ルポ級フリゲート
ルポ級フリゲート(イタリア語: Fregata Classe Lupo)は、イタリアのリウニーティ造船(CNR)社が建造したフリゲートの艦級。 対艦兵器が充実しており、まず本国イタリア海軍が4隻を発注したほか、これに準じた改型については、ペルー海軍が4隻、ベネズエラ海軍が6隻、イラク海軍が4隻を発注し、合計で18隻が建造された。 ただしイラクが発注した4隻は、湾岸危機を受けた国際連合安全保障理事会決議661の採択によって引渡せなくなったことから、これらは後にイタリア海軍に引き取られてアルティリエーレ級(Classe Artigliere)として就役したが、これらの4隻については艦名が兵科名であることからソルダティ級(Classe Soldati)とも呼ばれるほか、日本語文献では改ルポ級とも呼称される[1]。 設計設計はおおむね前任のアルピーノ級を発展させたものとなっており、船型も中央船楼型を踏襲した。船楼上の艦橋構造物は3層で、また艦橋の上にも1層の甲板室が設けられている。その前端にはNA-10射撃指揮装置の管制室があったが、2番艦ではレドームによって代替されていた。一方、船楼の後方には煙突が設けられ、その直後に連続した後部上部構造物にはハンガーなどが設けられている。当初、マストは1本だけだったが、1978年から1979年にかけて煙突の直前に後檣が新設されて、RAN-10S対空捜索レーダーはこちらに装備された[2]。 主機関にはCODOG方式を採用しており、巡航機としてはフィンカンティエリ系列のグランディ・モトーリ・トリエステ(GMT; 現バルチラ・イタリア)社によるBL-230-20-DVMあるいはA230-20Mディーゼルエンジンを、高速機としてはゼネラル・エレクトリック LM2500をフィアット社がライセンス生産したガスタービンエンジンが搭載された。推進器としては可変ピッチ式スクリュープロペラ(CPP)が両舷に計2軸配置されており、巡航機と高速機は各推進器に1基ずつ、減速機を介して接続されて、これを駆動する。この主機関により、ネームシップは海上公試で35.02ノットを発揮した。また80%の出力で32ノットを発揮可能とされている。一方、ディーゼルエンジンのみを使用した場合の速力は20.3ノットである。また電源としては、出力780kWのフィアット236SS型ディーゼル発電機が4基搭載されている。機関区画は、補機室、ガスタービン室、減速機室、ディーゼル発電機室の4室構成とされている[2]。 装備電子装備については、各国で差異が大きい部分である。センサとしては、SバンドのRAN-10S対空捜索レーダーは全艦共通の装備として搭載される。ただし艤装要領は異なっており、イタリア海軍艦では前檣に、海外の艦では後檣に搭載される。またLバンドとXバンドを併用する対空対水上レーダーとして、RAN-11L/XないしRAN-12L/Xも併載される。装備位置は、イタリア海軍艦では後檣、海外の艦では前檣である。一方ソナーとしては、原型艦ではレイセオン社のDE 1160Bを船底装備式に、またそれ以外の改型ではEDO 610E型を船底装備式に搭載する。これらはいずれも7キロヘルツ級の中周波ソナーである。ただしアルティリエーレ級では、イタリア海軍で就役する際に、対潜兵器とともにソナーも撤去された[2][3]。 本級は、同世代の英米の艦と比して小型の艦型にもかかわらず、重武装を施されている[4]。特に、ルポ級はイタリア海軍の戦闘艦として初めて艦対艦ミサイルを搭載した艦級であり、その主兵装であるオトマートは、艦橋構造物後部の両脇に2基ずつと後部上部構造物の両脇に2基ずつ、計8基の単装発射筒をいずれも01甲板レベルに搭載している。これは他国運用艦にも共通した艤装である[2][4]。 砲熕兵器としては、主砲としてコンパット54口径127mm単装速射砲を艦首甲板に、また近接防空用のコンパット70口径40mm連装機関砲を後部上部構造物両脇の01甲板レベルに搭載する。127mm砲はRTN-10Xレーダーと連接されたNA-10 mod.2射撃指揮装置により統制され、また40mm機銃はRTN-20Xレーダーとともにダルド・システムとして構築されている。また個艦防空ミサイルとしては、後部上部構造物上にシースパローまたはアルバトロスの8連装発射機が搭載された。その射撃指揮装置としては、シースパローを搭載した原型艦ではアメリカ製のMk.91が搭載されたが、アルバトロスの搭載艦ではイタリア製のレーダーとされ、砲射撃指揮用のものと兼用した艦もあった[2]。 なお艦載機として中型ヘリコプター1機を搭載するが、艦型が小さいことから、格納庫はカルロ・ベルガミーニ級以来の入れ子式を踏襲した。ただし改型では半固定式とされた[2]。 諸元表
配備イタリア海軍イタリア海軍では、まず原型艦4隻を1977年から1980年にかけて就役させた。これらはイタリア海軍初のSSM搭載フリゲートとして、艦隊の対水上打撃力の一翼を担った。ただし復原性や耐航性の不足が指摘されたことから、艦型を拡大したマエストラーレ級フリゲートが新たに建造される事となった。 これらの艦はイラン・イラク戦争の終盤、タンカー戦争においてタンカー護衛の任務に就いた。また1990年には湾岸危機で出動して多国籍軍に参加し、湾岸戦争にも参加した。 その後、2000年代に入って順次に退役し、全艦がペルーに売却された。 ペルー海軍ペルー海軍は、1974年に4隻を発注した。最初の2隻はリヴァ・トリゴソ造船所(リグーリア州)で建造され、残りの2隻はペルーカヤオにある海軍産業部門(SIMA)でライセンス建造された。これは南米で初めて建造されためぼしい軍艦とされる[5]。 ペルー向けに建造されたルポ級は格納庫を半固定式としており、また1989年よりシコルスキー S-61へのHIFR給油に対応した装備を受けた。1996年以降は、9M39「イグラ」(SA-16「ギムレット」)の艦載発射機の搭載改修も行われているほか、2004年には「カルバハル」のRAN-10SレーダーをLW-08に換装している。 なお2004年以後、イタリア海軍を退役した原型艦を順次に購入した[3]。 ベネズエラ海軍ベネズエラ海軍は1975年に6隻を発注し、これらはイタリアCNR社において建造されて、1980年から1982年にかけて順次に就役した[6]。 また1997年には、アメリカ合衆国のインガルス造船所が近代化改修の契約を受注し、まず1998年から2002年にかけて、1・2番艦が改修工事を受けた。改修内容は下記のとおりであった[3]。
他の艦については、2001年に、ソナーのみ更新して、レーダーと戦術情報処理装置は従前通りとする改修が発注されている[3]。 イラク海軍1981年2月、イラク海軍はイラン・イラク戦争中の海軍拡張計画の一環として4隻を発注した。これらは1982年3月より順次に起工されたものの、アメリカがLM2500ガスタービンエンジンの主要部品の輸出を差し止めた(後に許可)ために建造は遅延した。 ネームシップである「ヒッティン」は1984年11月に引き渡され、1985年3月にイラク海軍に就役した[2]ものの、戦時規制を理由としてイラクへの回航は行われず、イタリア国内に留め置かれた。さらに1990年代に入ると湾岸危機が発生、国際連合の輸出禁止措置を受けて売却は困難となった。 1993年になってイタリア海軍で引き取ることになり、水測装備・対潜兵器を撤去したうえで、1996年までに相次いで就役した。 同型艦
参考文献
関連項目
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