南阿蘇鉄道高森線
高森線(たかもりせん)は、熊本県阿蘇郡南阿蘇村の立野駅から熊本県阿蘇郡高森町の高森駅に至る南阿蘇鉄道の鉄道路線である。 概要旧国鉄特定地方交通線であった高森線を第三セクターに転換して開業した路線[1]。立野を出て北の阿蘇五岳(中央火口丘)、南の外輪山に挟まれた南郷谷を白川に沿って東に進み終点の高森に至る[1]。高森駅を除いた全駅が南阿蘇村に属している。 起点の立野駅は阿蘇カルデラを囲む外輪山の切れ目にあり、九州旅客鉄道(JR九州)豊肥本線と接続している[1]。立野駅はスイッチバックがあることで知られているが、これは豊肥本線で阿蘇谷(阿蘇カルデラの北半分)に進む場合に通るもので、高森線を行く場合は経由しない。 立野 - 長陽間にある立野橋梁は九州では珍しいトレッスル橋で、2010年7月に山陰本線の旧余部橋梁が供用を停止してからは日本最長 (136.8m) の鉄道用トレッスル橋である[3]。また同区間にある第一白川橋梁(高さ64.5m)は、完成当時水面からの高さが日本一であった。現在でも、のちに建設された、高千穂橋梁、大井川鐵道関の沢橋梁に次ぐ高さである。1953年6月26日の熊本大水害(6.26水害)時には、橋梁前後のトンネルにも水が押し寄せてきたという。第一白川橋梁では、以前高千穂橋梁で行っていたように、運転士が乗客に車窓を楽しませるため、乗客サービスの徐行運転をすることがある。 この路線には、2020年3月まで日本一長い駅名だった「南阿蘇水の生まれる里白水高原駅」がある。ほかにも「阿蘇下田駅」から駅名を変更した「阿蘇下田城ふれあい温泉駅」という長い駅名を持つ駅名があったが、駅舎内の温泉施設が2016年の震災による施設被害で営業を断念、2023年7月の全線営業再開時に駅名を「阿蘇下田城駅」に再度変更した。 かつては高千穂線とつながり九州中部を横断する予定だったこの路線も、南阿蘇の山々と田園風景の中を行くのんびりしたローカル線になっている。高森駅近くには、工事中の異常出水で工事を断念せざるを得なかった高森トンネルが高森湧水トンネル公園として保存されている。
路線データ
2016年熊本地震による被災→復旧工事については「第一白川橋梁」を参照
高森線は、2016年4月に発生した熊本地震で被害を受け、全線で不通となった[4]。2016年7月31日に中松駅 - 高森駅間が復旧し、運転を再開[5]、立野駅 - 中松駅間は2023年7月に復旧し全線で運転を再開した[6]。 熊本地震による不通区間については国土交通省の復旧調査によると、立野駅 - 長陽駅間の第一白川橋梁・犀角山トンネル・戸下トンネル・立野橋梁・崩壊箇所復旧および全線の軌道修復を中心として5年の期間と、65〜70億円の予算が掛かる見込みとされた[8][9][4]。 2019年11月に南阿蘇鉄道は、2022年度中に不通区間の復旧工事を進めたうえで2023年夏に全線を復旧させる方針を示した[10]。県や沿線自治体で構成する「南阿蘇鉄道再生協議会」は、立野駅から高森線の列車のJR豊肥本線の肥後大津駅への乗り入れを目指すとした[11][12]。県の試算では、乗り入れに必要な事業費として、車両や信号機の改良、JR側のシステム改修など約4億2千万円が見込まれている。高森町と南阿蘇村の負担を軽減するため、県は2022年度一般会計当初予算案に乗り入れの経費支援として1億3300万円を計上した[13]。県の調査結果によると、立野駅での乗り換え解消によって移動時間が約7分短縮し、年間の乗客数が熊本地震前(2015年度に約25万7千人)と比べて、約6万8千人増えると見込まれている[11][12]。JR九州もこの乗り入れ構想に協力する意向を示し、2021年10月、立野駅の構内改良工事の設計に着手した[14]。乗り入れ開始時期は高森線の全線復旧と同時を想定しているが、両者で協議して正式決定するとした[14]。熊本空港アクセス鉄道計画で肥後大津ルートが採用されたため、熊本空港から乗換え1回だけで高森線沿線に行けるようになる[15][16]。 2023年2月3日、同年7月15日に立野駅から中松駅間が運転再開し7年3か月ぶりに全線復旧することが発表された。また同時にJR豊肥本線の肥後大津駅まで午前中の2往復が乗り入れを開始することとなった[17][18]。なお、当初は全線運転再開時に見晴台 - 高森間の高森湧水トンネル公園付近への新駅設置が検討されていたが[19][注釈 1]が、最終的に見送られている。 運行形態2023年7月の全線開通後の運行形態は以下の通り[21]。 普通列車定期運行の普通列車は1日11往復の運行で、立野駅 - 高森駅間の線内折り返し運転のほか、午前中の2往復が豊肥本線肥後大津駅まで直通する。木・金・土休日には午前中に線内運転の臨時列車が1往復運行される。全列車がワンマン運転を実施している。 車両はMT-3000形・MT-4000形が使用される。豊肥本線直通列車にはMT-4000形が使用される。
トロッコ列車「ゆうすげ号」観光客向けとして、3月から11月までの土日祝日に(夏休みなどの多客期は毎日)トロッコ列車「ゆうすげ号」が2往復運行されている。2024年3月16日時点では、午前に運転される1往復(2・3号)は各駅に停車、午後に運転される1往復(4・5号)は、途中加勢駅・南阿蘇水の生まれる里白水高原駅・見晴台駅を通過する[22]。DB16形ディーゼル機関車2両の間にトラ700形2両、TORA200形1両を組み入れた編成である。ただし、列車により気動車を併結して運行する場合がある[23]。 全席指定席で、運賃のほかにトロッコ料金が必要となる。JR九州が発売している「旅名人の九州満喫きっぷ」では乗車できない。
2016年熊本地震後から全線復旧までの運行状況中松駅 - 高森駅間で、日中のみの運行となっていた。 2016年7月31日の運行再開当初から同年8月31日までは平日・日祝日ともに普通列車1往復・トロッコ列車3往復の運行であった。2016年9月1日からのダイヤでは、平日は普通列車3往復が運行される。土日祝日は4往復の運行で、始発1往復が普通列車、そのあとの3往復がトロッコ列車「ゆうすげ号」で運行された[24]。2016年12月1日からのダイヤでは、全日普通列車1日3往復となっていた[25]。 2017年4月16日改正ダイヤでは、平日は普通列車3往復、土日祝日は普通列車2往復・トロッコ列車2往復となっている[26]。 2017年4月15日からは、復興支援として漫画家117人が参加して「ドラえもん」・「名探偵コナン」等のキャラクターを描き寄せた「がんばれクマモト!マンガよせがきトレイン」を運行開始した[27][28]。 歴史豊肥本線の前身である宮地線の支線として開業した。改正鉄道敷設法で「熊本県高森ヨリ宮崎県三田井ヲ経テ延岡ニ至ル鉄道」として定められ、高森駅から三田井(高千穂)を経て延岡までの延伸が計画されていたが、宮崎県側の高千穂 - 延岡間が高千穂線(後の高千穂鉄道高千穂線)として開業したのにとどまり、高森 - 高千穂間の建設はトンネル掘削中の異常出水事故により中断、1980年凍結された。完成していた一部のトンネルや高架橋は1998年までに解体された(高森 - 高千穂間の詳細は高千穂鉄道高千穂線「未開業区間」の項を参照)。 ![]()
駅一覧
脚注注釈出典
参考文献
関連項目外部リンク
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