2013年のアメリカンリーグワイルドカードゲーム
2013年の野球において、メジャーリーグベースボール(MLB)のポストシーズンは10月1日に開幕した。アメリカンリーグの第2回ワイルドカードゲーム(英語: 2nd American League Wild Card Game)は翌2日、アメリカ合衆国オハイオ州クリーブランドのプログレッシブ・フィールドで行われ、タンパベイ・レイズがクリーブランド・インディアンスを4-0で下した。この結果、レイズが地区シリーズへ進出することになった。 両チームの2013年→「2013年のメジャーリーグベースボール」も参照
インディアンスは前年のシーズンを68勝94敗で終えたあと、新監督にテリー・フランコーナを招聘し、さらにニック・スウィッシャーやマイケル・ボーンら大物FA選手を獲得する補強も行った。2013年は、6月上旬に8連敗を喫して勝率が5割を切ったこともあったが、その後は持ち直してデトロイト・タイガースと地区優勝を争った。前半戦終了時点では首位タイガースと1.5ゲーム差の2位につけ、ワイルドカード争いでも2位テキサス・レンジャーズ(西地区)と3.0ゲーム差の4位にいた。後半戦はタイガースにこそ突き放されたものの、9月に21勝6敗と大きく勝ち越してワイルドカード争いの上位に加わった。最後は10連勝で締めくくってレンジャーズらを逆転し、最終戦勝利で第1ワイルドカードを確定させた[3]。フランコーナの巧みな選手起用により、打線は個の力に頼らずとも高い得点力を有していた[4]。1試合平均得点は4.60でリーグ4位、防御率は3.82で同7位。 レイズは、予算上の都合からオフに先発右腕ジェームズ・シールズをトレードで放出したが、90勝72敗を記録した前年に続き2013年シーズンもポストシーズン進出を争った。前半戦終了時点では地区首位ボストン・レッドソックスと2.5ゲーム差の2位で、ワイルドカード争いでは2位レンジャーズに0.5ゲーム差をつけて首位に立っていた。8月下旬にはゲーム差なしながらレッドソックスを逆転して地区首位に浮上したが、すぐに再逆転されると差を広げられた。その後はワイルドカード争いでインディアンスやレンジャーズと競り合い、162試合目が終わった段階でレイズとレンジャーズが2位に並んだ。そして翌日のワンゲームプレイオフでレイズがレンジャーズを下し、ワイルドカードゲーム進出を決めた[5]。シールズとのトレードで獲得した新人外野手ウィル・マイヤーズが打線の中軸を担う活躍を見せた[6]。1試合平均得点は4.29でリーグ9位、防御率は3.74で同5位。 両チームはこの年、レギュラーシーズンでは計6試合を戦っている。結果は以下の通り[7]。
ロースター両チームの出場選手登録(ロースター)は以下の通り。
試合
この試合の先発投手は、インディアンスはダニー・サラザー、レイズはアレックス・カッブ。レギュラーシーズンでの成績は、サラザーが10試合52.0イニングで2勝3敗・防御率3.12、カッブが22試合143.1イニングで11勝3敗・防御率2.76である。 サラザーはこの年の7月にデビューしたばかりの新人だが、10試合で奪三振率11.25と高い数値を記録し、この試合の先発に抜擢された[8]。この試合でも、まずは立ち上がりの2イニングを続けて三者凡退に抑え、その間に2番ウィル・マイヤーズから4番エバン・ロンゴリアまで3者連続の空振り三振を奪う。3番ジェームズ・ローニーを空振り三振に仕留めたフォーシームは、コースこそ外角高めに外れていながら、球速は100mph(約160.9km/h)を計時していた。対するカッブも、最初の2イニングを無失点で終わらせる。その途中、1回裏の2番ニック・スウィッシャーの打席では、判定が覆る場面があった。2ボール2ストライクからの5球目、カッブは外角低めにツーシームを投じ、スウィッシャーがこの球に手を出した。これを三塁塁審グレッグ・ギブソンは、いったんファウルと判定した。しかしレイズ側の抗議を受けて審判団が協議した結果、ファウルチップでの三振に判定が変更された[9]。場内はブーイングに包まれた。 3回表、レイズが1点を先制する。この回先頭の7番デルモン・ヤングが、初球の高めへ浮いたフォーシームを捉え、左翼フェンスを越えるソロ本塁打とした。ヤングは「打つにはちょうどいい球だった。見送るつもりはなかった」と振り返った[10]。さらに4回表、レイズが2点を加える。一死から3番ローニーと4番ロンゴリアが、いずれも2ボール0ストライクから3球目のフォーシームを連打した。二死一・三塁となったあと、6番デズモンド・ジェニングスが1ボール0ストライクからの2球目、内角へのフォーシームを打ち返すと、打球は三塁線を破る二塁打となり2走者が生還した。3点を先行されたインディアンスはその裏、一死から4番カルロス・サンタナの二塁打をきっかけに満塁の好機を作る。だが、7番アズドルバル・カブレラは外角へのチェンジアップを引っかけて一ゴロ併殺に倒れ、反撃はならなかった。一塁ベースカバーに入ったカッブは、遊撃手ユネル・エスコバーからの送球を受けて併殺を完成させると雄叫びをあげた。 サラザーは5回表、先頭の9番ホセ・モリーナを四球で歩かせたところで降板する。カッブはその裏、先頭の8番ヤン・ゴームズに二塁打を許し、次打者ロニー・チゼンホールにも右前打を浴びた。ただこの右前打は右翼手マイヤーズが捕れるかどうか微妙な当たりだったため、ゴームズは三塁で止まらざるを得なかった。カッブは前の回に続いて得点圏に走者を背負ったものの、1番マイケル・ボーンを空振り三振に、2番スウィッシャーを一ゴロに、そして3番ジェイソン・キプニスを投ゴロに打ち取って失点を免れた。インディアンスはなかなか得点を挙げることができず、3点差のまま試合は終盤へ進んでいく。7回表、レイズの先頭打者ジェニングスが左前打で出塁すると、インディアンスは4番手ジャスティン・マスターソンをマウンドへ送った。マスターソンは開幕投手も務めたチームのエースだが、9月2日の試合で左脇腹を痛めてからは救援にまわっていた[11]。マスターソンは後続を3人でねじ伏せ、味方打線の反撃を待った。 7回裏のインディアンスは一死から、またも8番ゴームズと9番チゼンホールの連打で、一・二塁と得点圏に走者を置いて打順を上位にまわした。しかし1番ボーンは中飛と、走者を進めることもできず。ここでレイズがカッブからジョエル・ペラルタに継投し、2番スウィッシャーはペラルタの前に3球三振に終わった。インディアンス打線は、レギュラーシーズンでは走者を置いた場面でのOPSがリーグで3番目に高かったが、この日は一転して好機を逸し続けた[12]。9回表、インディアンスは逆に突き放される。一死一塁で6番手ジョー・スミスが登板し、7番ヤングを三ゴロに打ち取ったかと思いきや、三塁手チゼンホールが打球を弾く失策を犯した。これで一・三塁と走者が溜まり、8番エスコバーの内野安打で三塁走者ベン・ゾブリストが生還して、レイズに4点目が加わった。9回裏、レイズは抑えのフェルナンド・ロドニーがマウンドに上がった。ロドニーは7番カブレラを三振させると、この試合で複数安打を記録している8番ゴームズと9番チゼンホールも退けて、三者凡退で試合を締めた。 レイズは9月24日のレギュラーシーズン157試合目からこの日まで、9日間で8試合をすべて敵地で戦ってきた。特にここ3試合は、テキサス・レンジャーズと並んで迎えた162試合目、そのレンジャーズとのワンゲームプレイオフ、さらにこの日のインディアンスとのワイルドカードゲームと、負けられない試合が続いたがすべてものにして地区シリーズ進出を勝ち取った。その地区シリーズで対戦する相手は、同地区のボストン・レッドソックスである。ロンゴリアは「次はシリーズだから(2敗まではできるため)多少は気が楽だけど、これからも今日の試合のように戦わなきゃいけない」と気を引き締めていた[13]。インディアンスは地元での一発勝負に敗れ、シーズンを終えることになった。キプニスは「この街のためにもいいプレイがしたかった」と悔やみつつも「今年のうちのチームがまぐれだったとは思わない。来年もポストシーズンに戻ってくるつもりだ」と2014年を見据えていた[14]。 脚注
外部リンク
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