなす。花弁は筒状に合生し、先は5裂するが縁が重なって回旋状になるものが多い。雄蕊は花筒の内側につく。子房上位で、果実は袋果や液果など。袋果を形成する種の種子には毛あるいは翼があり、風によって種子散布が行われるものが多いが、ニチニチソウのように単純な形態のものもある。液果を形成する種の果実は動物に食べられて種子散布が行われ、なかには極めて甘く、主として霊長類によって種子散布が行われるものもある。
利用
キョウチクトウ 、ニチニチソウ 、ツルニチニチソウ 、カリッサ、アラマンダ、プルメリア 、マンデヴィラ、テイカカズラ などは花が美しい(香りのよいものもある)ので園芸用に栽培される。カリッサ は果樹 としても利用される。
インドジャボク (蛇木)はレセルピン (降圧剤 )などのアルカロイドを含む。キョウチクトウ属、バシクルモン属、ミフクラギ属などに強心配糖体 を含む種があり(急性毒性が強い)、そのうちストロファントゥス 属に含まれるG-ストロファンチン(ウアバイン )は医薬品 としても用いられる。またニチニチソウは抗がん剤 (ビンクリスチン 、ビンブラスチン )の原料とされる。
バシクルモン属はアメリカや中国で繊維を利用した。そのうち同属のラフマ (羅布麻;北日本にも変種のバシクルモンがある)は中国の一部で「羅布麻茶」としても飲用される。
一部の種はかつてゴム 原料として用いられ、また急性毒性のある種は矢毒 として用いられた。
分類
5亜科に分類される[ 1] [ 2] [ 3] 。
ただし * を付記した2亜科はそれぞれ側系統 である[ 4] [ 2] 。あとの3亜科はそれぞれ単系統 である。
これらの系統関係を大まかに表すと、次のようになる。ただし、インドジャボク亜科とキョウチクトウ亜科はいくつかの枝を省略している。
古典的(Brown 1810 など)には、図のAS+Pの3亜科をガガイモ科 (広義)とする説が主流で[ 4] 、のち(Bullock 1956 など)には、ASの2亜科をガガイモ科(狭義)、Pの1亜科を Periplocaceae (科)とすることも多くなった[ 5] [ 2] 。しかし、いずれにせよ狭義の(残りの)キョウチクトウ科は側系統となり、しかも広義のガガイモ科 (AS+P) はそれ自体が多系統 である[ 4] [ 2] 。
インドジャボク亜科・キョウチクトウ亜科・ガガイモ亜科の3亜科は連 に分かれ、いくつかの大きな連は亜連に分かれる。以下のリストの連・亜連は、Rapini (2012)[ 2] による。連・亜連は全て記されているが、キョウチクトウ科には400属以上があり、ここに記された属はごく一部である。属の並びは任意(アルファベット順)である。
10連と所属不明の数属からなる。側系統 であり、APSA(他の4亜科からなる系統)を内包する。
キョウチクトウ科
Aspidospermeae
Alstonieae
Tabernaemontanae
Tabernaemontaninae
Ambeliinae
インドソケイ属 (プルメリア)の1種 Plumeria alba
ツルニチニチソウ
アリアケカズラ属 (アラマンダ)の1種 Allamanda cathartica
Aspidospermeae (Aspidospermateae ) (連)
Alstonieae (連)
Vinceae (連)
Willughbeieae (Willughbeeae ) (連)
Tabernaemontanae (連)
Tabernaemontaninae (亜連)
Ambeliinae (亜連)
Manothrix
Melodineae (連)
チョウジソウ属 Amsonia - チョウジソウ
Hunterieae (連)
Alyxieae (連)
Plumerieae (連)
Carisseae (連)
APSA
インドジャボク亜科以外の4亜科からなる単系統は、APSAと呼ばれる[ 2] 。
8連と所属不明の数属からなる。側系統 であり、APSA内の他の3亜科(広義のガガイモ科 の3亜科、図のAS+P)を内包する。
APSA
Wrightieae
Nerieae
Malouetieae
APSA core group
Apocyneae (Asian clade )
Rhabdadenia
New World clade
Mesechiteae
Odontadenieae
Echiteae
Baisseeae (African clade )
(AS)
(P)
Periplocoideae
Wrightieae (連)
Nerieae (連)
Malouetieae (連)
Apocyneae (Asian clade ) (連)
Rhabdadenia
Mesechiteae (連)
Odontadenieae (連)
Echiteae (連)
Baisseeae (African clade ) (連)
小さな亜科であり連は設けられない。単系統 。
4連からなる。単系統 。
ガガイモ亜科
Fockeeae
Asclepiadeae
? ガガイモ属 Metaplexis
Astephaninae
ACT
Asclepiadinae
Tylophorineae
Cynanchinae
MOG
Fockeeae (連)
Ceropegieae (連)
Marsdenieae (連)
Asclepiadeae (連)
小さな亜科であり連は設けられない。単系統 。
出典
^ Rapini, Alessandro; Goyder, David J.; Chase, Mark W. (2005), “Phylogenetics of the New World Subtribes of Asclepiadeae (Apocynaceae: Asclepiadoideae): Metastelmatinae, Oxypetalinae, and Gonolobinae
Sigrid Liede-Schumann”, Systematic Botany 30 (1): 184-195
^ a b c d e f Rapini, Alessandro (2012), “Taxonomy "under construction": advances in the systematics of Apocynaceae, with emphasis on the Brazilian Asclepiadoideae” , Rodriguésia 63 (1), doi :10.1590/S2175-78602012000100007 , http://www.scielo.br/scielo.php?pid=S2175-78602012000100007&script=sci_arttext 2016年6月26日 閲覧。
^ GENTIANALES Lindley Main Tree, Synapomorphies
^ a b c Mary Endress (2004). “Apocynaceae: Brown and now” (PDF). Telopea (National Herbarium of New South Wales, Royal Botanic Gardens & Domain Trust) 10 (2): 525-541. https://www.researchgate.net/profile/Mary_Endress/publication/238606077_Apocynaceae_Brown_and_now/links/0a85e5315ba1d640c8000000.pdf 2016年6月26日 閲覧。 .
^ Sreenath, K.P.; Aramakrishna, T.M; Babu, T.P (2012), “Perspective on polinial apparatus & carriers of Asclepiadaceae sensu lato ” , G.J.B.B. 1 (1): 45–53, http://scienceandnature.org/GJBB_Vol1(1)2012/GJBB-V1(1)2012-9.pdf
外部リンク