聖地への旅
『聖地への旅』(せいちへのたび、原題:Pilgrimage)は、アメリカ合衆国のジャズ・サクソフォーン奏者、マイケル・ブレッカーが2006年8月に録音したスタジオ・アルバム。ブレッカーは2007年1月13日に57歳で死去しており、4か月後に遺作として発売された[6]。 背景ブレッカーは骨髄異形成症候群によって健康状態が悪化し、2005年に活動を停止した[6]。しかし、2006年には小康状態となり、JVCジャズ・フェスティバルでハービー・ハンコックのステージにゲスト参加した後、同年8月にハンコック、パット・メセニー、ブラッド・メルドー、ジョン・パティトゥッチ、ジャック・ディジョネットと共に本作を録音した[6]。 全曲ともブレッカーのオリジナル曲で、過去のツアーでも演奏されていた「ルース・スレッズ」以外は、いずれも闘病中に作られた新曲である[7]。「ホエン・キャン・アイ・キス・ユー・アゲイン?」のタイトルは、家族すら接触が禁止されていた時期に、ブレッカーの息子が「いつになったらまたキスできるの?」と問いかけたエピソードに由来している[2][7]。 ブレッカーが存命だった時点で、サイドマンとして参加した面々により本作のレコーディングの事実が公言されており、パット・メセニーは2006年9月に「まさにマイクの新時代の夜明けを告げる、啓示のような作品だ」、ハービー・ハンコックは同年12月に「マイケルの新作が、ほぼ完成した」「マイケルは確かに、今弱っている。でもアルバムではそんな状態は微塵も感じさせない、まさしく入魂の一作だ」とコメントしている[7]。 反響母国アメリカでは、総合アルバム・チャートのBillboard 200入りは果たせなかったが、『ビルボード』のジャズ・アルバム・チャートでは3位、インディペンデント・アルバム・チャートでは27位に達した[8]。イタリアのアルバム・チャートでは38位に達し、『ニアネス・オブ・ユー:ザ・バラード・ブック』(2001年)以来6年ぶりに、同国におけるアルバム・チャート入りを果たした[3]。日本のオリコンチャートでは8週トップ300入りし、2007年5月28日に最高41位を記録した[4]。 評価第50回グラミー賞では、本作が最優秀ジャズ・インストゥルメンタル・アルバム賞を受賞し、収録曲「アナグラム」は最優秀ジャズ・インストゥルメンタル・ソロ賞を受賞した[9]。 C・マイケル・ベイリーはAll About Jazzにおいて満点の5点を付け「作曲に関しては、彼のキャリアの中でも最高」「ブレッカーとメセニーは全編を通じて、ビル・エヴァンスとスコット・ラファロのコンビに匹敵するほど感情的に一体化しており、さらに両名は、ハンコックとメルドーの印象主義的なピアノに鼓舞されている」と評している[10]。リック・アンダーソンはオールミュージックにおいて5点満点中4点を付け「ブレッカーは、音楽による自分の墓碑銘となり得る、情感豊かで驚くほど力強いストレート・アヘッド・モダン・ジャズのアルバムを生み出し、彼のことを単なるジャズ・ポップ系のフュージョン・ミュージシャンと切り捨てようとしてきた連中の鼻を明かしてみせた」と評している[2]。ジェフリー・ハイムズは『ジャズタイムズ (JazzTimes)』誌において「ブレッカーの音色は、全盛期の逞しさを失っている。一方、フレージングはこれまでになく先鋭的で、作曲家として見れば、このCDには彼の最高傑作と言える曲も幾つか含まれている」と評している[6]。また、『CDジャーナル』のミニ・レビューでは「甘さを排した楽曲はすべて自作」「コンテンポラリー・ジャズ界の今を切り取る、真摯な内容」と評されている[11]。 トラック・リスト全曲ともマイケル・ブレッカー作曲。
パーソネル
脚注
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