土萠ほたる
土萠 ほたる(ともえ ほたる)は、メディアミックス作品『美少女戦士セーラームーン』に登場する架空の人物。 原作漫画第三部、『Crystal』第三期冒頭、テレビアニメ第三作『美少女戦士セーラームーンS』(以下『S』)の後半で初登場。Mixx(現TOKYOPOP)から刊行された北米版ではJenny(ジェニー)という名前だったが、後にファンの抗議で"Hotaru"に修正された。 人物紫に近い黒髪のおかっぱと紫色の瞳を持つ、謎めいた少女。小中高一貫の名門校・私立無限学園の理事長・土萠創一教授の一人娘。初登場時は無限学園初等部6年生。心優しく、病弱でか細いが、他人の傷を癒やす不思議な力を持つ。 ちびうさの親友。通学時は無限学園の冬服に黒いタイツをあわせている[注釈 1]。私服も基本的に黒いタイツと黒いタートルネックのセットアップ[注釈 2]。実は凶悪な異次元人であるデス・バスターズのミストレス9に寄生されていた。その正体は世界の終わりを導く破滅の戦士・セーラーサターンの生まれ変わりで、サターンの目覚めを防ごうとする外部太陽系戦士に命を狙われる。 原作では4年前にビル建設中の火災事故で母の螢子を亡くして瀕死の重傷を負うが、「人間と機械が融合した超生物」を研究する土萠教授にサイボーグ化されて生き伸び、ファラオ90と結託した土萠教授にミストレス9が孵る前のダイモーンの卵を移植された。肌の露出を避けているのは、手術で手足を中心にできた手術痕と肉体を補う機械のパーツを隠すためである。 テレビアニメでは土萠教授の研究所を見学中にデス・バスターズ飛来の爆発に巻き込まれ、土萠教授と取引したファラオ90に命を救われてダイモーンの卵を移植された。儚げな美少女として登場し、当時アニメファンに支持された水野亜美に並ぶ人気を獲得した。原作者の武内直子は「アニメで大変可愛くしてもらったが、漫画では土くさくドスのきいた少女のイメージで描いていた」と述べた。 ミストレス9に操られて同級生を傷つけてしまうので学校で孤立し、土萠教授も研究に没頭しているので塞ぎ込んでいた。土萠教授と深い仲のように見える彼の秘書兼助手・カオリ(カオリナイト)が世話係で、ほたるはカオリを「家庭にまで入ってこないで」と嫌い続け、テレビアニメでは自分を嘲る者を許さないカオリのいじめに遭う。激しい病気の発作と生身ではない体、知らない内に友達を傷つける自分に苦しみ、ひとりぼっちで死んでいくのかと思っていたが、ちびうさと出会って明るさを取り戻していく。実はほたるの発作は病から来るものではなく、ほたるの肉体を奪おうとするミストレス9の魂とサターンの力を秘めたほたるの魂の衝突で起きている。テレビアニメでは土萠教授に特定の医師以外の診察を禁止された。 プロフィールプロフィールは、大概が原作のもの。
原作漫画・『Crystal』4年前にビル建設中の大火災に巻き込まれ、母親・螢子を亡くして自身も重体となるが、「機械と人間を融合させた『超生物』の誕生」を追求する父親・土萠創一教授の実験台としてサイボーグ手術を受けて助かり、密かにミストレス9が孵る前の「ダイモーンの卵」を移植されている。実は「機械と人間の融合」から「ダイモーンと人間の融合」に心変わりした創一に未完成体のまま放置され、余命幾ばくもない。 第三部で土萠研究所に迷い込んだちびうさと初めて出会う。何もかも見通すような目を持ち、創一にもらった先祖代々の品で母の形見の「アミュレット」を握って発作を鎮めるが、これはミストレス9を強化させる「タイオロン・クリスタル」だった。ちびうさの「幻の銀水晶」に発作を癒やされてアミュレットのようだと言うが、タイオロン・クリスタルに近い銀水晶の力を知ったミストレス9にちびうさの銀水晶を奪われ、肉体も支配されてしまった。外部太陽系戦士のセーラーウラヌス、セーラーネプチューン、セーラープルートによると、生き延びるにはサターンの力に覚醒するしかなく、ミストレス9の支配はむしろ好都合と見なされた。 残された魂は創一を見守ったが、自分の治療を放棄した上でゲルマトイドと同化した姿を見せた創一を見て、母の死後の優しい父はもう父ではなかったと知って別れを告げる。全てを失っても消滅しない自分に驚きながら魂の奥底に眠るサターンの「みんなを助けよ」という強い意思を感じ、ミストレス9に奪われたちびうさの銀水晶と四守護神の聖体を送り返した。意識を取り戻したちびうさに「女のコ同士なのにヘンかもしれないけど、運命の出会いだって思ったわ」と語り、出会えたことを喜びながら消滅する。 幻の銀水晶と伝説の聖杯を抱えたスーパーセーラームーンがファラオ90の内部に特攻すると、外部太陽系戦士のタリスマンに共鳴してセーラーサターンに覚醒。無限三角洲を「オメガ・エリア」にしたエネルギーを破滅の力に収束させて街を滅ぼし、救出したスーパーセーラームーンに月の王国再興の地となるTOKIOの街の再生を託すと、観念したファラオ90の最期を導こうと重力の墓場と化したタウ星系に旅立ち、プルートに頼んで本来ありえないタウ星系への道を閉ざした。ネオ・クイーン・セレニティに変身したセーラームーンが街を再生させると、赤子の姿に再生して外部太陽系戦士に引き取られていく。 第四部では異常なスピードで幼児に急成長し、みちるを「みちるママ」、せつなを「せつなママ」、はるかを「はるかパパ」と呼ぶ。新しい家族と健康な肉体を手に入れて性格も活発になり、ワンピースの服を好んでハイソックスの靴下をはくか素足のまま過ごす。デッド・ムーンに操られるセーラー戦士の存在を感知し、セーラーちびムーンと共に戦うためにスーパーセーラーサターンへと覚醒。肉体の成長もちびうさの外見年齢と同じ8歳で止まり、はるかたちにイェイツの詩『再臨』の一説を引用して再覚醒を告げるとセーラークリスタルを授けた。再覚醒後は超然とした一面を覗かせ、ジオラマサイズの太陽系の幻を映す能力を操る。ちびムーンの危機を救ってアマゾネス・カルテットの説得に成功するが、ジルコニアにちびムーンもろとも鏡の破片の中に閉じ込められた。解放されるとカルテットが囚われたアマゾンストーンを拾い、エターナルセーラームーンが変身したネオ・クイーン・セレニティの力を注いでもらう。 第五部ではちびうさと同じ区立十番小学校3年3組に編入。黒いリボンチョーカーとジャンパースカートをセーラーシャツに合わせた服装に着替えた。ちびうさと手を繋いで登校し、寂しがるうさぎに「じゃ まもちゃんと手つなげば?」と言う小生意気な性格になる。シャドウ・ギャラクティカを調査しに母星の城へと旅立ったウラヌス、ネプチューン、プルートと別れたが、プルート襲撃を感知して変身前のまま冥王星に向かったが、そこでギャラクシアにセーラークリスタルを奪われ消滅した。ギャラクシアの傀儡にされてセーラームーンに倒され、ギャラクシーコルドロンの海でうさぎと再会。数年後にうさぎと衛の結婚式に出席したが、容姿は再覚醒時点からあまり変わっていない。 テレビアニメ創一に愛情を注がれて育ち、母は過去回想のシルエットにのみ登場。土萠研究所を見学中、ダイモーンの卵の状態で飛来したデス・バスターズの大火災で重症を負う。創一がダイモーンの卵にほたるを助けさせた代わりに、創一はゲルマトイドに体を奪われてほたるもミストレス9に寄生されたが、セーラーサターンの生まれ変わりのほたるだけは操られずにすんでいた。 ちびうさとは十番自然公園で帽子を拾って出会った。無限学園の女子生徒の「ともえさん」の声に喜び、勘違いと知って落胆した後にちびうさに話しかけられたり、子供の頃からの虚弱体質を克服した高校生ジャンパー・早瀬瞬にファンレターを書いたこともある。セーラーサターンの覚醒を防ごうとするウラヌスたち外部太陽系戦士に命を狙われたが、ちびうさとセーラームーンたちに守られた。セーラーサターンやミストレス9の意思がほたるの身を守る描写もあり、ほたるの体の中のミストレス9にはセーラー戦士の正体を知られていた。 『S』終盤でミストレス9に身体を乗っ取られ、ほたるを想うちびうさの「ピュアな心の結晶」を飲み込んでしまう。ミストレス9に残る意思も消されかけたが、ゲルマトイドから解放された創一の声に反応して意識を取り戻す。「創一とちびうさを守りたい」という気持ちでミストレス9の意思と戦いながらサターンの力に目覚め、ミストレス9を体ごと滅ぼしてサターンとして蘇った。眠っているちびうさにピュアな心を返し、セーラームーンに守られた恩を返そうとファラオ90を滅ぼしに向かった。 大鎌「サイレンス・グレイブ」の破滅の力は自分自身をも滅ぼしてしまうと語り、止めようとするセーラームーンと創一に別れを告げ、地球を器化しようとするファラオ90の中に飛び込んでいく。セーラームーンもセーラー戦士に受け取った力(ウラヌス・ネプチューンを含む)をピュアな心の結晶に集めて助けに行くが、滅びの力を使って命を落とたほたるは赤子に再生されて連れ帰られた。はるかとみちるに託された後、肉体的・精神的ショックでデス・バスターズに関わった記憶を失った創一の手に戻される。 第五部『セーラースターズ』の序盤では、デッド・ムーンのネヘレニアとの戦いを前に「サターンの力が必要になる」と判断したせつなに預けられた。シャドウ・ギャラクティカのセーラーギャラクシアの陰謀でちびうさと同じ年頃に急成長し、スーパーセーラーサターンに覚醒。天真爛漫な性格だが、幼くして一般相対性理論を理解する天才的な頭脳と太陽系を高速シミュレートする能力を見せる。ネヘレニアに地場衛を連れ去られたちびうさと再会するが、衛にかけられた呪いでちびムーンが生まれる未来が消えかけてしまう。サイレンス・グレイブをネヘレニアに振りかざそうとするが、ほたるの消滅を恐れたちびムーンに阻止された。ネヘレニアに鏡の中に封印されてちびムーンの消滅を見るが、エターナルセーラームーンと共鳴して呪いを吹き飛ばした。 『セーラースターズ』終盤では、他の外部戦士と共にギャラクシアと対決して敗北する。「配下にならないか」というギャラクシアの誘いを拒み、ギャラクシアに下った芝居をしたウラヌスとネプチューンにスターシードを抜かれて消滅したが、心を取り戻したギャラクシアにスターシードを返された。 テレビアニメ『S』から『SuperS』までの間を舞台にしたスーパーファミコン用ソフト『ANOTHER STORY』では赤子の姿で登場するが、原作同様にはるか・みちる・せつなに育てられている。ヘル・デスティニーが運命を変えようとしていることを察知して、一時的に12歳の姿に急成長してセーラーサターンに変身し、セーラームーンとちびムーン達に同行する。ヘル・デスティニーに運命を変えられてミストレス9に戻ってしまい、ミストレス9とほたるの間で不安定になるがセーラームーンの「幻の銀水晶」の光でほたるに固定され、ゲルマトイドに寄生された創一を助けようとする。ヘル・デスティニーとの闘いが終わると、ちびうさと別れて赤子に戻ってはるか、みちる、せつなに連れ帰られた。 セーラーサターン土星を守護星に持つ破滅と誕生の戦士、または沈黙の戦士。その使命は世界の滅亡が避けられない時に目覚め、死の女神の鎌「 コスチュームの色は青紫色。リボンの色はレッドブラウン。ティアラの宝石は紫色(テレビアニメでは白)だが、白い結晶[注釈 3]のブローチとチョーカーを着用。他のセーラー戦士とまったく違う姿を持ち、花びらに似た肩のフリル、先を尖らせた手袋を装備。外部太陽系三戦士と同じ無地の襟、銀の三角錐を下げた金の惑星のピアス、編み上げのロングブーツも着用する。 第三期終盤でミストレス9に魂を奪われたちびうさを救って覚醒。旧作テレビアニメでセーラー戦士で唯一変身シーンがなく、新作の劇場版『Eternal』で初披露した[注釈 5]。
「幻の銀水晶」の守り手の最期を感知した外部太陽系三戦士のタリスマンの共鳴で目覚める。原作第三部と『Crystal』の決め台詞は「破滅の星!土星を守護にもつ沈黙の戦士!セーラーサターン!」。『Eternal』の名乗りシーンの背景は土星と紫と白の薔薇の花。異名は「死への案内人」「破滅の神」「死の淵よりの使者」。ほたるの心の奥底に眠ったまま火災で命を終えるはずが、土萠教授の歪んだ心に呼ばれた異界の悪にショックを与えられ、決められた運命の通りに力を集結させたTOKIOの街で目覚めた。死の女神らしく超然としているが冷酷ではなく、もう一人のメシアでもある。無限三角洲を「オメガ・エリア」にした負のエネルギーはサターンから生まれたものらしく[注釈 6]、幻の銀水晶の守り手であるスーパーセーラームーンに後を託してタウ星系とファラオ90の最期を導きに去った。
旧作テレビアニメと『Eternal』の決め台詞は「沈黙の星・土星を守護に持つ 破滅と誕生の戦士セーラーサターン!」。他のセーラー戦士よりも戦闘経験は少ないが、秘めた実力は相当なものを持っている[1]。ちびうさと土萠教授を想うほたるの意思によって覚醒、自らの体に巣食うミストレス9を滅ぼす。伝説の聖杯の力を吸収してセーラームーンを弾き返したファラオ90の内部に侵入し、命と引き換えに滅びの力をファラオ90に行使するが、ピュアな心の力を使ったスーパーセーラームーンの力で赤子に再生した。
バンダイ版のミュージカルでは、『SuperS 夢戦士〜愛・永遠に』に第四部の敵デッド・ムーンに操られた記憶喪失の少女として初登場し、改訂版で変身してセーラー戦士の仲間になった。『セーラースターズ』では「デスリボーンレボリューション」をセーラームーンに力を注ぐ技として使用。『かぐや島伝説』では宝探しツアーで行った無人島・かぐや島の意志の依り代にされる。「時空の扉」を突破した強敵が現れると復活し、その前は変身不能という設定も登場した。
パワーアップ形態
アイテム
変身呪文
セーラーサターンの必殺技
キャスト
反響テレビアニメ『S』後半における、病弱で、しかも数々の不幸な運命という逆境に立たされつつも他人を思いやり、クライマックスにおいて自ら運命に向き合うという儚げなキャラクター像は、放送当時のアニメファンの心を揺さぶり爆発的な人気を得た[5]。この頃からおたく層を発祥として、美少女キャラクターに対する好意を意味する「萌え」という俗語が普及するが、その語源に関する諸説の中には、土萠ほたるの名前をルーツに求める説もある[6][7]。 脚注注釈
出典
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