この項目では、TDKの社名を持つ企業について説明しています。それ以外のTDKについては「TDK (曖昧さ回避) 」をご覧ください。
TDK株式会社 (ティーディーケイ、英 : TDK Corporation )は、日本 の大手電子部品メーカーである。日経平均株価 の構成銘柄の一つ[ 2] 。
概要
東京工業大学 の加藤与五郎 、武井武 の両博士が発明したソフトフェライト の工業化を目的とするベンチャー企業 として齋藤憲三 によって1935年に設立された。フェライトなどの電子部品 に加え、過去にはビデオテープ 、アナログオーディオテープ 、デジタルオーディオテープ 、フロッピーディスク などの各種記録メディア (磁気 、光など)も製造販売していたが[ 3] 、現在ではフェライトやコンデンサを始めとする電子材料 ・電子部品・磁気ヘッド・二次電池 などを製造販売する大手メーカーである。
1980年代以降、記録メディア 、磁気ヘッド、電子部品、リチウムイオン二次電池 と、積極的に主力事業のポートフォリオを入れ替えており、海外を含むM&A を繰り返して事業を成長させている。経営のグローバル化も進んでおり、海外売上比率は9割を超え、海外株主比率も4割に達する。
一般消費者の間では各種記録メディアのブランドの印象が強かったが、2007年にTDKは記録メディア販売事業をイメーション (現:韓 オージン)に譲渡した。同社はTDK Life on Record ブランドで記録メディアやヘッドフォンなどを販売していたが、2015年12月末を以ってイメーション社も記録メディア事業から完全撤退した[ 4] 。
社是は「創造によって文化、産業に貢献する 」、社訓は「夢 勇気 信頼 」。
事業分野
記録デバイス
ハードディスクドライブ (HDD)用のヘッド部品の製造で最大手である。2008年にアルプス電気(現・アルプスアルパイン )が同分野から撤退したために、HDDメーカー以外でHDD用ヘッドを製造する唯一のメーカーとなり、OEM市場でのシェアは30%を超えている。その他、HDD用サスペンション、精密加工部品等を製造・販売する。
電子部品
フェライトや誘電体、圧電体といった電子材料をベースとした電子部品全般で世界的に高いシェアを持つ。車載用の積層セラミックコンデンサ では村田製作所 に次いで第2位のシェア。インダクタ 、トランス 、高周波積層フィルタ等も高いシェアを誇る。その他、EMC対策部品、アルミ電解コンデンサ、フィルムコンデンサ、各種センサ 、アクチュエータ 等を製造・販売する。
電子材料
フェライトの他、磁石(フェライト磁石 、希土類磁石 )、電磁シールドシート等を製造・販売する。
その他産業用製品
FA製品(半導体製造装置、チップマウンタ等)、電波暗室 等を製造・販売する。
民生用製品
磁気ネックレス「EXNAS」【管理医療機器】
婦人用電子体温計
かつて参入していた事業
PHS端末事業
2001年 10月にDDIポケット(現:ソフトバンク )向けにCFデータカードタイプのPHS 端末RH2000P を販売した[ 5] 。それ以外の機種は製造していない。
作っていた端末
RH2000P
2001年10月4日発売、幅73mm×高さ42.8mm×奥行き5mm、19g
歯科用材料
電子材料用セラミックスの製造で培った技術を生かし、ライオン株式会社 と共同で歯槽骨 補填材「アクトセラムK」を製造していた。
その後、生体親和性 の高いディオプサイト系セラミックスを開発、デンタルインプラント として実用化を目指したが、バブル崩壊 後の経営環境悪化に伴い、長期の開発期間を必要とする医療分野への本格参入を断念した。
パソコンソフト
記録メディア
TDKのカセットテープ (初代MA-R C-90)
フェライトを素にフィリップス の考案した音楽テープ規格「コンパクトカセット 」(いわゆるカセットテープ)を黎明期 に日本で競合メーカーの日立マクセル(現:マクセル )やソニー (初代法人、現:ソニーグループ )と共に製品化したことで知られる。かつて、松下電器産業(現:パナソニックホールディングス )[ 注釈 1] や日本楽器製造(現:ヤマハ 、ただしオープンリール風デザインの「MUSIC XX」シリーズは例外的に磁気テープ部分のみ日立マクセルのOEM)東芝 (家電製品事業部、現:東芝ライフスタイル )、トリオ(現:JVCケンウッド )、ナカミチ 、ラックスマン にOEM供給していた。またミュージックカセットテープとしても各レコード会社 に供給が盛んであった。一部のミュージックテープにはTDK SAのハイポジション(タイプII・クローム)テープが採用されることがあった。
光記録メディアでは信号記録面保護技術「DURABIS」を採用した記録型CD、DVDメディア製品「UVガード超硬(スーパーハードコート)」「超硬」シリーズで知られていた。メディアメーカーとしては唯一のBlu-ray Disc Association 幹事企業であり、「DURABIS」の採用によりBlu-ray Discのベアディスク化を可能にした。
また、レーベル面に保護層を加えた「タフネスコート」シリーズで知られるCD-R/CD-RWも販売し、記録面の色から「青タフ」や「緑タフ」として呼ばれていた。
製造は、千曲川の工場に加え、太陽誘電からOEM供給を受けていたが、2004年より、連結子会社のTDK Recording Media Europe S.A(ルクセンブルク)での製造も開始した。
これら記録メディア事業の大部分は、採算性の悪化から2007年4月にアメリカ のイメーション 社(現:韓 オージン 社)に譲渡。唯一、業務用データストレージテープの製造、販売を子会社のメディアテック (過去においてコニカ・ミノルタのメディア事業を承継)を通じて行っていたが、2013年10月に事業を休止。2014年3月には子会社の清算を行い、完全撤退した[ 6] (その後、イメーションの日本法人も2019年11月19日付を以って法人格が完全清算された)。製造技術はアラブ首長国連邦のFalcon Technologies Internationalが技術継承している。
その他
アクティブスピーカー - イメーションにて2015年12月まで販売は継続していた。ただし、英国New Transducers Limited社のSurfaceSound技術を用いたフラットパネルスピーカー製品群は先に終息している。
セラミックヒーター - 赤外線 式電気ストーブ よりも安全と謳っていた。
スチーム式加湿器 - 1977年に加湿器事業に参入し、1999年1月のリコール 届出に伴い撤退[ 7] 、お詫びCM に発展。
PCカード、ネットワークカード 、モデムカード、コンパクトフラッシュメモリカード 、コンボカード
CD-Rライター
BS・CSアンテナ
ポータブルCD/MP3プレーヤー「MOJO」
貼付型磁気治療器「エポレック」【管理医療機器】 - 第一製薬(後の第一三共ヘルスケア )が販売
磁気ネックレス「エポール」【管理医療機器】
トイレ脱臭器「早期爽快」
コンシューマー向けノイズフィルタ各種
沿革
旧TDK本社屋(2010年)
社名
創業時の社名「東京電気化学工業 」は、フェライトの発明者である加藤与五郎と武井武 が所属していた東京 工業大学電気化学 科にちなんで名づけられた。
TDK(T okyo D enki K agaku)という略称は、戦時中の英語の規制時期を除き、創業直後から商品カタログ等で用いられ続けている[ 注釈 7] 。1948年 以降は、社名ロゴマーク(CI)にもTDKの文字(横長の楕円の中に「TDK」の文字が入る)を用いるようになった。商標権問題が発生したため1961年 - 1964年 の期間は「TDK-E」(CIは横長の楕円の中に「TDK-E」の文字が入る)に変更。1959年 には英文社名を「TDK ELECTRONICS CO., LTD 」とした。ただし日本語社名は旧称のままとしていた。
1987年9月から1997年8月まで日本限定で使用された「TDK! 」ロゴ
1967年 1月1日に、亀倉雄策 のデザインによる現在のコーポレートロゴマークの原型となるコーポレートロゴマークへの変更を経て、1981年 10月にコーポレートロゴマークの一つである「TDK」の書体が若干細身のものとなり、現在に至っている[1] 。1987年 9月から、ごく一部の音楽用カセットテープ(「CDing」、「SuperCDing」、「DJ」、「CV」、「BEAM」シリーズ等)において、カジュアルユーザー 向けのブランドロゴマークとして「TDK! 」というコーポレートロゴマークとは別のロゴマークを使用していたが、1997年 8月までに使用終了となり、以降は元のマークに戻った。なお、「TDK! 」ロゴは国外向け製品のほか、ビデオテープとマイクロカセット 、DAT 、DCC 、MD においては導入当初から使用されることはなかった。
1983年 に正式社名を「TDK株式会社」(英文社名はTDK CORPORATION)に変更。日本初のラテン文字 表記社名の企業となった。なお登記上の表記(株券・社債の表記も含む)は2002年頃まで「ティーディーケイ株式会社」となっていたが、これは当時法務省 がアルファベット による商号 登録を認めなかったためで、2002年11月の法改正により商号にアルファベットの使用が可能になったのに伴い、現在は登記上の社名も「TDK株式会社」に変更されている[ 8] 。
なお、2021年5月より就活生・若者向け企業ブランドキャンペーンを展開しているが、キャンペーンコピーは社名にかけて「尖った (T)大胆さ、 (D)くれよ。 (K)」となっている[ 27] 。
歴代社長
なお代表取締役会長は山崎貞一、素野福次郎、大歳寛の3人が務めた。大歳が1992年11月25日に死去して以降は会長職を設けていなかったが、2006年6月29日に澤部肇が14年ぶりに会長に就任した。
主な製造・研究拠点
TDK本荘工場
関係会社
国内製造子会社
その他の国内子会社
TDKラムダ 株式会社
TDKデザイン株式会社
TDKサービス株式会社
TDKテクノ株式会社
TDKオートモーティブテクノロジーズ株式会社
ソリッドギア株式会社
主な海外子会社
関連会社
かつての関係会社
TDKマーケティング株式会社 (2001年4月1日に記録メディア営業部門を分社して事業開始、2007年8月1日米Imation Corp.に譲渡。2008年1月1日に商号がイメーションに統一された(この時点では同名の2社が併存していたものと考えられる)。2008年4月1日イメーション株式会社(旧来からの方)に吸収合併された。)
SILICON SYSTEMS Inc.(アメリカの半導体メーカー。1989年に買収、1996年にテキサス・インスツルメンツ へ売却。)
TDKコア株式会社(2007年11月1日にコロムビアミュージックエンタテインメント(現:日本コロムビア) へ売却。後にクリエイティヴ・コアを経て、現:麻布リース 。)
TDKマイクロディバイス株式会社(2012年4月1日に双葉電子工業 へ売却。現双葉モバイルディスプレイ。)
TDK由利本荘 株式会社(本社本荘工場・矢島工場)
TDK-MCC 株式会社(本社秋田工場・北上工場・本荘工場)
TDK羽後 株式会社(本社大内工場・金浦工場・岩城工場)
TDK庄内 株式会社(本社鶴岡工場・酒田工場・鶴岡東工場・飯田工場)- 2022年3月31日付を以ってTDK秋田に吸収される形で法人消滅。
TDK甲府株式会社 - 2022年3月31日付を以ってTDK秋田に吸収される形で法人消滅。
Imation Corporation
トッパンインフォメディア株式会社 (旧・トッパンTDKレーベル株式会社。2019年4月1日より凸版印刷 株式会社の100%出資子会社となった。)
諸問題
関連項目
1990年のジョージ・ガービン
広告関連
脚注
注釈
^ ただしオングロームテープは自社が独自で磁性体を開発したが、実際はTDKへ製造委託をしていた。また、2012年から2015年までに製造・出荷・販売されていた「Panasonic PX 」はマクセルの「UR」 のOEMだった。
^ 製品名は「NATIONAL RT-A」。
^ 後述する通り、TDKは松下電器産業と記録メディア関連に限り、業務提携を結ぶこととなるが、2007年 (平成19年)までに業務提携を解消した。
^ その後、1968年9月の全面改良に伴い、商品名を「TDK CASSETTE 」(廉価仕様となる紙製パッケージ梱包版は「TDK CASSETTE〈F〉」)に改称。
^ 日本では同年 10月発売開始。また、その廉価仕様となる紙製パッケージ梱包版の「SD〈F〉」は1970年 (昭和45年)3月より発売開始。
^ 後に「MA-XG 」に改称。また、同日 には競合メーカーのソニー (初代法人、現・ソニーグループ )もメタルポジション用(IEC TYPE IV)コンパクトカセットテープ「METALLIC」を発売している。
^ また、1948年から1966年までの間はTDKのほかに東電化 (とうでんか、東 京電 気化 学)という略称も併用して用いられた。
出典
外部リンク
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