第162回天皇賞
第162回天皇賞(だい162かいてんのうしょう・あき)は、2020年11月1日に東京競馬場で行われた競馬の競走である。アーモンドアイが優勝し、芝のGI級競走8勝を成し遂げた。 競走前の状況主な競走結果下記各競走は、すべて2020年に行われたものである。また図中の太字強調は本競走に出走する馬である。 安田記念
宝塚記念
第61回宝塚記念(GI)は、6月28日に阪神競馬場で行われた競走である。阪神ジュベナイルフィリーズとエリザベス女王杯、大阪杯勝利のラッキーライラック、ホープフルステークス、皐月賞勝利のサートゥルナーリアというGI複数勝利馬が出走。加えて秋華賞馬クロノジェネシス、菊花賞馬キセキ、ダービー馬ワグネリアン、有馬記念勝利のブラストワンピース、香港ヴァーズ勝利のグローリーヴェイズ、マイルチャンピオンシップ勝利のペルシアンナイトが出走し、GI級優勝経験馬は総勢8頭が参戦。その他重賞3勝のスティッフェリオやカデナら重賞優勝馬が参戦し、総勢18頭での出走となった。 単勝1番人気に推されたのは金鯱賞を勝利から臨むサートゥルナーリアで2.4倍のオッズに支持された。大阪杯でワンツーフィニッシュとなった2着クロノジェネシス、1着ラッキーライラックが4倍台の2.3番人気で、ブラストワンピースが9.9倍の4番人気となり、ここまでが一桁台のオッズであった。以降人気はグローリーヴェイズ、キセキ、ワグネリアンと続いた。 サマー2000シリーズ
2020年のサマー2000シリーズは、新潟記念(GIII)を勝利したブラヴァスが合計15ポイントを獲得し優勝した[11]。いずれも福永祐一の騎乗によるものであった。ブラヴァスはその後12月のチャレンジカップ(GIII)に出走し、2着となった。札幌記念(GII)勝利のノームコアはエリザベス女王杯(GI)に進み、16着に敗退[12]。その他、函館記念(GIII)勝利のアドマイヤジャスタは福島記念(GIII)に[13]、小倉記念(GIII)勝利のアールスターはアルゼンチン共和国杯(GII)を目指した[14]。七夕賞(GIII)勝利のクレッシェンドラヴはジャパンカップ(第40回ジャパンカップ)(GI)に出走した(13着)。[15]。 優先出走権が得られる競走オールカマー
第66回オールカマー(GII)は、9月27日に中山競馬場で行われた競走である。菊花賞優勝、天皇賞(春)連覇のフィエールマンが出走を予定していたが[18]、競走4日前の夕方に体温が39度となる熱発を発症[19]。その影響で追い切りを中止したため、オールカマーを見送り、回避[20]。そのため、GI優勝馬の出走はなくなった。しかし、ジャパンカップ(第39回ジャパンカップ)や優駿牝馬(オークス)などGIで3回2着の経験があるカレンブーケドールが出走[18]。重賞を複数回勝利しているのは、日経賞(GII)やセントライト記念(GII)など重賞3勝のミッキースワロー[18]、セントライト記念と京成杯(GIII)勝利のジェネラーレウーノ[21]、福島記念(GIII)と七夕賞(GIII)勝利のクレッシェンドラヴ[21]の3頭であった。加えて、京都新聞杯(GII)勝利のステイフーリッシュや共同通信杯(GIII)勝利のオウケンムーンが重賞優勝馬である。その他、マーメイドステークス(GIII)でサマーセントに次ぐ2着となったセンテリュオや[18]、スプリングステークス(GII)でウインブライトに次ぐ2着となったアウトライアーズ、日経賞4着のサンアップルトンが出走[18]。以上9頭での競走となった。 単勝1番人気は、天皇賞(春)で3着となって臨むミッキースワローで、単勝オッズ2.9倍に推された。以降一桁台のオッズはミッキースワローを含め5頭であり、6番人気の10.2倍にジェネラーレウーノが推された。スタートからジェネラーレウーノが先手を奪って逃げ、1000メートルを64秒3で通過[22]。このペースは「超スローペース[22](サンケイスポーツ)」や「ゆったりとしたペース(日刊スポーツ)[23]」であったとされている。向こう正面でカレンブーケドールが仕掛け始めて2番手となるなどでペースが上がり[22]、それに続いてミッキースワロー、その後ろから後方で待機していたセンテリュオが進出を開始した[22]。ステイフーリッシュやクレッシェンドラヴは3番手から[24]、先頭に迫るカレンブーケドールに続いて進出し[25]、最後の直線に進入する。直線ではジェネラーレウーノは後退し、カレンブーケドールが先頭となり、後方との差を広げて押し切りを図った[26]。しかし、後方から追い込んだ外からセンテリュオがゴール寸前でハナの差カレンブーケドールを差し切って先着[27]、その競り合いの1馬身4分の1後方でステイフーリッシュが入線[25]。 センテリュオが7回目の挑戦で重賞制覇を果たした[23]。牝馬がオールカマーを制覇したのは2017年のルージュバック以来12回目であり[16]、牝馬がワンツーフィニッシュを果たしたのは1着ショウナンパンドラ、2着ヌーヴォレコルトとなった2015年以来で5年ぶりのことであった[16][23]。なお2着のカレンブーケドールは4戦連続5度目の2着となった[26]。 センテリュオは天皇賞(秋)の優先出走権を獲得[17]。しかし優先出走権を行使することなく出走を見送り、天皇賞(秋)から2週間後のエリザベス女王杯(GI)を目指した[22][23]。 京都大賞典
第55回京都大賞典(GII)は、10月11日に京都競馬場で行われた競走である。GI優勝馬では菊花賞勝利のキセキ、香港ヴァーズ勝利のグローリーヴェイズが出走。重賞優勝馬は、ステイヤーズステークス(GII)勝利のアルバートやリッジマン、モンドインテロの3頭が集結。目黒記念(GII)勝利のキングオブコージとアルゼンチン共和国杯(GII)勝利のパフォーマプロミス、重賞2勝のダンビュライトに加えステイフーリッシュが出走。その他宝塚記念3着の経験があるノーブルマーズ、条件戦3連勝で臨むシルヴァンシャーなど、総勢17頭での出走となった。 単勝オッズ3.5倍の1番人気に推されたのはキセキ、2番人気キングオブコージが5.2倍、3番人気グローリーヴェイズが6.2倍と続き、以降ステイフーリッシュ、ダンビュライト、パフォーマプロミスが一桁台のオッズであり、6番人気までに収まった。グローリーヴェイズが好位から直線で伸びて差し切り[30]、ゴール直前で馬場の外側から追い上げるキセキを振り切り、4分の3馬身離して入線した[30]。 グローリーヴェイズは、2019年の香港ヴァーズ以来、重賞3勝目を達成[31]。関東所属馬の勝利は1998年(第33回京都大賞典)のセイウンスカイ以来であった[31][32]。この勝利により天皇賞(秋)の優先出走権を獲得した。しかし、優先出走権を行使することなく出走を見送り、天皇賞(秋)から4週間後のジャパンカップを目指した。 毎日王冠
第71回毎日王冠(GII)は、10月11日に東京競馬場で行われた競走である。朝日杯フューチュリティステークス(GI)を勝利し、皐月賞及び東京優駿(日本ダービー)にて二冠を果たしたコントレイルに次ぎ、2着となった3歳馬サリオスが参戦、初めての古馬との対決となった。重賞優勝馬は、弥生賞(GII)や小倉大賞典(GIII)など重賞3勝のカデナ、フラワーカップ(GIII)とターコイズステークス(GIII)勝利のコントラチェックという重賞複数優勝馬に加え、毎日杯勝利の3歳馬サトノインプレッサや、東京巧者で知られるエプソムカップ(GIII)勝利のダイワキャグニー、函館スプリントステークス(GIII)勝利のカイザーメランジェが出走した。その他、巴賞(OP)勝利のトーラスジェミニやプリンシパルステークス(L)勝利のザダル、メイステークス(OP)勝利のアイスストームなど、11頭での競走となった。 単勝オッズ1.3倍の1番人気にはサリオスが推された。単勝支持率は60.2パーセントに上り[31]、これは1984年のグレード制導入以降、1999年(第50回毎日王冠)のグラスワンダーの支持率、66.3パーセントに次ぐ2番目に高い数字であった[31]。次いで8.2倍の2番人気にはサトノインプレッサ、8.5倍の3番人気にザダル、この3頭が一桁台のオッズに推された。以降ダイワキャグニー、サンレイポケット、カデナと続き、最低11番人気のカイザーメランジェは328.3倍に推された。スタートからトーラスジェミニが逃げの手を打ち、それにコントラチェックやダイワキャグニーが続き、サリオスが4番手に位置した[35]。先頭のトーラスジェミニが1000メートルを58秒0で通過、「速いペース」(週刊Gallop[35])の中、最後の直線に進入。2番手のコントラチェックが逃げ粘るトーラスジェミニを捉えようとする中、残り300メートル地点でサリオスが追い出しを開始[35]。同じく進出を試みるダイワキャグニーと馬体を併せながら先頭となると、そこからサリオスがダイワキャグニーを置き去りにし、後方に3馬身離して決勝線を通過した[35]。ダイワキャグニーは後方から伸びたサンレイポケットをハナ差ばかり退けて2着を確保[35]。2番人気のサトノインプレッサはスタート直後に出遅れるなど10着に敗退した[35]。 サリオスは2019年の朝日杯フューチュリティステークス以来の勝利で重賞3勝目を達成。後方に3馬身以上離して勝利したのは1969年第20回毎日王冠(ダート2100メートル)のタケシバオー(3馬身半)以来51年ぶりのことで[31]、グレード制及び1800メートルで行われるようになった1984年以降、最大の着差をつけての勝利であった[31]。加えて、538キログラムの馬体を持つサリオスは、2006年の第57回毎日王冠に勝利したダイワメジャー(526キログラム)を更新するレース史上最高馬体重での勝利である[31]。この勝利により天皇賞(秋)の優先出走権を獲得した。しかし、優先出走権を行使することなく出走を見送り、天皇賞(秋)から3週間後のマイルチャンピオンシップ(GI)を目指した。 天候
10月23日(金曜日)に5.5ミリメートルの降水を観測して以来記録されなかった[38]。 馬場状態富士ステークス直前の金曜日は雨の影響で、稍重であった[37]。しかし馬場は回復し、富士ステークス自体は良馬場で実施[39]。その後馬場状態が悪化することはなかった[40]。天皇賞(秋)が行われる、4回目の東京開催は4週目となり、この週から最も内側の「Aコース」から3メートル外側に内柵を設ける「Bコース」での使用が開始された[38]。JRAによると「柵の移動により傷んでいた箇所は概ねカバーされたが、(第)3コーナーの内柵沿いに傷みがある[38]。」と発表している。 競走当週は芝刈り、肥料と殺菌剤の散布、散水を実施[38]。芝の草丈は、野芝は約10 - 12センチメートル、洋芝は約14 - から18センチメートルに設定された[38]。競走2日前の金曜日に観測した芝のクッション値は、9.3で「標準」とされるクッション性であり、同じく含水率は、ゴール前が14.9パーセント、第4コーナーが13.3パーセントを観測した[38]。 出走馬18頭まで出走可能な天皇賞(秋)には、12頭が出走登録を行った[41]。 牝馬三冠を筆頭にGI級競走7勝を挙げており、前年の天皇賞(秋)(第160回天皇賞)制覇に続く天皇賞(秋)連覇を目指すアーモンドアイ、同じく秋華賞を優勝した牝馬で、古馬となり牡馬相手の第61回宝塚記念を勝利したクロノジェネシスが出走を表明[42]。この2頭は初めて顔を合わせることとなり、軍土門隼夫は「最強牝馬決定戦」と表現している[42]。一方牡馬では、天皇賞(春)を連覇したフィエールマンが、初めて天皇賞(秋)の舞台に立った[42]。過去に6頭存在する天皇賞春秋連覇[42]及び、テイエムオペラオー、キタサンブラックという顕彰馬2頭に並ぶ天皇賞3勝を目指すこととなった[42]。以上、日本国内のGIを複数回勝利している3頭である。 それ以外のGI優勝馬では、クイーンエリザベス2世カップ、香港カップという香港G1を2勝したウインブライト[42]や2018年の有馬記念(第63回有馬記念)勝利のブラストワンピース[42]、2017年の菊花賞(第78回菊花賞)勝利でそれ以降新たな勝利のないキセキ[42]及び2017年の朝日杯フューチュリティステークス勝利し、前年の天皇賞(秋)にてアーモンドアイの後方2着となったダノンプレミアムが登録[42]。その他、中山記念(GII)など重賞3勝を挙げ、東京優駿2着や皐月賞と大阪杯で3着のダノンキングリー[42]、弥生賞(GII)など重賞3勝のカデナ、エプソムカップ(GIII)を勝利した騸馬のダイワキャグニー[42]、2019年の府中牝馬ステークス(GII)ではGI優勝馬ラッキーライラックを差し切り勝利したスカーレットカラー[42]、牝馬三冠を達成したアパパネの産駒であるジナンボーが登録した[42]。 競走除外、出走取り消しは発生せず、登録した12頭の出走が実現した。 主な回避馬
枠順
展開スタート直後ダイワキャグニーがハナを主張するも2番手に甘んじ、ダノンプレミアムが外枠から制して逃げの手を打つ[47]。続いて好位の3.4番手にキセキとアーモンドアイが位置した。中団にはブラストワンピースやウインブライト、ダノンキングリーがおり、その後方にフィエールマンとクロノジェネシスが追走[47]。最後方はスカーレットカラーとカデナであった。ダノンプレミアムが2番手のダイワキャグニーに3馬身つけて逃げる中、1000メートルを60秒5で通過した。 ダイワキャグニーが最終コーナーで後退する中[47]、最後の直線に進入した。キセキが2番手に進出したが、先頭との差が縮まらなかった。アーモンドアイは「抜群の手応え」(週刊Gallop)で直線に向き、4番手から追い出しを始めた。残り300メートルでゴーサインが発出されると加速し[48]、残り200メートル過ぎにて先頭で粘るダノンプレミアムを捕らえた[47]。そんな中、馬場の外側後方ではクロノジェネシスが、さらに後方からフィエールマンが追い上げを開始[47]。アーモンドアイが先頭となったにつれてフィエールマンとクロノジェネシスが追い上げるも半馬身振り切り[48]、アーモンドアイが先頭で入線した。 競走結果着順以下の内容は、JRA[49]及びnetkeiba.com[50]の情報に基づく。
競走に関するデータ
配当払戻
ワイド「7 - 9」180円は、天皇賞(秋)におけるワイド最低払戻金額である[55]。競走全体の売上は、215億897万3200円。前年第160回天皇賞の99.7パーセント。週刊Gallopは「微減」とし「12頭と少頭数」なのが原因と表した[55]。 当日の東京競馬場への入場者は1310人で、前年第160回天皇賞開催日の1.3パーセント[56]。 当日のWIN5(5重勝単勝式)
達成された記録
アーモンドアイ
テレビ・ラジオ中継本レースのテレビ・ラジオ放送の実況担当者は、以下の通り。
関連項目
参考文献雑誌
脚注注釈出典
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