鳩山由紀夫内閣の政策鳩山由紀夫内閣の政策(はとやまゆきおないかくのせいさく)では、2009年9月に発足し2010年6月に総辞職した鳩山由紀夫内閣の政策について扱う。 民主党・社民党・国民新党の3党合意2009年(平成21年)9月9日に行われた与党3党(民主党、社会民主党、国民新党)の党首会談において、「三党連立政権合意書」に示された合意事項は次の通り[1]。
政策合意の骨子
行政改革「政治主導」をめぐる動き※鳩山内閣は、「政治主導」の定義を、「官僚依存」を排し、「政治家自らが汗をかき、最終的な結論、意思、政策に関して政治家が責任を取る」ものとしている[2]。
地域主権改革→「地域主権戦略会議」も参照
地域主権の確立は鳩山内閣の「一丁目一番地」である重要課題である[10]。2009年11月17日付閣議決定に基づき、地域主権戦略会議を設置。義務付け・枠付けの見直し、基礎自治体への権限移譲、ひも付き補助金の一括交付金化、出先機関の抜本的改革を4つの柱に、2010年6月に「地域主権戦略大綱」の策定、2012年夏までに「地域主権戦略大綱」の実現と「地域主権推進基本法」の制定を行う予定である。 無駄遣い排除2009年9月18日付閣議決定に基づき、予算編成の透明性を高め、行政における無駄を排除するため、国の予算、制度、その他行政全般のあり方を刷新するとともに国、地方公共団体及び民間のあり方を見直す行政刷新会議を設置した。
日本郵政社長人事2009年10月20日、鳩山内閣は郵政民営化の見直しを閣議決定し、これにともない、亀井静香金融・郵政改革担当大臣の主導により日本郵政経営陣の刷新が行われ、同月28日に東京金融取引所社長の斎藤次郎が日本郵政の新社長へ就任した。この人事に関し、民主党は野党時代の2009年の衆議院選挙の公約で「天下りの全廃」を掲げ、日本銀行総裁などの国会同意人事に関し政府が提示した候補に対して「元官僚」という理由で反対していた経緯があり、元大蔵事務次官である斎藤の就任について党の元来の主張との整合性が問題とされた。また、斎藤が次官退任後に、大蔵省(現財務省)の外郭団体である研究情報基金理事長、国際金融情報センター顧問、東京金融先物取引所(現東京金融取引所)理事長などを歴任していることを挙げて、この人事はいわゆる「渡り」に該当すると批判する声がある[11]。なお、斎藤の社長就任と同時に、副社長4名中2名に官僚OBが就任している。 これらの批判について平野官房長官は、「長期間民間で働いていた経緯があり、日銀総裁人事の一件とは話が違う」などと反論している[12]。 経済政策まず結果から述べると、2009年経済成長率が-5.42%と大きく下落したのに対して、IMFは2010年4月に2010年経済成長率見通しを1.7%と出していたが、2010年度経済成長率は4.19%とV字回復させている。これは2010年G7トップの成長率であり、鳩山由紀夫政権及びそれに続く菅直人政権の2010年経済政策は結果として成功していると言える。 市場への対応・景気対策株価指数は9月第1週を目先のピークに下落に転じ、11月第3週には、日経平均株価は9500円割れ、東証株価指数(TOPIX)は4月上旬の850割れの水準まで下落した。政権発足直後は欧米および新興国の株価が軒並み上昇するなか、日本の株価は低迷を続け、メリルリンチ証券による世界投資家調査では、日本が最も不人気な株式市場に選ばれてしまった[13]。証券業界では、鳩山内閣の経済政策および日本市場への信頼が低下し、「日本売り」が加速する可能性を指摘された[14]。 11月18日にはTOPIXの年初来変化率がマイナスとなった。『サーチナ』は民主党の成長戦略がみえないためとする見解を掲載した[15][16]。2009年11月27日には日経平均株価が前日から301円の大幅下落し9081円まで落ち込んだ[17]。また、為替レートは14年4カ月ぶりに1ドル=84円台に突入し、御手洗冨士夫経団連会長は急激な円高に懸念を表明した[18]。日本国外では、日本の株・円・国債全ての評価が悪化した[19]。2009年12月9日、内閣府は、2009年度7-9月期の国内総生産改定値を、11月16日に発表した速報値1.2%増(前期比。年率4.8%増)0.3%(同。年率1.3%増)へ大幅に下方修正した。製造業の設備投資が過去最大の下落幅(前年同月比40.7%減)を記録したことによる[20]。『産経新聞』は物価下落と不況が内需主導の成長を掲げる鳩山政権の経済運営に重荷となっていると報じた[21]。
12月に入って以降、ドル高、円安が進行したことや、日銀が「物価安定の理解」の方針を打ち出したこと、鳩山がガソリン税の暫定税率を実質的に維持する方針を示したことで、2010年度国債発行の44兆円枠が守られる道筋がみえてきたことなどから株価は上昇に転じた[40]。また、2010年1月7日には、体調不良を理由に辞任した藤井裕久に代わって財務相に就任した菅直人が、「経済界では90円台半ばあたりが適切という見方が多い」と発言。現職の財相が具体的な為替水準にまで言及したことに内閣からも賛否両論が起こったが、翌日の東京株式市場ではこの発言をきっかけに円相場が下落したことを好感し日経平均は一時、約1年3カ月ぶりに1万800円台を回復した[41]。アジア経済の景気回復が回復すると外需が増え、金融を含む東証一部上場企業の2009年10-12月期の経常利益の総額は7兆1000億円となり、リーマンショック直前の7兆円を上回ったが、建設や不動産、情報通信、陸運など内需型企業の業績が低迷は続いた[42]。
雇用情勢長妻厚生労働相は、民主党が政権公約で掲げた製造業派遣の原則禁止を盛り込んだ労働者派遣法改正案を、来年の通常国会に提出する考えを表明した。民主党は格差拡大の要因が製造業派遣にあるとしており、派遣禁止によって安定雇用を実現するとしている。改正案は連立与党の政策合意にも含まれている[50]。 これについて、『朝日新聞』が日本国内の主要企業100社を対象に11月9日から20日にかけて行った調査によれば、57社が労働者派遣法改正に「反対」と回答した。また、派遣が禁止された場合、正社員を雇用するとしている企業は14社で、大半は非正社員(契約社員・請負など)で対応すると回答した[51]。 2009年10月1日時点における就職内定率は前年同期比を7.4ポイント下回る62.5%で、前年比からの下落率は過去最悪を記録した。『琉球新報』は、鳩山内閣が10月半ばに「緊急雇用対策」を打ち出したことについて、「動きがあまりにも鈍すぎる」と批判した[52]。高校生の2009年10月末時点の内定率は55.2%で、前年同期と比較して11.6%と過去最悪の下げ幅を記録した[53]。 ただし、完全失業率は過去最悪だった2009年7月から徐々に改善を続けている[54]。
財政問題過去最大の赤字国債発行民主党は選挙前にマニフェストの財源を埋蔵金と無駄の削減から9.1兆円が捻出できるので増税や赤字国債は心配ないと主張し、政権交代前の2009年4月などには麻生内閣の景気対策として同月27日提出予定の『2009年度補正予算案』に関し、「(財源のうち)7、8兆円は赤字国債だ。こんなばかばかしい財源の裏打ちもない垂れ流しを、政権与党が安易に打ち出すべきではない」や「借金漬け」と批判していた[57][58]。ところが内閣が発足すると、2009年度の税収や『埋蔵金』が見込みより大幅に下回ったのを受け、マニフェストの『赤字国債をしない』方を変えると言い出して、選挙後に財源として赤字国債の増額を行う方針を表明した[59] [60]。 日本の国債発行額は小泉政権下の2004年度をピークに以降、減額傾向にあり、2007年度の新規国債発行額は25兆円まで減少したが、(2008年度は世界金融危機に対応するため、例外的に33兆円の増刷が行われた)[61]、鳩山由紀夫内閣は子ども手当などの政策を実行するため、過去最大となる92兆2992億円(一般歳出も過去最大の53兆4542億円)の一般会計総額の予算案を決定し、不足する財源を補うため過去最高の44兆3,030億円が発行されることになった[62][63]。 鳩山は国債発行額を「埋蔵金」(民主党によると財政投融資特別会計と外貨準備高など[64])の活用など税外収入で補うことにより、44兆円以下にしたいと表明していたが[65]、藤井財務相は国債増発を表明しており、国債が50兆円を上回るのは確実ともいわれ[66]、税収は前年度からマイナスになる見通しであるともいわれていた[67]。最終的に、予算案の新規国債発行額は約44兆3000億に収まり、税収も「埋蔵金」など税外収入で補うことにより、前年度の税収をやや上回ったが[68]、国債発行額は2年連続で税収を上回り、第二次世界大戦終結直後の1946年以来の「異常事態」ともいえる厳しい財政状況となっている[69]。鳩山は、国債増額への批判に対し、「マニフェストの実現よりも、やはり国債をこれ以上発行してはいけないと、国民の意思としてそのようなことが伝えられたら、あるいはそういう方向もあると思う」と述べた[70] が、財政健全化に取り組むことはなかった。 また、消費税については選挙前には上げないと明言しているが、現在の衆議院議員が任期満了を迎える4年後以降に上げることもありうると鳩山は発言した[71]。 税制改革2009年12月2日、峰崎直樹副財務相は、政府税制調査会の全体会合で、2010年度税制改正の焦点で、民主党の政権公約の1つでもある中小企業減税について、「代替財源がみつからないなかでの実施は難しい」と発言し、翌2010年度の実現は困難との見通しを示した。この発言に対し、会合では、「中小企業支援策を検討しているのに、減税に手をつけないのは整合性がとれない」などの反発が出ている。会合では企業に対する租税特別措置法の適用実態を把握することを目的とした「租税特別措置透明化法案」についての合意もなされた[72][73]。 12月4日、厚生労働省は国民健康保険の保険料の年間上限額を2010年度から4万円引き上げる方針を固めた[74]。 経済評論家の森永卓郎は、「民主党はマニフェストに示していなかった増税策を次々と発表している」として、鳩山内閣の税制改革を批判した[75]。 2009年12月22日、政府は税制改正大綱を決定した。たばこの値上げや暫定税率の事実上維持となったことから、2010年度は100億円の減税となるが、2011年度以降は1兆円の増税となる見込みである[76][77]。 外交問題→「友愛外交」も参照
→詳細は「普天間基地移設問題」を参照
→「天皇特例会見」を参照
→「日米核持ち込み問題」も参照
国会対応強行採決2009年11月17日、金融モラトリアム法案について審議が開始されたが、自民党は同法案に反対[89] し、「実質審議がまだ1日しか行われていない」[90]「十分な審議時間が確保されていない」[91] として公明党と共に、法案の審議に入っていた衆議院金融財務委員会および理事会を欠席した[90][91]。11月19日、与党側は同日中に採決する方針を決定[91] し、法案は衆議院本会議にて与党の強行採決によって採択された[90]。与党側には野党時代に自民党の強行採決を批判してきた経緯があり[92][93]、審議時間も短いことから、野党や報道機関から批判されている[94][95]。 鳩山は、中小企業金融円滑化法案をめぐる自公両党の対応について、「強行採決というより審議拒否だ。審議拒否みたいなこと、お互いにやるべきではないなと、そう思う。私もできる限り審議はしたいと思うが、なかなか審議に入ってくれない」と批判した[96]。この発言に対し、自民党の川崎二郎国会対策委員長は「1日でも審議を止めたことはない」と反論した[97]。 11月20日には、さらに、3つの法案、3つの外務条約の強行採決が行われた[98]。自公両党は与党による強行採決の方針に抗議し、(事前に合意していた2つの委員会を除き)審議を欠席した[98]。また、「民主党が審議を急ぐのは、鳩山由紀夫首相の献金問題隠しとしか思えない」と反発を強めている[91][99]。 福島瑞穂消費者・少子化対策担当相は、社民党が野党時代に自公政権の強行採決を批判していた経緯を踏まえ、「採決強行はできる限り避けるべき」と強行採決に慎重な姿勢を示した[93]。また、鳩山は、総選挙前、「私たちが政権を取れば、数の暴力で何でもかんでも強引に決めてしまうようなことは一切しない」と発言していた[92]。 第174通常国会(2010年1月〜)では5月28日の郵政改革法案に関する委員会審議で、10回目の強行採決がおこなわれた[100]。 金銭問題鳩山首相の金銭問題鳩山首相は複数の金銭問題を抱えており、メディアや国会質疑の場でたびたび取り上げられている。 →詳細は「鳩山由紀夫 § 政治資金」を参照
他の閣僚の政治資金問題川端文部科学大臣の政治団体が江田五月参議院議長など民主党議員4人の政治団体と同様、キャバクラなどへの支払いを政治活動費として計上していた問題が浮上している[101]。 野党時代の発言について
小沢一郎の影響力鳩山由紀夫内閣は民主党の党務を取り仕切る小沢一郎幹事長の影響力が大きいとされている。『毎日新聞』は、予算編成においても小沢主導が目立っているとして、「党高政低」の構図が鮮明になっていると指摘した[110]。 時事通信が12月に行った世論調査によれば、「政権を実質的に動かしている人」との質問に71.1%が「小沢幹事長」、10.6%が「鳩山首相」と回答している[111]。 自民党では谷垣禎一総裁が「小沢氏の一元支配、独裁という姿がはっきりしてきた」と批判[112] する一方、平野博文官房長官は「小沢支配」は曲解だと反論している[113]。 一部のメディアでは「鳩山・一郎政権」[114]、「『鳩山』『一郎』政権」[115][116]、「鳩山・一郎内閣」[117](いずれも鳩山の祖父である鳩山一郎が組閣した鳩山一郎内閣にかけた名称)、「小沢政権」[118] などの呼称が使用されている。 自民党の町村信孝は、政治問題化した天皇特例会見を小沢が主導したことから「これでは小沢内閣だ」と述べた[119] ほか、小沢と距離を置く民主党議員が「鳩山内閣は小鳩内閣」と呼んでいると報道されている[120]。 『日経ビジネス』は「小沢幹事長室」を「最大の圧力団体」と評し[121]、イギリスの『エコノミスト』は、日本で一番偉いのは「影将軍(shadow shogun)小沢一郎」と報じた[122]。 2010年度予算編成について、『毎日新聞』は、暫定税率廃止が先送りにされたことについて「鳩山首相に代わって小沢幹事長が決断した構図になった」「小沢が政権の主導権を握っていることを印象づけた」と報じた[123]。『日本経済新聞』も、「小沢一郎幹事長が歳出・歳入の両面を事実上、主導して決着した」として、「鳩山首相は小沢の予算案をほぼ丸呑みした」と報じている[124]。 2009年12月21日、小沢はテレビ東京の番組で自らの将来の首相就任の可能性に言及した[125]。民主党の渡部恒三が翌日22日のTBSの番組で「小沢君は、絶対首相やらない」と否定した[126]。 『毎日新聞』は民主党新人議員の「みんな小沢さんの顔色をうかがって、(党内は)暗いよ」という声を紹介した[127]。 『時事通信』は小沢を「鳩山政権の『最高権力者』と目される」と報じ、「自ら掲げた「内閣への政策一元化」方針に反するかのような言動が目立ち始めた」と批判した。また、一連の積極的発言は「西松建設事件で検察を牽制するため」との見方を紹介した[128]。 ポスト鳩山2009年12月には、鳩山のリーダーシップの不足や金銭問題、普天間などの外交問題から支持率が5割を切るようになった。「J-CASTニュース」は、支持率の急落が2010年に予定されている参院選に影響する可能性が出てきたため、各紙では『ポスト鳩山』という言葉がみられるようになっていると報じた[129]。 『時事通信』は、2009年12月の時点で、菅直人や岡田克也、前原誠司などの民主党代表経験者をポスト鳩山の候補としてあげつつ、「衆目が一致する後継者は見当たらないのが実情」と報じている[130]。 2010年5月になると、沖縄県名護市のアメリカ海兵隊基地移設問題における福島瑞穂少子化担当大臣の罷免による社民党の連立離脱や内閣支持率の低下で、2010年参院選で改選をむかえる議員を中心に民主党内から鳩山の辞任をもとめる声が急速にたかまった。 →詳細は「鳩山おろし」を参照
口蹄疫問題→「2010年日本における口蹄疫の流行」を参照
記者会見オープン化→「記者会見オープン化」を参照
その他
脚注
関連項目 |
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