頭突き頭突き(ずつき)は、自身の頭を相手に叩き込む攻撃である。英語圏ではヘッドバット(Headbutt)と呼ばれている。俗にチョーパンともいう。朝鮮語で同じ意味のパチキも使われることがある。 プロレスにおける頭突き概要立っている相手の頭を両手または片手で掴んで自身の頭に叩き込む。後述のように、タックル気味に叩き込んだり、ダウンしている相手に倒れ込んで打ちつけたりなど、様々な派生技がある。 荒々しさを売りにするヒールや力で押すパワーファイターが好んで使用する一方で、技巧派レスラーが試合のテンポを変えるために使用することもある。 名手黒人レスラーの総帥であるボボ・ブラジルの代名詞的必殺技であったため、その影響を受けてアブドーラ・ザ・ブッチャー、ルーファス・ジョーンズ、レイ・キャンディ、トニー・アトラス、レロイ・ブラウン、バッドニュース・アレン、ジャンクヤード・ドッグ、ココ・B・ウェアなど多くの黒人レスラーが使用するようになった。超大型レスラーのアンドレ・ザ・ジャイアントも使用しており、その落差から、2階からのヘッドバットと呼称された。反則技であるがワイルド・サモアンズ(アファ・アノアイ&シカ・アノアイ)は1人の相手に2人がかりでダブル・ヘッドバットを放ったり、ザ・デストロイヤーなどの覆面レスラーはマスクの中に凶器(ビールの栓抜きなど)を忍ばせて仕掛けたりしたことがあった。日本における主な使用者は大木金太郎、大熊元司、ラッシャー木村、藤原喜明などがいる。 派生技
健康被害プロレスにおいて、ヘッドバットは効果的な技である半面、過度の濫用により掛け手に脳震盪や慢性外傷性脳症(パンチドランカー)といった健康被害が現れる場合もある。ヘッドバットの多用により脳障害を呈した代表例としては大木金太郎[2]や菊地毅[3]が挙げられる。 ヘッドバットの中でも、ダイビング・ヘッドバットは特に外傷性脳損傷との関連性が指摘される技であり、ダイナマイト・キッドやクリス・ベノワ、ブライアン・ダニエルソンらの症例から、高いリスクが存在する技であると認知されている[4]。元祖であるハーリー・レイスは、受け手の胸部や腹部など人体の比較的柔らかい部位に対してダイビング・ヘッドバットを敢行しており、脳障害こそ避けられたものの、背を反らせた空中姿勢から頭部を打ち付けることから、長年の使用で脊髄や頚椎に重い後遺症を負ったという[5]。 プロレス以外の格闘技における頭突きプロレス以外で頭突きを認めている格闘技は大道塾空道、相撲、ラウェイ。頭突きを禁止しているのは総合格闘技、ボクシング、キックボクシング、ムエタイ。頭を当てる行為はバッティングと呼ばれて肘打ちが認められていないルールでの肘打ちも含む。偶然にお互いの頭部が激突して相手または両者の額が割れたりなどして出血して試合続行不可能になるケースもある。 ボクシング等では故意に頭突きを犯す選手も存在する。もちろん反則であるがお互いが打ち合う接近戦にまぎれて使用したり同時にレフェリー側の手でのパンチも繰り出したりするとごまかされてしまうこともある。最悪、頭突きで相手が倒れて気づかれずにKO勝ちになってしまうケースも稀に存在する。偶然発生したバッティングで試合続行が不可能なほどの傷を負ってしまった場合は、そのラウンドまでのジャッジによる採点で勝敗を決める。また、世界ボクシング評議会では偶然のバッティングで、どちらかが出血した場合は出血していないほうから1点減点するという独自ルールを設けている。 従来の頭突きとは異なるが相手のパンチを自身の額で受ける変則的な防御方法もある。これは、まともに決まるとパンチを打った相手の拳が破壊されてしまう。ボクシング等では偶然にこの形になり、拳を負傷するケースがある。グローブが薄い総合格闘技や素手での喧嘩では高い効果が期待できるが相手のパンチの軌道を正確に見切る動体視力と極めて高度な先読みが必要不可欠となる。さらに接近戦の最中に頭部を前方に突き出すという行為自体に多大なリスクがあるため、一般的に勧められる技術とは言い難い。 大道塾空道では接近戦で相手の道着を掴んで引き寄せながら攻撃を加える場面が多い。顎に正確に頭突きを当てることができれば一撃でKOすることも可能である。また、道着をつかんだ状態で相手のサイドに回り、ボディに頭突きを入れるという使用方法もある。空道では頭突きから投げ技の連携が使いやすく一般的に投げ技が得意な選手が使用する事が多い。 総合格闘技においては、ほとんど禁止されているが初期のUFC(「UFC15」まで)などでは認められていた。主にレスリング出身者が得意としてケン・シャムロックはマウントポジションから頭突きを繰り出し続ける作戦で「UFC1」で敗れたホイス・グレイシーを相手に引き分けに持ち込んだ。また、伝統的なバーリトゥードでは認められていることが多い。 ルール無用の喧嘩等では頭突きは接近戦の武器として重要。最も硬い前頭部の頭髪の生え際付近を相手の顔面(特に鼻)に当てる。パンチに比べると硬く重い頭部の効果は高いが自らも頭部に傷を負うリスクも生じる。 前田日明は雑誌の対談[要出典]の中で「もし僕が女性向けの護身術を考えるなら、まず頭突きを教える」と語っている。前田の弁によれば、頭突きは女性の力であっても強烈な打撃力を発揮する技であり、「謝る振りをするか、抱きつくと見せかけて鼻の下(人中と呼ばれる人体の急所の1つ)を頭突きで一撃すれば、どんな大男でも隙が出来る。その間に逃げてしまえばいい」のだという。 大相撲の決まり手として大相撲の決まり手としての「頭突き」は、現行の公式決まり手体系にはないが、公式決まり手制定以前には次の取組が「頭突き」として報道・記録された例が存在する。 動物の生態としての頭突きヤギの仲間(ウシ科ヤギ亜科の動物)にはオス同士の順位を決定するために角を突き合わせて争う種類が多いが、その際に頭突きのような状況がしばしば発生する。 なかでも「頭突きをする動物」として名高いのはジャコウウシであり、突進して頭頂部同士をぶつけあう頭突き行為自体が争いの手段となっている[6]。 その角は頭骨を覆うようにして生える板状の形態に進化して頭頂部の衝突箇所を保護するヘルメットの役割を果たすようになっている。 白亜紀に生息した恐竜の属パキケファロサウルスは最大で25cm程度にもおよぶ厚さの分厚い頭骨をもっていたことが知られており[7]、このことから仲間どうしで頭突きを行っていたのではないかともいわれている[7][8]。 ほかに多かれ少なかれ、頭突きに似た行為は多くの種に見られる。 脚注
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