A-train (日立製作所)A-train(エートレイン)は、日立製作所が開発した鉄道車両の製造技術(次世代アルミニウム合金車両システム)。“A-train”に用いられた「A」は、Advanced・Amenity・Ability・Aluminum を統合的に表したものとしている[1]。 概要日立製作所が「環境負荷の低減」「ライフサイクルコストの低減」「今後の熟練者就業人口の減少への対応」をコンセプトに鉄道車両の生産方式を抜本的に見直したもので[1]、アルミニウム合金のオールダブルスキン構体および自立型モジュール艤装を核とした車体トータルシステムとして構築したものである。従来の鉄道車両にはないシンプルで簡素な構造となったため、数万点あった部品点数が百数点まで削減された。 具体的には、以下のような特色を持つ。
A-trainの採用例(日本)
A-trainの採用例(日本国外)A-trainの日本国外向け製品には種類によって4種類のシリーズが設けられている[7][8]。
また、モノレールに関してもA-trainから派生した車両が製造されており、重慶軌道交通(中国・重慶市)とセントーサ・エクスプレス(シンガポール)で運行されている。 一覧
イギリスイギリスは日立製作所の鉄道部門にとって日本以外で初めて大規模受注をした国である。 日立製作所は2005年にCTRL(ハイ・スピード1)国内列車用として最高速度225km/hで運転可能な395形6両編成28本(のちに1本追加)を受注した[9]。これらは2012年ロンドンオリンピックにちなんで運行会社のサウスイースタンによって「ジャベリン(槍投げ)」と名付けられ、各編成にはメダリストの名前が付けられた[10]。 2012年にはグレート・ウェスタン本線・イースト・コースト本線のインターシティ125・225置き換え計画であるインターシティ・エクスプレス計画の受注に成功した。395形に似たデザインで、当初は日立スーパー・エクスプレスと呼ばれていた。バイモード車両の800形と電車の801形の2種類があり、電化の拡大が想定されたため800形から801形への改造が可能なように作られている[11]。 なお、この計画に際しては、製造がイギリス国内で行われない(最終組み立てのみ)ことから、対案であった同じ外国の会社であっても国内で製造が行われることになっていたボンバルディア案を推す声があり、特にボンバルディアの工場(英語版)があった地域を中心に発注の撤回を求める運動が行われた[12][13]。これに加え、車両重量の増加(運輸省の要求仕様が不可能であるとの声もあった)や価格・種類配分の交渉の難航、金融機関による出資が進まなかったことなどから2010年には計画について調査が行われるなどしている[14]。 2015年4月からのスコットレールの運行権を獲得したアベリオ・スコットレールは、2015年3月に日立製作所に近郊車両(AT-200)385形3両編成46本4両編成24本を発注した。 同じく2015年3月には、インターシティ・エクスプレス計画で800形・801形(後者は2016年に800形に変更)の導入が決まっていたグレート・ウェスタン・レールウェイ(当時の名称はファースト・グレート・ウェスタン)が800形同様のバイモード車両である802形を5両編成22本・9両編成7本発注した。800形との差異はデヴォン・コーンウォールの勾配区間に対応するために出力の増強が図られていることと燃料タンクが大型化されていることである。バイモード車両であることからロンドン・パディントン駅からニューベリー駅(英語版駅・日本語版街)までの電化区間では架線からの集電によって走行する[15]。当初の契約は合計29本であったが、9両編成7本がのちに追加された。グレート・ウェスタン・レールウェイでの営業運転開始は800形が2017年10月、802形が2018年8月であった。グレート・ウェスタン・レールウェイのAT-300は800形、802形ともに「インターシティ・エクスプレス・トレインズ(IET)」という愛称が与えられている[16][17]。 800形電車と385形電車において2021年4月から5月にかけて台車周辺に亀裂が見つかった[18]。4月に台車の安定増幅装置ヨー・ダンパーに深さ最大15ミリの亀裂が発見されたのに続き、5月には車両本体を持ち上げるジャッキングポイント溶接部に深刻な亀裂が見つかった[19]。 イースト・コースト本線での運行事業者であるロンドン・ノース・イースタン・レールウェイでは、誘導障害が発覚したため運行開始が遅れ、800形は2019年5月、801形は同年9月に営業運転を開始している。グレート・ウェスタン・レールウェイとは異なり、ロンドン・ノース・イースタン・レールウェイのAT-300は東の和名にちなみ、「あずま」と名付けられている[20] イギリスではこれらの他にもAT-300が発注されており、トランスペナイン・エクスプレス(愛称「ノヴァ1」)、ハル・トレインズ(愛称「パラゴン」)それぞれの802形が現在運行を開始している。これらに加え、2021年にはイースト・コースト・トレインズ(803形)、2022年にはイースト・ミッドランズ・レールウェイ(810形)、アヴァンティ・ウェスト・コースト(805形・807形)で新たに運行を開始することになっている[21][22]。
台湾イギリスからの最初の受注と同じころ、台湾鉄路管理局からJR九州885系電車をベースとしたTEMU1000型8両編成6本を受注した[23]。納入は2006年に開始され、翌2007年3月に試乗会を行い同年5月に営業運転を開始した[24][25]。 韓国2007年に韓国鉄道公社は優等列車用の電車である200000系(幹線電気動車(英語: Trunk-line Electric Car(TEC))とも)4両編成8本を日立製作所に発注した。車体・台車・駆動装置などは日本で製造されたが、部品の一部は韓国製のものを使用しているほか、最終組み立ては慶尚南道昌原市のSLS重工業にて行われた。京釜線・長項線のソウル~新昌間などで「ヌリロ」という愛称/種別で運行されている。最高速度は150km/hである。 タイバンコクのSRTダークレッドラインでは日立製作所笠戸事業所のA-trainを採用した1000系電車6両15編成の計90両を発注しており、2019年には第一陣が納入された。「赤いネズミ」の愛称がつけられており、4~6両編成で運行される。
脚注注釈
出典
参考文献
関連項目
外部リンク
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