細田耕
細田 耕(ほそだ こう、Koh Hosoda[24]、1965年(昭和40年)11月9日[2][3] - )は、日本のロボット研究者。学位は、工学博士(京都大学)[12]、大阪大学名誉教授[25]。空気圧ゴム人工筋などを用いたロボットアームや3次元受動歩行を開発。知能の構成論的研究やヒューマノイドロボット、ソフトロボティクスの研究に従事。ハイハイを学習する赤ちゃんロボット[5]や屍体足・人工筋骨格ハイブリッドロボット[23][26]、犬型ロボット「PneuHound」[17]で知られる。フレキシブルアーム[27][28]やビジュアルサーボ[29][30]でも実績がある。大阪大学工学部 助手、助教授、同大学院情報科学研究科 教授、同大学院基礎工学研究科 教授、日本ロボット学会『Advanced Robotics』誌編集長を歴任[31][32]。2023年4月現在、京都大学大学院工学研究科機械理工学専攻 教授(先端システム理工学分野)[33]。 来歴・人物生い立ち1965年[3]大阪府生まれ[4][注 1]。電子工作を趣味としており[34]、京都大学工学部精密工学科[2]に進学。細田は学部4年次から吉川恒夫の研究室に所属[35](1988年に学部卒業[2]。)。先輩から「ロボットの研究はもうほとんど終わっている」と言われるものの[35]、宇宙ロボットなどを想定したフレキシブルマニピュレータ[注 2]の研究に取り組んでいく[36][37]。 吉川研究室時代京都大学の受託研究員であった石川島播磨重工(後のIHI)の村上弘記[38]らと共に、平面ではなく3次元空間で動作するフレキシブルマニピュレータに取り組む。集中ばね質量モデルを構築し[39]、動力学解析から状態方程式を導出し、最適レギュレータを実装した[40]。3次元では理論検討が多かった当時、実験的に検証した数少ない事例であった[27]。 なお、フレキシブルマニピュレータではモデル化が課題であり、吉川と細田は仮想の剛体リンクと仮想の受動バネ関節によるモデルを提案する[28][41]。これには先行研究と異なり、実機からパラメータを同定し、モデルを決定するという特徴があった[28][注 3]。また、平面2自由度のフレキシブルマニピュレータの軌道制御にも取り組み、軌道追従の十分条件をシミュレーションで明らかにした[44]。 さらに本体となるフレキシブルマニピュレータ(マクロ機構)の先端に小型の剛体マニピュレータ(マイクロ機構)を搭載したマクロマイクロ機構[36]の研究にも取り組む[45]。可補償性[注 4]を検討し[45]、準静的軌道制御と動的軌道制御の手法を提案[47]。力制御にも取り組んだ[48]。1993年3月に京都大学大学院工学研究科機械工学専攻博士後期課程を修了し、博士(工学)の学位を取得[2]。同年9月にはマクロマイクロマニピュレータの技術が石川島播磨重工から特許出願された[49]。 浅田研究室時代1993年4月、大阪大学工学部電子制御機械工学科の浅田稔研究室で助手に着任[2][15]。ロボットを作れることが採用の理由だったという[15]。この間、ビジュアルサーボや歩行ロボットの強化学習などの研究に従事[50][51]。浅田らのサッカーロボットの研究に参加し、カメラでボールを認識して追う動作を強化学習で実現[52][53]。この研究は日本ロボット学会の論文賞を受賞し、NHK教育の『サイエンスアイ』でも紹介された[53]。 ビジュアルサーボでは画像上の追従対象の座標の速度とロボットの関節速度を対応づける「画像ヤコビアン」(厳密には行列)を用いる。通常これはモデル化を行うが、細田はロボットの構造が分からない状態から、カメラ座標と関節角度の情報から逐次最小二乗法で画像ヤコビアンを推定する手法を開発した[29][30]。1997年2月には助教授に昇進する[54]。 1998年4月から翌年3月まで、チューリッヒ大学客員教授としてロルフ・ファイファーの下で受動歩行の研究に従事[5]。スイス滞在中にオランダ・デルフト工科大学マータイン・ヴィッセ[18]の研究を知り、感銘を受ける。細田は国際会議を利用して同大学を訪問し、ロボットや図面のコピーの許可を得る[37]。2001年には石黒章夫や小林宏とともにファイファーの著書『知の創成 ― 身体性認知科学への招待 ―』の訳本を出版する[55]。 助教授・准教授時代人間の指先を参考にした柔らかい触覚センサも開発し[59][60]、それを用いたロボットハンドも開発[56][注 5]。ゴム人工筋を用いた筋骨格ロボットの研究を進め[5]、3次元受動歩行ロボット上体を持った受動歩行ロボットを実現[62]。さらに円弧足ではなく、拮抗筋を取り付けた水平足による歩行も実現する[56]。また、ガニ股歩きをする赤ちゃんロボットも開発[56]。平面2脚式(実際は3脚)の「空脚R」では歩行・走行・跳躍のすべてを実現した[63]。 自分で学習してハイハイをする赤ちゃんロボットも開発。また、ゴム人工筋を利用することにより、ドアノブをつかんでドアを容易に開けるロボットアームも実現した[37][64]。2006年頃には生理学やスポーツ工学関係の研究者から「二関節筋を考慮していない」と言われ、より人間の筋骨格を突き詰めるようになり[65]、連続跳躍が可能な脚ロボットも開発した[56][注 6]。 この間2005年11月から2011年3月まで、JST ERATO 浅田共生知能プロジェクト グループリーダーを併任[68]。2007年からは法改正で准教授に[69]。また、浅田の創発ロボティクス研究室とは独立して、大学院工学研究科知能・機能創成工学専攻先導的融合工学講座内に適応ロボティクス研究室を主催する[70]。教育関係では応用理工学科機械工学科目におけるメカトロニクス教育の講義・実習を担当[20]。教育上の工夫は、杉原知道ら後任の担当者にも引き継がれた[20]。 情報科学研究科教授時代2010年4月、大阪大学大学院情報科学研究科マルチメディア工学専攻の教授に就任[72]。ヒューマンインタフェース工学講座を担当し[73]、准教授には清水正宏が、助教には池本周平が着任[74]。2011年には『日経サイエンス』の連載「挑む Front Runner」で取り上げられ[5][注 7]、2013年にはNHK教育の『ふしぎがいっぱい』において、細田研究室のロボットを用いて人間の筋骨格構造の解説が行われた[76]。 細田は「人間の足がなぜ柔らかいのか」という未解決事項に対し、慶應義塾大学の解剖学者らとの共同研究で、2011年度から「屍体足・人工筋骨格ハイブリッドロボットによる二足歩行の適応機能解明」というプロジェクトを開始[77][78][26]。科学研究費助成事業基盤 (S) の支援を受けたもので、経費は総額で2億円を超える規模であった[78][26]。 細田らは屍体足を取り付けた(物理的な)歩行シミュレータで実験を重ねる。歩行シミュレータの実験では2方向X線透視撮影装置やCTスキャンによる解析を取り入れ、有限要素法による足部の動力学モデルを構築。このモデルを基に筋の活性化状況を解析し、筋骨格ロボットの制御へ応用した[79][23]。人間の運動機能の力学的解明に寄与したとして、学術的に評価された[23]。 基礎工学研究科教授時代2014年に大阪大学大学院基礎工学研究科の教授に転任[80]。研究室名は適応ロボット学研究室で[81]、准教授の清水正宏との共同運営[22]。2016年には自著『柔らかヒューマノイド』が化学同人から出版され[56]、2017年から日本ロボット学会の欧文論文誌『Advance Robotics』でEditor in Chiefを務める[82][31]。さらに同学会に設立されたソフトロボティクス研究専門委員会の委員にも名を連ね[83]、学会誌の特集号ではソフトロボティクスの歴史と展望を記している[84]。 この間、池本周平とは能動関節1個、柔らかい受動関節11個のソフトロボットアームに対し、人工知能で制御モデルを学習する手法を研究。カルマンの正準分解で学習データを選択するようにし、制御モデルの獲得を実現した[85]。2018年には中川友紀子が経営するアールティと共同開発した研究開発用ロボットアーム「CRANE-X7」が発売され[21]、2019年には同社協力の元『実践ロボット制御 ―基礎から動力学まで―』をオーム社から出版している[86][87][注 8]。 スイス連邦工科大学ローザンヌ校 (EPFL) のジェイミー・パイクと共同研究も実施しており、アギトアリを参考にしたT字型の小型群知能ロボット「Tribot」を開発。形状記憶合金により跳躍、匍匐、回転が可能で、ロボット間で連携してタスクを割り当てる[89][90]。細田も共著者の論文は2019年の『ネイチャー』に掲載された[89][91]。 京都大学教授時代2023年4月から京都大学大学院工学研究科機械理工学専攻 教授に着任し、先端システム理工学分野を担当[33]。2023年時点で大阪大学名誉教授[25]。 主な受賞歴
主な著作学位論文
著書(単著)
(共著・分担執筆)
(共訳)
学会誌記事(解説・単著)
(解説・共著)
(座談会・パネルディスカッション)
主な論文・特許
研究プロジェクト(科学研究費助成事業研究代表者)
(グループリーダーなど) 出演
脚注注釈
出典
参考文献
外部リンク
(研究者・研究室の情報)
(関連動画)
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