『GUITARHYTHM IV 』(ギタリズム・フォー)は、日本のミュージシャン である布袋寅泰 の4枚目のアルバムである。
背景
オリジナルのスタジオアルバム では4作目。このアルバムをもって『GUITARHYTHM 』名義のプロジェクトは一旦終了した。
1993年 7月に「ロンドン に行ってくる。今回はレコーディングの予定はまったくない。曲が出来てもデモテープ は作らない。曲が出来るまでは戻ってくる気はない」と宣言し単身渡英。ノッティングヒル にフラット を借りて生活する中、アコースティックギター 1本で全楽曲のデモを完成させた。この時期に布袋はスペイン やアムステルダム 、ジャマイカ をはじめ様々な土地への旅も経験しており、後のインタビューで「作ろうと思って作った曲は1曲もない。ロンドンでの生活や旅の経験がなければ出来なかったものばかりだから」と語っている[ 1] 。
ある程度の方向性を決めてから楽曲作りを始めたこれまでの作品とは異なり、「ノーコンセプト 」として始動したアルバムである。GUITARHYTHM本来のコンセプトである「ギターとコンピューターの融合」から離れ、アルバム全体がバンドサウンド を主体 として構築されている。またこれまでのソロ・キャリアでは意図的に抑えてきたメロディアスなサウンドを、本作ではある程度取り入れている。インタビュー上では「BOØWY 然りCOMPLEX 然り、基本的にメロディ が湧いてくるタイプなんだけど、サウンド・コラージュというコンセプト がまずあったから『GUITARHYTHM III 』まではそういうのを殺してきた部分もあった。今回は言葉とメロディ、歌が流れていくようにって思えたんで、素直にメロディも昇華してると思う」とされている[ 2] 。
現在のところ、全曲布袋が作詞を手掛けた唯一のアルバムである。「今回は詞と曲を一緒に書きたいと思っていた。書きたいことがけっこうあったし、第三者に依頼する以前にデモの段階で歌詞が出てきた」と布袋は語っている[ 1] 。
本作の完成後のインタビューで布袋は「新たな布袋寅泰の予感 」を告げており[ 2] 、翌年には『GUITARHYTHM プロジェクト』に幕を下ろし、さらなる新たなサウンドへと挑んでいくことになる。
録音
レコーディングにはピーター・ガブリエル が所有するリアルワールド・スタジオ (英語版 ) が使用された。
前述の通りデモテープは一切制作させていない。『GUITARHYTHM ACTIVE FLY INTO YOUR DREAM 』からのバンドメンバーである成田忍 、浅田孟 、小森茂生 、椎野恭一 をロンドンへ呼び寄せ、彼らの前でデモを演奏した後、アレンジ に取り掛かり、形が決まったらメンバー全員でスタジオに入り、一発録りに近い感じでレコーディングといった手法で制作は進められた。レコーディング時にはスタジオの照明を落とし、蝋燭だけを灯して演奏したという[ 2] 。
本作で布袋はリズムギタリスト に徹しており、「リズムパートとソロは布袋、リードパート は成田」という役割分担が成されている[ 2] 。
また布袋は、ロンドンでの生活中にフェンダー・テレキャスター・カスタム とマッチレス の「DC-30」を手に入れており、レコーディングとツアーのメイン機材として使用された。「DC-30」はブライアン・メイ が使用していた物を譲り受けており、以後長らくメイン・アンプのひとつとして定着していく。
BOØWY やCOMPLEX を始め、ソロ作品でも前作『GUITARHYTHM III 』まで布袋のアルバムに携わってきたエンジニア のマイケル・ツィマリングが本作には参加しておらず、クイーン やデヴィッド・ボウイ などを手掛けたデイヴィッド・リチャーズ (英語版 ) がミックス を担当している。
リリース
1994年 6月1日 に東芝EMI のイーストワールドレーベルよりコンパクトディスク でリリースされた。
予約生産限定盤としてLP盤も8月24日にリリースされており、前作と同様に曲順がCD盤とは異なっている他、ボーナストラックとして1曲追加されている。
後に収録曲のうち6曲のミュージック・ビデオ を収録したビデオ『SERIOUS CLIPS』(1994年)もリリースされた。
アートワーク
ジャケットワークはデヴィッド・ボウイ のアルバム『ジギー・スターダスト 』にインスパイア されたもの。後ろ向きで振り返っている布袋と仁王立ちする布袋は「これまでの布袋寅泰」と「これからの布袋寅泰」を表現している。また濡れた地面に写っている二人の布袋の姿が「IV」の形になっている。
撮影は前作 と同じく久保木浚介が担当。
撮影は晴れた日の夜に行われ、濡れた地面は水を撒いたものである。2人の布袋の後ろに見える白煙はスモークマシンを焚いており、使用中に近所の住人が「何だ?何だ?」と心配して出てきたという。また、右上の「GUITARHYTHM IV」のネオンはCGで作成したものである[ 3] 。
ツアー
本作を受けての全国ライブツアーは『GUITARHYTHM SERIOUS? TOUR 』と題し、1994年6月10日 の渋谷公会堂 を皮切りに、27都市44公演を行っている。全公演がホール 規模の会場にて行われた。
また、追加公演として『GUITARHYTHM SERIOUS! CLIMAX ARENA TOUR 』と題し、11月21日 の大阪城ホール を皮切りに5都市9公演が行われている。こちらは全公演がアリーナ 規模の会場で行われた。このツアーから、最終日となった12月19日 の日本武道館 公演がライブ・ビデオ『GUITARHYTHM SERIOUS! CLIMAX』(1995年)としてリリースされた。
両ツアー共に、バンドメンバーは前ツアーと同じく成田忍 、浅田孟 、椎野恭一 、小森茂生 が務めた。
収録曲
CD盤
全作詞: 布袋寅泰。 # タイトル 作詞 作曲 編曲 時間 1. 「TIME HAS COME 」 布袋寅泰 Simon Hale Simon Hale 1:54 2. 「SERIOUS? 」 布袋寅泰 布袋寅泰 布袋寅泰 3:50 3. 「SURRENDER 」 布袋寅泰 布袋寅泰 布袋寅泰 6:10 4. 「薔薇と雨 」 布袋寅泰 布袋寅泰 布袋寅泰・Simon Hale 3:31 5. 「気まぐれ天使 」 布袋寅泰 布袋寅泰 布袋寅泰 5:29 6. 「INTERMISSION 」 布袋寅泰 布袋寅泰 布袋寅泰 3:05 7. 「SIREN 」 布袋寅泰 布袋寅泰 布袋寅泰 5:08 8. 「OUTSIDER 」 布袋寅泰 布袋寅泰 布袋寅泰 3:51 9. 「さらば青春の光 」 布袋寅泰 布袋寅泰 布袋寅泰 5:04 10. 「ESCAPE 」 布袋寅泰 布袋寅泰 布袋寅泰 4:25 11. 「RUN BABY RUN 」 布袋寅泰 布袋寅泰 布袋寅泰 6:39 12. 「GUITARHYTHM FOREVER 」 布袋寅泰 布袋寅泰 布袋寅泰 2:52 合計時間:
51:59
LP盤
A面 全作詞: 布袋寅泰。 # タイトル 作詞 作曲 編曲 時間 1. 「TIME HAS COME 」 - Simon Hale Simon Hale 1:54 2. 「SERIOUS? 」 布袋寅泰 布袋寅泰 布袋寅泰 3:50 3. 「RUN BABY RUN 」 布袋寅泰 布袋寅泰 布袋寅泰 6:39 4. 「SURRENDER 」 布袋寅泰 布袋寅泰 布袋寅泰 6:10 5. 「気まぐれ天使 」 布袋寅泰 布袋寅泰 布袋寅泰 5:29 6. 「薔薇と雨 」 布袋寅泰 布袋寅泰 布袋寅泰・Simon Hale 3:31
B面 # タイトル 作詞 作曲 編曲 時間 7. 「INTERMISSION 」 布袋寅泰 布袋寅泰 布袋寅泰 3:05 8. 「SIREN 」 布袋寅泰 布袋寅泰 布袋寅泰 5:08 9. 「OUTSIDER 」 布袋寅泰 布袋寅泰 布袋寅泰 3:51 10. 「CRYING IN THE CHAPEL 」 ARTHUR GLENN ARTHUR GLENN 布袋寅泰 3:34 11. 「さらば青春の光 」 布袋寅泰 布袋寅泰 布袋寅泰 5:04 12. 「ESCAPE 」 布袋寅泰 布袋寅泰 布袋寅泰 4:25 13. 「GUITARHYTHM FOREVER 」 - 布袋寅泰 布袋寅泰 2:52
曲解説
TIME HAS COME
楽曲自体は布袋がピアノ で作曲したものだが、クレジット上の作曲者はオーケストラ・アレンジメント を手掛けたサイモン・ヘイル となっている。布袋曰く「ピアノのみの世界をこれだけ大きくしたのはアレンジを超えたものだと思って、彼のクレジットにした」とのこと[ 2] 。
後にビョーク やオアシス 、ジャミロクワイ 、スーパーグラス など多くのミュージシャンのオーケストラ・アレンジメントを手掛けることになるヘイルだが、この楽曲がフル・オーケストラの初仕事だったとのことである[ 2] 。ヘイルは後の布袋作品にも多数関わっており、2007年 に行われた『MTV UNPLUGGED 布袋寅泰 supported by music.jp 』にはピアニストとして、2012年の『GREATEST SUPER LIVE GUITAR×SYMPHONY HOTEI with THE ORCHESTRA World Premiere』にも指揮者及びピアニストとして参加している。なお後者のライブで、本楽曲が1曲目に演奏された。
SERIOUS?
デモの時点では『POSITIVE?』という仮タイトルだった。[ 4]
PVには布袋以外のバンドメンバーも全員出演している。
SURRENDER
7枚目のシングル曲。アルバムバージョンで収録されており、シングルとはコーラス ・アレンジ等が異なる。
中盤のギターソロは2つのコード のみを駆使して構成されている。布袋曰く「逆転の発想で弾かない動かないギターソロ、一音だけのギターソロというのを演ってみたかった。その一音がリズムと共に高揚していって羽ばたいていくような。自分の好きな音を乗せていったらこういう展開になった[ 5] 」。
薔薇と雨
本作の中でも布袋が特に思い入れの強い楽曲と語っている[ 2] 。
後に8枚目のシングルとしてリリースされた。詳細は「薔薇と雨 」の項を参照。
気まぐれ天使
INTERMISSION
ストリングスのイントロから始まるバラードナンバー。
歌詞はスペイン のマラガ県 を旅していた際に出てきたもの[ 2] 。「地球の縁に腰かけて 生命がけの暇つぶし」の一節は、前年上梓した著書「よい夢を、おやすみ。」の帯に記載されている。
SIREN
花田裕之 に提供した楽曲のセルフカバー。
OUTSIDER
さらば青春の光
テレビドラマ『課長さんの厄年 』(TBS系列 )の主題歌になった、6枚目のシングル曲。アルバムバージョンで収録。
「さらば青春の光 」の項も参照。
ESCAPE
7枚目のシングル「サレンダー 」のカップリング曲 。アルバムバージョンで収録。
突如思い立ち、夜行列車でバース まで旅に出て現地のホテルで作った楽曲である[ 1] 。
PVはスペインで撮影された。
ベストアルバム『B-SIDE RENDEZ-VOUS 』に新録の「ESCAPE '99」が収録されている。
RUN BABY RUN
GUITARHYTHM FOREVER
スタッフ・クレジット
参加ミュージシャン
スタッフ
布袋寅泰 - プロデューサー
DAVID RICHARDS (英語版 ) - ミックス・エンジニア
JOHN "TEDDY BEAR" BROUGH - レコーディング・エンジニア (オーケストラ・トラックを除く)
JOHN GALLEN - レコーディング・エンジニア(オーケストラ・トラックのみ)
今井邦彦 - レコーディング・エンジニア(「ESCAPE」のみ)
JAMES CADSKY (REAL WORLD STUDIO) - アシスタント・エンジニア
ASHLEY ALEXANDER (ABBEY ROAD STUDIO) - アシスタント・エンジニア
JAKE DAVIES (WHITFIELD STUDIO) - アシスタント・エンジニア
DOMINIK TARQUA (MOUNTAIN STUDIO) - アシスタント・エンジニア
KEVIN METCALFE - マスタリング・エンジニア
関口“ワンワン”みつのぶ (TOY BOX PUBLISHERS) - A&R ディレクター,アーティスト・マネージャー
広瀬哲(東芝EMI) - A&Rディレクター
近藤雅信(東芝EMI) - A&Rスーパーバイザー
HIDEHITO "VERVE" SATAKE - 音楽機材
SHOHEI KODAKE (LEO MUSIC) - 音楽機材
LENNY ZAKATEK - プロダクション・マネージメント(ロンドン)
JULIAN COPPING - プロダクション・マネージメント(ロンドン)
LEON MARC (IRc2 LONDON Ltd) - プロダクション・マネージメント(ロンドン)
KAZUMI TAKAHASHI - プロダクション・アシスト
ETSUKO CHIBA - プロダクション・アシスト
MIKA SUGIMOTO - プロダクション・アシスト
MAKIKO AOYAMA (TOY BOX PUBLISHERS) - プロダクション・アシスト
TSUYOSHI NAKADA - 広告スタッフ
CHIAKI KUSAMA(IRc2コーポレーション) - 広告スタッフ
MASA YAMADA - 広告スタッフ
HISANORI KATO - 広告スタッフ
MOTO KITSUKAWA - 広告スタッフ
RIE TAIRA(東芝EMI) - 広告スタッフ
永石勝 - アート・ディレクター
久保木俊介 - 写真撮影
HIROYUKI YABE - コンピュータグラフィックス
AKIRA MAEDA - 写真撮影助手
CHIEKO MATSUMOTO - スタイリスト
KOJI YASUDA (showboat inc.) - 衣装
川野晶子 - ヘアー、メイク・アップ
TOSHIAKI UESUGI - デザイン
IRc2コーポレーション - マネージメント
糟谷銑司 (TOY BOX PUBLISHERS) - エグゼクティブ・プロデューサー
石坂敬一 (東芝EMI) - エグゼクティブ・プロデューサー
リリース履歴
脚注